ジャドマニューズ 2010年10月号

ジャドマニューズは日本通信販売協会の広報誌で、以前に紹介したところです。
ジャドマニューズ(日本通信販売協会) https://soudanskill.com/20100809/81.html

10月号の「通販110番」の記事から一部紹介し、コメントします。

通販110番消費者相談編 「箱を開けただけなのに返品不可!?」
3つの事例が紹介されていましたので、ざっくりまとめました。
①ネット通販で購入したオフホワイトのコーヒーメーカーを箱を開けて確認したらイメージしていた色とは異なっていたので返品を申し出たが未使用でも開封後は返品不可という。
→返品条件に明記のとおり開封後は返品交換不可
②ネット通販で購入した4枚1セットの補正下着が個包装され、さらに4つを大きなビニール袋で包装されていたが、大きなビニール袋を開封して確認したらサイズが小さいようで交換希望したが、開封後は返品不可という。
→個包装は未開封だったので交換可能。大きい包装と個包装との確認不足
③テレビ通販で購入した美顔器の箱を開封し、ビニール袋のまま持ったところ重いので返品を申し出たが、開封後は返品不可という。
→衛生商品につき箱を開けていないことが未開封と十分に事前説明しているので返品不可。

コメント
相談員であれば、このような相談はよくあると思います。
問題点を単純化すれば、
①事業者に問題がある②消費者に問題がある③事業者と消費者の両方に問題がある
の3つに分けられます。

まず、基本となるのが、「通信販売」は特定商取引法の取引類型に該当するが、クーリングオフの対象ではないということですね。
しかしながら、広告での規制がいくつかあります。特に、今回の事案でもとりあげている「返品特約」です。
「返品特約(返品の可否、条件、送料の負担)」が明示されていなければ、消費者は商品の引渡し日から8日間は送料消費者負担で返品できる、すなわち、契約の解除が可能であるということです。
ほとんどクーリングオフと同等ですね。ただし、返品特約が明示されていないことは、一般的な通販では、もはや存在しないでしょうね。
したがって、返品特約が重要となってきます。

①事業者に問題がある
・事業者が返品の条件をどこまで消費者に分かるように明示しているか。表示が分かりやすい分かりにくいでも問題になるかもしれません。
・特に、3つめの事例のように衛生商品という特殊な条件を文字を大きくしたり、色文字にしたり、改めて説明したり、単に「書いているだけ」というよりも、トラブル回避のために、より消費者が理解しやすいように努力をしておくことが重要と思います。
②消費者に問題がある
・消費者が返品の条件をどこまで理解しているか。消費者の責務としての自覚が必要だと思います。そのためにも消費者教育や啓発をしていくことが重要だと思います。
・また、ルールを無視して自分の主張が正しいと引き下がらないという問題のある消費者の場合はあり、次元の違う対応が求められるときもあります。
③事業者と消費者の両方に問題がある
・消費者が事業者に返品の申し出をしたときに、きちんと説明しているか、コミュニケーションできているか。お互いの主張を上手にすり合わせる能力があるか。
・この段階でお互いの問題をすりあわせて解決することができなければ、消費者センターに相談が持ち込まれてしまいます。その場合は消費者センターが間に入っても結果は同じであることが多いのです。まさしく、このスキルアップ講座でメインにしているコミュニケーション能力の問題だと思います。この能力はスキルであって身につけられることです。身についていない事業者・消費者・相談員が多いというのが課題ですね。

一方大きな問題として、現物を見ていないためにおこったトラブルが多いということです。
色のイメージやサイズなどは現品を店頭で見て選択すれば回避できます。
それができないのが、通信販売で、今後もネット販売を含む通信販売が増加していくことを考えれば、この種の問題は増えていくと思われます。通信販売を利用する場合に現品を店頭で見てからネットで安値で購入するという消費者もいれば、ネットやテレビ通販で衝動買いする消費者もいると思います。一方、地方では店舗が限られるので通信販売は画期的なシステムであることも事実であります。

最後に、通信販売も含め店頭で購入した商品はすべてクーリングオフできると考えている消費者がとても多いことも現実的な問題ですね。

国民生活研究 2010年9月号

今回も読むのがしんどかったです。法律の条文や解釈など集中して読んでも難しいです。
斜め読みしても頭に入りません。
ざっと読んだので、時間があればしっくり読みたいと思います。
9月号で取り上げるのは、前号の続きの「不招請勧誘規制」と今号から始まった「消費者契約法の裁判事例」の2つの論文です。

①【論文】不招請勧誘規制のあり方について(下)
津谷 裕貴(弁護士)

