季刊ダイレクトセリング 120号(2012年11月発行)

「公益社団法人 日本訪問販売協会」が「季刊ダイレクトセリング」という広報誌を発行しています。
2012年11月発行の120号は「協会相談事業の四半世紀と未来」が特集されています。
その中から、相談員のスキルに関連する2人の話を紹介します。

この広報誌はWEBから最新号が閲覧できます(バックナンバーは有料です)。
公益社団法人 日本訪問販売協会
http://www.jdsa.or.jp/
季刊ダイレクトセリング
http://www.jdsa.or.jp/www/jigyo/shuppan-02/mokuji-10.html
季刊ダイレクトセリング 120号(2012年11月発行) ※次号が発行されるまでの公開ですので今のうちに
http://www.jdsa.or.jp/www/jigyo/shuppan-02/ds/ds120.pdf

特集
協会相談事業の四半世紀と未来
訪販110番を中心とする本協会の相談事業は、協会が展開する活動の中でも大きな比重を占める事業である。その活動は消費者が訴えるトラブルや不安を解消するとともに、会員各社にそれらの諸情報を伝えることで、ダイレクトセリングの信頼性向上に大きく寄与してきた。四半世紀に及ぶ協会相談事業について各界からの評価や意見をお聞きし、その果たしてきた役割や今後の課題を浮き彫りにする。

「うるさい相談室」が今も懐かしい(日本訪問販売協会元専務理事)

相談員同士の切磋琢磨で高度な専門性が実現された
相談室は私の部屋のすぐ隣にあり、体制もととのい非常ににぎやかでした。問題は、相談の電話の応対が終わった後です。相談員同士で喧喧諤諤やりあうわけです。あの言葉は良かったとか、もっとこういう対応をすべきだったとか。よく言えば、そのような切磋琢磨があってこそ、相談能力がパワーアップされたのでしょう。

※相談電話や来所相談が終わると、「今の相談ね・・・」「大変だったね」などのやり取りがありますが、単にグチをいうだけでなく、この記事にもあるとおり、「今の対応は本当にこれでよかったのか、別の方法がなかったのか」などの検証をすることで本当のスキルアップにつながります。多忙な相談業務で時間がないと思いますが、これこそが活きた教材です。うまく活用できる環境があればいいと思います。

協会との連携を強化して弱い立場の消費者を代弁する力を強めていきたい(消費生活専門相談員)

相談員の対応が「スマート」になってきた
――最近の消費者相談の傾向について教えてください。
(中略)
――この数字について、・・さんはどのようにお考えですか。
消費者相談といえば、以前は、あっせんによる解決がもっと多かったけれども、最近は減っているのが気になります。背景には、相談員の対応力の問題と、問題の複雑化がありそうです。相談員だけで解決できなくて、他機関を紹介するケースや処理不能、不調に終わるケースが増えています。処理不能というのは、たとえば、どこの誰だかわからない事業者が突然訪問してきて契約したり、電話セールスだけで高額なお金を消費者に振り込ませて、それっきりどこかへ逃げてしまうというケースなどです。
――相談員の対応力の問題とは、どのようなことでしょうか。
最近は、相談員が事業者に連絡したり、協会の相談室と連携したりといった、機動的に動いて解決するケースが減っています。いまの相談員は、インターネットで傾向と対策を調べようとする。よく言えばスマートな対応になりました。私が「この件は○○へ電話して聞いてみては……」と助言すると、「そんなことが聞けるのですか」と言われます。特商法関係のトラブルの問い合わせ先としては、訪問販売協会が最も適切であるのに、最近の相談員は、あまり問い合わせをしませんね。自分で頭を使って情報を収集する力が落ちたのか、簡単に情報が得られるようになってその必要がなくなったのかまたは両方かもしれません。
――消費者相談もIT化というか、デジタル化しているのでしょうか。
以前の相談員はもっと情熱的でした。熱心に情報を聴き取り、この消費者のために何とかしてあげなくてはという思いで動いていた。今ほど情報がふんだんでなかったこともあって、相談員が自力で解決に向けて情報をあつめるしかなかったこともあるでしょうが、いまはまずPIO|NET(パイオネット:全国消費生活情報ネットワーク・システム)を検索して過去の事例を調べ、「この事例がこういう処理方法で落ち着いているならば、私の事例も同じようにすればいい」などと考える相談員も少なくないと聞きます。
しかし、相談というのは一見同じように見えても1件1件で違う。勧誘員が違えばセールストークが異なり、消費者が違えば受け取り方が違う。かつて私たちは電話の受話器の上げ下ろしから始まって、先輩からいろいろ厳しく指導されたものです。後から考えるといい時代だったように思います。

