電話帳によるアポイントの法的問題点

業界紙で「日本流通産業新聞」というのが週に1回発行されています。
業界向けに特商法などの解説や問題点、法律Q&Aなどが掲載されています。
特に特商法のエキスパート弁護士の法律Q&Aは事業者向けに解説されており、知らなかったことの発見にもつながり行政サイドからも勉強になるのでいつも読んでいます。

日本流通産業新聞社 日流ウェブ
http://www.bci.co.jp/
日本流通産業新聞バックナンバー
http://www.bci.co.jp/ryutsu/latest_edition/back_number_edition/index.html
日本流通産業新聞 2012年5月31日号

5/31号「電話アポイントは法的に問題はないのか?」

質問
・電話帳を利用して全ての客に電話アポイントを取る形で営業(訪問販売)している
・この方法に法的な問題点はないのか
・たとえば同窓会名簿を関係者からもらって電話をかけることに問題はないのか
回答
・特商法上は、電話帳の利用も名簿の利用も特に問題はない。もちろん、事前に三大告知義務(社名、商品の種類、勧誘目的)を果たすことが前提となる。
・質問内容は、「個人情報保護法上問題がないか」というのがメーンのポイント
・電話帳を訪販に利用することは可能だが、その場合、個人情報の利用目的を「本人に告知する」もしくは「公表する」必要がある
・利用目的を一人一人告知することは非現実的なので、自社のHPに利用目的を公表することで要件を満たすことになる。これをクリアすれば電話帳の利用は問題ないことになる。
・同窓会名簿も不正な手段で取得したのでなければ、利用目的をHPで公表すれば大丈夫である。
→最後に、「個人情報保護法は「利用目的を公表すれば盗んだなどの情報でない限り利用して問題はない」という抜け道によって、実は全く骨抜きになっているのです」と締めくくられています。

「利用目的をHPで公表すれば問題ない」。あまり意識していませんでしたが、ちょっと調べてみました。

個人情報の保護に関する法律・・・http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H15/H15HO057.html

(適正な取得)
第十七条  個人情報取扱事業者は、偽りその他不正の手段により個人情報を取得してはならない。

(取得に際しての利用目的の通知等)
第十八条  個人情報取扱事業者は、個人情報を取得した場合は、あらかじめその利用目的を公表している場合を除き、速やかに、その利用目的を、本人に通知し、又は公表しなければならない。

消費者庁HP
ホーム > 消費者制度課
http://www.caa.go.jp/planning/index.html#m06
個人情報の保護
http://www.caa.go.jp/seikatsu/kojin/index.html
消費者・事業者の方へ
個人情報の保護に関するガイドラインについて
http://www.caa.go.jp/seikatsu/kojin/gaidorainkentou.html

個人情報の保護に関する法律についての経済産業分野を対象とするガイドライン

(平成21年10月9日厚生労働省・経済産業省告示第2号)
http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/privacy/kaisei-guideline.pdf
10ページ

2-1-8.「公表」

法第18条第1項
個人情報取扱事業者は、個人情報を取得した場合は、あらかじめその利用目的を公表している場合を除き、速やかに、その利用目的を、本人に通知し、又は公表しなければならない。
その他、法第18条第3項・第4項第1号~第3号等に記述がある。

「公表」とは、広く一般に自己の意思を知らせること(国民一般その他不特定多数の人々が知ることができるように発表すること)をいう。ただし、公表に当たっては、事業の性質及び個人情報の取扱状況に応じ、合理的かつ適切な方法によらなければならない。
【公表に該当する事例】
事例1)自社のウェブ画面中のトップページから1回程度の操作で到達できる場所への掲載、自社の店舗・事務所内におけるポスター等の掲示、パンフレット等の備置き・配布等
事例2)店舗販売においては、店舗の見やすい場所への掲示によること。
事例3)通信販売においては、通信販売用のパンフレット等への記載によること。

ということです。

HPを開設するときに「プライバシーポリシー」を必ず公表するようにしなさいといわれているのは、カタカナで意味が分かりにくいのですが、個人情報保護法に基づく収集や利用等の考え方を公表するものなのですね。
ちなみに消費者庁のHPにも最下部からプライバシーポリシーのページを見ることができます。
消費者庁HP
ホーム > 情報提供について > 消費者庁ホームページにおけるプライバシーポリシー
http://www.caa.go.jp/info/homepage/index_2.html

