ヤミ金からの押し貸しの元本返却 その5(最終回)

カテゴリー:実践 投稿日:

最終回になります。

さて、実際、同様の相談を受けた場合に、みなさまでしたらどの段階まで進めますか?
もしかすると、相当早い段階で警察に相談するように振ってしまいませんか?
相談者の返金したいという目的の達成を考えると、適切な相談窓口はどこかということを意識していますか?
そして、相談者が消費者センターに相談してよかったなあと思える対応になっていますか?

これまで長い理屈を書き連ねてきましたが、これらはすべて思考のプロセスです。
このプロセスを持っている人は、いきなり、結論に達する近道をたどることができます。
その場合は表面的には簡単そうに見えても、その背景にはこのようなプロセスをしっかり経ているという事実があります。
それが表には見えないだけです。
これがスキルのある相談員です。
たまたまたどりつくこともあるかもしれませんが、それは当て物があたっただけで、プロセスをしっかり理解して結論に達しているかどうかという差があります。
ほかの事例も同じですので、これらの応用的対応を示すだけでいいのです。

もし、今回のような論理的思考ができない、もしくは苦手だという相談員は、今回の事例を参考に学んでください。
また、基本的には「相談対応の流れと必要なスキル」のマニュアルで解説したものです。
実は、これらの思考ができれば、仕事は楽になるのです。
スキルが不足すると、メンタルが疲れてしまうという要素もあります。
メンタルの問題は外的要因(相談者や業者からの暴言等)だけでなく、内的要因(スキル不足により手間ひまがかかる精神疲労)にも関係しているのではないかと思います。

ほかの相談案件も同じようなプロセスで考えていくことになりますし、相談対応というのは、このプロセスをいくつ知っているかにかかっています。
将棋や碁と同じです。定石を知っていれば、時間の節約にも悩みの節約にもなります。
本当に長考しなければならないことだけに集中できます。
これが、相談員としてのスキルを測る物差しになるのではないでしょうか?

さて、最後に、今回の事例に対しての私の回答は次のとおりです。

契約していないといっても業者は聞いてくれない可能性もあります。
法律で定められた法外な貸付利率は違法です。
違法な貸付は元本も返済しなくてもよいという法律もありますが、放置して後で何か言われても嫌だというのは、そのとおりだと思います。
知られた個人情報は消すことはできません。
実際に金銭的被害が出ていないのなら、何とか振り込まれたお金を返金して関係を切った方がいいのかもしれませんね。
今回は相手の連絡先が分からないということですが、新聞広告や振込者名や電話番号や業者名など、できるだけ情報を集めて、ネットで検索して連絡先を探してみてはどうでしょうか?
また、資料をいただければこちらでも探してみます。
(センターで探してみる。みつかればセンターから電話してもよいし、警察から電話してもらってもよい)どうしても見つからない場合は、警察に相談する方法もありますが、返金する方法までは難しいと思います。
(警察のヤミ金相談窓口があれば紹介する)
裁判で借りていないということを訴えることもできますが、手続き的に大変です。そのようなときに、たとえば家主が変わって家賃を払う相手が分からなくなった場合に、滞納にならないように、国(法務局)にお金を預ける「供託」という制度があります。
今回の振り込まれたお金も「供託」することができる可能性が高いと思いますので、一度法務局に相談にいかれたらどうでしょうか。
また、供託することができたら、センターや警察にも連絡して、その事実を記録しておくといいと思います。もし、業者から催促の連絡があった場合は、「お金は法務局に供託していて、消費者センターや警察にも相談しています。法務局に取りに行ってください。」と言ってください。
また、連絡があったのを機会にお金を返金したい場合や業者から契約はないことにするから返金してほしいといわれた場合は、細かいことは言わずに、口座番号を聞いて、供託金を返してもらい、元本だけ返金するという方法もあります。
手間はかかりますが、これで関係は基本的には切ることができます。
今後、何か言ってきたら警察やセンターに相談してください。

また、法律相談窓口と警察の相談窓口を紹介しておきます。

これが正しい回答とは限りませんが、何も助言しないよりは、ずっといい助言だと思います。
また、各自治体により、借金の相談は扱わないというセンターもあると思いますが、これぐらいの助言は十分にセンターの範囲内だと思います。

わたしの考えは、先に説明した、「元本も返金する必要はない」という弁護士等の法律の専門家の意見とは異なります。
消費者センターは、相談者の希 望に応じた(話し合いによる)解決を目指します。民法で決まっていることを必ずしもそのまま履行しなければならないというわけではなく、当事者の意思で権 利を履行しないこともできるというところです。「お金を返金しなくてもいい」とはあっても、相談者自らの意思で返金することは可能だと思います。法律に厳 密に縛られなくてもいいというところが消費者センターの長所でもあります。
今回の事例でも、「返金しない」という選択肢は正しくても、相談者の将 来の不安、すなわち、「ヤミ金に借金の問い合わせをしたという事実を知られている。お金を返却せず自分のものにしてしまった後ろめたさがある。将来、この 事実を関係者に知られたら家族が不利益を被ってしまうのでは。」という不安は残ってしまうわけです。
「ラッキー。ただでもらっちゃえ。」というあっけらかんとした相談者の場合と今回の不安で仕方がないという相談者とでは、消費者センターというレベルの相談対応では、助言に大きな幅があります。違う答えになっても全然かまわないと思います。
画一的に「返金しなくてもいい」とするのは、法律家の答えであって、消費者センター的な相談員マインドとは違うのではないかと感じます。
この違いについいては意見が分かれるところですが、それぞれに背景の違いを考慮しながら、考えていただけたらと思います

今回のヤミ金だけではなく、このサイトが始まって以来、すっと説明してきたように、多くの相談事例はきちんと整理して論理的に一つ一つ解決していけば、何らかの答えにたどりつくことができます。
ぜひ、そのようなスキルを身につけてほしいと願っています。
また、相談員のみなさまには、このようなスキルを向上させる訓練をしてほしいですし、行政にも、このようなスキルアップにつながる研修を実施してほしいと思います。
(終わり)
※もし、供託した実例を経験されたのなら、コメントもしくは問い合わせしていただければうれしいです(机上の理論が実際に使えるかどうか確認できてません。)

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ヤミ金からの押し貸しの元本返却 その5(最終回)」への2件のフィードバック

  1. かんりにん 投稿作成者

    センターによって受ける相談件数の差は、地方が少なく都心部は大きくという感じですね。経験値の差がつきやすい分、1つ1つの相談対応をじっくりできたり、ほかの相談員の受けた相談まで目を通せる余裕ができるというというメリットがあります。しかし、研修や助言を受ける機会が少なくなるので、自ら勉強していくことが必要になりますね。一緒に頑張りましょう。

  2. ひな

    供託という方法、思いもよりませんでした。当センターは年間の相談件数も少ないうえに、今回事例に取り上げていただいたような『押し貸しのお金を相手方に返金したい』という相談は今までに受けたことがありませんでした。今後、事例のような相談が入った際には、①~⑥の対応内容を思い出し活用したいと思います。スキル向上、頑張ります。

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