ジャドマニューズ 2014年3月号

各センターにも冊子で送付されている「ジャドマニューズ」ですが、「通販110番」という記事が相談現場でも役に立つので毎号紹介します。
少し事業者目線の回答であったりしますので、消費者センター的な立場での考え方に置き換えたりもします。
また、最後のほうに「裏話」的な記事が連載されており、とても勉強になります。
なかなか毎号冊子を読む機会がないかもしれないので、この記事を活用してください。

※通販系のトラブルはジャドマの通販110番を消費者に紹介することも多いと思います。電話だけでなくメールでの相談も受け付けています。
困難事例で通販110番を紹介するポイントについてはオープンでは書きにくいので会員用に書きたいと思います。

JADMA日本通信販売協会
http://www.jadma.org/

通販110番について

通信販売に関する消費者からの相談受付機関として、協会に消費者相談室「通販110番」を設置し、消費生活アドバイザーの資格を有する相談員が、年間約6,000件の相談に対処しています。
また、「通販110番」や消費者センターに寄せられた苦情について、解決策を協議し、会員へフィードバックしています。
通販110番 消費者相談窓口 電話番号:03-5651-1122
月~金曜日 午前10~12時,午後1~4時(年末・年始、祝・祭日除く)

※メール相談も可能です


「ジャドマニューズ」の最新号・バックナンバーは、HPで閲覧できます。(毎月15日発行)
2014年3月号
http://www.jadma.org/pdf/news/2014_3.pdf
ジャドマニューズ
http://www.jadma.org/jadma_news/index.html

①通販110番
消費者相談編
納期が遅れるのにキャンセルできない!?
「商品の引き渡し時期」として、特定商取引法上、期間または期限を表示する義務があります。消費者にとっては、商品選択の重要なポイントのひとつですが、それが事業者に認識されず、納期が遅れた場合にトラブルとなることがあります。

事例1

注文後に、在庫切れのため納期が明確に約束できないと言われた
家電販売店のネットショップでパソコンを注文した。商品広告には「在庫有り」の表示があり、これをクリックすると、「発送目安表示について」の画面に遷移し、「在庫がございます。14時までのご注文は当日出荷いたします」と明記されていた。
ところが、注文後に会社から「在庫がなくなったので、納品が2~3週間先になる」との連絡が来た。そんなにかかるなら他店で注文したいと思い、「納期が明確でないならキャンセルしたい」と申し出ると、
「規約に定めるとおり、売買契約は、お客様がご注文・ご購入に同意したことを示すボタンを押したときに成立しているため、契約解除できない」と断られてしまった。
在庫がなく、納期が明確に約束できない場合でも、規約を根拠にキャンセルできないことに納得できない。

→申し込み時の条件と大きく異なる「大幅な遅延」の場合、キャンセルできる
当該社のサイトを確認した。商品広告の表示は相談者の申し出通りだった。そこで、2~3週間の遅延は、申し込み時の条件と大きく異なるため、キャンセルの主張ができると助言した。
その後相談者から「粘り強く交渉した結果、キャンセルを受けてもらった」との報告があった。 現在の当該社の広告は、商品ごとに「発送目安:5営業日」等、期限が明確に表示されており、「『発送の目安』を超えた場合は、キャンセルを承ることも可能です」と改善されていた

※「商品が届かない」というパターンにはいくつかあって、純粋に商品在庫がなくて送れないパターンと最初から詐欺だったパターンがあります。後者についての説明は省略しますが、前者の場合に消費者トラブルになります。今回の事例のように当日出荷するとしていながら届かなかった場合で、かつ2-3週間先になるというケースでは通常キャンセルは可能だと思います。この2-3週間というのは、何らかの事業者の手違いで実は在庫がなく新たに発注をかけたので納期も確約できないと思われます。大きな事業者の場合、そのようなミスはあまりありませんし、、あればキャンセルには応じると思いますが、誰でもネット通販をできる時代ですので、個人でやっているような小さい事業者では在庫管理がおろそかになりがちですし、配送期間への意識も薄いと思います。だから、規約?どおり、キャンセルできないと言ってくるのでしょう。商品配送が遅れるだけで問題はないという意識ですが、消費者にはたまったものではありません。今回の場合、配送期間は消費者にとって契約を決める重要事項に違いないからです。
考えられるのは事業者にとって初めての苦情パターンだったのかもしれませんので、交渉に時間がかかったと思います。それを反省してか表示を改善しています。次回から、この事業者での同種のトラブルはなくなると思います。悪い事業者ではなく、事業運営というのがよくわかっていなかったのだと思います。相談者へは、このような事情があって、事業者にとっては初めてのトラブルだった可能性があり、相談者の交渉は大変だったと思うが、おかげで事業者の意識を変えさせて改善させることに役立ったようです、と相談者ががんばって交渉したおかげで、事業者にもよい影響を与えることができたと説明してあげたら、プラス思考になると思います。
在庫を持たないでネットショップが運営できるので、運営者情報や評価も確認して、事業規模や顧客対応を知ることが大事だと思います。

