バランス理論 その1

「バランス理論」という聞きなれない言葉ですが、心理学の用語で、相談現場でも非常に有用です。
知らず知らずのうちに使用しているかも知れません。

「私(相談員)は間違いなく正しいことを相談者に説明しているのに、相談者はなぜ分かってくれないのだろうか?」
そんなときに、
「相談者の理解度が低いからだ、相談者か過剰な要求をしているからだ、私(相談員)は悪くはない」
とおさめてしまうことがあります。

実は、これはお互いのコミュニケーションの不足からきているものです。
その理屈を「バランス理論」で理解し、どんな説明をすれば相談者が分かってくれるのかを考えたいと思います。
「バランス理論」は相手とのコミュニケーションを円滑にするツールですので、知らない場合は是非知っておいてください。

「バランス理論」をネットで検索すると難しい言葉で説明しているものが多いですね。

バランス理論 Balance Theory
バランス理論は、ハイダー(Heider,F.)が対人関係の原理の一つとして提唱した理論。他者や対象を評価する際、それと関係した第3の項を含めた均衡状態が重要であるとする。人間はバランス状態を好む傾向があり、もし不均衡が生じたならば、不快な緊張状態に陥り、不均衡の解消と均衡を追及する働きが生じると仮定。
三項とは自己(P)・対象(O)・関連する項(X)であり、態度はそれらを結ぶ+か-のリンクで表現される。心理的に均衡状態(3つの積が正)は快であり、不均衡状態(3つの積が負)は不快である。三者間の関係が均衡していない場合は、いずれかの評価を改めることで均衡状態に収束する。

図で説明するのが一番ですが、いろんなパターンがあるので、ネットで「ハイダー バランス理論」で検索してください。

要は、3者の間の関係が均衡している状態を好む、ということです。逆に、均衡状態でない場合は、心理的に不快な状態に陥るのです。
例えば、「私」を中心に考えてみます。
私とAさんがいます。対象はBさんです。
私はAさんが好きで、Bさんも好きです。
しかし、AさんがBさんのことが嫌いであれば、どうなるのでしょうか。
もし、AさんがBさんのことが好きであった場合は、私とAさんの意見が合致し、私は心地よいバランス状態となります。
しかし、AさんがBさんのことが嫌いであれば、私とAさんの意見は合わず、不均衡な緊張状態が生まれ、心理的に不快になります。

理論を理解するために、これらをプラスとマイナスで考えます。三角形の形にするのが実際的ですので手元にメモしてください。
前者は
私→Aさん・・・(+)
私→Bさん・・・(+)
Aさん→Bさん・・・(+)
(+)×(+)×(+)=(+)、この3つの(+)を掛け合わせれば(+)になるので「快」の状態です
後者は
私→Aさん・・・(+)
私→Bさん・・・(+)
Aさん→Bさん・・・(-)
(+)×(+)×(-)=(-)、この3つを掛け合わせれば(-)になるので「不快」の状態です

人間はこの不均衡な状態を均衡の状態にしようとする心理的作用が働きます。
では、どうすれば、バランスの取れた「快」の状態に変化することができるのでしょうか。
方法は2通りあります。
1つは、相手であるAさんに対象であるBさんを好きになってもらい、Aさん→Bさん・・・(+)に変化することです
もうひとつは、相手であるAさんに合わせて、私がBさんを嫌いになるのです。
つまり
前者は
私→Aさん・・・(+)
私→Bさん・・・(+)
Aさん→Bさん・・・(-)→(+)に変化
(+)×(+)×(+)=(+)、この3つを掛け合わせれば(+)になるので「快」の状態になるのです。

もしくは、私がAさんを嫌いになるので
私→Aさん・・・(+)→(-)に変化
私→Bさん・・・(+)
Aさん→Bさん・・・(-)
(-)×(+)×(-)=(+)、この3つを掛け合わせれば(+)になるので「快」の状態になるのです。

もっと具体的に説明すると
私が付き合っている彼氏には好きな歌手がいてる。
私は興味はない(または嫌いである)が、それでは、彼との音楽の話がかみ合わなくけんかになったり関係が悪くなったりする。
そこで、私は彼の好きな歌手や音楽をできるだけ好意を持って聴くようになったところ、その歌手や音楽が好きになった。
彼とは一緒に音楽を聴いたり一緒にコンサートに行ったりするようになり、よりラブラブな状態になった。
こんな経験ありませんか?
実は恋愛にも応用できたりするんですね。

次回は、相談現場での応用について説明したいと思います。

(平成23年5月16日 初稿)
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