督促OL 修行日記 その1

新卒でカード会社に就職し、延滞者の督促の部署に配属されたOLの書いた本です。
督促という仕事は、かなりメンタルにくる仕事です。
相手から罵声されたり、脅し文句をつけられたり、人格を否定されたり、多くが短期間でメンタルに病をかかえ、やめていってしまう世界です。
そのような世界で、ぼろぼろにもまれながら、うまく立ち回る術を身につけていった日々がつづられています。

tokusoku

督促OL 修行日記

登録情報(amazonより)
単行本: 237ページ
出版社: 文藝春秋 (2012/9/22)
言語 日本語
ISBN-10: 4163756507
ISBN-13: 978-4163756509
発売日: 2012/9/22
商品パッケージの寸法: 19 x 13.2 x 1.8 cm

 

 

内容説明(amazonより)
「一時間に60本の電話がノルマ」「電話で怒鳴られるのは日常茶飯事・・」。
大学を卒業して入った会社で、著者は、いきなり借金を返さない人に督促の電話をかける部署に配属され、「督促OL」となった!
客からストーカーよばわりされたり、呪いをかけると恨まれたり、今から殺しにいくぞ・・と脅されたり、仕事を熱心にすればするほど、人から嫌われる仕事に心が折れそうになる日々・・。
もともと人見知りで、人に強く言えない性格の著者が、百選練磨の借金王の面々を相手に、毎日格闘し、ついには、2000億円の借金を回収する「スゴ腕 督促OL」に!
”日本一ストレスフルな職場”で、自分なりの得意分野を探しだし、モチベーションを維持する方法を見つけ、仕事に誇りを見出していくまでの、新人時代をエッセイとマンガでつづる。


消費者センターの相談業務もメンタルに厳しい職業ですが、この督促OLほどではありません。
なぜなら、民間ではなく公的機関なので、ある程度の防波堤は作られています。
しかし、うまく渡れない相談員はメンタルにやられてしまうこともあります。
この本には、ストレスフルな事態に対応するノウハウが満載です。
相談業務にもきっと役に立つと思います。
有名な本なので図書館においていると思いますし、古本屋で購入してもいいのではないでしょうか。
私は図書館で借りたのち、ネットで中古を購入し、マーカーを引いてます。

この本を題材に「消費生活相談現場での応用」としての研修ができるほどアイデアが詰まっています。
いくつか抜粋して、相談現場での応用をまじえながら紹介します。

督促OLのコミュ・テク! その1 約束日時は相手に言わせる

約束を破られた直後はある意味チャンス。
約束を破った直後に電話をすると、まだお客様の心の中に「約束を破ってしまって悪いな」という負い目がある。そこで交渉にその「罪悪感」を利用する。
心理学の名著『ブラックメール』という本の中に、人間がつい無意識に動かされてしまう三つの感情が紹介されていた。その三つとは「恐怖心」「義務感」そして「罪悪感」だった。

・「約束をする」ことに関して相談現場では2通りの使い方があると思います。
・一つは、クレーマー的な相談者に「できない」ことを理解してもらうために他の機関へ何らかのアクションを起こすように助言することがあると思います。他の機関にたずねても「できない」とわかっているから、結果的にアクションを起こさず、消費者センターにだけ強い態度を出す傾向があります。アクションを催促していたのに、していない場合は、相談を打ち切ることを通告することもできます。どちらかというと、「マイナス」の使い方ですね。
・もう一つは、相談者の背中を押すために使います。悪質商法に引っかかってしまう人には、心が弱い人も多く、あきらめてしまう人も少なくありません。しかし、消費者センターとしては、あきらめず、被害回復をしてあげることが重要です。ただ、どうしても本人にアクションしてもらわなければならないこともあります。事業者に本人確認が必要な書類を送ってもらったり、申出書を書いてもらったり、契約書を探してもらったり、結構、手間がかかります。そんなときは、約束事を守ってくれるようプレッシャーにならない程度にお願いするのです。もちろん、消費者センターが最大限のバックアップをすることも添えて。こちらは「プラス」の使い方ですね。
くれぐれも、約束事を破ったという罪悪感から、相談を取り下げることにならないように注意してください。

督促OLのコミュ・テク! その2 「お金返して!」と言わずにお金を回収するテクニック

電話に出てくれたお客さまにストレートに「ご入金の確認が取れていないのですが・・・・」と切りだしたところ、相手は急に怒り出してしまった。私のストレートな物言いは相手のプライドを傷つけてしまったらしい。
そうしたら相手を怒らせず、気まずい雰囲気にならずにお金を返してほしいといえるのかなあ
私はたまたま読んでいた論理学の本にこんな一文を見つけた。
『人間の脳は疑問を投げかけられると、無意識にその回答を考え始める』
「お金を返して」と言うのではなく「何日に払える?」と尋ねる。日にちがわからないと言われたら「いくらだったら払える?」と質問を変えてみる。これで、相手との雰囲気を悪くすることなく入金の催促をすることができる。

