こんにゃくゼリー

「こんにゃくゼリー」の裁判については、みなさんご存知だと思います。
大きさを制限する基準も出たようですが、現在、高裁で争われているところです。
消費者問題としては、重要な事件だと思うのですが思ったより、論じられていませんね。
私は、欠陥がないとした判断は間違っていると思います。
まあ、今は地裁のレベルですので、最終的に最高裁に行くと思われますので、結論はまだまだ先になると思いますが、最終的には欠陥が認められると思っています。

地裁の判決で欠陥ではないとするポイントは3つです
①硬さなどはこんにゃく自体の特性で、欠陥とは言えない
②ゼリーの危険性は事故報道などを通じて一般の消費者に広く認識されている
③外袋には警告表示もされていた

私の考え
こんにゃくゼリーは「ゼリー」ではなく「こんにゃく」であり、当然、硬さなどは「こんにゃく」自体の特性だとしていますが、こんにゃくゼリーは「こんにゃく」ではなく「ゼリー」です。したがって、「こんにゃく」の特性を論ずるのはおかしいと思います。
みかんゼリーはみかんですか?ぶどうゼリーはぶどうですか?いちごゼリーはいちごですか?
答はゼリーですよね。
もっといえば、フルーツの味がするゼリーに場合によっては固形の大きな果物が入っている。果物は明らかにそれと判断できるので大きくても果物として食べる。
じゃあ、こんにゃくゼリーは?と聞かれたら、間違いなく「ゼリー」です。ゼリーの中に明確にそれと分かるこんにゃくは入っていません。こんにゃく味のゼリーです。
子どもでもそう答えます。
そして、「こんにゃく」ってどんなもの?と聞かれたら、スーパーの冷蔵品コーナーで売られている板のような大きさのもので、おでんの具として食べたりして、結構硬くて弾力があり噛み切りにくい、というのが一般的でしょう。当然、子どもでもそう答えます。
すなわち、「こんにゃく」であれば「こんにゃく自体の特性」ですが、「こんにゃく」ではなく「ゼリー」なんですから、ゼリー自体は一般的にゼリーの特性であり、硬いものではなくチュルチュルチュルって食べることができます。

②事故の報道などがあれば一般の消費者に広く認識されるというのは間違いでしょう。だから、リコール品を今でも社告し続けているし、地デジでさえ完全に認識されているとは限らないことは現場の感覚でしょう。

③警告表示があれば問題がないというのは今や幻想です。製品安全の3原則からいうと、表示で対策をするのではなく設計段階で対策すべきですし新たに基準が示されたことは何よりの証拠であります。警告表示というのであれば完全に認識できるように裏面ではなく表面にも大きな文字で、個別のカップにも大きな文字で書くべきでしょう。いまさら警告表示を論ずるのはレベルが低いですね。

ということで、製品事故があったときには、真実を見極めて毅然として対応すべきと思います。
製品事故の対応方法については、機会があれば書きたいと思います。

YOMIURI ONLINE http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=33389 より
こんにゃくゼリー「欠陥なし」
地裁姫路支部、損害賠償請求を棄却

兵庫県内の1歳9か月の男児が2008年、こんにゃく入りゼリーをのどに詰まらせて死亡したのは製品の欠陥が原因として、男児の両親が、製造した「マンナンライフ」(群馬県富岡市)などを相手に、製造物責任(PL)法などに基づき約6200万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が17日、神戸地裁姫路支部であった。
中村隆次裁判長は「通常有すべき安全性を備えており、PL法上の欠陥はない」として、原告側の請求を棄却した。同様の事故を巡る司法判断は初めて。
判決によると、男児は08年7月29日、凍らせたこんにゃく入りゼリー「蒟蒻(こんにゃく)畑マンゴー味」をのどに詰まらせて意識不明の重体となり、同年9月20日に多臓器不全で死亡した。
訴訟で原告側は、ゼリーの大きさや硬さについて製品の欠陥を主張したが、中村裁判長は「硬さなどはこんにゃく自体の特性で、欠陥とは言えない」と退け、さらに「08年当時、ゼリーの危険性は事故報道などを通じて一般の消費者に広く認識されており、外袋には警告表示もされていた」と述べた。
判決後に記者会見した原告側の弁護士は「一般消費者がゼリーの特性を認識していたとの認定は間違いで、不当な判決。原告と相談して控訴するか決めたい」と話した。
国民生活センター(東京)によると、こんにゃく入りゼリーによる死亡事故は1995年から全国で22件発生し、08年に起きた今回の事故が現時点で最後の死亡事例。消費者庁は現在、形状や硬さの改善につながる指標づくりを進めている。一方、内閣府の消費者委員会は今年7月、「事故防止のため、広範囲に対応できる法整備の検討が必要」と提言している。
(2010年11月17日 読売新聞)

