「売り言葉」に「買い言葉」(電車の中で)

電車の中でのこと。
別の電車への乗り継ぎがある場合は、そこに近い車両は大変混雑します。
しかも、奥に入らず入り口付近に人がたまってしまい、ほかの人が電車の中に入りにくいことがあります。

私は奥の方で立っていましたが、ある男性が入ってきて入り口付近で立ち止まりました。乗り継ぎのために、できるだけドアに近い場所にいたかったのだと思います。

当然、ドアの入り口はふさがれて、ほかの人が入りにくくなっています。

案の定、入ろうとした男性が進路をふさがれていたので、無理に入るかと思いきや、その男性に怒って、「奥に入らんか」と叫び、続いて罵声を浴びせかけました。

(さらに…)

共感

今、「DJポリス」が注目されています。警視総監賞も贈られることになりました。
ここまでニュースで報道されているのでさすがにご存知だと思いますが、「DJポリス」とは6月4日の夜に日本のサッカーのワールドカップ出場が決まったときに、渋谷のスクランブル交差点で歓喜する若者たちを、ユーモアあふれる語り口でパニックを防ぎ、安全に誘導した警察官のことを名づけたものです。
この語りの中には、「皆さんは12番目の選手です」「警察官も本当は喜んでるのです」など「現場の状況と空気を読んだ巧みな話術がファンの心情をとらえた」として評価されました。
ネットで検索すれば、ニュースや動画もたくさんあるので知らない方は参考にしてください。

「Mr.サンデー」(6月9日夜)
”DJポリス”の言葉が響いたわけ
目の前で怖い顔したお巡りさんも日本代表のワールドカップ出場を実は喜んでいるんです。
”水平性”を保つ話し方”

NHK(6/11ニュースウォッチ9)
警察もどうしたら聞いてくれるのかアナウンス力を磨いてきた
広報する側の警察官の意図が伝わらないと困る
こられる対象の方に応じた研究をし警備がうまくいくように考えている
警備広報上級検定に合格している警察の長年の努力が実った

ジャーナリストの言葉として
警察対市民という対立構造を作らなかったのが成功の鍵
いたずらに(群集を)排除するだけではなくて
“日本人だったらサッカーに勝ってうれしいよね。”という共通のものを踏まえたうえで
“それを台無しにしないようにしよう”という目的の設定がうまかった

共感を呼び起こすことが一方通行ではないコミュニケーションをうんだ


などなど感動的な話として伝わってきますが、私は感動を伝えたいのではなく、共感のコミュニケーションとは何かを伝えたくて話題にしました。
すなわち、相談対応現場と共通していることがあるのです。

共感」がキーワードです。
いつもは上から目線の警察官が、「実はファンと同じように喜んでいる」と目線を同じにして、共感と信頼を得たのです。

気づきましたか?
「上から目線」「共感」「信頼」
すべて相談現場で重要でありながら、なかなかうまくいかないことがあるキーワードですね。

私のサイトでは何度も同じことを解説しています。
バランス理論を使い、相談者の主張が間違っていても、相談者の気持ちを受け止めてあげることによって、共感の信頼を獲得する。
この理論が分かっていないと、相談者と相談員(消費者センター)は対立構造になってしまいう。
そこで説得しても、単なる上から目線になり、よけいに反発を買ってしまう。
バランス理論 その1 2011年5月16日(月)
バランス理論 その2 2011年5月18日(水)
「消費生活相談員のためのスキルアップ講座」平成23年10月号(第2号) 10月19日発行

警察は「明石の歩道橋事故」を教訓として、「伝わる広報」のために研究し、試験も実施していて、合格者もわずかであるという事実が、単なる感動秘話ではなく、計算しつくされた「コミュニケーションスキル」であることがお分かりいただけると思います。
スキルであるから学ぶことができるのです。

勘違いしてはいけないこととして、共感は「相談者の主張を認める」というのではないことです。
もちろん主張が正しければやりやすいですが、そうでないこともあります。

事実と感情を切り離して考えるということも解説してきました。
事実で相談者の主張を認めることができずに、相談者の希望をかなえることができなくても、気持ちを受け止め共感することで納得してもらうという対応が大切です。
そうすれば、すべてとは限りませんが、相談者の希望がかなわなくても、また相談にきたいという信頼関係が構築できると思います。
対立関係で終わることほど、相談員として空虚なものはないとおもいます。
相談者の希望がかなえられなくても、しっかり気持ちを受け止めてあげて、共感し、その上で納得のいく説明をする。
帰り際に、感謝の言葉とともに気持ちよく相談を終了することができれば、相談員としても、次の相談へのモチベーションが上がると思います。

