携帯中途解約金訴訟 判決 その3

前回の続きです

争点(4)
法10条前段における「民法 、商法その他の法律の公の秩序に関しない規定」の解釈

原告の主張
・法10条は不当条項がなかった場合に比べて消費者利益が害されている場合に広く適用される一般条項であるというべきであり、「民法 、商法その他の法律の公の秩序に関しない規定」は何らかの範囲に制限されるものではない。
被告の主張
・講学上の任意規定のみを指す
裁判での判断
・民法等の「法律の公の秩序に関しない規定」は明文の規定のほか、一般的な法理をも含むと解すべきであるから原告の主張には理由があり、被告の主張には理由がない。
※いまいち分からないのですが、今回の解約規定は任意規定であるということでしょう。

争点(5)
本件解約金条項の法10条前段該当性

・FOMAサービス契約は民法が典型として規定する委任契約または準委任契約にそのまま該当するということはいえず、一種の無名契約と認めるのが相当
・解約条項は「公の秩序に関しない規定」に比較して消費者の権利を制限し、消費者の義務を加重しているというべきである。
※この任意規定は消費者に権利の制限や義務を加重しているということでしょうね。そして、それが妥当かどうかを次に判断していくことになるのでしょうね。

争点(6)
本件当初解約金条項の法10条後段該当性

・解約金条項が消費者の解約権を制限していることが消費者にとって一方的に不利益なものであるということはできない。
・カタログには解約金に関する記載が存在し、その性質を明確に説明しており、被告と消費者との間にはこのような説明を踏まえた上で、解約金条項に基づく明確な合意が成立しているというべき。
・消費者は解約金条項に基づき解約権の制限を受けるものの、そのことに見合った対価を受けており、制限の内容についても何ら不合理なものではなく、情報の質及び量並びに交渉力の格差が存在するということはできないといえるから、法10条後段には該当しないと解するのが相当である。
※解約金条項はお互いに明確な合意があるので、不当とはいえないということでしょうね。

争点(7)
本件更新後解約金条項の法10条後段妥当性

・消費者は契約が更新された後に解約金の支払い義務を負うとされることによって解約権の制限を受けるものの、そのことに見合った対価を受けており、制限の内容についても何ら不合理なものではないから、更新後の解約金条項が、金額を問わず一般的に法10条後段に該当するとは言えない。
※今までの流れから更新後も不当ではないということでしょう。

以上のとおり解約金条項は法9条1号にも法10条にも該当しないものであって有効である。
原告の不当利得返還請求は前提を欠くので判断する必要はない。
よって、原告らの請求はいずれも理由がないことから、これを棄却する。

※長い理論構成ですね。裁判は大変だなあと思います。それだけに時間がかかるのでしょうね。この判決について評論することは楽しいかもしれません。まさしく、学者の魂です。息抜きぐらいに考えておいてくださいね。
相談員としては、解約金が正当なものかどうかという判断はせず、今現在の個別のトラブルを解決するにはどうすればいいのかということに全力を注ぎ、材料をそろえてあげることが必要だと思います。
もちろん、不当条項に対する戦いはすべきでしょうが、ある程度の役割分担を前提として、何でもかんでも相談員や消費者センターができる・やるべきと考えると、しんどくなってしまいます。

消費者契約法

第二節 消費者契約の条項の無効

(事業者の損害賠償の責任を免除する条項の無効)
第八条  次に掲げる消費者契約の条項は、無効とする。
一  事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する条項
二  事業者の債務不履行(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものに限る。)により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除する条項
三  消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為により消費者に生じた損害を賠償する民法 の規定による責任の全部を免除する条項
四  消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものに限る。)により消費者に生じた損害を賠償する民法 の規定による責任の一部を免除する条項
五  消費者契約が有償契約である場合において、当該消費者契約の目的物に隠れた瑕疵があるとき(当該消費者契約が請負契約である場合には、当該消費者契約の仕事の目的物に瑕疵があるとき。次項において同じ。)に、当該瑕疵により消費者に生じた損害を賠償する事業者の責任の全部を免除する条項
2  前項第五号に掲げる条項については、次に掲げる場合に該当するときは、同項の規定は、適用しない。
一  当該消費者契約において、当該消費者契約の目的物に隠れた瑕疵があるときに、当該事業者が瑕疵のない物をもってこれに代える責任又は当該瑕疵を修補する責任を負うこととされている場合
二  当該消費者と当該事業者の委託を受けた他の事業者との間の契約又は当該事業者と他の事業者との間の当該消費者のためにする契約で、当該消費者契約の締結に先立って又はこれと同時に締結されたものにおいて、当該消費者契約の目的物に隠れた瑕疵があるときに、当該他の事業者が、当該瑕疵により当該消費者に生じた損害を賠償する責任の全部若しくは一部を負い、瑕疵のない物をもってこれに代える責任を負い、又は当該瑕疵を修補する責任を負うこととされている場合

(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効)
第九条  次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。
一  当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの 当該超える部分
二  当該消費者契約に基づき支払うべき金銭の全部又は一部を消費者が支払期日(支払回数が二以上である場合には、それぞれの支払期日。以下この号において同じ。)までに支払わない場合における損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、支払期日の翌日からその支払をする日までの期間について、その日数に応じ、当該支払期日に支払うべき額から当該支払期日に支払うべき額のうち既に支払われた額を控除した額に年十四・六パーセントの割合を乗じて計算した額を超えるもの 当該超える部分

(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)
第十条  民法 、商法 (明治三十二年法律第四十八号)その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項 に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。