借金問題

近年、多重債務問題が社会問題になっていることは明白です。
そして、正確ではないかもしれませんが、多重債務者を救うためには、自分ひとりで抱え込まないで、専門機関で相談を受け、最適な対応方法で解決を図るように誘導すること。

多重債務問題を解決するために数年前に国レベルで検討され、自治体で相談対応することになったと思います。
どの部署が担当するかというと、消費生活センターが相談窓口になったところが多いと思います。
それぞれの自治体では多重相談窓口のマニュアル等が作られており、どこまでの相談対応をするのかは、それぞれの自治体によって決められたています。

専門の相談窓口を紹介するところから、内容を細かく聞き取り心のケアをしながら最後まで対応するところもあると思います。

消費生活センター、消費生活相談員にとって、多重債務問題はどこまで対応すべきでしょうか。

政治的には消費者センターで対応するのが当たり前だというのが本筋でしょうね。
そして、それに従い対応している消費者センターもあります。
しかし、私は、それは本来の姿ではないと思うのです。

消費者センターは、主として、「事業者に対する消費者からの苦情に係る相談、苦情の処理のためのあっせん、情報を収集し提供すること」と、消費者安全法にも明記されています。
すなわち、対事業者との契約や商品の問題を解決することにあると思います。
そして、それらに対応するには、民法・消費者契約法・特定商取引法などの膨大な専門知識を学び、対応していかなければなりません。
一方、多重債務問題は、個人的な問題で、対事業者というよりも、個人の債務の状況を把握し、過払いがあれば処理し、破産するのであればどんな方法をとるのか検討し、最終的に裁判所などで処理をするという個人の問題だと思います。

これって、消費者問題には違いないと思うのですが、本来消費者センターで扱うべき問題ではないと思います。
消費生活相談員でなければ対応できないという問題でもないと思います。
多重債務の問題は、事務量が膨大でしょうし、時間もかかり、場合によってはメンタルケアも必要とします。
消費者センターがひまで仕方がないのなら、対応してもいいと思いますが、今の消費者センターは多忙です。
そんな多忙状態の中で、繊細さが必要な借金問題を扱えば、消費生活相談員は精神的に疲れきってしまうと思います。

消費生活相談員ではなくても対応できる借金問題は消費者センター以外で対応すべきです
消費者センターでは専門機関への誘導までの対応に徹すべきだと思います。
もちろん、多重債務の原因が、次々販売などの契約によるものであれば、当然、契約問題の対応まではすべきだと思います。
もし、みなさんの消費者センターが誘導だけの業務ではなく、突っ込んだ対応までも消費者センターでしなければならないのであれば、それぞれの自治体の行政的な問題だと思います。

多重債務問題で「国は消費者センターをもっと支援すべきだ」、ではなくて、消費者センターは誘導窓口となり、消費者センター以外の窓口で多重債務問題を処理できるような体制を、それぞれの自治体で確立すべきだと思います。
もし、そうでないのなら、行政にそのような体制を要求し、国にも支援を求めるべきです。
そして、行政も多重債務問題であれば行政職員の退職者の嘱託職員でも十分対応できると思います。

多重債務問題の法整備などを国に求めるのはかまいませんが、疲れきってまで消費生活相談員がすべきことではないと思います。
本来業務に精勤してほしいと思います。

消費者安全法
(都道府県及び市町村による消費生活相談等の事務の実施)
第八条 都道府県は、次に掲げる事務を行うものとする。
一 次項各号に掲げる市町村の事務の実施に関し、市町村相互間の連絡調整及び市町村に対する技術的援助を行うこと。
二 消費者安全の確保に関し、主として次に掲げる事務を行うこと。
イ 事業者に対する消費者からの苦情に係る相談のうち、その対応に各市町村の区域を超えた広域的な見地を必要とするものに応じること。
ロ 事業者に対する消費者からの苦情の処理のためのあっせんのうち、その実施に各市町村の区域を超えた広域的な見地を必要とするものを行うこと。
ハ 消費者事故等の状況及び動向を把握するために必要な調査又は分析であって、専門的な知識及び技術を必要とするものを行うこと。
ニ 各市町村の区域を超えた広域的な見地から、消費者安全の確保のために必要な情報を収集し、及び住民に対し提供すること。
三 市町村との間で消費者事故等の発生に関する情報を交換すること。
四 前三号に掲げる事務に附帯する事務を行うこと。
2 市町村は、次に掲げる事務を行うものとする。
一 消費者安全の確保に関し、事業者に対する消費者からの苦情に係る相談に応じること。
二 消費者安全の確保に関し、事業者に対する消費者からの苦情の処理のためのあっせんを行うこと。
三 消費者安全の確保のために必要な情報を収集し、及び住民に対し提供すること。
四 都道府県との間で消費者事故等の発生に関する情報を交換すること。
五 前各号に掲げる事務に附帯する事務を行うこと。

