相談対応の醍醐味は契約よりも商品

消費者センターへの相談内容は大きく分けて
契約に関すること
商品に関すること
の2つに分けられると思います。

商品の苦情、たとえばクリーニングや電気製品などの相談を受けたときに、
「あー、いやだな。ややこしそう。」
と思ったことはありませんか。

そのとおりですね。
商品の相談というのは確かに難しいと思います。
なぜでしょうか?

契約に関する相談というのは、
解約したいなど、目標が単純です。
基本的に法律に基づいており、それに従っているかどうか、また正しく解釈しているか、などを照らし合わせることになり、答えが決まっていて、流れが一本です
困ることはといえば、「言った」「言わない」ぐらいですね(この「言った」「言わない」の対応も難しいといえば難しいです。)

それに対して、「商品」に関する相談というのは、
欠陥クレームであったり、品質クレームであったり、製品事故であったり、正義を訴えるものであったり、します。
また、消費者の要望も、交換、返品、無償修理、原因究明、製品改良など多様です。
つまり、契約のように流れが一本ではなく、多くの選択肢があるのです。
当然ながら、その選択肢ごとに対応も変わっていきますし、消費者センターとして、単なる交渉か、商品テストが必要か、緊急対応か、などの要素も加味する必要があります。
また、商品に関する最新の知識も持ち合わせていなければなりません。

それだけに、相談員の柔軟な対応能力のスキルが如実にあらわれます。
商品に関する相談に上手く対応できてこそ一人前の相談員です。
契約に関する相談では、どの相談員が対応しても基本的には同じ答えになります。
しかし、商品に関する相談では、相談員により、解決したとしても同じ答えになるとは限りません。

特に、いろいろな対応方法があるからこそ、論理的に考える能力が必要となります。

本講座では、「コミュニケーション能力」と同じぐらいに重要な「論理的な考え方(ロジカルシンキング)」につ いても解説していきたいと思います。
「スキル=技術」はその気になれば訓練により必ず身につけることができます。だから、「技術」というのです。

商品に関するの相談ほど、相談員としての醍醐味を感じるのことができるのではないでしょうか。

(平成22年7月19日 初稿)

ドロップシッピングのサービス提供会社に対する行政処分

最近、いわゆるドロップシッピングのサービス提供会社に対する行政処分が立て続けに公表されました。
詳細は消費者庁のHP(http://www.caa.go.jp/index.html)の報道発表資料に掲載されています。
株式会社IB 平成22年7月9日付 http://www.caa.go.jp/trade/pdf/100709kouhyou.pdf
株式会社ウインド 平成22年4月9日付 http://www.caa.go.jp/trade/pdf/100409kouhyou.pdf
公表資料を一部抜粋します
「いわゆるドロップシッピングのサービスを提供する契約の締結について、相手方に受注メールの確認と入金の確認等簡単な仕事をするだけで確実に高収入が得られるかのように勧誘していました。
認定した違反行為は、不実告知、誇大広告、広告における表示義務違反及び交付書
面の不備記載です。」

昨年来、ドロップシッピングに関する苦情相談が消費者センターで急増しています。
私は、「アフィリエイト」という言葉はある程度認知されると思っていましたが、「ドロップシッピング」がこういう形で世間の目に出てくるとは思いませんでした。
しかしながら、このような被害が出てくるのは十分想定されるもので、定番の悪質商法モデルともいえます。

原点となっているのは10年ほど前でしょうか、
小さな商店などに「ムページを作ってお店を宣伝しませんか?」
という勧誘で、HP制作費・管理費・サーバー管理費用などを高額請求されるもので、初期費用のほかに毎月定額的な費用が発生する、
という商法です。

相談員として知っておくべきことは
①ドロップシッピングとは何か(アフィリエイトとの違い)
②ドロップシッピング自体は全然問題のないビジネスモデルである
③ドロップシッピングの業務提供誘引販売とは何か
④昔からの悪質商法モデルと同じである(商材がドロップシッピングになっただけ)

これらの①~④の知識が相互に理解できれば、相談対応のポイントはシンプルになります。

今後、ドロップシッピングについては、スキルアップ講座で詳しく解説したいと思います。

(平成22年7月16日 初稿)

企業不祥事と奇跡の信頼回復

梁瀬和男
2010年1月20日発行
同友館
1800円
ISBN978-4-496-04623-0

著者は家電メーカーの日立の出身で、大学教授などを経て、広告関係の審査にかかわっている。
この本では、企業不祥事が起きたときの原因やその後の対応についてメーカーに直接取材し、リアルに解説されている。
不祥事を起こした企業として取り上げラテいる企業は誰もが知っている大手メーカー8社。
それぞれを時系列的に解説されているので、不祥事が起こる原因など非常に勉強になります。

①エステー化学・・・冷蔵庫用の脱臭剤の使用期間について「優良誤認」表示
②ソフトバンクモバイル・・・「通話料0円」の新聞広告・テレビCM
③新生銀行・・・定期預金のリスクをチラシの裏に小さく表示
④日立製作所・・・環境によい商品の偽装表示
⑤三菱自動車・・・リコール隠し
⑥松下電器産業・・・石油温風暖房機の一酸化炭素中毒
⑦雪印乳業・・・低脂肪乳の食中毒
⑧不二家・・・期限切れの原料使用

人のうわさも・・・といいますが、覚えているでしょうか。
日本人はすぐに忘れてしまいますが、当時は大きな衝撃だったと思います。
消費者としては、しっかり心にとどめておく必要があります。
また、相談員としては大手メーカーとはいえ、腐った構図がどこにでもあるということを心の片隅に置きながらメーカーと応対してください。

一方、不祥事を解説するのとは別に、表示について分かりやすく解説されていますので参考になります。

特に印象に残ったポイント
①「お客様」と「消費者」とは違うというフレーズが何回も出てきます。企業にとって「お客様」とは自社製品などを購入利用してくれる人であり、「消費者」は自社商品を使わない人も含む事業者以外の人である。
②不当表示とは何か、について、景品表示法や食品衛生法など関連する8つの法律を一覧表にして解説している。
③不祥事はなぜ起こるか、4つの原因があり、何をすべきか解説している
※この部分の考え方は、相談業務にも十分当てはまるので是非参加にしてください。
(1)法的に問題はない → 社会通年、社会の常識で判断
(2)今まで問題なかったから、今回も大丈夫 → 「昨日」の常識は「今日」の「非常識」
(3)赤信号、皆で渡れば怖くない → 自ら考え、自ら判断し、自らの責任で行動する
(4)売上・利益至上主義 → 顧客満足度評価至上主義(営業ノルマ撤廃)

おすすめ度・・・表示に関する考え方が理論的に、体系的に、事例を通して、説明されているので、「勉強用に手元に置いてもOK」です。

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