ヤミ金からの押し貸しの元本返却 その3
ちなみに、前回の不法原因給付ですが、24年度の相談員試験の民法の問題として出題されています。
今回が解決方法として最終回となる予定でしたが書いていくうちに思いのほか長文になったので、分割します。
それでは相談現場ではどのような対応方法があるのか考えたいと思います。
いつも言っていることですが、答えは1つとは限りませんし、私の考えが正解だというものではありませんが、一つの考え方として参考にしていただいて、みなさまのスキルアップにつながればと思っています。
相談者の希望要望は何でしょうか?
これがすべてです。
簡単ですね。
複雑に考える必要がないのです。
不法原因給付という知識を持ち出して相談者の希望していない方向へ導く必要はないのです。
相談員として何をすべきかは単純なのです。
法律に従うと「不法原因給付は返還する必要がない」となりますが、これは相談者の希望ではありません。
これを適応することは前回までに説明した行政書士としての戦略になります。
行政書士としては、「なぜわざわざ返還しなければならないのか?」となりますが、消費者センターではしばしば法の枠にこだわらないあっせんを行います。
相談者の希望を最優先して、その解決方法を消費者センターのできる範囲で提示して、相談者の判断をあおぐというのが前提になります。
何度もいいますが、消費者センターというところは、クーリングオフのように法律に則った判断をする部分もありますが、多くは裁判のように明確に白黒をつけるのではなく、お互いの要望を聞きながら妥協点を探り落としどころを見つけ「あっせん」をするところです。
この相談者の要望は不法原因給付のお金を自分のものにするのではなく、「今後何か言われるのが嫌」だから「お金を返したい」のです。
この相談者の要望が、消費者センター的に妥当かどうか考えます。
まず相談者に具体的な損害が出ているか?
といえば、利息も返済もしていないので損害は発生していません。
今後何らかの損害が発生するおそれがあるのか?
といえば、業者側から見れば押し貸しをした状態にあるので、このまま放置しておけば、利息を含めた返済をせまられるおそれがあります。
また、契約の有無の議論になっても、通じる相手ではなく、何らかのいちゃもんをつけられる可能性があります。
今のままの状態では、将来的に、相談者の「今後何か言われるのが嫌」という希望がかなえられない可能性があります。
消費者センター的には、この将来的な不安をなくしてあげることが大切になります。
この不安をなくすにはどうしたらいいでしょうか?
そして振り込まれたお金をそのまま返すためにはどうすればいいのでしょうか?