・これは、まさしくコミュニケーション能力になります。上から目線にならず、上手に相手の言葉や考え方を引き出す質問の仕方、話し方です。どのような質問や話し方をすればいいのか分からないという問いに対するヒントですね。ある程度の誘導尋問的な問い方も使い方しだいです。
(つづく)

この記事にはコメントを記入することができます。コメントを記入するには記事のタイトルかコメントリンクをクリックして単独で記事を表示してください。

国セン移行の動き(まとめ)

民主党政権時代にすすめていた独立行政法人の改革やそれに関連した国民生活センターの取り扱いなどの動きがストップしたままですね。
そこで、自分でも常にチェックしておく必要のある国民生活センターの国への移行や地方消費者行政に関連する動きを整理してみました。
ごちゃごちゃしてて読むのも大変だと思いますので、最後の「まとめ」だけも読んでいただいたと思います。

消費者庁HP
ホーム > 地方協力課 > 国民生活センターの在り方の見直しに係るタスクフォース
http://www.caa.go.jp/region/index6.html

ここからスタート

国民生活センターの在り方の見直しに係るタスクフォース
「独立行政法人の事務・事業の見直しの基本方針」の閣議決定(平成22年12月7日)を受け、国民生活センターの在り方の見直しに係るタスクフォース」を設置し、国民生活センターの在り方のについて検討を開始しました。
国民生活センターの在り方の見直しに係る今後の検討について[PDF:110KB]
http://www.caa.go.jp/region/pdf/101210kokusen.pdf

国民生活センターの在り方の見直しに係るタスクフォース取りまとめについて
8月26日、第15回タスクフォースにおいて、取りまとめが行われました。それを踏まえ、政務三役による会議が開催されたのち、細野大臣が「試行・検証を実施し、然るべき時期に政務として判断する」旨の記者会見を開催しましたので、その資料を掲載します。
国民生活センターの在り方の見直しについて(大臣臨時会見での配布資料)
国民生活センターの在り方の見直しに係るタスクフォース取りまとめ
http://www.caa.go.jp/region/pdf/110826torimatome.pdf
※問題点がうまくまとめられているので、この時点で何が焦点になっているのかを理解することができます。

一部抜粋

・財産事案
(独)国民生活センターは相談情報の分析能力を備えた人材を擁しているものの、基本的には従来からの情報提供(任意の注意喚起)にとどまる。
消費者庁は法執行(行政処分等)以外にも法律に基づき事業者から資料の提出等を求め、注意喚起を行う権限があるが、それを十分に活かす知見・ノウハウ・体制が不足。

国民生活センターの在り方の見直しに関する検証会議
「国民生活センターの在り方の見直しに関する検証会議」中間取りまとめについて
平成23年12月6日、第7回検証会議において、中間取りまとめが行われました。
「国民生活センターの在り方の見直しに関する検証会議」中間取りまとめ(本文)[PDF:95KB]
http://www.caa.go.jp/region/pdf/111206_matome.pdf

国民生活センターの在り方の見直しについて
「国民生活センターの在り方の見直しに関する検証会議」の中間取りまとめを踏まえ、政務三役(大臣・副大臣・政務官)で協議の上、12月27日の消費者担当大臣会見において「国民生活センターの各機能を、国へ移行することが妥当と判断した」旨の発表を行いました。
「国民生活センターの在り方の見直しについて(消費者担当大臣会見での配布資料)」
http://www.caa.go.jp/region/pdf/111227shiryo.pdf


消費者行政・食品安全の総合案内
消費者・生活者が主役となる安全・安心社会の実現をめざして
http://www.anzen.go.jp/index.html

国民生活センターの国への移行をふまえた消費者行政の体制の在り方に関する検討会(平成24年2月~8月)
http://www.anzen.go.jp/kentou/index.html
「国民生活センターの国への移行を踏まえた消費者行政の体制の在り方に関する検討会」報告書~消費者行政の機能強化を目指して~(平成24年8月22日)
http://www.anzen.go.jp/kentou/pdf/0822_houkokusho_1.pdf


最新の動き

消費者行政の体制整備のための意見交換会(平成25年3月14日~)
http://www.anzen.go.jp/seibi/index.html
1.趣旨
消費者庁及び消費者委員会設置法附則第3項の趣旨を踏まえ、国民生活センターを含めた消費者行政の体制を整備するための検討に資するため、森まさこ
内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)が様々な立場の有識者と意見交換を行う。
「消費者行政の体制整備のための意見交換会」中間整理
(内閣府特命担当大臣記者会見(平成25年7月26日)での配付資料) [PDF:152KB]

http://www.anzen.go.jp/seibi/pdf/130723_siryou.pdf

まとめ
以上のような流れで検討されてきました。
これらの見直しの検討は平成22年12月から始まり、平成24年8月22日に「国への移行が妥当である」と結論付けて平成25年度中に移行すると決めたものの、政権交代後の平成24年12月末に、大臣の意向により、国民生活センターへの国への移行が白紙となりました。
したがって、予定していた平成25年度中に移行することはなく、平成26年4月以降についてどうするのかは、1年かけて再検討するとのことです。
大臣コメントの中で、26年度以降の組織形態について「やっぱり国に移行するかもしれないし、ずっとそのままかもしれない」と発言しています。
大臣の意向を受けて、今現在行われている検討会が「消費者行政の体制整備のための意見交換会」で、国民生活センターの移行だけでなく、それを含めた消費者行政の体制について検討されています。