事例2

届いた商品に不具合があったため、使用時期に間に合わなかった
ネットショップで、オーダーメイドのドレスを注文した。着用したい日が迫っていたので、その期日までに入手したい旨は予め伝え、了承を得ていた。
商品は期日前に届いたが、会社のミスでサイズが合わず、修正をしてもらうことになった。しかし、何度もやり取りをすることで最初の約束期日までに間に合わず、結局着用できなかった。
会社に全額返金を要望すると、価格の3分の1程度を返金するとの回答を得たが、納得できない。

→一方的に意見を主張するのではなく、妥協点を探る交渉を
会社の返品条件等を確認した。「オーダー商品は顧客都合での返品不可」「商品に欠陥等があった場合には、やり直すことで対応する」とあった。
しかし、注文時に納期を会社が了承していたにも関わらず、事業者のミスで期日に間に合わなかったということであれば、契約の解除ということになるだろう。
一方、オーダー商品ならば、もう少し期日に余裕を持って注文すべきだった。相談者の気持ちは理解できるが、会社はミスを認め、やり直しをする努力をしている。全額返金を強硬に主張すると会社の態度が硬化する懸念もあり、返金額を上げる方向で会社と話し合ってはどうか、と助言した。

※「サイズをあわす必要のある衣料品」かつ「期限が決まっているもの」という条件は、ネット通販でもリスクの高い商品であることを理解しておく必要があります。
このような商品は、やはり近くのリアル店舗で購入すべきと思います。今回は購入した後なので、事後対応になりますが、機会があれば、ネット通販の啓発等で今回の事例を出して、ハイリスク商品について話をしていただければと思います。
性善説で考えると私は事業者に同情したい気持ちです。事業者自身も不具合の商品を販売したいわけではなく、何らかの行き違いによって不具合になってしまい、何とかしようと努力したけど、間に合わなかったという話です。どこにミスが生じたのか事例では書かれていませんでしたが、「オーダー表どおり製作したのにオーダーどおり製作されなかった」のか、「オーダーどおり製作したのに消費者が着れなかった」のか、「消費者のサイズ測定にミスがあって、オーダーどおり製作したのに着れなかったのか」ということが考えられます。プロがオーダーどおり製作できなかったとは考えにくいので、消費者側の測定ミスがあるかもしれないということを頭の隅に入れて、一方的に事業者が割るいと想定しないで相談対応する必要があると思います。行き違うと感情的になってあっせんも難しくなります。
この事例は期日に間に合わず損害賠償的な意味も含まれているので、難対応事例でしょう。金額交渉も入るので消費者センターの枠を超えるかもしれませんね。消費者の気持ちも分かるし、事業者の気持ちも分かるし、落としどころが難しいと思います。

通販110番より

事業者は、「引き渡し時期」が遅延する場合は柔軟な対応を消費者は、期日に十分な余裕を持って注文を
事業者は、品切れ等により「商品の引き渡し時期」にお届けできない場合は、速やかにその旨を消費者に通知しなければなりません。契約が成立していれば再度注文の意思確認も必要です(商品の発送をもって契約成立としている場合もある)。
しかし、契約成立を理由に、「キャンセルできない」と一方的に拒否する事業者があり、今回のケースのようなトラブルに発展することもあります。そもそも事業者側の都合で「引き渡し時期」の条件が変わるのですから、可能な範囲で柔軟に対応すべきでしょう。
また、出荷遅延のお知らせを出していても、「いったいいつまで待てばよいのか?」と内容の不十分さから消費者が不安になり、不満を募らせることもあります。出荷時期はできるだけ具体的に明記し、大幅に遅れる場合、契約解除の希望があれば応じるべきだと思います。
クリスマスやハロウィンなどの時期には、着用日に間に合わなかったとの苦情も入ります。季節商品等、使用日が限定される商品の取引にあたっては、消費者側が期日に十分な余裕を持って注文するとともに、事業者側も受注予測に基づく販売数の確保や、万一、期日に間に合わない場合の対応を予めルール化しておくことが望まれます。

②誌面に書かないメディアのホンネ
vol.10 「偽通販サイト詐欺」が急増している背景とは?

