将来は訪問販売にも不招請勧誘規制を導入?

業界紙で「日本流通産業新聞」というのが週に1回発行されています。
業界向けに特商法などの解説や問題点、法律Q&Aなどが掲載されています。

日本流通産業新聞社 日流ウェブ
http://www.bci.co.jp/
日本流通産業新聞バックナンバー
http://www.bci.co.jp/ryutsu/latest_edition/back_number_edition/index.html
日本流通産業新聞 2012年8月30日号

このたびの特商法の改正により、訪問購入が特商法の第7の商取引類型として規制が課せられることになりましたが、その中の「不招請勧誘規制」の導入について、8月30日号のコラムにに興味深いことが書かれていましたので紹介します。
コラムというのは記事ではなく、朝日新聞でいうと天声人語のようなものです。
「日本流通産業新聞」では「流通春秋」というタイトルです。
全文読むのがいいのですが、長いので概要を紹介します。

・今回の特商法の改正で訪問購入に「不招請勧誘規制」が導入されたが、ある官僚に訪問販売に及ぼす影響を、あくまで一般論として質問してみた。
・「訪問購入に導入された不招請勧誘規制は、訪問販売にも導入される可能性があるか」
・答えは「ある」と明快だった。
・その理由は訪問購入を特商法で規制した理屈が、訪問購入も訪問販売も似たような行為だからというもの。
・ならば、訪問購入で導入された不招請勧誘規制が、似たような業態である訪問販売にも導入されると考えるほうが官僚の論理としては自然ということだった。
・特商法は施行5年後に見直しを行うことになっており、その際には議論に上がることは必至ではないか
・今回の国会では政局が混迷した結果、「営業の自由の侵害」について十分な議論を経ずに国会をあっさり素通りした。
・訪問販売業者にとって、不招請勧誘規制が導入されれば業界は大混乱になり、「死刑宣告」に近い。
・訪問販売業界では、次回の特商法改正の議論の前に「訪問購入には必要だった不招請勧誘規制が、訪問販売には必要がない理由」について十分な理論武装をしておくことが求められる。

日本の商習慣の歴史から、訪問販売がなくなるとは思ってもいませんでしたが、このような考え方が国にあるということはとても興味深いですね。
業界と政治家の癒着も取りざたされてきたし、訪問販売による高齢者の被害が一向に減らない現状から考えると、ありうる話かもしれないなあと思いながら読んでいました。
日本流通産業新聞は訪問販売業者を含めた業界のための新聞です。当然、反対の方針でしょうが今後大変でしょうね。

行政としても、この動きを後押ししていくこともできます。例えば、訪問販売の被害が急増するたびに、不招請勧誘規制を導入すべきだと国や消費者やマスコミに訴えることも可能です
。また、消費者安全法における財産分野での消費者事故の通報時にセンターとしての要望に不招請勧誘規制を導入すべきと追記しておくなど。
相談員としても、このような動きや可能性があることは頭に入れておいた方がいいと思います。

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REPORT JARO 2012年8月号

「REPORT JARO」は公益社団法人 日本広告審査機構が毎月発行している企業向けの情報誌です。
日本広告審査機構
http://www.jaro.or.jp/
企業向け情報>刊行物「REPORT JARO」
http://www.jaro.or.jp/kigyou/report_jaro/index.html

