「信用性は?」の問い合わせ

相談現場では消費者から
「~という会社の苦情はありますか?」
「~という会社の信用性を教えてください」
というような問い合わせが良くあります。

みなさんはどう答えているでしょうか?

個別の事業者の苦情の有無や信用性は公開していません。
個別の事業者の苦情の有無や信用性はお答えしておりません。
このように答えるのが原則論でしょう。
当然ながら、個別の事業者の情報は行政処分などで公になっている事例をのぞいては開示できないことになっていると思います。

さて、このように回答した場合に消費者はどんな反応をするでしょうか?
大きく分けて2通りあると思います。
①なぜ公開できないのか!と逆に文句を言ってくる
②そうですか、分かりました、と相談終了
(③①の説明後から②のパターンもあり)

相談員にとって何気ない日常の受け答えかもしれませんが、私は実は深い意味があるのではないかと考えています。
それを読み取って、消費者に最善の回答を出すことが消費者目線ではないかと思います。

ポイントは
信用性について回答できるかどうかではなくて
「消費者がなぜ苦情の有無や信用性を聞きたいのか」
ということに主眼をおくのです。

その背景には
買った商品が悪かった
買った後に悪い評判を聞いた
だまされているのかもしれない
などの思いがかくれているのです。

杓子定規に考えず、消費者が本当に知りたいのは何かということを考える。
すると、どんな回答をすればベストなのか分かると思います。
まず、「苦情の有無や信用性について答えることができない」という回答について、消費者目線になっているでしょうか

「個別の事業者の有無や信用性は公開していません。」
「個別の事業者の有無や信用性はお答えしておりません。」
この2つの回答は確かに正解ではありますが、相手にはマイナスの印象を与えてしまいます。

言葉の表現・言いまわし( https://soudanskill.com/20110421/203.html)を思い出してください。
もっと別のやさしい答え方はないでしょうか。
とはいえ、否定の答を上手に伝えるのは難しいですね。ハイレベルです。
残念ながら、私もベストだという答えは見つかりませんが、いまのところ、「わからない」という答えがベストだと思っています
(実際、信用できる事業者でも必ず苦情はありますので、苦情があれば信用できないとはならないからです)
そして、相談者がその答えに対して不快感を出す前に、次の話を進めるのです。
「信用性はわからないというの正直なところですねえ。」「何か買われた商品に問題があったり、勧誘されたのですか?」
と質問にはぼんやりと答ず、先読みする。
焦点を「信用性」から「被害の把握」に切り替えるのです。
これは、逃げの手ではなく先読みです。
おそらく、どちらにせよ、終着点は、「業者とトラブルがあったこと」の相談につながっていく可能性が高いのですから、マイナスで関係が始まるよりも、フラットな状態で始めたいです。
「業者とトラブルがあったこと」が本当に相談したかったことであり、その断片を聞くことができれば、苦情の有無や信用についても、うまく表現できると思います。
たとえば、でてきた事業者名が問題のある業者だったら、解約に向けた方向性にする、問題がなさそうな事業者であれば補足説明を加え正しい情報を伝えてあげるなど。

一番大事なことは、この信用性についての相談に対する被害の表面化です。
相談が早ければクーリングオフもできます。
本当は被害を受けて回復可能なのに、「②そうですか、分かりました、と相談終了」になれば、本来の消費者センターの役目を果たせないことになり、せっかく勇気を振り絞って、相談してきたのに、真意に気づいてあげることができず、手遅れとなってしまうのです。
被害を受けた相談者がすべて直接的に被害のあったことを相談するとは限らず、「信用性について」という遠回りの言葉に代えて相談することもあります。
相談者が本当に相談したいことは何なのかを洞察し、被害を表面化させて、早く解決してあげることが重要です。

(平成23年4月27日 初稿)
Copyright c 2010-2011 消費生活相談員スキルアップ講座 窶錀 All Rights Reserved