消費者の意識の変化で相談員の手に負えない難事例が増えた
――他機関の紹介が増えたというのは、具体的にどういうことですか。
消費者が変わってきたことも原因として挙げられます。弁護士が説得すれば納得するが、同じような内容でも相談員が話すと反発するという事例もあります。最近は若い人に限らず自分の権利を強く主張する事例が目立ち、クレーマー的な対応にも苦慮しています。どう考えても通らない主張を事業者へ伝えてくれと引きさがらない。とても言えるような内容ではありませんと答えると、それなら所長を出せ、弁護士を紹介しろと言われることもあります。
素人判断ですが、精神的に病んでいると思われるケースも増えています。その相談の傾向は同じことをえんえんと繰り返すとか、その日によって主張等に波があるという特徴があります。「言うとおりにしないと、これから殺しに行く」と言われたケースもありました。

ADRなど協会の問題解決能力のPRをもっと積極的にすべきだ
(中略)
――今後の消費者相談のあり方についてのお考えをお聞かせください。
消費者と事業者間の紛争は、さまざまな感情が絡むので、ドロドロしています。一方、最近の相談員はスマートになり、物事の表面しか見ない傾向があります。しかし、割り切れないものを汲み取って収めていくのが相談員の役割でしょう。奥の深い消費者問題への対処力をもっとつけていかなければ、時代の変化の中で消費者センターが取り残されていくのではないかと心配もしています。現に消費者センターに寄せられる相談件数は減少傾向にあります。
協会の相談室を始め司法や弁護士会との機能的役割を踏まえながら、難しい問題にも積極的に取り組み、あらゆる場面で弱い立場の消費者の代弁ができるのは私たちしかいないのだという強い使命感をもって取り組んでいくべきだと考えます。そのためには相談業務に特化した研修や勉強会だけでなく、広い視野とバランスをはぐくむ機会を持ってほしいと思います。

※ときどき相談員に対する憂いを書いた記事を見かけます。氷山の一角だと自覚し、どうすればスキルアップに結びつくのかを考えながら勉強してほしいと思います。ぜひ、原文を読んでください。

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ジャドマニューズ 2012年11月号

「ジャドマニューズ」の最新号・バックナンバーは、HPで閲覧できます。
2012年11月号
http://www.jadma.org/pdf/news/2012_11.pdf
ジャドマニューズ
http://www.jadma.org/jadma_news/index.html

①通販110番
消費者相談編
「送料」に敏感な消費者への対応

「送料」については、会社によって金額設定が異なり、最近は無料にする会社が増えています。
今回はこの「送料」を巡ってトラブルとなった事例をご紹介します。
事例1 「送料無料」のはずが、返品時に往復送料の負担を求められた
・ネット通販で「送料無料」で購入した商品を返品したところ往復分の送料を求められた。
・事業者はお客様都合の返品時の送料負担をお届け時の送料も含むと解釈しているが明記されていない。
→返品特約を読む限り、消費者側が「送料=返送料のみ」と思い込むのではないかと推測できた。自己都合の返品時に往路の送料負担も求めるのであれば、「往復送料負担」と表示することが望ましく、消費者には減額交渉を助言した。
事例2 実費以上と思われる送料負担に納得できない
・1セット注文時の送料が2セット注文した場合に2倍かかるが、1つの梱包でしかも小さな袋に箱が2個入っていただけで、2セット分の送料が必要なのはおかしいのではないか。
・事業者は「送料には配送料と梱包手数料が含まれる」「法律上、問題ない」との説明があったが、納得できない。
→注文時にセットごとに送料がかかる説明を了承しているので、負担せざるを得ない。事業者も丁寧に説明する必要がある。
通販110番より
わかりやすい表示と、的確な説明がトラブル回避のカギ
・ 販売促進策の一環として「送料無料」サービスの流れが加速していますが、購入者が負担する金額がある場合には、誤解のないよう明示することが大切だと考えます。

※送料をめぐる問題は小さい金額であり、揚げ足取りにも感じますが、現場でも相談があり、泥沼になることも少なくありません。たとえば、大型家具等の返送料が1万円を超える高額になったり、製品の故障の調査を苦情にすれば送料無料になったり、発送時の送料を負担しても明らかに大きさと送料がつりあっていない場合など。さらに、1000円近い送料と梱包手数料を負担すればシルバーのネックレスなどがが無料に近かったりプレゼントでもらえる場合に、届いた商品がどうみても安物であるといったもので、実際は梱包手数料名目で利益を上げていたことがありました。ちなみに、この商法の出だしのときに、国センに情報提供しましたがスルーされてしまいました。

事業者相談編
身体の異常は商品が原因?

