各組織での2013年施策

この時期になると、様々な広報誌で行政機関や消費者団体の新年のあいさつと共に、2013年の施策方針についての記事が掲載されます。
そこから、いくつかピックアップしました。

消費生活新報(平成25年1月1日号)から一部抜粋

(公社)全国消費生活相談員協会 理事長

今年こそ地方消費者行政充実の実現を
・本年は地方消費者行政の充実・強化を実現する1年だと認識しております。
・しかし、各地の自治体においては財政上の問題等から消費生活相談業務の民間企業への委託が進行し、また消費生活相談員の5年程度の雇止めが進行するなど、各地で消費生活相談の質の充実・維持が懸念される事態も置き始めています。地方消費者行政の中核は消費生活センターですから、当協会は消費生活相談の質の維持・向上を目指して、自治体に強く要請するなどさまざまに活動してまいります。

ニッポン消費者新聞(平成25年1月1日号)から一部抜粋

消費者庁 地方協力課長

地方消費者行政の充実・強化へ
・こうした現状を踏まえ、「基金」は被災4県を除き今年度末をもって終了しますが、平成25年度以降においても、「市町村における基礎的な取り組みの下支え」と「消費者問題解決力の高い地域社会づくり」の2つの柱とした地方消費者行政に積極的に取り組む自治体を引き続き支援するための財源の確保が大きな課題となっていますので、これらの自治体の取組を支援できるよう全力で取り組んでまいります。
・消費生活相談員資格の法的位置付けの明確化について昨年8月に検討会報告書のとりまとめを行いました。自治体等が提供する消費生活相談業務の一層の質の向上と体制の整備を図るため、引き続き、検討を行っています。

国民生活センター 企画調整課長

消費者トラブルを迅速にキャッチ
・研修・資格事業では、相談員・行政職員向けの集合研修を全国各地で実施するとともに、その補完として、遠隔地で講座を受講できる「遠隔研修」や、職場や自宅でも講座が視聴できる「オンデマンド配信」を実施し、相談スキルの向上をサポートしていきます。さらに相談員資格認定試験を適切に実施していきます。

※これらを読んでみても、特に目新しいことはなく、このまま淡々と時が過ぎるのだろうなあと感じます。

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季刊ダイレクトセリング 120号(2012年11月発行)

「公益社団法人 日本訪問販売協会」が「季刊ダイレクトセリング」という広報誌を発行しています。
2012年11月発行の120号は「協会相談事業の四半世紀と未来」が特集されています。
その中から、相談員のスキルに関連する2人の話を紹介します。

この広報誌はWEBから最新号が閲覧できます(バックナンバーは有料です)。
公益社団法人 日本訪問販売協会
http://www.jdsa.or.jp/
季刊ダイレクトセリング
http://www.jdsa.or.jp/www/jigyo/shuppan-02/mokuji-10.html
季刊ダイレクトセリング 120号(2012年11月発行) ※次号が発行されるまでの公開ですので今のうちに
http://www.jdsa.or.jp/www/jigyo/shuppan-02/ds/ds120.pdf

特集
協会相談事業の四半世紀と未来
訪販110番を中心とする本協会の相談事業は、協会が展開する活動の中でも大きな比重を占める事業である。その活動は消費者が訴えるトラブルや不安を解消するとともに、会員各社にそれらの諸情報を伝えることで、ダイレクトセリングの信頼性向上に大きく寄与してきた。四半世紀に及ぶ協会相談事業について各界からの評価や意見をお聞きし、その果たしてきた役割や今後の課題を浮き彫りにする。

「うるさい相談室」が今も懐かしい(日本訪問販売協会元専務理事)

相談員同士の切磋琢磨で高度な専門性が実現された
相談室は私の部屋のすぐ隣にあり、体制もととのい非常ににぎやかでした。問題は、相談の電話の応対が終わった後です。相談員同士で喧喧諤諤やりあうわけです。あの言葉は良かったとか、もっとこういう対応をすべきだったとか。よく言えば、そのような切磋琢磨があってこそ、相談能力がパワーアップされたのでしょう。

※相談電話や来所相談が終わると、「今の相談ね・・・」「大変だったね」などのやり取りがありますが、単にグチをいうだけでなく、この記事にもあるとおり、「今の対応は本当にこれでよかったのか、別の方法がなかったのか」などの検証をすることで本当のスキルアップにつながります。多忙な相談業務で時間がないと思いますが、これこそが活きた教材です。うまく活用できる環境があればいいと思います。

