知人からの相談

とある知人からの3回目の個人的な相談です。
先日の夜に電話があり70分ほど話をして、ぐったり疲れてしまいました。
携帯電話から固定電話なので、料金を考えると大変ですね。

ちなみにその知人からの過去の相談を紹介しますと
1回目の相談は、高級自転車をオーダーするときに体に合うサイズのフレームを注文したかったが、そのサイズがないといわれ、1つ大きいものを注文したが、乗ってみると、やはり大きく、輸入代理店に聞くと、希望のサイズのフレームはつくっているということで、返品交換のトラブルになっているというものです。
原因は職人気質の店主が客の要望を聞かず、自分の考えを強引にすすめてうまくいかなかったようです。そこにウソホントが入り乱れ、お互いに引けなくなってしまったとのことです。
長い話になるので省略しますが、お互い損害をかぶる形で終結しました。双方ともに後味の悪いものでした。

2回目の相談は、このサイトでも紹介したかもしれませんが、郵便局の定期貯金が満期後に取りに行かず、時間がたって、無効となり国庫に収められたというものです。
数年前に結構問題になっていました。法律で決まっているものなので、正面から交渉しても難しいです。
引っ越しをした際に、住所変更の届出をしておらず、本人に連絡がいかなかったことが失効の原因でした。
これは本人の過失に当たるけど、本当に郵便局からのあて先不明の通知が戻ってきたという証拠があるのかなど、当時の記録を調べてもらうなどの郵便局側の過失を探して、弁護士等を使い法的な手続をしてはということで終わりました。
今回、当時の結末を教えてもらいました。

知人は郵便局の通帳を複数持っており、引越しをする際に住所変更の手続をしました。なぜ、そのときに定期貯金のことを教えてくれなかったのか?
など、郵便局側の瑕疵をできるだけ多くあげて、20枚以上の文書にして、弁護士にチェックしてもらい、郵便局に出したところ、反応なく半年ぐらい放置された後に、いきなり全額戻ってきたということです。
法律でダメとわかっても、相手側に瑕疵があれば何とでもなるという典型例かもしれませんね。

そして今回は知人が住んでいるマンションでの管理人(管理会社)とのトラブルです。
マンションがらみの相談は消費者センターでも少なくないと思いますが、なかなかあっせんに入れないというのはご存知だと思います。
今回の事例も、いろんな選択肢がありますので、ケーススタディとして何回かに分けて紹介します。
ぜひ、みなさんも、私だったらどう助言するのかということを考えながら取り組んでいただきたいと思います。

なお、私がしようとしている実践型ケーススタディの研修は前回の「ヤミ金」の話や前々回の「ネット通販」や今回の「マンション住人のトラブル」などの事例を順に追いながら、法律やコミュニケーション方法などをみんなで考えて進めていくものです。したがって、少なくとも3時間は必要になります。ぜひ、やってみたいです。

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共感

今、「DJポリス」が注目されています。警視総監賞も贈られることになりました。
ここまでニュースで報道されているのでさすがにご存知だと思いますが、「DJポリス」とは6月4日の夜に日本のサッカーのワールドカップ出場が決まったときに、渋谷のスクランブル交差点で歓喜する若者たちを、ユーモアあふれる語り口でパニックを防ぎ、安全に誘導した警察官のことを名づけたものです。
この語りの中には、「皆さんは12番目の選手です」「警察官も本当は喜んでるのです」など「現場の状況と空気を読んだ巧みな話術がファンの心情をとらえた」として評価されました。
ネットで検索すれば、ニュースや動画もたくさんあるので知らない方は参考にしてください。

「Mr.サンデー」(6月9日夜)
”DJポリス”の言葉が響いたわけ
目の前で怖い顔したお巡りさんも日本代表のワールドカップ出場を実は喜んでいるんです。
”水平性”を保つ話し方”

NHK(6/11ニュースウォッチ9)
警察もどうしたら聞いてくれるのかアナウンス力を磨いてきた
広報する側の警察官の意図が伝わらないと困る
こられる対象の方に応じた研究をし警備がうまくいくように考えている
警備広報上級検定に合格している警察の長年の努力が実った

ジャーナリストの言葉として
警察対市民という対立構造を作らなかったのが成功の鍵
いたずらに(群集を)排除するだけではなくて
“日本人だったらサッカーに勝ってうれしいよね。”という共通のものを踏まえたうえで
“それを台無しにしないようにしよう”という目的の設定がうまかった

