新しい相談員資格(新情報?)

前回、「消費者の安全・安心確保のための「地域体制の在り方」に関する意見交換会」について紹介しましたが、その第1回意見交換会の配布資料の中の「資料5 消費生活相談員資格の法的位置付けの明確化等に関する検討会中間報告[PDF:905KB]」をみて、驚きました。中身は、8月の中間報告そのままでしたが、1枚もので「消費生活相談員資格の法的位置付けの明確化等に関する検討会中間報告 概要」という資料が追加されていました。中間報告の内容をまとめて図式化したものですが、私の記憶では、初めて出てきたのではないかと思います。この意見交換会のために作られたのかもしれません。

その内容は、8月の中間報告ではあいまいで決まっていないと思われていた核心部分が、ほぼ決まっているような形でまとめられていました。
あの中間報告からは、想像もつかない進展です。もう。これで決まりのような雰囲気も感じます。
おそらく、この報告の内容で新しい資格と試験が創設されるのではないかと思いますので、この1枚ものだけは確認しておいてください。

消費者庁HP
ホーム > 地方協力課 > 消費者の安全・安心確保のための「地域体制の在り方」に関する意見交換会
http://www.caa.go.jp/region/anzen_anshin.html
資料5 消費生活相談員資格の法的位置付けの明確化等に関する検討会中間報告[PDF:905KB]
http://www.caa.go.jp/region/pdf/131022_5.pdf

いくつか抜粋

相談員資格付与の主体

・資格⇒国(内閣総理大臣)が付与
・試験⇒試験制度等により民間団体等が実施、試験内容や水準の確保・公正性等は国が法律に基づき担保

資格により担保する知識・技能

・実践的能力を担保する仕組(講習等)⇒実践的技能:コミュニケーションスキル、ヒアリング力、交渉力、法律の活用力、文章作成力 等
・更新制度の創設+継続的な研修⇒知識・技能を継続的に維持・更新

新資格

必要な知識・技能/更新制度・・・取得方法
・消費者問題に関する法律知識・・・試験
・商品・サービス、生活に関する知識・・・試験
・福祉等の関連分野や行政一般に関する知識・・・試験
・コミュニケーションスキル・ヒアリング力等の実践的技能・・・講習等
・(経済等に関する知識)・・・試験
・更新制度・更新時研修・・・有

3資格保有者等に係る措置

・3資格保有者⇒新資格への移行にあたって、試験を一部免除
・資格を保有していない現職相談員⇒新資格取得にあたって、取得に伴う負担軽減等の配慮
・資格保有の現職相談員⇒試験・講習等の一部を免除

ポイントは
・新資格と新しい試験を創設
・新資格は国が付与(国家資格?準国家資格?)
・試験は民間団体等が実施
・コミュニケーションスキル等の技能は試験ではなく講習等で実施
・3資格保有者等に係る措置は、現職でない保有者は試験を一部免除、現職有資格者は試験だけでなく講習等も一部免除、資格を保有していない現職相談員は何らかの配慮

感想
イメージとしては、消費生活専門相談員・消費生活アドバイザー・消費生活コンサルタントよりも上位の資格のような雰囲気
・そうするとアドバイザーと同じレベルの試験では新資格の意味がない?(アドバイザーの行政法律関係は問題が易しい)
・今まではすみわけしていたが重なる可能性が高く難度も高くなりそうなのでアドバイザー資格の反発があるのでは?
・消費生活専門相談員の試験は新たに実施しない?(26年度から国民生活センターの行く末が決まるので26年度からいきなり試験なしで新試験?)
・試験を実施する民間団体等は「全相協」が考えられるが、試験対策講習等を実施している団体が試験を実施するのは無理?では、どこが?
・新資格は消費者センターだけでなく民間にも使える資格といっていたが、このペーパーでは言及なし
・新資格への移行は試験の一部免除等で、もれなく全員が取れるように優遇?そんなザルのようなやり方で資格の威厳は?