私にも割と勧誘電話がかかってきて、意地になって事業者を説教したりしていますが、無能なテレアポ部隊を説教しても効果はなく、むなしくなるばかりですね。
①電話をかけてきたのは何の名簿をもとにしたのか?
②その名簿は不正な手段で取得していないかどうか?
③入手した個人情報をどのような方法で公表しているのか?
を意地悪質問したらいいのでしょうね。
同窓会名簿などだったら、不正取得・公表を突き詰めていく。
ただし、何らかの会員登録やプレゼントの応募をしたときに個人情報の利用に同意している、という結果になることが多いのかもしれません。
自分自身への勧誘電話や訪問販売に関して過敏になってしまうのは職業病ですね。

消費者情報 2012年6月号 (関西消費者協会)

①特集「美容医療サービスのトラブル」
(1)インタビュー「美容医療の現実とトラブル」
→インターネット上の広告が問題になっており、規制が必要であるが、医療機関の広告については積極的には進んでいない
(2)急がれる「自由標榜制」の改正と美容外科医を選ぶポイント
→「自由標榜制」が法改正されない限り美容医療のトラブルはなくならない。美容医療は医師選びがすべて、勝訴しても傷ついた身体と心は戻らない
(3)消費者が安全に、納得して美容医療サービスを受けるために国に求められる対応策
 エステ・美容医療サービスに関する消費者問題についての建議から
→健康被害情報提供にかかわる問題点と求められる対応、表示(広告)にかかわる問題点と求められる対応、インフォームド・コンセントにかかわる問題点と求められる対応
(4)美容医療サービスにおける関連法規
→広告について「医療法6条の5による規制」「医療広告ガイドライン」「景品表示法4条による規制の適用」
→契約内容について「高額のキャンセル料」「継続的美容医療サービスの中途解約」「高額の料金請求」
※関連する規制法と契約内容の問題点についての解説です。しっかり理解しておきましょう。
(5)美容医療広告の現状と問題点を探る
→医療機関(美容医療)のホームページにおける情報提供のあり方について、法規制の網をかける必要がある
※「トッピング治療にご用心!」「男性のみなさん、気をつけて!」の解説は是非読んで理解してください。
(6)「美容医療・契約トラブル110番」にみた被害状況と対策
→「トラブルに見る問題点7つ」「トラブルを回避するためのポイント4点」を詳しく解説
(7)相談スキルアップ! 美容医療サービスに関する聞き取りとあっせん
→「一般のサービス取引」と美容医療の違い、聞き取りと助言のポイント、あっせんの姿勢

※美容医療に関する相談は昔から多いですね。エステのキャッチセールスを筆頭に、脱毛、二重まぶたた、包茎手術など、特に若者が被害にあうことが多いです。エステは確かに効果がありますが、そこにかける費用との価値観の違いですね。それと、人の弱みに巧みにつけ込むやり方。うっとおしい繁華街でのキャッチ。脱毛は複数回契約の途中で業者が倒産。美容外科手術での事故。最近はヒアルロン酸の注射など新しい美容医療も出現しています。女性の美への願望、男性シンボルの誇示は永遠の課題で、なくなることはないでしょうね。相談員として、法律知識や医療行為との境界線、契約の解除や取消・中途解約、倒産時の被害弁護団への誘導、心理的ケア、保護者へのつなぎ、恥を忍んでやっとの思いで消費者センターに相談にきた若者への対応など、やるべきことが多岐にわたっていますので、きっちり理解し整理しておく必要があります。

②判例に学ぶ
夫の電話機リース支払債務について妻の保証否認の主張を認めた事例
東京高裁判決(平成24年1月19日判決)
・勝手に保証人にされていても書面で印鑑等の要件が合致されれば保証人とされる。このような保証人被害が問題。
・平成16年の民法改正により書面要件が規定され、保証契約の認定には慎重な姿勢が求められた。
・判決では単なる書面要件を満たしているだけでなく、保証人が本人であったということが明確であることが必要とされるとした。
※概略をまとめるのが難しかったので、判決文を参照してください。ちなみに判決は1月19日です。