(平成23年3月5日 初稿)

追伸
半年経過して読み返しました。
多重債務問題に対して真正面から受け入れて対応している消費生活センターもあり、相談員の苦労を考えたら頭が下がる思いです。
基本的には私の考えは変わっておりませんが、本当にこの考えでいいのかどうか悩んだりします。
(平成23年10月)

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消費者情報 2011年3月号 (関西消費者協会)

①特集「ISO26000 SR・社会的責任と現代」
・CSRは一時流行しましたね、という書き方は変ですけど、不況になってから以前ほどの熱心さはなくなったように思います。
・ISO26000は「企業の社会的責任に関する手引き」です。一つのスタンダードが示されることは継続性は別として意義あることだと思います。
・企業の不祥事関連年表は2001年からの主な不祥事が100件あまり紹介されています。一通り見てみると、消費者問題の歴史や社会情勢などの世相が垣間見えますね。

②現場からの情報 相談
「モバイルデータ通信とパソコンとのセット契約トラブル」
・店頭で、モバイル契約をするとパソコンを無料でもらえます、といいながらパソコンは無料でなかったトラブル。
・誰もが知っている売り方ですね。初めてネットする人にはいいかもしれませんが、すでにネットの契約をしている人には余分な出費ですね。
・結局のところ、モバイル契約をすると、契約の種類にもよりますが最大4万円程度の大幅な割引があるのは事実です。パソコン本体の料金が割引額より安いものだったら無料になり、高いものだったら割り引いた差額を支払うことになります。指定しているパソコンでなくても家電量販店なら店頭パソコンすべてに適用できる場合もあり、通信契約をしたい人には絶対お得な買い方ですね。
・今回無料でないのは、差額が出たからかもしれませんが、やっぱり説明不足ですね。売ってなんぼの商売ですので。誤った説明があり、取り消したいのであれば、断然主張すべきです。
・そもそも通信契約をすることは理解していたはずで、やっぱり通信契約は必要なかったと考え直すのはどうかなと思います。ほかの商品も同じです。それは自立した消費者ではないと思います。
・ネットでモバイル通信による割引キャンペーンはたくさんあり、様々な契約形態があって複雑ですが、金額はしっかり書いています。月々5000円の通信料として24ヶ月で12万円。実は私もパソコン購入を検討していて調べたのですが、割引目的だけでの契約としては割高な気がしますね。
・この事例は、消費者センターでも頻繁に相談のある事例です。対応としては、ほぼマニュアルどおりでOKだと思いますので、相談員として契約の仕組みをしっかり理解することが重要です。

③判例に学ぶ
「商品CFD取引」を「賭博行為」に該当するとして不法行為責任を認めた事例
・本判決では、本件CFD取引における差損益は、実勢市場レートや市場実勢為替レートに左右するものであり、これらのレートの動向は業者にも顧客にも予見することはできず、また、その意思によって自由に支配することができないものであるから「偶然の事情によって財物の得喪を争うもの」であるとして、まず形式的にも賭博行為に該当することを認めました。(本文より一部抜粋)
・被害者にとっては画期的な判決だと思いますが、一般論はどうでしょう。
CFD取引が賭博行為?理解しがたいです。予見できないのは為替も商品相場も株式も同じですし、社会情勢から見ると予見できる要素はあると思いますし、金融市場で正当に取引をしている人には迷惑な話のような気がします。もし、上級の裁判で争うとすれば、賭博行為にはならないと私は考えます。ただし、適個別の事例では合性違反や不実告知や断定的判断の提供などの問題がある場合は当然に補償されるべきものだと思います。

リンクはこちらです
関西消費者協会 http://kanshokyo.jp/hp/
消費者情報 2011年3月号

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