などなど、議事録が楽しみですが、年内には決まる模様です

(つぶやき・・・独り立ちを考えていた私に試験制度の変更は大きな試練です)

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相談員資格の検討会 中間報告 解説 その5(最終回)

これまで4回にわたり、中間報告書について解説してきました。

相談員資格の検討会 中間報告 公表 2012年9月14日(金)
相談員資格の検討会 中間報告 解説 その1 2012年9月26日(水)
相談員資格の検討会 中間報告 解説 その2 2012年9月28日(金)
相談員資格の検討会 中間報告 解説 その3 2012年10月1日(月)
相談員資格の検討会 中間報告 解説 その4 2012年10月2日(火)

消費者庁HP
ホーム > 地方協力課 > 消費生活相談員資格の法的位置付けの明確化等に関する検討会
http://www.caa.go.jp/region/index8.html
消費生活相談員資格の法的位置付けの明確化等に関する検討会 中間報告[PDF:643KB](平成24年8月)
http://www.caa.go.jp/region/pdf/120827_houkoku.pdf

最後に、今後どのような方向に進むのか、また、相談員個人として何を考えていかなければならないのかをまとめたいと思います。
話を前半と後半に分けると、新しい資格の創設は相談員個人にかかわる問題で、資格の法的位置付けや更新・研修制度は相談員全体の問題となります。したがって、後者は後付け的なことなので、前者が重要ポイントとなります。

まず前提として

中間報告3ページを参考

スマートフォンの普及などを例に挙げて、消費生活相談の内容が変化してきて複雑化・高度化している。
相談者への説得に努力を要する事案が増えていることをあげて、消費生活相談員が対応すべき消費者が多様化している。
という2点、すなわち相談内容と相談者像の変化が示されて、これらに対応するのが大変になってきている。
これらに対応するには、相談員の資質の向上が必要である。

この指摘については異論はありません。
では、どのようにして克服していくのかというところで意見が分かれてきます。

国は「相談員資格の充実」ということで解決を図ろうとしています。
この理由としては

中間報告9ページから抜粋

消費生活相談を十分に機能させ、消費者の権利の擁護を図るためには、消費生活相談員について一定の水準を全国的に確保することが不可欠である。そして、消費生活相談員について一定の水準を全国的に確保するためには、消費生活相談員に関する資格制度をより充実したものにすることが必要である。

資格制度の充実は理解できるとして、
具体的にどのように充実させるのかというのがポイントとなります。
国が主張しているのは、「資格制度の充実」とは「現在の資格制度の改革・改善」ではなく「新しい資格を創設することです。
現在の3資格ではコミュニケーションスキル等の技能の担保が不十分であり、資格制度の中で継続的に知識・技能を維持・更新する仕組みになっていない。
直接的な文言はありませんが、国は現在の3資格の実質的な上位資格を創設することを考えているようです。

そして、新しい資格制度は現在の資格とは切り離されて、新しい試験制度により実施されるということです(3資格保有者は一部免除があると思われます)。そして、基本的には相談員はこの新しい資格を取得することが望ましいとしています(実質的な強制)。

その新しい試験制度では、知識だけではなく、コミュニケーション能力等の技能試験も実施されるということです。

以上の点をまとめると、

・国は現在の3資格の実質的な上位資格を創設する。
・現職相談員は原則として新しい資格を取得する。
ただし、一からの取得ではなく、3資格保有現職相談員には何らかの一部免除がある。
無資格相談員にも何らかの一部免除の救済がある。
新規相談員は新しい資格を一から取得する。

ということに集約されます。

この新しい資格取得という入り口の部分について、相談員はしっかりと意見を表明する必要があります。
考えをまとめるポイントとしては

・新しい資格の創設についての賛否
・新しい試験制度の実施についての賛否
・新しい資格制度の試験内容についての賛否
・新しい資格の取得に当たっての一部免除・救済についての賛否
※第3の選択肢としての現行制度を維持しながらの資格制度の改善について

