ウェブ版 国民生活 2012年5月号【創刊準備号No.1】

雑誌形式の国民生活が終了して、ずいぶん時間がたったのでブランクがあいてのウェブ版になるかと思ったら、5月18日に第1号5月号の発行となりました。
ページ数が少ないのは、創刊準備号となっているからでしょうか、それとも、5月号として急いで間に合わせたかったのからでしょうか、本当に無料で始まりました。
本格的に発行すればボリュームも増えるのでしょうね。
毎月第3金曜日に発行のようです。

国民生活[2012年5月18日:公表]

http://www.kokusen.go.jp/wko/index.html
国民生活センターでは、消費者問題専門の月刊誌として『月刊国民生活』を発行してきましたが、2012年4月号をもって、休刊し、ウェブマガジンとして、2012年5月より新たにスタートしました。
主に消費生活問題に関心のある方、相談現場で働く方々に必要とされる最新情報や基礎知識を分かりやすく伝えるという従前のコンセプトはそのままに、「より多くの方に、無料で」情報をお届けします。
今後とも内容拡充に努め、消費者問題に関する知識の向上や学習に役立つ情報を、月に1回、お届けします。

さて、中身は基本的に雑誌の記事をPDFにした形です。
本当に無料で問題はないのでしょうか気になります。当然、事業としては収入がなくて原稿料や人件費を支出するので赤字でしょうね。一般の出版会社であれば有料の電子書籍になりますが。
単純に雑誌を発行することなく、そのままPDFにしただけなので、今のところウェブの独自性を感じられずこの点に関して外部から問題を指摘される可能性もあると思います。
原稿完成から発行までの間隔が短くなるので機動性は上がるでしょう。それをいかに活かすかですね。
とても有用な情報ですので、試行錯誤しながら、ウェブ版として充実させてほしいので、今後に期待したいと思います。
ちなみに記事の読む方向が「右から左」から「左から右」形式に変わったのは個人的にはうれしいです。
表紙がないことと全ページ一括ダウンロードができないのが残念です。


2012年5月号【創刊準備号No.1】(2012年5月18日発行)
http://www.kokusen.go.jp/wko/data/wko-201205.html
【主な目次】
巻頭記事
消費者市民社会と国民生活センターの役割
相談現場に役立つ情報<相談現場で働く方向け>
【苦情相談】訪問販売時にうそを言って契約させた新聞販売店
法律知識
【暮らしの判例】偽造印鑑による預金払戻請求に応じた銀行に対し、過失を認めた事例
論点
ウェブ版『国民生活』へようこそ

巻頭記事
消費者市民社会と国民生活センターの役割[PDF形式](1.2MB)
【執筆者】野々山 宏(独立行政法人国民生活センター 理事長)
「消費者市民」とは何か、「消費者市民社会」とは何か。消費者市民社会と今後の国民生活センターの役割について考えます。相談現場に役立つ情報 <相談現場で働く方向け>
相談現場で必要な知識、相談解決に役立つ情報をお届けします。
苦情相談
消費生活センターに寄せられた相談をもとに、問題点や解決方法について考えます。
訪問販売時にうそを言って契約させた新聞販売店[PDF形式](713KB)
【執筆者】独立行政法人国民生活センター 相談情報部
自宅を訪れた新聞の勧誘員から「大学の授業で新聞を使う」と言われ、断りきれずに契約した事例を紹介します。

法律知識
判例情報や、相談現場などで関心の高い消費者関連法について解説します。
暮らしの判例
消費者問題にかかわる判例を分かりやすく解説します。
偽造印鑑による預金払戻請求に応じた銀行に対し、過失を認めた事例[PDF形式](768KB)
【執筆者】独立行政法人国民生活センター 相談情報部
盗まれた預金通帳と偽造印鑑を持参した第三者に対して銀行が行った預金の払戻しは無効であるとして、預金者が払い戻された預金額相当の払戻しの請求を銀行に行った事例を紹介します。

イチオシ!国民生活センター発表情報
自動車用緊急脱出ハンマーの性能-シートベルトカッターが付いているものを対象に-(2012年5月10日公表)
詐欺的な“サクラサイト商法”にご用心!-悪質“出会い系サイト”被害110番の結果報告から-(2012年4月19日公表)

論点
ウェブ版『国民生活』へようこそ[PDF形式](1.3MB)
【執筆者】古畑欣也(独立行政法人国民生活センター 理事)

次号予告
『国民生活』6月号(創刊準備号No.2)は、2012年6月15日(金曜)に掲載します!
6月号から連載「事例で学ぶインターネット取引」が始まります。第1回は「オンラインゲーム」をテーマに、コンプガチャ、未成年の利用、RMT(リアルマネートレード)などを取り上げます。

