食中毒

生食用でないユッケを原因とした腸管出血性大腸菌食中毒で死者がでるという悲しい事件がありました。
この問題はいまさらな問題です。
学校給食を原因とした大規模なO-157食中毒事件は記憶にあると思います(原因は肉ではなくカイワレとされていましたが)。
腸管出血性大腸菌は基本的には牛肉の生食を原因とします。
すなわち牛肉の「生レバー」「ユッケ」などの生食です
食感がやわらかいので食べやすく、保護者が乳幼児に食べさせて、小さな子どもが感染してしまい、保育所や幼稚園で2次感染して集団発生となる事件が続発していました。
ちょうどそのころ、伝染病予防法が100年ぶりに改正され、感染症の法律ができたころで、腸管出血性大腸菌は3類感染症として特別に指定されました。
腸管出血性大腸菌はO-157が代表的ですが、今回の事件のようにO-111などが原因となることもあります。

予防法は簡単で当時からいわれていましたが、肉の生食をしないこと、生肉の取り箸は専用にすることなどです。
消費者啓発もかなり実施されていましたが、そんなのお構いなしに消費者は生肉を求め、飲食店は生肉を提供するのです。
そして、生食用食肉の衛生基準が平成10年に定められたのですが、今現在でも牛肉の生食が可能な食肉を提供できると畜場は21年度実績で1施設のみです(他の施設はすべて馬肉用)。したがって、生食可能な食肉はほとんど出回っていません。それでも皆さんも飲食店のメニューをみたら、「牛生レバー」や「牛のユッケ」が堂々とメニューに掲載されているのに気づくと思います。もしかすると、これを読んでいる相談員も食べてるかもしれませんね。
ちなみに生肉にO-157が付着していたとしても、加熱すれば死滅するので、販売提供があっても基本的には問題はありません。

このような問題は、大きなきっかけでもない限り、なくなることはないと思います。
(原子力などの電力問題が今回の大震災で考えるきっかけになったように)

そして、この件に関しては、今が「大きなきっかけ」ではないかと思っています。
なぜなら、この事件は消費者安全法に基づく重大事故に該当するからです。
しかも、1件だけではない可能性も高くなっています。
そうなると、国レベルでも単なる食中毒の死亡事件とした処理ではなく、原因の徹底的な追究と再発防止に消費者庁をあげて対応する可能性があるからです。
今後の動きに注目したいです。

生食用食肉に関するHPを探したのですが、島根県のHPが21年度実績も掲載されていて分かりやすいです。
島根県の食品衛生>生食用食肉の衛生基準
http://www.pref.shimane.lg.jp/life/syoku/anzen/eisei/kisotisiki/seishoku_niku.html

ジャドマニューズ 2011年4月号

ジャドマニューズは日本通信販売協会の広報誌で、以前から紹介しているところです。
ジャドマニューズ(日本通信販売協会) https://soudanskill.com/20100809/81.html
今月号からオールカラーになったようですね。

4月号の「通販110番」の記事から一部紹介し、コメントします。

通販110番消費者相談編
「コミュニケーションでトラブル防止を!」

事例1「注文と違う商品を勝手に送ってきた!」
・電池2個パックを50セット注文したが、4個パックが混在していた。消費者は保管しやすいことから2個パックをを注文したが、業者は2個パックが不足していて待たせるよりも4個パックを混ぜて早く届けたほうがいいと判断してしまった。
→良かれと思ったことが裏目に出ることはよくあります。相談現場でも同様です。相手が何を望んでいるかを知ることが良好なコミュニケーションの基本ですね。

事例2「ミスを誤魔化そうとしている!」
・ハガキで注文したが通っていなかった。1週間後に違う商品を今度は電話で注文したが通っていなかった。通っていなかった原因を説明せず商品を送りますとしか言わない
→注文品を送るということと対応に不満の部分を分けて考える必要があります。

通販110番事業者相談編
「取扱説明書(家具)」

事例1「購入した商品で顧客が怪我 補償の必要性は?」
・リクライニング椅子で背もたれを後方に倒したら転倒して怪我。受診のためのタクシー代を請求された。オペレーターは払うといったという。どう対応したらよいか。
・検査して商品に問題があれば対応すべき。
・オペレーターはあいまいな返答をした。
・検査したら、購入者組み立てのねじのひとつが短く取り付けられていた。
・急に倒すと危険ですとの注意表示があったが、もたれたまま倒した
・事業者のねじの写真は虚偽だと主張しあっせん不調に
→メーカーの調査を消費者が信用した上で受け入れる原則が守られなかったために虚偽だといわれるパターン。消費者センターでは、その部分は明確に説明し了解の上メーカーに調査依頼している。消費者に不利な結果が出たら、こうなるのは予想できる。第3者の検査機関に依頼するか、消費者センターを間に入れたほうがよかったかも。堂々とは言いにくいですが、メーカーが信頼性を高めるために消費者センターに申し出るように回答する方法もあります。

