はじめに

全国の消費者センターで活躍されている相談員のみなさま、これから相談員を目指し勉強されているみなさま、ようこそ。

消費者センターに寄せられる相談は、日々年々変化しています。
数年前には思いもしなかった技術革新、悪質手口、商品事故など消費者問題はより複雑なものとなっています。
相談員自身の知識をもっと深めなければついていけません。
また、消費者の意識の変化もあり、求められる要望もさまざまとなっています。

平成21年9月の消費者庁の誕生により、消費者センターおよび相談員に期待が寄せられています。
さらに、地方消費者行政活性化基金により、消費者センターの機能強化のために予算がついています。
その予算を使って、相談員の資質向上をはかるべく、さまざまな研修が行われています。
しかし、そのほとんどが大学の先生や専門家などによる知識を深めるための研修となっています。
それらの研修を受ければ知識や問題解決手法は身につきますが、それで相談員としての真の資質が向上するのでしょうか。

私が一番重要と考えるのは、コミュニケーション能力です。

いくら知識や解決方法を熟知していても、相談者の話を聴いたり、事業者に説明したり、説得したり、という人間を相手にする基本的な能力がなければ知識を発揮できないばかりか、コミュニケーション不足により相談対応が不調に終わり、結果として相談員としての役割を果たせなくなってしまいます。
以前であれば、そこまでのコミュニケーション能力が求められずに解決できてしまう時代だったかもしれません。
現実に、ベテラン相談員を含めて、知識はあってもコミュニケーション能力に問題のある相談員が多くなっているのではないでしょうか。
蛇足ではありますが、大手メーカーのお客様担当部門を含めて、事業者のコミュニケーション能力も不足しているのではないかと感じています。

ではなぜ、コミュニケーション能力を向上させるための研修が少ないのでしょうか。
私が思うには、そのような研修ができる人材が少ないということが考えられます。
さらに、地味で根気の必要な研修となり、相談員の社会常識や人格を否定しなければならない場面もあり、消費者センターの相談員に特化したカリキュラムを組むことは容易ではないと思うのです。
そして一番の理由が、知識を深める研修のほうが講師を見つけやすくパターン化しており開催しやすく、相談員にも受け入れやすいからだと思います。
そのような知識を深める研修をたくさん受けた相談員は、充実感を感じ、自らも資質が向上したと錯覚に陥る危険性があります。

この「消費生活相談員スキルアップ講座」では、コミュニケーション能力のスキルアップを私流のやり方で目指したいと思います。
知識や問題解決手法は誰でも同じ能力を得ることは比較的容易ですが、コミュニケーション能力を得るのは簡単ではありません。
私流が絶対の「正解」だとは思いません。考え方や受け止め方は人それぞれで、「答え」はたくさんあると思います。
いろんな考え方を知ることが大切だと思います。
この講座では、人間対人間のコミュニケーションを円滑にするために、さまざまな手法を使いながら、バランスの取れた対応能力の獲得を目指します。

私は純粋に相談員のみなさまの資質向上を願っています。

(平成22年3月1日 初稿)
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