昨年あたりから、ネット通販の「前払い」にまつわるトラブルが爆発的に増加している。この現象をメディアはどう見ているのか、そして背景には何があると考えているのか。これまで様々な詐欺の現場を取材してきたジャーナリストに聞いてみると、意外な答えが返ってきた。

概要

・通販の「前払い」トラブルに振り込め詐欺グループが関与?
・「偽通販サイト詐欺」は通販トラブルではない

偽通販サイト祭儀は「おれおれ詐欺」の組織的な犯罪グループが関与していることも多い。金融機関のフィッシング対策が強固になったので、お手軽な通販サイトをターゲットにしてきた。
通販サイトをそっくり真似たデザインで詐欺を行う。
偽通販サイト詐欺は「通販トラブル」ではないまったく別の問題である。

この記事は、問題の本質を知ることができるので、ぜひとも読んでいただきたいです。

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共感の一歩は相手を知ることから

相談業務は相談者とのコミュニケーションが最も大切です。
コミュニケーションを円滑にするためには相手から信頼を得ることが重要です。
信頼を得るためには相手を知ることがステップとなります。

相手の気持ちになって考えることが重要といえば簡単ですが、実際は簡単でないことが多いです。
相談員の価値観を押し付ける形になってはいけません。
一般常識が相手によって異なってくるというのもコミュニケーションの難しさです。
相手を理解することは簡単そうで難しいです。
特に世代間の価値観の違いは理解するのが大変です。
いわゆる、ジェネレーションギャップですね。
相談員の年齢層は50代前後がが中心です。

(参考)

全国消費生活相談員協会HP
トップページ > 協会の活動 > 報告書のご案内
http://www.zenso.or.jp/katsudou/houkoku.html
全国消費生活相談員協会会員実態調査報告書[掲載日時: H24.01.25 ]
平成23年9月に行った第10回目の調査報告です(PDF形式:1117KB)
http://www.zenso.or.jp/files/kaiinjittaityosa201109.pdf
2ページ
アンケート回答者1112人
40代286人(25.7%)、50代478人(43%)、60代233人(21.0%)

20代の相談者の価値観や考え方とは大きく異なることがあるということを認識しなければなりません。
相談員が常識として考えていること、そして、50代の世代にとっても常識である考え方が、20代の消費者と同じであるという前提で対応するとコミュニケーションにずれが生じて信頼を勝ち取ることができず、共感しあうことができないことにもなりかねません。
相談者が何を望んでいるのか、センターに何をしてほしいのか、同じ相談内容でも個人個人によって求めるものは異なります。

今の若者は「さとり世代」と呼ばれます。
50代といえば「バブル世代」です。
「今の若者が何を考えて何に対して消費しているのか」を考えてください。
また、20代の相談員は先輩相談員との価値観の違い、50代前後以上の相談者の気持ちを感じ取ってください。
ぜひ、読んで欲しい書籍です。

このサイトの会員へは必須参考書籍としたいところです。
大きな図書館においているかもしれません。
私も図書館で借りましたが、手元に置きたいので購入しました。

ポイントを抜粋できないほど濃い内容です。
あえて、抜粋すると
・「これからは、国も会社も守ってくれない」と言い聞かされて育ってきた。
・さとり世代は「物欲」より、「コミュニケーション欲」が強い
・「ネタになる」ことこそ重要で、ネタ消費のために「いいモノ」より「ネタになるモノ」を売るべきである。
・男性に求めるのは、バブル世代は三高(高学歴、高収入、高身長)だったが、さとり世代は三平(平凡な見た目、平均的な年収、平穏な性格)。
筆者はバブル世代なので、バブル世代の相談員にはとても納得できるものがあるのではと思います。


登録情報
単行本(ソフトカバー): 279ページ
出版社: PHP研究所 (2013/10/29)
言語: 日本語
ISBN-10: 4569813402
ISBN-13: 978-4569813400
発売日: 2013/10/29
商品パッケージの寸法: 18.8 x 12.8 x 2.4 cm