8月号から気になる記事を紹介したいと思います。
詳細は情報誌をご覧ください

新任者のための広告法務基礎講座 第1部
「広告で問題が発生したら、問題レベルを見極める」
①打消し表示は大きさ・色にも配慮
・景品表示法は不当な表示と過大な景品の提供を制限している。
・「著しく」優良の「著しく」とは表示の誇張の程度が社会一般に許容される程度を超えて選択に影響を与える場合をいう。
・客観的な裏づけや合理的な根拠なしに「世界初」「日本一」「無料」などと強調する表示を行うと不当表示になる。
・打ち消し表示で「本体無料」などと強調した表示を行う一方、適用条件があるなど訴求効果を損なう内容は、積極的に表示したくない心情が働き、※印などで離れた場所に小さく入れたりする。見やすく、読みやすく、分かりやすいものとなるよう文字の大きさや配色、記載場所に十分配慮して明瞭に行われることが望まれる。
・「フリーミアム」というビジネスモデルは、例えば、オンラインゲームの「完全無料でプレイ可能」との表示で、実際にはゲーム上でアイテムを購入しないと一定レベルからは進めない場合などが問題となる。
②業者による口コミは広告に該当
・ステルスマーケティング
・消費者庁は「業者による口コミの投稿は広告・表示に該当する」とし、問題となる事例を挙げた。
・比較広告は1987年に公正取引委員会がガイドラインを出している。
・適正な広告を行うためには、「比較広告で主張する内容が客観的に実証されていること」「実証されている数値や事実を正確かつ適正に引用すること」「比較の方法が公正であること」の3要素を満たす必要がある。
③景品は業界ルールがあるケースも
・景品規制には、商品の購入や来店を必要としない「オープン懸賞」、取引に付随して景品を提供する「クローズド懸賞(一般懸賞と共同懸賞)」、「総付け懸賞」がある。
・商品の購入を条件とせず、入店した人に抽選で景品を提供する場合は、原則として100円の取引があったものとみなす。
・コンプガチャは景品表示法に違反する場合がある。
・化粧品売り場のメークアップサービス、スポーツクラブの1日無料体験、社名入りカレンダーなど、見本や宣伝用の物品など規制を受けないケースもある。同一商品をもう1つプレゼントするケースやキャッシュバックは、値引きに当たるため景品規制を受けないが、抽選でキャッシュバックが当たる場合は景品に当たるので注意が必要。
④商標は登録されて権利化
・商標権は特許庁に登録しなければ権利化せず、登録の際は1類~45類の区分から商品やサービスを指定する。有効期限は10年で、更新できる。商標権を取得するメリットは、その商標をその類似群において独占的に使用できることで、第3者の使用を差し止めることができる。
・特定商取引法では広告の必要記載事項などが定められている。個人情報を取り扱うのでプライバシーポリシーに従った個人情報の保護が必要になる。
⑤クレームに耳を傾けることも重要
・広告において発生する問題のレベル分け
・法的根拠に欠けているもの、事の本質から遠いもの、いわゆる「いちゃもん」
・「道徳・倫理・世論」など
・業界の「自主基準・業界基準」
・「法令・判例」「裁判」

※広告についての新任者向けの講座の報告なので、広告の問題点が分かりやすくまとめられています。本誌に詳しく説明されているので、職場にある方はぜひ一読ください。

電話帳によるアポイントの法的問題点

業界紙で「日本流通産業新聞」というのが週に1回発行されています。
業界向けに特商法などの解説や問題点、法律Q&Aなどが掲載されています。
特に特商法のエキスパート弁護士の法律Q&Aは事業者向けに解説されており、知らなかったことの発見にもつながり行政サイドからも勉強になるのでいつも読んでいます。

日本流通産業新聞社 日流ウェブ
http://www.bci.co.jp/
日本流通産業新聞バックナンバー
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日本流通産業新聞 2012年5月31日号