今までどおり私なりに気になる記事を取り上げたいと思います。
①訪問販売時にうそを言って契約させた新聞販売店
・「新しく入居した者だ」と名乗り、10代の大学生を訪問し、新聞勧誘
・同じ大学に通っており、どのゼミでも使用するので必要だと勧誘
・断り続けたが根負けして3ヶ月の契約
・断っているのに、潜在などの景品を大量に置いていった。
・大学で確認したら勧誘員の説明がうそだと分かり解約を求めたが応じてくれない
→過量の景品は景表法と新聞規約に反する。月4000円はこづかいの範囲なので未成年者取消ではなく、勧誘方法の問題点を指摘して交渉。書面不備、不実告知など特商法違反を認め、解約になった。
※新聞の勧誘はいつまでたっても減りません。競争が激しいのは事実ですが、歩合制の拡販員は悪質業者そのものの勧誘をします。このような悪質さのある新聞社は特定の販売所や販売員の問題としがちですが、決まって特定の新聞社が多いですね。センターから販売店に問題点を指摘しても逆切れするところもあります。
ちなみに、私もそこの新聞社から多額の商品券と景品をもらって2年契約しています。新聞自体の内容は気に入っていますので、もったいないですね。NHKやケーブルテレビも悪質さが目立ちます。

※6月号からの連載「事例で学ぶインターネット取引」に期待ですね。表面的な説明ではなく、どこまで突っ込んだところまで言及できるか注目したいです。

三者面談の注意点

三者面談とは、事業者と消費者にセンターに来てもらって、センターを交えて話し合いをすることです。
三者面談の目的には2種類あると思います。
①センターが積極的にあっせん解決を図ろうとするもの。
②消費者と事業者の言い分がまったく食い違い手がつけられなくなったので仕方なくセンターで話し合いの場を作るもの。

まず前提として頭においておかなければならないことは、「消費者と事業者には情報や交渉力の格差がある」ということです。
したがって、しゃべりのプロである事業者に消費者は言いくるめられる可能性があります。
そこで、センターは中立の立場であるものの、その格差を埋めるために消費者への力添えをする必要があります
一方、相談員自身も言いくるめられることもありますし、事業者が複数の男性で訪問してくる場合もあり、女性の相談員には荷が重いときもあります。

相談員として、三者面談にあたり、しっかりと準備しておく必要があります。
単に言い分をぶつけ合わせるだけでなく、お互いの主張を整理して、最終ゴールであるあっせんに向かわなければなりません。
その場で判断するのは難しい面もありますので、事前に何が論点になり、どのような展開にもって行き、最終的な落としどころをどうするのか、ということをシミュレートしてから面談にのぞむことが重要です。

①センターが積極的にあっせん解決を図ろうとするもの

この中には、大きく3つのパターンがあり、あっせんするときにはどの類型に属するのかを自覚しておくことが大切です。
(1)両者の言い分がほぼ合致しており、面談して直接説明する
・・・特に問題なし(感情的な発言があっても、反論せず受け止めることが大切)
(2)事業者の言い分が正しく、事業者とセンターで消費者を説得する
・・・消費者へ論理的に理解できるよう説明する。そのために事前に事業者の報告を相談員が理解し消費者に説明できるレベルに落とし込んでおく。消費者の感情的な部分については受け止めることが大切。消費者が納得しない場合は法律相談などの第3者の見解を聞いてみるように助言することもある。
(3)消費者の言い分が正しく、センターと消費者で事業者を説得する(対決する)
・・・法令や過去の事例から事業者に対して毅然として通告し、交渉するための説明を考えておき、事業者に揚げ足取りをされないように注意する。場合によっては、行政処分につながる可能性も示唆する。ただし、一方的な勝利を目指すのではなく、何らかの妥協点を見つけ出すほうが、うまくいきやすい。

そのほかに、事業者や相談者の主張の一部が食い違うことがあります。言った言わないの世界もありますし、録音していることもあります。その発言の一字一句再現して争うことが、果たしてあっせんにつながるのかをセンターとして考える必要があり、細かい言い分の違いがあっても、最終的にあっせん解決できるような方向に持っていくことが重要です。案外、細かい「言った」「言わない」にこだわる相談員や消費者・事業者がいますが、それを突き詰めると、お互いに引けなくなってしまい、あっせん不調という結果になってしまうこともあります。
困難事例のセンターでのあっせんは、両者の落としどころ・妥協点を見つけて、多少の不満はあっても、勝ち負けを決めずに納めることが「Win-Win」の関係になると思います。
センターのあっせんは裁判のように主張の一つ一つに白黒つけるのではなく、全体としてお互いの妥協点を見つけ出して解決することです。
この落としどころのポイントについては別途記事を書きたいと思います。

まとめると、センターとしてあっせんでどのような結論にもっていきたいか、事実関係の確認と妥当性を論理的に説明できるように、事前にシミュレートしておくことが大切で、それぞれの3者の感情のぶつかり合いが起こらないように注意することです。特に、相談員自身は感情的になることなく、冷静に立ち会ってください。また、3者面談の場で一方的な言い合いにないように傍観せずコントロールしてください。

さらに、感情のぶつかり合いになったときに、もしくは、なりかけたときに、結局は事業者のほうがプロですので口は上手く、消費者は言いくるめられまいと感情をぶつけてしまい、こぶしを下ろせないようになってしまいます。あっせんが上手くいかなければ、相談員が、さらに困難になったあっせんを再度しなければならなくなります。
相談員は傍観するのではなく、このような事態にならないように配慮してください。