結局、答えの出ないスタート地点に戻ったような...
私の予想としては、大きな反対(?)を受けてまで国へ移行する決断はできなでしょう。したがって、基本的には現状維持になると思います。独立行政法人のままなのか、新しい組織にするというマジックをかけるのかは分かりませんが、今と変わらないような気がします。残念です。

前にも書いたことですが、スポーツ界で問題となっている体制と変わらないような気がします。結局体制を変えず、改革をやろうとしてもできないことはよくある話です。
相談対応でも「事実と感情」について説明していますが、国民生活センターの業務の中で、「事実として問題点や改善点がある」というのは共通認識としながらも、「国へ移行すると~となるかもしれない」という、まだ起こっていない感情論で議論されると先には進めません。そんなの、変えればいいだけの話だと思います。やってみてうまくいかなければ、再度検討したらいいだけの話です。
(「変えればいいだけ」と書いて頭に浮かんだのが、「花咲ける青少年」でカジカが友人を救うために侵入したラギネイの神殿で大祭司に言ったせりふです。マハティもかつて同じ発言をしています。分からない人はスルーしてください。私の好きなマンガです。)
本当に変えればいいだけだと思います。変える気があるかどうかだけの問題です。

同じ独立行政法人のNITEと比べてみれば分かると思いますが、NITEは現状も独立行政法人で残っており、特に問題は出ていません。というよりも、相応の努力をしてきた。それに対して、国民生活センターの見直しの議論がいまだに出ること自体、これまで何もしてこなかったということです。
個人的には、2007年に福田総理が国民生活センターに視察にきたことで安心しきってしまったのが、改革が進まなかった一つの要因ではないかと思っています。
国民生活センターHP
トップページ > 国民生活センターについて > 国民生活センターの紹介 > 国民生活センターの出来事 > 2007年10月26日 福田内閣総理大臣が当センター相模原事務所を視察
http://www.kokusen.go.jp/dekigoto/data/de-20071026.html

せっかくなので簡単に書いてみますが、私が思う問題点の一つは、冒頭のタスクフォースとりまとめで抜粋したものを少し拡大したもので、事業者への指導処分権限です。これがないから国センは単なる中間的な施設になってしまい、「地方→国セン→事業者指導処分」のラインにはならず、「地方→国セン→地方→(都道府県・国)→事業者指導処分」のラインになります。その最たるものは商品テスト機能でしょう。少し極論かもしれませんが、今では単なる無料の便利な検査センターのようになっています。まあ、こういう話は別の機会にしたいと思います。

そして、相談員にとって一番重要な議論である「消費生活相談員資格の法的位置付けの明確化等に関する検討会」http://www.caa.go.jp/region/index8.html)については、平成24年8月に中間報告(http://www.caa.go.jp/region/pdf/120827_houkoku.pdf)が出て、1年経過しましたが動きはありません。
これについて少しコメントしておくと、どうも新しい試験制度を創設することが前提になっているような雰囲気があり、その元となるのが、国民生活センターが国に移行されたら国民生活センター理事長が認定している消費生活専門相談員資格の制度も再考しなければならず、試験自体もなくなる可能性があるということでしょう。だから、この検討会は国民生活センターがどうなるのかということにリンクしているので先に進まないのも一つの要因だと思います。
しかし、本質的な問題は、相談員の資質の向上のためにどうすればいいのかということが議論されるべきで、ある程度議論はできているものの、結局試験制度の話にもどってしまうので、前に進まないのだと思います。「相談員の資質の向上」については理想論とはいえ、相談員に必要なスキルについてはかなり整理してまとまっているので評価できます。この点については、別途、詳細に書いていきたいと思っています。
なお、この試験制度が改革されれば現職有資格相談員の追加試験や研修、無資格相談員への圧力など、大きな問題に直面することになるので、しっかり注目するとともに、意見があればどんどん主張してほしいと思います。
ちなみに私の意見は
試験制度は現状のままで筆記試験の内容を工夫する。面接試験等も現状のまま。新たなコミュニケーションスキル等の技能の試験は実施せず、必須の研修として担保する。すんわち、ほかの資格でもほぼ同様で、基本的な知識を資格取得のための要件とし、取得後に経験や研修を積みながら技能を向上させる。
無理だろうけど、理想を書くと、相談員はすべて正規の公務員としての採用で、職種は「相談員」等、大学での専門科目の卒業を要件として、公務員試験の一般科目と専門科目と面接を行う。相談関係の職場を回りながらキャリアを積んでいく。

まとめといいながら、長くなってしまいました。頭の隅でもおいててもらえればいいかなあと思います。

この記事にはコメントを記入することができます。コメントを記入するには記事のタイトルかコメントリンクをクリックして単独で記事を表示してください。