共感を呼び起こすことが一方通行ではないコミュニケーションをうんだ


などなど感動的な話として伝わってきますが、私は感動を伝えたいのではなく、共感のコミュニケーションとは何かを伝えたくて話題にしました。
すなわち、相談対応現場と共通していることがあるのです。

共感」がキーワードです。
いつもは上から目線の警察官が、「実はファンと同じように喜んでいる」と目線を同じにして、共感と信頼を得たのです。

気づきましたか?
「上から目線」「共感」「信頼」
すべて相談現場で重要でありながら、なかなかうまくいかないことがあるキーワードですね。

私のサイトでは何度も同じことを解説しています。
バランス理論を使い、相談者の主張が間違っていても、相談者の気持ちを受け止めてあげることによって、共感の信頼を獲得する。
この理論が分かっていないと、相談者と相談員(消費者センター)は対立構造になってしまいう。
そこで説得しても、単なる上から目線になり、よけいに反発を買ってしまう。
バランス理論 その1 2011年5月16日(月)
バランス理論 その2 2011年5月18日(水)
「消費生活相談員のためのスキルアップ講座」平成23年10月号(第2号) 10月19日発行

警察は「明石の歩道橋事故」を教訓として、「伝わる広報」のために研究し、試験も実施していて、合格者もわずかであるという事実が、単なる感動秘話ではなく、計算しつくされた「コミュニケーションスキル」であることがお分かりいただけると思います。
スキルであるから学ぶことができるのです。

勘違いしてはいけないこととして、共感は「相談者の主張を認める」というのではないことです。
もちろん主張が正しければやりやすいですが、そうでないこともあります。

事実と感情を切り離して考えるということも解説してきました。
事実で相談者の主張を認めることができずに、相談者の希望をかなえることができなくても、気持ちを受け止め共感することで納得してもらうという対応が大切です。
そうすれば、すべてとは限りませんが、相談者の希望がかなわなくても、また相談にきたいという信頼関係が構築できると思います。
対立関係で終わることほど、相談員として空虚なものはないとおもいます。
相談者の希望がかなえられなくても、しっかり気持ちを受け止めてあげて、共感し、その上で納得のいく説明をする。
帰り際に、感謝の言葉とともに気持ちよく相談を終了することができれば、相談員としても、次の相談へのモチベーションが上がると思います。

今一度、相談現場対応で、相談者に共感しているか自分自身を見つめてください。

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ヤミ金からの押し貸しの元本返却 その5(最終回)

最終回になります。

さて、実際、同様の相談を受けた場合に、みなさまでしたらどの段階まで進めますか?
もしかすると、相当早い段階で警察に相談するように振ってしまいませんか?
相談者の返金したいという目的の達成を考えると、適切な相談窓口はどこかということを意識していますか?
そして、相談者が消費者センターに相談してよかったなあと思える対応になっていますか?

これまで長い理屈を書き連ねてきましたが、これらはすべて思考のプロセスです。
このプロセスを持っている人は、いきなり、結論に達する近道をたどることができます。
その場合は表面的には簡単そうに見えても、その背景にはこのようなプロセスをしっかり経ているという事実があります。
それが表には見えないだけです。
これがスキルのある相談員です。
たまたまたどりつくこともあるかもしれませんが、それは当て物があたっただけで、プロセスをしっかり理解して結論に達しているかどうかという差があります。
ほかの事例も同じですので、これらの応用的対応を示すだけでいいのです。

もし、今回のような論理的思考ができない、もしくは苦手だという相談員は、今回の事例を参考に学んでください。
また、基本的には「相談対応の流れと必要なスキル」のマニュアルで解説したものです。
実は、これらの思考ができれば、仕事は楽になるのです。
スキルが不足すると、メンタルが疲れてしまうという要素もあります。
メンタルの問題は外的要因(相談者や業者からの暴言等)だけでなく、内的要因(スキル不足により手間ひまがかかる精神疲労)にも関係しているのではないかと思います。

ほかの相談案件も同じようなプロセスで考えていくことになりますし、相談対応というのは、このプロセスをいくつ知っているかにかかっています。
将棋や碁と同じです。定石を知っていれば、時間の節約にも悩みの節約にもなります。
本当に長考しなければならないことだけに集中できます。
これが、相談員としてのスキルを測る物差しになるのではないでしょうか?