(参考)保証債務請求控訴事件

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20120127142834.pdf
第3 当裁判所の判断
1 当裁判所は,被控訴人の本件請求は理由がないものと判断する。その理由は,次のとおりである。
(1) 保証契約は,書面でしなければその効力を生じないとされているところ(民法446条2項),同項の趣旨は,保証契約が無償で情義に基づいて行われることが多いことや,保証人において自己の責任を十分に認識していない場合が少なくないことなどから,保証を慎重にさせるにある。同項のこの趣旨及び文言によれば,同項は,保証契約を成立させる意思表示のうち保証人になろうとする者がする保証契約申込み又は承諾の意思表示を慎重かつ確実にさせることを主眼とするものということができるから,保証人となろうとする者が債権者に対する保証契約申込み又は承諾の意思表示を書面でしなければその効力を生じないとするものであり,保証人となろうとする者が保証契約書の作成に主体的に関与した場合その他その者が保証債務の内容を了知した上で債権者に対して書面で明確に保証意思を
表示した場合に限り,その効力を生ずることとするものである。したがって,保証人となろうとする者がする保証契約の申込み又は承諾の意思表示は,口頭で行ってもその効力を生じず,保証債務の内容が明確に記載された保証契約書又はその申込み若しくは承諾の意思表示が記載された書面に4その者が署名し若しくは記名して押印し,又はその内容を了知した上で他の者に指示ないし依頼して署名ないし記名押印の代行をさせることにより,書面を作成した場合,その他保証人となろうとする者が保証債務の内容を了知した上で債権者に対して書面で上記と同視し得る程度に明確に保証意思を表示したと認められる場合に限り,その効力を生ずるものと解するのが相当である。

③現場からの情報 【相談】 タレント養成講座の解約トラブル
・求人サイトでエキストラ募集を見て登録後説明会参加。
・事務所のタレントオーディションに誘われ合格し、専属タレント契約と養成講座を契約
・レッスン2回を受け、固定バイトも見つからずローンが支払えない。
→養成講座の契約書に8日間のクーリングオフと中途解約清算方法(5万+残列すの20%)が記載されていたが、既払い金返還と業務提供誘引販売取引の書面不交付を指摘した。事業者は業務提供誘引販売取引を認めなかったが、契約時に相談者が固定収入のないことを担当者は知っており、現在もその状況が続いてるのなら既払い金放棄で解約すると回答。
※タレント養成講座は、「タレント契約」と「養成講座」がセットになっています。「事実として仕事は存在し活動している人もいること」と「養成講座でスキルをみがくこと」はうまくいけばタレント活動につながるのですが、すべての人がうまくはいかないという厳しい世界です。否定も肯定もしにくいのがタレント養成講座の実際だと思います。消費者が冷静で正しい判断ができるようなってほしいですね。

④ネット漂流 狙われた子どもたち Vol.2 「誰かと会話がしたい」
出会い系サイトの特徴を的確に解説しています。ポイント詐欺系・出会える系・出会わせる系の3種類。
私も何度か書いたことがありますが、「出会い系サイト=悪」というのは思い込みです。出会い系サイトに本来の目的から外れた悪質詐欺が発生していて、普通に正しく?利用しているひとのほうが多いかもしれません。実際に私の友人女性も出会い系で知り合い結婚に至りました。
篠原先生の解説は、客観的にものごとを判断していると思います。
このレベルになるには、ある程度のダークサイドの知識が必要ですね。

リンクはこちらです
関西消費者協会 http://kanshokyo.jp/hp/
消費者情報 2012年6月号

ジャドマニューズ 2012年5月号

「ジャドマニューズ」の最新号・バックナンバーは、HPで閲覧できます。
http://www.jadma.org/jadma_news/index.html

今月の「通販110番」は2011年度のまとめでしたので省略します。
そのほかに面白い記事がありましたので紹介します。

①通販商品 人気の秘密

「H2Oスチームモップ」テレビショッピング研究所

高温スチームで汚れを落とす「H2Oスチームモップ」。2009年10月には全世界で販売台数250万台を突破した大ヒット商品だが、国内正規代理店であるテレビショッピング研究所の田中英樹代表取締役社長は、国内でのヒットはまったくの想定外だったという。

