「売り言葉」に「買い言葉」(電車の中で)

電車の中でのこと。
別の電車への乗り継ぎがある場合は、そこに近い車両は大変混雑します。
しかも、奥に入らず入り口付近に人がたまってしまい、ほかの人が電車の中に入りにくいことがあります。

私は奥の方で立っていましたが、ある男性が入ってきて入り口付近で立ち止まりました。乗り継ぎのために、できるだけドアに近い場所にいたかったのだと思います。

当然、ドアの入り口はふさがれて、ほかの人が入りにくくなっています。

案の定、入ろうとした男性が進路をふさがれていたので、無理に入るかと思いきや、その男性に怒って、「奥に入らんか」と叫び、続いて罵声を浴びせかけました。

すると、その男性も、言い返して、一瞬やばい雰囲気に。
(たいていは何もいわず、何とか入り込むんですけど、たまに切れる人がいますね。まあ、怒る気持ちは分かります)

私はすぐ後ろに立っており、つかみあいになりそうだったら間に入ろうかなあと葛藤。

幸い、混むのは2分間の1駅分だったので、空気はぴりぴりしたままでしたが、なんとか耐えて到着しました。
駅に着いたし、これ以上発展することもないし、このまま終わってくれればと思いました。一瞬の出来事なので、時間が過ぎれば終わる話です。
まさか、言われた男性が降りた駅で逆切れしないやろうなあと思ってました。そうなれば最悪ですからね。

逆切れしてしまった...

残念ながら、文句を言われた男性は、次の駅で電車から降りて仕返しの行動をとってしまいました。

文句を言った相手はリュックを背負っていたのですが、その男性の後ろから、リュックを傘で引っ張り、「ちょっと待てや」と呼び止めようと行動しました。

1回目は傘がすぐに外れてしまいましたが、2回目も引っ張ろうとして、引っかからなかったものの、その男性が少し気づきかけ後ろを見ようとしました。

人ごみだったのと、エスカレーターがすぐだったので、接触はなく、それ以上もめることにはなりませんでした。

しかし、その男性は文句を言いたそうな感じで、追いかけて行きそうな雰囲気も漂っていたので、その男性の体をつかんで、「いいからやめとき」と声をかけました。

人の流れがあったので、そのまま階段を登りました。
私のひと言で、落ち着いてくれて何も行動を起こさなければ良いのですが、その後はわかりません。
もっと強引にとめて、落ち着かせた方が良かったかもしれません。
何もないことを願っています。

文句を言った男性は、いかにも文句言いの人間です。
文句を言われたほうは、普通のお父さんです。

これに良く似た状況は相談現場やお店でもみられます。
基本的なコミュニケーションの考え方で対応すればOKです。

事実と感情に分ける

一見、文句を言い、罵声を浴びせたほうが、けんかをふっかけた悪者のような気がしてしまいますが、事実と感情に分けると、そうではないことがわかります。

  • 入り口をふさいでいたこと⇒事実の行動・・・迷惑行為
  • 文句を言って罵声を浴びせたこと⇒感情の行動・・・注意しただけ(言い方は度が過ぎているが)
  • かさでリュックをつかもうとしたこと⇒事実の行動・・・下手すると傷害

実は、迷惑行為を注意したという構図になっているのです。
ただし、注意の仕方が度を越してしまっている可能性もありますが、原因があってのことです。また、手は出していません。
さらに、かさでつかもうとした行為は、相手がケガをする可能性もありますし、周りの人も巻き添えにする可能性もあります。場合によっては、傷害にもなりかねません。

人のよさそうな男性が、感情的になって行動してしまい、事件になってしまうと、家族も職場も悲しいですし、人生終わるかもしれません。しかも、相手は文句言いの男性です。乱暴な言葉を使う人は、たくさんいます。普段からこういう話し方でしょう。言い方が悪いという意識もあまり持っていないでしょう。ただ、迷惑行為を注意したということには変わりありません。感情的にですが。

場面の心理的な解説

  • 文句を言われた男性は、奥に行かず入り口付近に立ってしまった(事実)
  • 文句を言った男性は、確かに邪魔になった(事実)
  • いつもなら、よくある光景なので誰も文句言わず、押されて中に入ってしまう(常識とはいえないが日常の光景)
  • しかし、この男性はいきなり切れて文句を言った(非日常)
  • 文句を言われた男性は、電車の中で恥をかいた(予想もしていないことに対して頭の中はパニック)
  • そこで、ついつい言い返してしまった(感情のコントロールがきかなくなった)
  • すると、相手も輪をかけて文句を言ってきた(当然起こるべき現象)
問題点は基本的には文句を言われた男性側にある

①奥に入らず邪魔になってしまったことを認識する
②罵声を浴びせられたとしても、(「ごめんごめん」など軽くてもいいので)謝罪することもできなかった
③言い返してしまった
④降りた後に文句を言おうとした

この男性の正しいとは限らないが、最善の対応方法

①謝罪する
②言い返さず、次の駅に着くまで耐える

こんな人を相手にするだけ損です。プライドを押さえて、ぐっと我慢しましょう。

「売り言葉」に「買い言葉」。買ったら損です。苦情対応でも、言葉の悪い消費者はたくさんいます。その言葉に対して、買ってしまうと、損するだけです。苦情の内容は飛んでしまい、消費者対応についての苦情になってしまいます。そうすると勝てません。

対応のコツは、何か勝手に文句言ってるわと思ってスルーして、事実を淡々と処理しましょう。
変に相手するとメンタルになっちゃいます。
真正面から退治しなくてもいいんだよという気持ちを持つことです。
そういうことを教えてくれる研修って少ないんですけどね。

こんな些細なことが殺人事件になったりする世の中です。
以上、ある日の出来事でした。