共感

今、「DJポリス」が注目されています。警視総監賞も贈られることになりました。
ここまでニュースで報道されているのでさすがにご存知だと思いますが、「DJポリス」とは6月4日の夜に日本のサッカーのワールドカップ出場が決まったときに、渋谷のスクランブル交差点で歓喜する若者たちを、ユーモアあふれる語り口でパニックを防ぎ、安全に誘導した警察官のことを名づけたものです。
この語りの中には、「皆さんは12番目の選手です」「警察官も本当は喜んでるのです」など「現場の状況と空気を読んだ巧みな話術がファンの心情をとらえた」として評価されました。
ネットで検索すれば、ニュースや動画もたくさんあるので知らない方は参考にしてください。

「Mr.サンデー」(6月9日夜)
”DJポリス”の言葉が響いたわけ
目の前で怖い顔したお巡りさんも日本代表のワールドカップ出場を実は喜んでいるんです。
”水平性”を保つ話し方”

NHK(6/11ニュースウォッチ9)
警察もどうしたら聞いてくれるのかアナウンス力を磨いてきた
広報する側の警察官の意図が伝わらないと困る
こられる対象の方に応じた研究をし警備がうまくいくように考えている
警備広報上級検定に合格している警察の長年の努力が実った

ジャーナリストの言葉として
警察対市民という対立構造を作らなかったのが成功の鍵
いたずらに(群集を)排除するだけではなくて
“日本人だったらサッカーに勝ってうれしいよね。”という共通のものを踏まえたうえで
“それを台無しにしないようにしよう”という目的の設定がうまかった

共感を呼び起こすことが一方通行ではないコミュニケーションをうんだ


などなど感動的な話として伝わってきますが、私は感動を伝えたいのではなく、共感のコミュニケーションとは何かを伝えたくて話題にしました。
すなわち、相談対応現場と共通していることがあるのです。

共感」がキーワードです。
いつもは上から目線の警察官が、「実はファンと同じように喜んでいる」と目線を同じにして、共感と信頼を得たのです。

気づきましたか?
「上から目線」「共感」「信頼」
すべて相談現場で重要でありながら、なかなかうまくいかないことがあるキーワードですね。

私のサイトでは何度も同じことを解説しています。
バランス理論を使い、相談者の主張が間違っていても、相談者の気持ちを受け止めてあげることによって、共感の信頼を獲得する。
この理論が分かっていないと、相談者と相談員(消費者センター)は対立構造になってしまいう。
そこで説得しても、単なる上から目線になり、よけいに反発を買ってしまう。
バランス理論 その1 2011年5月16日(月)
バランス理論 その2 2011年5月18日(水)
「消費生活相談員のためのスキルアップ講座」平成23年10月号(第2号) 10月19日発行

警察は「明石の歩道橋事故」を教訓として、「伝わる広報」のために研究し、試験も実施していて、合格者もわずかであるという事実が、単なる感動秘話ではなく、計算しつくされた「コミュニケーションスキル」であることがお分かりいただけると思います。
スキルであるから学ぶことができるのです。

勘違いしてはいけないこととして、共感は「相談者の主張を認める」というのではないことです。
もちろん主張が正しければやりやすいですが、そうでないこともあります。

事実と感情を切り離して考えるということも解説してきました。
事実で相談者の主張を認めることができずに、相談者の希望をかなえることができなくても、気持ちを受け止め共感することで納得してもらうという対応が大切です。
そうすれば、すべてとは限りませんが、相談者の希望がかなわなくても、また相談にきたいという信頼関係が構築できると思います。
対立関係で終わることほど、相談員として空虚なものはないとおもいます。
相談者の希望がかなえられなくても、しっかり気持ちを受け止めてあげて、共感し、その上で納得のいく説明をする。
帰り際に、感謝の言葉とともに気持ちよく相談を終了することができれば、相談員としても、次の相談へのモチベーションが上がると思います。

今一度、相談現場対応で、相談者に共感しているか自分自身を見つめてください。

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