・前号に引き続き、「消費者の権利 新版」正田彬(岩波新書2010年2月19日)を引き合いに出して、「オプトイン」にすべきであると論じています。
・消費者契約法や金融商品取引法、金融商品販売法、保険業法など、不招請勧誘規制を必要とする法律について、どの条文がこれに当たるのかを解説しています。
・各地の自治体での消費生活条例で不招請勧誘がどこまで言及されてオプトインなのかオプトアウトなのか、具体的な自治体の条文を出して解説しています。基本的にはオプトアウトなんですが、オプトインに該当するような条例もあります。
・Do Not Call Registry(電話勧誘拒否登録制度)について紹介されています。
・「訪問販売お断りステッカー」を作成している自治体が増えています。このステッカーが「オプトアウト」の勧誘拒絶、特定商取引法3条の「契約を締結しない旨の意思表示」にあたるのかを解説しています。国の見解では「あたらない」とのことですが、消費者庁が設置されてから考え方が変わってくるのではないかと期待されているとのことです。筆者はこのステッカーはオプトインに該当すると主張しています。
・ざっくりとしか紹介できませんでしたが、2号に渡ったボリュームのある論文です。じっくり読み込めば法律解釈の勉強になると思います。

②【論文】消費者契約法4条の新たな展開(1) -「誤認類型」・「困惑類型」をめぐる議論と裁判例の動向-
宮下 修一(静岡大学大学院法務研究科准教授)

・消費者契約法が施行(2001年4月1日)されて10年が経過し、消費者契約法の適用についての裁判事例も多くなってきています。その解釈や判例ついて紹介しています。
・今号で紹介しているのは誤認です。
不実告知(4条1項1号)
断定的判断の提供(4条1項2号)
・条文解釈については「逐条解説 消費者契約法」を参照しています。
・逐条解説の見解、学説の展開、、裁判例の動向という流れで解説されており、肯定された例と否定された例について詳しく説明されています。
・裁判例では「中古車のメーター改ざん」や「パチンコの出玉」など具体的な事例があげられているのでわかりやすいと思います。
・最後のほうに多数の裁判例のダイジェスト版が掲載されています。
・「ながら読み」では理解できないと思いますので真剣に集中して読んでください。
・じっくり真剣に読めば意外と面白いです。

※条文の解釈や○×判例をたくさん読むことで、相談を受けたときに、どのような展開で事業者とやりあっていくかというのを学んでいけるように勉強したらいいと思います。正解というものは1つに限りません。自分自身が理解して取り組めるように心がけてください。

国民生活研究 第50巻第2号(2010年9月)
年4回発行 定価620円(税込み)

消費者情報 2010年10月号 (関西消費者協会)

今月号で取り上げるのは1つだけですが、法律の勉強をしましょう。

判例に学ぶ
耐震偽装マンションの購入について「錯誤無効」を認めた札幌地裁判決

・耐震偽装マンションの購入者らが売主に対して新規分譲契約の無効・取り消しを求めた事案。
・買主→法定の耐震強度を満たしていないのに満たしているとの前提で購入した意思表示には、民法95条の「要素の錯誤」があるとして、契約の錯誤無効等を主張。
・売主→耐震基準を満たすよう補修する瑕疵担保責任を負うだけである。
・判決→耐震性能等の基本的性能が具備された建物であることが当然の大前提で、耐震偽装の建物の引渡しは、その誤解に基づき売買を合意したことになり、売買目的物の性状に関する錯誤(いわゆる動機の錯)があるとした。阪神大震災を例に、耐震強度に関する錯誤が重大なものと認め、法95条の錯誤無効を肯定し、売買代金の返還を認めた
動機の表示がないという売主の主張に対して、耐震偽装の具備は予想外の錯誤の主張によって売主が困惑するという事態は発生しないもので、「当該性状があるから買い受けるという動機が表示されたがその性状がなかった場合と同一視すべきだ。
・まとめ→民法の錯誤無効となったが、これは実務上容易ではない。事業者の不実告知・不告知・情報提供義務違反により動機の錯誤が起これば取り消しできるように民法の錯誤の要件を緩和し、消費者契約法での取消権が拡充される必要がある。

法律用語がたくさん出てきて読み解くのには集中力が必要ですが、詳しくは本文をじっくり読んで、民法の解説もじっくり読みながら勉強してみてはどうでしょうか。
最高裁HP(http://www.courts.go.jp/)に判例掲載されています
平成18(ワ)2803 損害賠償請求事件 平成22年04月22日 札幌地方裁判所
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=80557&hanreiKbn=03

教科書どおりでは、建築物に瑕疵があった場合は建て替え等を要求するのではなく修理で対応するということが書かれてあったように思います。また、「要素の錯誤」は取り消しできるけど「動機の錯誤は」取り消しできない、という解釈もあります。
耐震偽装となると、契約取り消し無効まで判断することができるんですね。
ハードルは高いですが、対象によってはいろんな解釈ができるということですね。

リンクはこちらです
関西消費者協会 http://kanshokyo.jp/hp/
消費者情報 2010年10月号