さて、最後に、今回の事例に対しての私の回答は次のとおりです。

契約していないといっても業者は聞いてくれない可能性もあります。
法律で定められた法外な貸付利率は違法です。
違法な貸付は元本も返済しなくてもよいという法律もありますが、放置して後で何か言われても嫌だというのは、そのとおりだと思います。
知られた個人情報は消すことはできません。
実際に金銭的被害が出ていないのなら、何とか振り込まれたお金を返金して関係を切った方がいいのかもしれませんね。
今回は相手の連絡先が分からないということですが、新聞広告や振込者名や電話番号や業者名など、できるだけ情報を集めて、ネットで検索して連絡先を探してみてはどうでしょうか?
また、資料をいただければこちらでも探してみます。
(センターで探してみる。みつかればセンターから電話してもよいし、警察から電話してもらってもよい)どうしても見つからない場合は、警察に相談する方法もありますが、返金する方法までは難しいと思います。
(警察のヤミ金相談窓口があれば紹介する)
裁判で借りていないということを訴えることもできますが、手続き的に大変です。そのようなときに、たとえば家主が変わって家賃を払う相手が分からなくなった場合に、滞納にならないように、国(法務局)にお金を預ける「供託」という制度があります。
今回の振り込まれたお金も「供託」することができる可能性が高いと思いますので、一度法務局に相談にいかれたらどうでしょうか。
また、供託することができたら、センターや警察にも連絡して、その事実を記録しておくといいと思います。もし、業者から催促の連絡があった場合は、「お金は法務局に供託していて、消費者センターや警察にも相談しています。法務局に取りに行ってください。」と言ってください。
また、連絡があったのを機会にお金を返金したい場合や業者から契約はないことにするから返金してほしいといわれた場合は、細かいことは言わずに、口座番号を聞いて、供託金を返してもらい、元本だけ返金するという方法もあります。
手間はかかりますが、これで関係は基本的には切ることができます。
今後、何か言ってきたら警察やセンターに相談してください。

また、法律相談窓口と警察の相談窓口を紹介しておきます。

これが正しい回答とは限りませんが、何も助言しないよりは、ずっといい助言だと思います。
また、各自治体により、借金の相談は扱わないというセンターもあると思いますが、これぐらいの助言は十分にセンターの範囲内だと思います。

わたしの考えは、先に説明した、「元本も返金する必要はない」という弁護士等の法律の専門家の意見とは異なります。
消費者センターは、相談者の希 望に応じた(話し合いによる)解決を目指します。民法で決まっていることを必ずしもそのまま履行しなければならないというわけではなく、当事者の意思で権 利を履行しないこともできるというところです。「お金を返金しなくてもいい」とはあっても、相談者自らの意思で返金することは可能だと思います。法律に厳 密に縛られなくてもいいというところが消費者センターの長所でもあります。
今回の事例でも、「返金しない」という選択肢は正しくても、相談者の将 来の不安、すなわち、「ヤミ金に借金の問い合わせをしたという事実を知られている。お金を返却せず自分のものにしてしまった後ろめたさがある。将来、この 事実を関係者に知られたら家族が不利益を被ってしまうのでは。」という不安は残ってしまうわけです。
「ラッキー。ただでもらっちゃえ。」というあっけらかんとした相談者の場合と今回の不安で仕方がないという相談者とでは、消費者センターというレベルの相談対応では、助言に大きな幅があります。違う答えになっても全然かまわないと思います。
画一的に「返金しなくてもいい」とするのは、法律家の答えであって、消費者センター的な相談員マインドとは違うのではないかと感じます。
この違いについいては意見が分かれるところですが、それぞれに背景の違いを考慮しながら、考えていただけたらと思います

今回のヤミ金だけではなく、このサイトが始まって以来、すっと説明してきたように、多くの相談事例はきちんと整理して論理的に一つ一つ解決していけば、何らかの答えにたどりつくことができます。
ぜひ、そのようなスキルを身につけてほしいと願っています。
また、相談員のみなさまには、このようなスキルを向上させる訓練をしてほしいですし、行政にも、このようなスキルアップにつながる研修を実施してほしいと思います。
(終わり)
※もし、供託した実例を経験されたのなら、コメントもしくは問い合わせしていただければうれしいです(机上の理論が実際に使えるかどうか確認できてません。)

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