私自身は今までにも述べてきたように「※第3の選択肢」を主張していますが、検討会では、「現場からそういう意見が出ている」とだけ追記され、新しい資格の創設の流れが本流だと思われます。
本当に3000人の相談員個人個人が意見を出さなければ、思わぬ方向に進んでしまうかもしれません。
さらに、新しい資格を取得するための何らかの試験を課される可能性もありますし、力量不足を感じている相談員には厳しくなるかもしれません。真剣に自分自身のこととして考えてほしいと思います。

中間報告の後半部分は、相談員資格の法的位置づけと更新・研修制度ですが、あとからついてくるものなので、相談員個人の問題ではなく、相談員全体の問題と考えると、特に急いだ話ではないと思います。もちろん、問題点はいろいろあり、これまでに私が指摘してきているのでバックナンバーを参考にしてください。

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相談員資格の検討会 中間報告 解説 その4

これ以降については特記すべきことはありませんので項目と簡単な説明をさせていただきます。
詳しくは、報告書本文をご覧ください。


6.相談員資格に係る更新・研修制度等

(1)相談員資格に係る更新制度
資格制度に更新制度を設けるとともに、更新に当たっての講習受講等により資格取得者の知識・技能について継続的に維持・更新を図る仕組とすべきである。
(2)資格を保有していない相談員に対する研修等

結局はどのような研修をするかという問題に集約されます。


7.相談員資格付与の主体
これも具体的な資格制度の先が見えないと決められないと思います。


8.3資格保有者等に係る措置

新たな資格の創設に当たっては、資格の水準を維持しつつも、現に消費生活相談が行われている現場において混乱が生じることがないよう、希望に応じて新たな資格を円滑に取得することを可能にする措置を講じる必要がある。

(1) 3資格保有者に係る措置
(2) 3資格を保有していない現職の相談員に係る措置
(3)3資格を保有している現職の相談員
新しい資格が創設されたときに、新しい試験も実施されることを前提に、現職は一部試験項目の減免をすべきではないかということです。現職は十分に能力があるからという理由からですが本当に十分に能力があるのでしょうか。能力に問題のある相談員もいると思いますし、自分で自分の能力に自信がなく向上したいと思っている相談員もいると思います。一律対応には無理があると思います。
また、3資格を持っていない相談員の首を切らずに新資格に移行させたいという思いがあるようですが、それって本当に信頼される資格になるのでしょうか。
このあたりは触れたくないところでしょうが、根深い問題かもしれません。


9.人材養成のための取組
(1)研修等に対する国の支援

消費生活相談について全国的な水準の確保と質の向上を図るためには、消費生活相談員に対する資格更新のための研修等を含めた継続的な研修を始め、資格取得促進のための講習等の自治体や消費者団体の取組についても、国として支援等を行っていくことが必要である。

(2)資格取得を促進するための措置

一方で、今回の相談員資格は、消費生活相談員が有すべき知識・技能等を担保し、消費生活相談員全体に取得することが求められるベースとなる資格であり、消費生活相談の質の確保・向上のためには、これを消費生活相談員全体に普及させていくことが極めて重要である。

新しい資格制度は、現職の相談員も含め全員が取得するべき資格にしたいという意向があるということです。


10.今後の課題
(1)より高度な知見や専門性などが求められる消費生活相談に適切に対応するために必要な資格
(2)消費生活相談以外の消費者問題等に関する活動を担う専門家の育成等


11.結び
まとめというよりも、別項目の特記事項として、「相談員のの処遇改善」について書かれています。
これは、検討会の最後の方で、現場の声として、「この制度ができたら雇い止めがなくなって処遇改善されるのか」という声に対して追加されたものです。
当然リンクしていないことは明白だと思います。だからこそ、単純に負担になる制度改革には声を上げるべきだと思います。

以上で中間報告書の解説は終わります。
次回は最後として、この問題についてどうすればいいのかという私の考えを再度まとめたいと思います。

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