②消費者と事業者の言い分がまったく食い違い手がつけられなくなったので仕方なくセンターで話し合いの場を作るもの

相談者に「センターは何もしないのか」などと言われ、「相談員が「センターで話し合いの場を作ることができます」とし、基本的には消費者と事業者の2者で話し合いをしてもらい、センターは聞くだけのパターンがあります。しかし、相談者にとって、センターで話し合いをすることは当然センターが味方になって助けてくれるという期待感を持ちます。
センターとしても両者の言い分が平行線のままで、間違いなく「あっせん不調」になることが分かっていたとしても行う3者面談では、最終的に相談者の不満はセンターや相談員に向けられます。以前に解説したバランス理論からも分かるとおり、相談者がセンターの対応を非難することで相談者の感情のバランスが保たれます。センターが攻撃されることを覚悟しておいてください。また、それに対する対応に問題があった場合は、センターの苦情に発展することも覚えておいてください。

最後に争いが考えられる3者面談では、複数の相談員で対応したり、職員に同席してもらうことも必要です。
これは、それぞれのセンターの人的充実や職員のレベルの違い、相談員と職員との温度差により違ってきます。
環境が整っているセンターでは大いに同席を活用していただいたらいいと思いますが、同席が期待できないセンターでは必要であれば都道府県担当者や国センに相談するなど事前準備をしっかりしておいてください。
(以上)

REPORT JARO 2012年5月号

「REPORT JARO」は公益社団法人 日本広告審査機構が毎月発行している企業向けの情報誌です。
日本広告審査機構
http://www.jaro.or.jp/
企業向け情報>刊行物「REPORT JARO」
http://www.jaro.or.jp/kigyou/report_jaro/index.html

5月号から気になる記事を2つ紹介したいと思います。
詳細は情報誌をご覧ください

①LEGAL MIND
「パチンコ攻略法販売などの詐欺広告の排除を」全日本遊技事業協同組合連合会

・「パチンコ(パチンコ・パチスロ含む)攻略法販売・求人募集」詐欺への注意喚起活動
・特に雑誌やネット上などの広告宣伝が大半を占める
・平成19年ごろからは振り込め詐欺の新手口として「攻略法販売」詐欺被害の記事が新聞などに出始めた
・各種広告媒体に掲載された住所を一軒一軒訪問し、その調査結果を核とした注意喚起情報の特集ページを20年12月25日付でウェヴサイト上に立ち上げた。
・東京都の「攻略法販売・求人募集」業者の所在地が、警察庁の振り込め詐欺被害者が現金等を送付した住所と35%が一致した
・21年夏ごろからは被害相談の多くが「求人募集」詐欺へと変遷し、パチンコ未経験者、特に主婦やシングルマザーが被害者となるケースが顕著となり、翌22年には被害者を救済する名目で活動する「救済」詐欺業者の存在も発覚している
※詐欺の歴史的な流れと変遷がよくわかります。確かに、攻略法の被害者やパチンコ店の打ち子の相談が消費者センターにも多く寄せられました。最近はめっきり減りましたが、詐欺の手法が次々と変わっていっているということですね。表面化して国が動き始めたときには、すでに違う詐欺のパターンに移っているというのがいたちごっこの歴史です。
さて、本物の攻略法があるのか?といえば、昔は確かにありました。打ち子は存在するのか?といえば、確かに存在するようです。ただし、それを公に出来ることはなく裏で動いているというのが実際でしょう。だからこそ、信じてしまうこともありうると思います。
パチンコ攻略法などについては機会があれば記事を書きたいと思います。

②JARO相談室
アーティストのCDを購入すると付いてくる握手券は景品となるのか?

・握手券をつけているCDを、握手をしたいがために多数購入したり廃棄したりされる事態があるが、CDに握手券を抱き合わせて販売することは景品表示法の規制を受けないのか
→握手券は景品ではないので景品表示法の規制は受けない。なぜなら、握手には「市場価格」がないからである。オークションの価格は、あくまでも転売をしたときの価格に過ぎないので一般的な市場価格とはみなされない。
※これはAKB48の握手券やAKB総選挙の投票権のことですね。AKB商法と呼ばれているものです。私は過去にこの件で国に問い合わせたことがありますが、ほぼ今回と同じ回答でした。しかも即答。確かに社会問題ではありますが、握手の価値が1万円であると思う人にとっては高くはないし、応援したいと思えば何枚も買っても自由だと思います。実は余ったCDをオークションで売るとか友人に譲るとかすれば、ファン層も広がり普及につながるなど、それはそれで無駄なく回っていると解釈する評論家もいます。コアファンにとってはなんでもないことでも保護者にとっては歯がゆい思いがあるのも現実でしょうね。バイアスにとらわれず考えることが重要です。論点としては、AKB商法と呼ばれるやり方が社会的に問題として認められるかどうかというところだと思います。そして、それは、当事者と第3者とでは全く考え方が異なるかもしれませんね。

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