相談員資格の検討会 中間報告 解説 その5(最終回)

これまで4回にわたり、中間報告書について解説してきました。

相談員資格の検討会 中間報告 公表 2012年9月14日(金)
相談員資格の検討会 中間報告 解説 その1 2012年9月26日(水)
相談員資格の検討会 中間報告 解説 その2 2012年9月28日(金)
相談員資格の検討会 中間報告 解説 その3 2012年10月1日(月)
相談員資格の検討会 中間報告 解説 その4 2012年10月2日(火)

消費者庁HP
ホーム > 地方協力課 > 消費生活相談員資格の法的位置付けの明確化等に関する検討会
http://www.caa.go.jp/region/index8.html
消費生活相談員資格の法的位置付けの明確化等に関する検討会 中間報告[PDF:643KB](平成24年8月)
http://www.caa.go.jp/region/pdf/120827_houkoku.pdf

最後に、今後どのような方向に進むのか、また、相談員個人として何を考えていかなければならないのかをまとめたいと思います。
話を前半と後半に分けると、新しい資格の創設は相談員個人にかかわる問題で、資格の法的位置付けや更新・研修制度は相談員全体の問題となります。したがって、後者は後付け的なことなので、前者が重要ポイントとなります。

まず前提として

中間報告3ページを参考

スマートフォンの普及などを例に挙げて、消費生活相談の内容が変化してきて複雑化・高度化している。
相談者への説得に努力を要する事案が増えていることをあげて、消費生活相談員が対応すべき消費者が多様化している。
という2点、すなわち相談内容と相談者像の変化が示されて、これらに対応するのが大変になってきている。
これらに対応するには、相談員の資質の向上が必要である。

この指摘については異論はありません。
では、どのようにして克服していくのかというところで意見が分かれてきます。

国は「相談員資格の充実」ということで解決を図ろうとしています。
この理由としては

中間報告9ページから抜粋

消費生活相談を十分に機能させ、消費者の権利の擁護を図るためには、消費生活相談員について一定の水準を全国的に確保することが不可欠である。そして、消費生活相談員について一定の水準を全国的に確保するためには、消費生活相談員に関する資格制度をより充実したものにすることが必要である。

資格制度の充実は理解できるとして、
具体的にどのように充実させるのかというのがポイントとなります。
国が主張しているのは、「資格制度の充実」とは「現在の資格制度の改革・改善」ではなく「新しい資格を創設することです。
現在の3資格ではコミュニケーションスキル等の技能の担保が不十分であり、資格制度の中で継続的に知識・技能を維持・更新する仕組みになっていない。
直接的な文言はありませんが、国は現在の3資格の実質的な上位資格を創設することを考えているようです。

そして、新しい資格制度は現在の資格とは切り離されて、新しい試験制度により実施されるということです(3資格保有者は一部免除があると思われます)。そして、基本的には相談員はこの新しい資格を取得することが望ましいとしています(実質的な強制)。

その新しい試験制度では、知識だけではなく、コミュニケーション能力等の技能試験も実施されるということです。

以上の点をまとめると、

・国は現在の3資格の実質的な上位資格を創設する。
・現職相談員は原則として新しい資格を取得する。
ただし、一からの取得ではなく、3資格保有現職相談員には何らかの一部免除がある。
無資格相談員にも何らかの一部免除の救済がある。
新規相談員は新しい資格を一から取得する。

ということに集約されます。

この新しい資格取得という入り口の部分について、相談員はしっかりと意見を表明する必要があります。
考えをまとめるポイントとしては

・新しい資格の創設についての賛否
・新しい試験制度の実施についての賛否
・新しい資格制度の試験内容についての賛否
・新しい資格の取得に当たっての一部免除・救済についての賛否
※第3の選択肢としての現行制度を維持しながらの資格制度の改善について

私自身は今までにも述べてきたように「※第3の選択肢」を主張していますが、検討会では、「現場からそういう意見が出ている」とだけ追記され、新しい資格の創設の流れが本流だと思われます。
本当に3000人の相談員個人個人が意見を出さなければ、思わぬ方向に進んでしまうかもしれません。
さらに、新しい資格を取得するための何らかの試験を課される可能性もありますし、力量不足を感じている相談員には厳しくなるかもしれません。真剣に自分自身のこととして考えてほしいと思います。

中間報告の後半部分は、相談員資格の法的位置づけと更新・研修制度ですが、あとからついてくるものなので、相談員個人の問題ではなく、相談員全体の問題と考えると、特に急いだ話ではないと思います。もちろん、問題点はいろいろあり、これまでに私が指摘してきているのでバックナンバーを参考にしてください。

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消費者庁長官の記者会見(10月24日分)

重要度:高
※行政資料の重要度を個人的に分類

消費者庁のHPに、週に1回、消費者庁長官の記者会見の要旨が公表されています。
子どものお酒の誤飲事故の注意表示についての質疑を重要度が高いという位置付けにしました。