5/31号「電話アポイントは法的に問題はないのか?」

質問
・電話帳を利用して全ての客に電話アポイントを取る形で営業(訪問販売)している
・この方法に法的な問題点はないのか
・たとえば同窓会名簿を関係者からもらって電話をかけることに問題はないのか
回答
・特商法上は、電話帳の利用も名簿の利用も特に問題はない。もちろん、事前に三大告知義務(社名、商品の種類、勧誘目的)を果たすことが前提となる。
・質問内容は、「個人情報保護法上問題がないか」というのがメーンのポイント
・電話帳を訪販に利用することは可能だが、その場合、個人情報の利用目的を「本人に告知する」もしくは「公表する」必要がある
・利用目的を一人一人告知することは非現実的なので、自社のHPに利用目的を公表することで要件を満たすことになる。これをクリアすれば電話帳の利用は問題ないことになる。
・同窓会名簿も不正な手段で取得したのでなければ、利用目的をHPで公表すれば大丈夫である。
→最後に、「個人情報保護法は「利用目的を公表すれば盗んだなどの情報でない限り利用して問題はない」という抜け道によって、実は全く骨抜きになっているのです」と締めくくられています。

「利用目的をHPで公表すれば問題ない」。あまり意識していませんでしたが、ちょっと調べてみました。

個人情報の保護に関する法律・・・http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H15/H15HO057.html

(適正な取得)
第十七条  個人情報取扱事業者は、偽りその他不正の手段により個人情報を取得してはならない。

(取得に際しての利用目的の通知等)
第十八条  個人情報取扱事業者は、個人情報を取得した場合は、あらかじめその利用目的を公表している場合を除き、速やかに、その利用目的を、本人に通知し、又は公表しなければならない。

消費者庁HP
ホーム > 消費者制度課
http://www.caa.go.jp/planning/index.html#m06
個人情報の保護
http://www.caa.go.jp/seikatsu/kojin/index.html
消費者・事業者の方へ
個人情報の保護に関するガイドラインについて
http://www.caa.go.jp/seikatsu/kojin/gaidorainkentou.html

個人情報の保護に関する法律についての経済産業分野を対象とするガイドライン

(平成21年10月9日厚生労働省・経済産業省告示第2号)
http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/privacy/kaisei-guideline.pdf
10ページ

2-1-8.「公表」

法第18条第1項
個人情報取扱事業者は、個人情報を取得した場合は、あらかじめその利用目的を公表している場合を除き、速やかに、その利用目的を、本人に通知し、又は公表しなければならない。
その他、法第18条第3項・第4項第1号~第3号等に記述がある。

「公表」とは、広く一般に自己の意思を知らせること(国民一般その他不特定多数の人々が知ることができるように発表すること)をいう。ただし、公表に当たっては、事業の性質及び個人情報の取扱状況に応じ、合理的かつ適切な方法によらなければならない。
【公表に該当する事例】
事例1)自社のウェブ画面中のトップページから1回程度の操作で到達できる場所への掲載、自社の店舗・事務所内におけるポスター等の掲示、パンフレット等の備置き・配布等
事例2)店舗販売においては、店舗の見やすい場所への掲示によること。
事例3)通信販売においては、通信販売用のパンフレット等への記載によること。

ということです。

HPを開設するときに「プライバシーポリシー」を必ず公表するようにしなさいといわれているのは、カタカナで意味が分かりにくいのですが、個人情報保護法に基づく収集や利用等の考え方を公表するものなのですね。
ちなみに消費者庁のHPにも最下部からプライバシーポリシーのページを見ることができます。
消費者庁HP
ホーム > 情報提供について > 消費者庁ホームページにおけるプライバシーポリシー
http://www.caa.go.jp/info/homepage/index_2.html

私にも割と勧誘電話がかかってきて、意地になって事業者を説教したりしていますが、無能なテレアポ部隊を説教しても効果はなく、むなしくなるばかりですね。
①電話をかけてきたのは何の名簿をもとにしたのか?
②その名簿は不正な手段で取得していないかどうか?
③入手した個人情報をどのような方法で公表しているのか?
を意地悪質問したらいいのでしょうね。
同窓会名簿などだったら、不正取得・公表を突き詰めていく。
ただし、何らかの会員登録やプレゼントの応募をしたときに個人情報の利用に同意している、という結果になることが多いのかもしれません。
自分自身への勧誘電話や訪問販売に関して過敏になってしまうのは職業病ですね。