協会との連携を強化して弱い立場の消費者を代弁する力を強めていきたい(消費生活専門相談員)

相談員の対応が「スマート」になってきた
――最近の消費者相談の傾向について教えてください。
(中略)
――この数字について、・・さんはどのようにお考えですか。
消費者相談といえば、以前は、あっせんによる解決がもっと多かったけれども、最近は減っているのが気になります。背景には、相談員の対応力の問題と、問題の複雑化がありそうです。相談員だけで解決できなくて、他機関を紹介するケースや処理不能、不調に終わるケースが増えています。処理不能というのは、たとえば、どこの誰だかわからない事業者が突然訪問してきて契約したり、電話セールスだけで高額なお金を消費者に振り込ませて、それっきりどこかへ逃げてしまうというケースなどです。
――相談員の対応力の問題とは、どのようなことでしょうか。
最近は、相談員が事業者に連絡したり、協会の相談室と連携したりといった、機動的に動いて解決するケースが減っています。いまの相談員は、インターネットで傾向と対策を調べようとする。よく言えばスマートな対応になりました。私が「この件は○○へ電話して聞いてみては……」と助言すると、「そんなことが聞けるのですか」と言われます。特商法関係のトラブルの問い合わせ先としては、訪問販売協会が最も適切であるのに、最近の相談員は、あまり問い合わせをしませんね。自分で頭を使って情報を収集する力が落ちたのか、簡単に情報が得られるようになってその必要がなくなったのかまたは両方かもしれません。
――消費者相談もIT化というか、デジタル化しているのでしょうか。
以前の相談員はもっと情熱的でした。熱心に情報を聴き取り、この消費者のために何とかしてあげなくてはという思いで動いていた。今ほど情報がふんだんでなかったこともあって、相談員が自力で解決に向けて情報をあつめるしかなかったこともあるでしょうが、いまはまずPIO|NET(パイオネット:全国消費生活情報ネットワーク・システム)を検索して過去の事例を調べ、「この事例がこういう処理方法で落ち着いているならば、私の事例も同じようにすればいい」などと考える相談員も少なくないと聞きます。
しかし、相談というのは一見同じように見えても1件1件で違う。勧誘員が違えばセールストークが異なり、消費者が違えば受け取り方が違う。かつて私たちは電話の受話器の上げ下ろしから始まって、先輩からいろいろ厳しく指導されたものです。後から考えるといい時代だったように思います。

消費者の意識の変化で相談員の手に負えない難事例が増えた
――他機関の紹介が増えたというのは、具体的にどういうことですか。
消費者が変わってきたことも原因として挙げられます。弁護士が説得すれば納得するが、同じような内容でも相談員が話すと反発するという事例もあります。最近は若い人に限らず自分の権利を強く主張する事例が目立ち、クレーマー的な対応にも苦慮しています。どう考えても通らない主張を事業者へ伝えてくれと引きさがらない。とても言えるような内容ではありませんと答えると、それなら所長を出せ、弁護士を紹介しろと言われることもあります。
素人判断ですが、精神的に病んでいると思われるケースも増えています。その相談の傾向は同じことをえんえんと繰り返すとか、その日によって主張等に波があるという特徴があります。「言うとおりにしないと、これから殺しに行く」と言われたケースもありました。

ADRなど協会の問題解決能力のPRをもっと積極的にすべきだ
(中略)
――今後の消費者相談のあり方についてのお考えをお聞かせください。
消費者と事業者間の紛争は、さまざまな感情が絡むので、ドロドロしています。一方、最近の相談員はスマートになり、物事の表面しか見ない傾向があります。しかし、割り切れないものを汲み取って収めていくのが相談員の役割でしょう。奥の深い消費者問題への対処力をもっとつけていかなければ、時代の変化の中で消費者センターが取り残されていくのではないかと心配もしています。現に消費者センターに寄せられる相談件数は減少傾向にあります。
協会の相談室を始め司法や弁護士会との機能的役割を踏まえながら、難しい問題にも積極的に取り組み、あらゆる場面で弱い立場の消費者の代弁ができるのは私たちしかいないのだという強い使命感をもって取り組んでいくべきだと考えます。そのためには相談業務に特化した研修や勉強会だけでなく、広い視野とバランスをはぐくむ機会を持ってほしいと思います。

※ときどき相談員に対する憂いを書いた記事を見かけます。氷山の一角だと自覚し、どうすればスキルアップに結びつくのかを考えながら勉強してほしいと思います。ぜひ、原文を読んでください。

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悪質なサイトの書き込みの対処法は?