今一度、相談現場対応で、相談者に共感しているか自分自身を見つめてください。

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相談員の能力の査定

前回の続きです

新人相談員、ベテラン相談員、転職組相談員など相談員になった経緯は様々です。そして、相談員は一定のカリキュラムで育成された職種ではないので、その能力も千差万別です。
この専門化育成カリキュラムがないところが、相談員の資質の向上が果たせない要因になっているのではないかと思います。

それはさておき、相談員の能力を測る簡単な考え方を紹介します。
ベテラン相談員が必ずしも能力の高い相談員とは限らないことがわかると思います。

相談員資格の見直しの検討会でも相談員の能力について言及しています。
それは、相談員の能力は、「知識」と「技能」が重要であるということです。
従来の「知識」偏重から「技能」の向上に目が向いたわけです。
技能の大きな柱は「コミュニケーション能力」です。

今回、私は相談員の能力の目安を「知識」と「伝える能力」で説明したいと思います。

「知識」と「伝える能力」は掛け算で考えます。
たとえば、Aさんが、ある分野の知識レベルが100だったとします。
しかし、Bさんは80の知識レベルしかありません。
すると知識ではBさんよりAさんのほうが優れているとなります。
では、相談者にとってはBさんよりAさんのほうが対応満足度の高い信頼できる相談員になるのでしょうか。
そうとは限らないです。
これが対人能力の必要な仕事の妙技であります。
Aさんは100の知識レベルでしたが、相談者に伝える力は70%でした。
Bさんは80の知識レベルでしたが、相談者に伝える力は90%でした。
するとAさんが相談者に伝えることができたのは100×70%の70の知識で、Bさんは80×90%の72の知識です。したがって、BさんのほうがAさんよりも多くの知識を相談者に伝えることができました。その結果、AさんよりもBさんのほうが相談者にとって満足度の高い相談員ということになります。
最終的に、2人の能力を査定したところ、AさんよりもBさんのほうが能力は高いということです。
(72と70はわずかな差ですが、一種のたとえ話と捉えてください)

同じパターンで、Aさんのある分野の知識レベルが160だったとします。すると、Bさんの知識レベル80の2倍となり、表面的にはAさんのほうが2倍の能力があるように見えます。
しかし、実際にその相談で必要な知識は100でした。残りの60はその相談では必要のない知識でした。しかし、Aさんはその60の知識も伝えようとしました。すると、相談者はどうなるでしょうか。
長い時間をかけて必要のないことまで説明されて、どうすればよいか分からなくなります。

単純に伝える力を%として考えましたが、これを「人当たり」と置き換えてもいいと思います。

私の言いたいことが伝わったでしょうか?
相談員に必要な能力は「コミュニケーション能力」です。
知識は足し算で増やすことができます。これは、経験年数にもある程度比例します。誰もが努力すれば知識レベルを上げることは可能です。知識レベルが高ければ能力も高いと錯覚しがちです。ただし、ある一定レベル以上の知識は当然ながら必要です。
一方、コミュニケーション能力というのはその人の人格そのものです。加減乗除で図れるものではありません。性格的なものですので、簡単には変えることはできません。
私は、「相談員の能力=コミュニケーション能力」だと思っています。
相談現場で「話を聞いてあげるだけで解決する」「一般常識で十分対応できる」という知識レベルとは関係のない相談も少なくないのではないでしょうか。
このコミュニケーション能力は人付き合いをすれば分かってきますので、比較的短期間で評価することができます。
いくら大学教授や弁護士並みの知識があっても、コミュニケーション能力のない相談員は必要ありません。
あなたは、どのタイプですか?
あなたの職場のほかの相談員はどうですか?

相談員の資質の向上のための研修がたくさん開催されていますが、コミュニケーション能力が向上していますか?

コミュニケーション能力の向上を真に願っている相談員は少なくないと思います。

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