内容紹介(amazonより)
涙袋、なんちゃって制服、ニコファーレ、キュン死、強制入籍セット……
「さとり世代」(17歳~26歳)にヒットしている「なんだコレ!?」の商品群から「次の市場を開くカギ」が見えてくる!
著者は「草食系」「おひとりさま」「年の差婚」など、若者たちの生活実感をあざやかに斬り取ったキーワードを世に広めた気鋭のマーケティングライター。「モノを欲しがらない」「闘争心に欠ける」「力を出し惜しみする」と言われる「さとり世代」が、実は消費することは嫌いではなく、周囲との同調性を重視し、効率主義に徹しているだけで、「私たち大人よりずっと賢い消費者であり生活者」だと分析する。
「ファッション・美容」「通信・ゲーム・アプリ」「飲食・菓子」など6つのカテゴリー別に、最新のヒット商品やキーワード「53」を抜粋し、4ページ見開きで解説。営業、商品開発者はもちろん、若者との対話に悩む上司にもおすすめ。

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督促OL 修行日記 その2

督促OLのコミュ・テク !その3 いきなり怒鳴られた時に相手に反撃する方法

「オイコラ!!どうなってんだよー!!」
怒鳴られたショックで、私の思考回路は一瞬にしてフリーズしてしまう。
お客さまは何やらTVだったら放送できないようなお言葉で怒鳴り続けているが、とりあえず怒鳴りつけられたショックでこちらは頭が真っ白。相手が何を言っているのか理解できないし、こうなるともう督促の交渉どころではない。
クレームの電話を受けると、対応に慣れていないオペレーターは緊張とショックで固まって受け答えができなくなってしまう。突然のことに泣き出してしまうオペレーターもいる。
そもそも私たちが怒鳴られると固まるのは、どうやら動物としての本能らしい。
動物の世界ではほとんどの捕食者が動くものを標的に狙ってくるからだ。群れの中で動いた固体から狙われる。だから人間も動物として危機を感じると固まるようにできている。
(どうにかして怒鳴られたショックで固まるのを防げないだろうか・・・・)
そして色々と試行錯誤をした結果、一番効果的だったのはちょっと驚くぐらいに単純な方法だった。
いきなり怒鳴られてビクッと体が固まってしまったら、その瞬間思いっきり足をつねる。もしくは足の小指をもう一方の足で踏んづけるなどして、下半身を刺激するのだ。
(痛っ!!)と感じると同時に、怒鳴られたショックによる金縛りは解ける。そこからお客様に反撃することができるのだ。
直接つねったりしなくても足を踏ん張るだけでもだいぶ違う。

有名な動物学者いわく「下肢(つまり足)には本当の気分があらわれやすい」らしい。不安な人は足が落ち着かないし、足を広げている人は偉そうな印象になる。
実際、お客さまとの間にクレームを起こしていたり、相手に言い負けてしまうオペレーターさんは、足元が落ち着いていないことが多い。オペレーターブースの後ろからオペレーターさんの足を見ていて、足をぶらぶらと浮かせていたり、足を組んだりしているオペレーターさんは、トラブルを起こす確率が高かった。
逆も真なりで、足を整えることで心も整えることが可能なんじゃないだろうか。
いきなり怒鳴られてショックで固まってしまったら、グッと足に力を入れて踏ん張ってほしい。そうすることで早く金縛りを解くことができる。そしてお客さまに即座に反撃を開始できるのだ。

・抜粋が多くなってしまいました。相談現場では話がこじれて怒鳴られることやリピーターからいきなり怒鳴りの電話がかかってくることはよくあると思います。相談者からだけではなく事業者からも怒鳴られて板ばさみになることもあります。
・クレーマーになるべくしてなった相談者。相談員の相談対応がまずかったためにクレーマーになってしまった相談者。
・相談員が対応を交代することは原則ないと思いますが、いざというときは、行政職員に対応してもらうところはあります。
・「所長に変われ」もありますね。
・相談現場ではクレーマーという言い方はあまりしません。「対応に苦慮する相談者」「難対応相談者」というところでしょうか。これについては、多くの専門研修もありますし、特に重要なコミュニケーションが求められます。心理的にどちらが優位に立つか?どのような話し方をすればいいのか?など多くのノウハウがあります。スキルアップサイトでの詳しいクレーマ対応については別の機会に書きたいと思いますが、この本では、この後にいくつかのヒントが書かれています。次回は、それを紹介します。
(つづく)

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