消費者庁HP
http://www.caa.go.jp/
トップページの新着情報からでもリンクしています。
トップ > 活動について > 大臣等記者会見
http://www.caa.go.jp/action/kaiken/index.html

阿南消費者庁長官記者会見要旨
(平成24年10月24日(水)14:00~14:10 於)消費者庁6階記者会見室)
http://www.caa.go.jp/action/kaiken/c/121024c_kaiken.html
2.質疑応答(抜粋)


例えば子ども安全メールで、今日も午前中出ていましたけれども、アルコールの誤飲事故が子どもに多いと。
これについては、消費者庁は安全メールの中で、登録保護者に対して、子どもは警告というか、お酒ですというマークを読めないと、だから保護者は注意と、注意喚起ですよね。
ところが、その安全メールの中では、東京消防庁が昨年度9人、たしか9人だったと思いますけれども、9人の幼児の誤飲で搬送したと、病院に搬送したと書かれている。しかし、それ以上のことは分からないということです。分からないというのは、今日午前中議論になったのは、そういう点だと思うんですけれども、つまり全国で一体どれだけの搬送者がいるのかとか、東京都は9人だということなんですけれども、それに対して清涼飲料の表示は公正競争規約とか基準があって、果物はそんなに書けないけれども、低アルコール飲料でも、今回というか、出回っているものは実施基準に基づいてなされているわけで、違反とか何かじゃないわけですね。
ところが、清涼飲料と誤飲するというのは、それと同じような柄で、一方はお酒だけれども、一方はあれだと。お酒のほうは、清涼飲料の基準に比較した場合は、とてもそんな図柄がかけないような、わずか0.0何%の果汁が入っているにもかかわらず、低アルコール飲料のお酒として、果物の商品名が書いてあるとかというのが消費者庁の持たれている景品表示法と国税庁の酒税法の表示が同じあれだけれども、違反ではないけれども、だけれども消費者は子どもは間違えちゃうと、つまり子どもは警告表示は分からない。お酒ですと分からない。
したがって、そういうことがバックグラウンドとしてあって、事故が起きているというふうに私は思うわけなんです。そのことは安全メールで保護者の方に注意されてはいても、この注意喚起が私はどれだけ届くのかとか、あるいはどけだけ実効性があるのかとか、つまり消費者庁としての調査とか、そういうものをもう一度踏まえたらどうかということ、これはコチニールの件でも同じだと思うという感じなのですけれども。


また、誤飲のところも、確かに今朝も話題になったと認識しています。ただし食品衛生法の中にも、アルコール飲料であっても、表示の仕方については規制があ るはずなので、その辺のところも少し検討してみて、何とかもっと注意喚起を強められないかということについても検討したいと思います。

 

普通に読んでいるとスルーしてしまいそうな内容で、お酒が子どもにはお酒とわかりにくく果実の表示もしており、保護者が気をつけるように注意喚起の必要がある、というような内容だと思います。

これはお酒だけの問題ではなく製品全般の安全に対する注意表示について考えるきっかけにしてほしいと思います。
製品安全の3原則というのがあります。「設計上の安全→安全装置→注意表示」という考え方で、上位を優先することです。
注意表示の考え方は、設計上避けられず、安全装置もつけることができないときに、最後の手段として注意表示で対応するということです。
注意表示をしていれば問題がないということはありません。
誰もがしてしまう誤使用は、誤使用ではなく欠陥と考えられています。
(製品安全の3原則については別途記事にしたいと思います)

今回の質疑応答にでているお酒の表示(缶のデザインも含めて)は最終手段なのか?
子どもにしてみれば、誰でも誤飲してしまう可能性がある。
保護者が注意すべきだという議論とは別次元の話だと思います。
ジュースと良く似たデザインのお酒はいくら注意表示をしていても子どもには理解できず、大人でなければ缶を開けることができない、飲みかけのものも子どもが飲むことができないという安全装置をつけるのは難しく、製品安全の最上位の「構造上の問題がある」とも考えられるのではないでしょうか。
すなわち、明らかにジュースと間違えることのない構造やデザインにすべきである、というのが正論でしょう(正論が通らないのが常ですが)。

私は製品事故の相談の場合に、メーカーの誤使用・不注意の主張に対して、製品安全の3原則の立場から問題点がないかを必ず検証するようにしています。

今回の質疑応答では、そこまで考える人はいないかもしれませんが、実は重大な要素が含まれているということも、相談員として頭のすみに入れておいてください。

参考
「子ども安全メールfrom消費者庁」http://www.caa.go.jp/kodomo/mail/past/

2012年 9月 27日 Vol.104

アルコール飲料の誤飲に気をつけて!
東京消防庁管内では、過去5年間に16人の子どもがアルコール飲料の誤飲で救急搬送されています。そのうち半数以上の9人が、1歳から3歳までの乳幼児です。また、昨年(平成23年)に搬送された子どもは9人にのぼります。