「困ったのは、床のワックスがとれたとか塗料がはげたという声が寄せられた時です。取扱説明書にもありませんでしたから。そこで私たちのコールセンターは自分たちでホームセンターに行って、ありとあらゆる床材を買ってきて自分たちで試すことにしたのです。このメーカーのワックスは大丈夫とかすべて実験をして、お客様の疑問に答えました。コールセンターが非常に頑張ってくれました」(田中社長)

「まるで雨後のタケノコでしたね。次から次へとニセモノが出てそれを確認するだけでも膨大な作業量でした。こちらで購入したニセモノ品は25台でしたが、警告書だけでおよそ40社に出しましたし、実際はもっとあったと思います。”H2Oスチームモップ“という商標をそのままつけている品も多くありました」(田中社長)

※おそらく相談員であればスチームモップの相談を受けた経験があると思いますし、あっせんに苦労したのではないでしょうか。
問題点は、まさしくインタビューにもある「床のワックスがとれたとか塗料がはげた」でしょう。
これ以上突っ込みませんが、企業側からのスチームモップの見方はこうなんだという感じで受け止められたら言いと思います。
事業者側目線ですね。消費者目線もあれば、相談員目線もある。それらが交わらないことに解決困難事例が生まれてきます。

②連載 メディアワクオン 情報リテラシーの備え

第5回「絆」の先にあるもの

これまではありえなかったコミュニケーションが可能となるSNS(ソーシャルネットワークサービス)。
活用されている会員も多いだろうが、便利なだけあってリスクもある。
つながるのはなにも「友人」ばかりではない。
伸びたネットワークの先にはとんでもない「悪意」があるかもしれないのだ。

企業広報が震え上がる「電凸」とは何か?
電話を介しておこなったやりとりをネットに晒されてしまうケースが増えている。
このような電話をネットでは「電凸」(でんとつ)と呼ぶ。「電話突撃取材」の略で、一般人を装って、関係部署に直接電話をかけてホンネを引き出すという手法である。ただ、これは別に今にはじまったものではなく、取材を名乗らない「邪道」ではあるが、悪徳業者や問題企業の実態を探るという場合は、週刊誌や情報誌などでは時折つかわれていた。そんな「電凸」を一般人がガンガンつかいはじめたというわけだ。彼らが突撃するのはなにも企業の電話だけではない。みなさんもやっているFacebookもその標的となりえる。

最近日本のマスコミがやたらと繰り返す「絆」とは諸説あるが、犬や馬をつなぎ止めておく綱が語源だという。つまり、家畜をつなぐヒモのことだ。要は、社会の一員として誰かにつながるということは、必ず誰かに監視され、何かを吸い上げられるというわけだ。
Facebookだけではなくネットの普及で、我々はひとりでいくつものヒモをくくりつけられている。ヒモの先につながっているのは「悪意」であることも多い。それを各自が肝に銘じておくことこそが、本当の「絆社会」ではないか。

※この記事は消費者センターにとって他人事ではありません。一般人が企業の揚げ足取りをしてネットに公開するというのは、「東芝事件」からはじまり、「言った言わない」対策に企業側も会話を録音するなどしていますが、悪意を持ってこられたら、やっぱり揚げ足を取られてしまいます。これと同じ状況が消費者センターにも起こっているということです。以前は本当に困った消費者が相談に来るというのが一般的でしたが、最近は、企業から何らかの賠償や謝罪文をとるために消費者センターを利用したり、自分の思想信条を一方的に押し付けて、望みがかなわないなら税金泥棒と吐き捨て、あちらこちらに言いふらす消費者が増えています。しかし、行政や相談員は、このような、「電凸」的な行動には慣れていませんし、対策も十分ではありません。会話の録音をとっても個人情報や公文書管理という壁があります。したがって、今は、各自が注意していくという対応をとるしか自分自身を守る方法は残されていません。

社団法人 日本通信販売協会 HP http://www.jadma.org/
会報誌(JADMA NEWS) http://www.jadma.org/jadma_news/index.html