事例1 「タオルスリッパ」を購入した顧客から「使用を始めて約2カ月だが、右足だけがかぶれた。症状はたいしたことはなく、医者にもかかっていない。ただ、商品に異常があると思われるので見に来てほしい」との内容だった。返送を依頼したが来て欲しいとのことで行かなければならないか。
→ 症状が軽く緊急性でないので訪問せずに対応したい状況だが、相手の事情を考えると訪問した方がトラブル解決につながることがある。今回は訪問して確認したところ、商品に織り傷があったことが原因であり、交換対応した。
事例2 野菜セットの芋を調理して食べたところ、のどがいがいがした
→補償が必要かどうかは、「のどの異常」の原因を特定しないと判断できないので、原因特定及び治療を目的に、医師の診断を受けることを勧めてほしい。食べる部位や調理方法を間違えた場合の健康被害との関連性も、併せて調査する必要がある。
相談室長より
誠意と迅速な対応に勝るものなし
一般的には顧客と対面することで早期に解決を図ることができます。理由は、訪問することで会社側の誠意が伝わりやすいという点にあります。

※苦情対応でわざわざ東京から何人もの担当者が出向くことがありますが、まさしくケースバイケースで、どうすれば起こってしまったことを一番円滑に納められるかというところがポイントとなります。ただし、事業者が、消費者だけでなく、消費者センターにも遠くから説明に来ますといいますが、ちょっとそこまではいらないよと思うこともよくあります。

②連載 メディアワクオン 情報リテラシーの備え

第10回 トバシ記事と〝マスコミハンター縲鸀

最近の騒動からもわかるように、「報道」にもミスがある。どんなに立派な教育を施し、チェック機能があっても人間である以上必ず“穴”が生まれる。絶対的なものではないのだ。そこに気づくか、気づかないかで、世に溢れる情報の見方はまったく変わってくる。今回はそんな“穴”を逆手にとった男の話だ。
・「人違い写真」をもとにした目撃証言の信憑性は?
・500件のマスコミ訴訟で8割を勝利した男

※この記事は面白いです。ぜひ読んでください。簡単に言うと、マスコミ報道の間違っている部分を裁判等で徹底的に争い勝訴しているということです。ロス疑惑や大阪市長の事件を例に出しています。
これは他人事ではありません。センターでも発言が不適切だと、あげあしを取られて裁判沙汰に発展することもあります。最近は会話を録音している場合もあるので気をつけてください。

社団法人 日本通信販売協会 HP http://www.jadma.org/
会報誌(JADMA NEWS) http://www.jadma.org/jadma_news/index.html

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ソフトバンクは「有効」 携帯違約金条項で京都地裁判決

NPO法人「京都消費者契約ネットワーク」が、携帯電話の2年契約の中途解約金を定めた条項は消費者契約法違反として、携帯電話3者に対して消費者契約法に基づく差し止め請求をしていましたが、ドコモ、auに続いて、ソフトバンクでも一審判決が出ました。
判決内容は、ドコモとほぼ同じで、月平均の利益と解約の平均残月数を掛け合わせた金額が損害として認められ、それは中途解約金を上回るとして、中途解約金条項は有効としました。

詳しい判決文は、「京都消費者契約ネットワーク」にいずれ掲載されると思いますが、新聞報道では地元の京都新聞が一番詳しく説明されていますので、紹介します。

ソフトバンクは「有効」 携帯違約金条項で京都地裁判決

京都新聞 【 2012年11月20日 23時00分 】
http://www.kyoto-np.co.jp/politics/article/20121120000118