業界紙で「日本流通産業新聞」というのが週に1回発行されています。
業界向けに特商法などの解説や問題点、法律Q&Aなどが掲載されています。
特に特商法のエキスパート弁護士の法律Q&Aは事業者向けに解説されており、知らなかったことの発見にもつながり行政サイドからも勉強になるのでいつも読んでいます。

前回、訪問販売の不招請勧誘のコラムを紹介しましたが、同じ8月30日号の法律Q&Aも勉強になる内容だったので紹介します。

日本流通産業新聞社 日流ウェブ
http://www.bci.co.jp/
日本流通産業新聞バックナンバー
http://www.bci.co.jp/ryutsu/latest_edition/back_number_edition/index.html
日本流通産業新聞 2012年8月30日号

8/30号「悪質なサイト書き込み。どう対処したらいいのでしょうか?」

質問
・当社は雑貨、食料品などを通販や店舗で販売している
・ヤフーの知恵袋のサイトに、当社に関する質問が載っており、回答は、当社にとって全く思い当たることのない、当社を誹謗中傷する内容だった。
・当社の名前でネット検索をすると、この掲示板の記事が表示され、あたかも当社が悪徳企業のように思われる。
・記事を削除すると同時に、犯人を突き止めたい。

回答
・記事の内容自体が「事実無根」であり「信用を毀損する」内容であれば。記事の削除を要求することは特段問題はない。
・ヤフーの定めるフォームで請求すればよい。すんなり削除されなくても弁護士に依頼すれば削除に応じてもらえるだろう。
・ただし、ヤフーなどのまともなプロバイダー相手の時で、2ちゃんねるでは対応してもらえない。事実上手段がないのが現状。

・犯人を突き止めるには①ヤフーに犯人の契約しているプロバイダーの情報を開示してもらう②プロバイダーに犯人の住所氏名などの情報を開示してもらう、という2段階の手続が必要。
・ヤフーが情報を開示しない場合は裁判で行う必要があり、100万円いじょうはかかるが、だいたいうまくいく。
・②の段階で外国のプロバイダーだったり、大きな会社、ネットカフェだった場合は、犯人にたどりつくのはとても難しい。

→最後に、「経費を使っても犯人にたどり着かず費用倒れというケースが多いので慣れた弁護士に相談してください」と締めくくられています。

企業が消費者に置き換われば、そのまま消費者センターへの相談になりますね。
「2ちゃんねるに個人情報が書かれている、中傷することが書かれている、削除したいが、どうすればいいのか?」
一度は受けたことがある相談ではないでしょうか?
どう回答しましたか?

この弁護士さんの回答は教科書どおりの回答ですね。
サイトに理由をつけて削除要請する
→大手サイトなら通常は可能でしょう
→2ちゃんねるなどは難しいでしょう
→犯人探しは費用がかかるうえ難しいでしょう

誰でもでも分かることですね。
2ちゃんねるで困っている消費者は、2ちゃんねるで削除できないから消費者センターに相談をしているのです。
といっても、正攻法では削除までたどり着くのは難しいですが、2ちゃんねるの削除依頼掲示板に書き込むという方法により削除してもらえる可能性があるので、わらをもつかみたい消費者に教える勇気がある相談員はやってみる価値はあると思います。
その方法は過去にもどこかで解説した覚えがありますが見つかりませんでした。
今度は埋もれないようにするために単独の記事にして紹介したいと思います。

さて、2番目の犯人探しですが、まず見つけるのは至難の業でしょう。本気になればできますが、費用と手間がかかります。
以前、自衛隊の映像が流出した事件がありますが、プロバイダーの接続情報をたどっていき、最終的にネットカフェにたどり着きました。
外国でない限り、可能は可能です。

ただ、一般の消費者にとって犯人探しよりも削除がまず重要ですので、何よりも優先して対応策を考えなければなりません。
犯人探しは実情を説明し、消費者の判断に任せたらいいと思います。
当然、消費者センターの範疇を越えますので、法律相談・弁護士相談にいってもらうことになります。
説得して諦めさせるよりも、実情を情報提供して、消費者本人に判断ししてもらう方が遺恨はないと思います。。

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