誤飲の原因は「清涼飲料と誤認して飲んだ」(10人)が過半数を占めています。見た目でアルコール飲料であると判別できなかったため事故につながったと考えられます。

グラスなどに入ったアルコール飲料を子どもが誤って飲まないように注意しましょう。

また、缶入りアルコール飲料の中には、新鮮なフルーツが描かれているなど、清涼飲料と間違いやすいものもあります。缶に記されている「酒マーク」やアルコール分表示は、まだ字の読めない子どもには理解できません。特に誤飲のおそれがあります。アルコール飲料については、子どもの目や手の届かない場所への保管を心がけましょう。

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消費者安全調査委員会への申出制度(10月1日から開始)

前回、消費者庁長官記者会見の記者会見(平成24年9月26日)で消費者安全調査委員会のことを取り上げましたが、この申し出制度について紹介します。

消費者庁HP
ホーム > 審議会・懇談会等 > 消費者安全調査委員会 > 消費者安全調査委員会への申出
http://www.caa.go.jp/csic/action/index.html

消費者安全調査委員会への申出
事故等原因調査等の申出制度とは・・・

消費者の生命又は身体被害に関わる消費者事故等について、被害の発生又は拡大の防止を図るため、事故等原因の究明が必要だと思料する場合に、消費者安全調査委員会に対し、その旨を申し出て、事故等原因調査等を行うよう求めることができる制度です。

この申出は、申出に係る消費者事故等の被害者だけでなく、個人、法人を問わず、誰でも行うことができます。

申出された事案については、消費者安全調査委員会で必要な検討を行い、その結果に基づき必要があると認めるときは、事故等原因調査等を開始します(申出があった事案すべてを調査するものではありません)。

申出制度の目的

申出制度は、消費者安全調査委員会の事故等原因調査等のきっかけの一つとして、消費者庁から報告される事故等情報だけでは抽出できない事故等について、必要な事故等原因調査等につなげるためのしくみを構築することにより、調査等の必要な事故の漏れや事故等原因調査等の盲点の発生を防ぎ、必要な事故の再発・拡大防止対策につなげていくことを目的としています。
申出の方法

事故調査室内に専用の相談窓口を開設し、事故等原因調査等の申出を希望する方からの電話相談の受付を開始します。ご希望の方は以下の要領にしたがって、消費者安全調査委員会まで申出ください。

申出の様式
調査委員会への申出は同委員会が定める様式を使用してください。
申出書の様式: [PDF形式 ] [WORD形式]
申出書の記入例: [PDF形式]

申出書類の提出先
申出書類又は関係書類は、封筒の表面の右側に赤字で「申出書類在中」「申出関係」などと記入し、次の宛先に送付してください。

【申出書類の送付先】
〒100-6178 東京都千代田区永田町2-11-1 山王パークタワー6階
消費者庁 消費者安全課 事故調査室  宛て

申出に関する問い合わせ
申出書式の記入方法、申出制度の内容などのご不明な点は、次の電話番号までお問い合わせください。

【問合せ先】
消費者庁 消費者安全課 事故調査室
専用電話番号 03-3507-9268 (受付時間 10:00 ~ 17:00)
FAX 番号  03-3507-9284

申出者の方へのお願い

消費者安全調査委員会が事故等原因調査等を行うかどうかを判断するにあたって必要なときは、消費者安全課事故調査室がお電話等で申出者等に申出の事案について問い合わせをさせていただくことがあります。そのときは、ぜひご協力いただくようお願い申し上げます。
申し出ていただいた事故等の情報は、法律に基づき、消費者庁に通知されます(個人を特定できる情報を除いた申出内容の概要を、事故の再発防止・拡大防止のため、消費者安全調査委員会又は消費者庁が公表する場合がありますので、あらかじめご了承ください。)。
死亡事故や重傷事故の被害者及び被害者の親族の方から申出を受け付けた場合は、消費者安全調査委員会から調査を実施するかどうかの通知を行います(消費者安全法第28条第3項)。

担当 : 事故調査室

Consumer Accident Investigation Office

この委員会の活動事態は国の問題であり地方のセンターに直接の影響を及ぼすことはないと思いますが、ただ1点、消費者からの相談も受け付けるというところはおさえておくべきところです。というのも、センターで受け付けた事故案件には解決が難しいものや、なじまないもの、個別案件で損害賠償になっているものなど、センターが扱う案件としてはしんどいかなという事故について、これまでは法律相談を紹介するなど、消費者の意向に答えることができるような相談機関があまりないのが現状でした。しかし、今回の申し出制度で、消費者が事故について直接申し出る機関ができたわけです。ただし、それが取り上げられるかといえば、その可能性は少ないかもしれませんが、とにかく、国レベルの相談機関ができたという意義は現場のセンターとしてはありがたいことであり、対応の難しい相談者に紹介できるという点では知っておかなければならないと思います。本来の委員会の役割とは異なる逃げ道といわれれば身もふたもないですが、現場としてはありがたいです。消費者安全法のヒヤリハットの事故通知と性質的には似ていると思います。

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