携帯電話の2年契約の割安サービスで中途解約時に違約金約1万円を定めた条項は消費者契約法違反として、NPO法人「京都消費者契約ネットワーク」がソフトバンクモバイルに条項の使用差し止めを求めた訴訟の判決が20日、京都地裁であった。杉江佳治裁判長は「消費者の利益を一方的に害さない」として条項を有効と判断し、請求を棄却した。
違約金条項をめぐる同種訴訟判決は今回が3社目。有効判決はNTTドコモに続き2例目で、KDDI(au)は一部無効の判決が出ている。ドコモとauの2訴訟は控訴審で争っている。
訴訟対象は定期契約サービス「ホワイトプラン」(月額基本料980円)。他サービスより割安だが、中途解約時の違約金9975円を規定している。同社によると、契約数約3千万件の大半が利用しているという。
消費者契約法は、違約金が解約で被る企業の損害額を超えてはならないと定める。杉江裁判長は、ソフトバンクの損害を契約満了までに得られたはずの利益とした。逸失利益は本来、契約期間が延びるにつれて減るが、1カ月分を解約者の平均的な契約残り月数に乗じることで、2年間を通じて同じ約1万3千円の損害額を算定し、これを下回る違約金条項を有効とした。
同ネットは「不当な判断」として控訴する方針。ソフトバンクモバイル広報室は「当社の主張が認められた」としている。
今回の判決でドコモとauを含む通信3社の同種の違約金条項をめぐる一審判断は出そろったが、損害額の計算方法によって3訴訟の判断は異なった。
ドコモ判決が損害としたのは契約中に割り引かれた金額で、平均解約月から2年間一律の損害額約3万円を算定して条項は有効とした。これに対し、一部原告勝訴のau判決は今回より高額な逸失利益を損害の根拠としつつ、2年間一律でなく解約月ごとに右肩下がりの損害額を算定、最後の2カ月に解約した場合に限り違約金が超過して違法とした。
※3社の判決内容の分かりやすい比較表がありますが元の記事を参照してください。

これまでに、ドコモとauの判決について解説しましたが、おおむね予想通りの結果だと思います。
すべて、控訴していますが、個人的には、なぜ、そこまでこだわっているのか理解に苦しみます。
中途解約金以外の差し止め請求については、訴えの内容が十分に理解でき、適格消費者団体としての責務は果たせていると思うのですが、なんでもかんでも訴えるとよいというものではないと思います。

過去にも書いてきましたが、あえて中途解約金を問題にするなら、もっと違うところにポイントを置く必要があるのではないかと思います。
私が考えるのは、最初の2年は良しとして、更新時の2年の縛りははきついのではないかと思います。それは、初期投資の回収は最初の更新時までに可能であるのではないか、学割が3年単位である、携帯電話本体の故障リスクを考えると2年以降のリスクは高い、などを考慮すると、1年単位にすべきではないか、もしくは解約金をや低く設定すべきではないかと考えています。訴訟では、通信料についてのみ考慮していますが、本体料金なども考慮すべきではと思います。

これまでの裁判で原告が訴えている中に、「基本料金が半額のプランはほとんどのユーザーが契約しており、実質的に半額の料金が基本料といえる」という内容がありますが、判決にもあるとおり、契約者には、「いつでも解約できるプラン」と「2年縛りで解約金ありで半額プラン」という選択肢があるわけで、実際に前者を選んでいる契約者もいるという事実があります(たとえば法人契約であれば財務会計上の問題が生じるので前者を選ぶこともあります)。

似て非なるものかもしれませんが、相談員なら十分ご存知ですが、新聞契約で、「毎月契約定価払い」と「2年契約景品つき定価払い」があり、中途解約でよくトラブルになっています。こちらの方は、携帯電話ほどの契約プランの偏りはないと思います。
また、ネットの光回線やケーブルテレビでも2年契約を条件に月額料金を割り引くプランが出てきています。
これらについても、基本的には同じ問題だと思います。

控訴していますが結果は変わらないように思います。
逆に、判決が確定してしまうと、解約金条項がほぼ無条件に有効であるとの判例が適用されるので、私の考える問題点はすでに対象外になるかもしれません。
つまり、今までは消費者に有利な判例(勝訴)ばかりだったのが、不利な?判例(敗訴)ができてしまうということです。

私の考え方が正しいというわけではなく、いろいろな考え方があると思いますが、まわりの声に惑わされず、自分の持っている知識や常識力から、これらの一連の判決を「消費生活相談員」として考えて、自分の違憲を論理的に説明できる力をつけてほしいと思います。

なお、消費者センターにも、以前の判決や、この判決を知って解約金を返還してほしいとの相談が寄せられていると思います。今のところ判決が確定していないのでなんとも言いようがないです。時効を避ける意味でも消費者から事業者に申し出て記録を残しておいてもらうということが、今できることではないかと思います。

(参考)過去の関連記事
携帯電話の違約金条項の使用差し止め訴訟 2010年6月17日(木)
携帯中途解約金訴訟 判決 その1 2012年4月9日(月)
携帯中途解約金訴訟 判決 その2 2012年4月16日(月)
携帯中途解約金訴訟 判決 その3 2012年4月18日(水)
携帯中途解約金訴訟 判決 その4(最終回) 2012年4月20日(金)
au携帯「2年縛り」 違約金、初の「一部無効」 京都地裁判決 2012年7月19日(木)
解約金訴訟の第一審判決:ドコモとKDDIの違い 2012年7月25日(水)

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