取扱説明書に注意書きがあれば誤った使い方が誤使用になるということはありません。
今回の注意表示が適正だったかという検証も必要です。
製品安全の3原則については別途解説したいと思います。

社団法人 日本通信販売協会 HP http://www.jadma.org/
会報誌(JADMA NEWS) http://www.jadma.org/jadma_news/index.html

「信用性は?」の問い合わせ

相談現場では消費者から
「~という会社の苦情はありますか?」
「~という会社の信用性を教えてください」
というような問い合わせが良くあります。

みなさんはどう答えているでしょうか?

個別の事業者の苦情の有無や信用性は公開していません。
個別の事業者の苦情の有無や信用性はお答えしておりません。
このように答えるのが原則論でしょう。
当然ながら、個別の事業者の情報は行政処分などで公になっている事例をのぞいては開示できないことになっていると思います。

さて、このように回答した場合に消費者はどんな反応をするでしょうか?
大きく分けて2通りあると思います。
①なぜ公開できないのか!と逆に文句を言ってくる
②そうですか、分かりました、と相談終了
(③①の説明後から②のパターンもあり)

相談員にとって何気ない日常の受け答えかもしれませんが、私は実は深い意味があるのではないかと考えています。
それを読み取って、消費者に最善の回答を出すことが消費者目線ではないかと思います。

ポイントは
信用性について回答できるかどうかではなくて
「消費者がなぜ苦情の有無や信用性を聞きたいのか」
ということに主眼をおくのです。

その背景には
買った商品が悪かった
買った後に悪い評判を聞いた
だまされているのかもしれない
などの思いがかくれているのです。

杓子定規に考えず、消費者が本当に知りたいのは何かということを考える。
すると、どんな回答をすればベストなのか分かると思います。
まず、「苦情の有無や信用性について答えることができない」という回答について、消費者目線になっているでしょうか

「個別の事業者の有無や信用性は公開していません。」
「個別の事業者の有無や信用性はお答えしておりません。」
この2つの回答は確かに正解ではありますが、相手にはマイナスの印象を与えてしまいます。

言葉の表現・言いまわし( https://soudanskill.com/20110421/203.html)を思い出してください。
もっと別のやさしい答え方はないでしょうか。
とはいえ、否定の答を上手に伝えるのは難しいですね。ハイレベルです。
残念ながら、私もベストだという答えは見つかりませんが、いまのところ、「わからない」という答えがベストだと思っています
(実際、信用できる事業者でも必ず苦情はありますので、苦情があれば信用できないとはならないからです)
そして、相談者がその答えに対して不快感を出す前に、次の話を進めるのです。
「信用性はわからないというの正直なところですねえ。」「何か買われた商品に問題があったり、勧誘されたのですか?」
と質問にはぼんやりと答ず、先読みする。
焦点を「信用性」から「被害の把握」に切り替えるのです。
これは、逃げの手ではなく先読みです。
おそらく、どちらにせよ、終着点は、「業者とトラブルがあったこと」の相談につながっていく可能性が高いのですから、マイナスで関係が始まるよりも、フラットな状態で始めたいです。
「業者とトラブルがあったこと」が本当に相談したかったことであり、その断片を聞くことができれば、苦情の有無や信用についても、うまく表現できると思います。
たとえば、でてきた事業者名が問題のある業者だったら、解約に向けた方向性にする、問題がなさそうな事業者であれば補足説明を加え正しい情報を伝えてあげるなど。

一番大事なことは、この信用性についての相談に対する被害の表面化です。
相談が早ければクーリングオフもできます。
本当は被害を受けて回復可能なのに、「②そうですか、分かりました、と相談終了」になれば、本来の消費者センターの役目を果たせないことになり、せっかく勇気を振り絞って、相談してきたのに、真意に気づいてあげることができず、手遅れとなってしまうのです。
被害を受けた相談者がすべて直接的に被害のあったことを相談するとは限らず、「信用性について」という遠回りの言葉に代えて相談することもあります。
相談者が本当に相談したいことは何なのかを洞察し、被害を表面化させて、早く解決してあげることが重要です。

(平成23年4月27日 初稿)
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