月刊 消費者 (2011年4月号)

①特集 貧困のゆくえ
「改正貸金業法の影響と課題」
改正貸金業法が2010年6月に完全施行されましたが、その影響が大きいのではと懸念されていました。
今回、改正貸金業法の影響について解説されています。
・多重債務者の減少→100万人規模で減少
・ローン難民が大量発生したか?→ごく一部を除いて特に変化なし
・ヤミ金融被害者が増えたか→落ち着いている
・貸金業者の倒産・廃業→事業縮小が社会全体に影響を与えたとはいえない
というのをみてみると、表面的には思ったほど影響はなかったのかもしれませんね。
「働きたい若者たち」
・増加する若者ホームレス
・若者だけの責任ではない貧困
・若者が働ける環境づくりを
「増加する高齢者の貧困」
「貧困は命を奪う」
※貧困の現状を解説しています

②商品先物取引法
・2009年7月に改正され、2011年1月に完全施行された法律のポイントを解説しています

③消費者相談室
「ドロップシッピング契約を解約したい」
・インターネットで知った内職の契約がドロップシッピングで月30万の収入があるといわれたが話が違う
・書面不備によりクーリングオフ
「パソコンのサポート有償との表示がなかった」
ネット購入で無償のサポートがついていると思ったら、パソコン本体の故障なら3年間無償だが、ソフトの場合は有償であった
※どちらもよくある事例です。メリット・デメリットを知り、受身ではなく積極的に賢い消費者になることが大切です

ついに、今号で休刊となりました。
今の社会情勢を考えると復刊は難しいと思います。
もっと、もとを正せば、月刊消費者の内容が本当にニーズに合っていたのか、と考えます。
消費者向けにしては内容が少なく厚みもありませんし、どこにでも入手できる情報です。
一方、消費者行政や企業のCSにとっての専門性があるかといえば、ほとんどありません。
そうなれば、売れないのは必然ではないでしょうか。
公の団体に近いゆえに、編集に必要な力を注げなかったのかもしれません。

日本消費者協会 http://www.jca-web.org/
月刊 消費者

消費者情報 2011年4月号 (関西消費者協会)

①巻頭インタビュー
苦情の背後に潜む問題を見いだし、制度の改革・改善につなぐ
いくつか抜粋します。ぜひ本文を読んでください。
・相談員は目の前の相談者の苦情を解決するのは当然第一主義。でも、決してそれだけではない。その後ろに潜む問題点を見いだし把握して、それを制度の改革や改善につなげていくのが、本当の相談員の役割だと思ってます。
・最近は特定商取引法でスッキリ解決できる相談は少ないです。
・法律はどんどん変わっていきますから基礎知識は必要ですが、相談員の仕事は法律知識を振りかざすことではありません

②特集 終わりなき問題商法
・最近の問題商法の傾向と特徴
・複雑な金融商品の蔓延-仕組み商品の問題点
などの事例が紹介されています

③ADR機関を活用しよう
「自転車事故に関する解決事例」
・公益社団法人総合紛争解決センター(大阪)の事例です
・左折中に起こった自転車と自転車の事故
・相手方の自転車は30万円の高級自転車で修理不可能で全損として請求
・損害賠償請求に対して支払う必要がないことと、支払う必要があるとしても適正な金額を算定してほしい
・和解あっせん人が、現時点での中古車価格。過失割合を考慮し、最終的に15万円の賠償となった
※高級自転車や高級時計など事故のケガよりも物のほうが問題になることがあります。
減価償却は私も理解できますが、乗っていた自転車は15万円では買えないので、中古でもいいので費用負担なしで自転車が欲しいのではないでしょうか、高級自転車の中古なんてほとんどありませんので、不満が残るでしょうね。
相談現場では、クリーニング賠償基準など減価償却が当たり前で、思い出や思い入れなど考慮されません。それを、当たり前とは思わず、このような場合に相手の気持ちをしっかり受け止めてあげることが重要です。

④判例に学ぶ
野村證券からの「仕組み債」の購入について錯誤無効を認めた大阪高裁判決
・トラブル多発の仕組み債です。消費者センターで取り扱うの難しく、結局は裁判になることが多いですね。
このような商品は弁護士などの専門家に任せるのが適当だと思います。
・裁判では、きっちりと法律に基づく解釈と判断が理論的にされます。判例を読み解くことは相談員として勉強になります。判例集を読む時間がない場合でも、少なくとも、このような雑誌の判例の解説を読んでおきたいですね。

リンクはこちらです
関西消費者協会 http://kanshokyo.jp/hp/
消費者情報 2011年4月号

リスクコミュニケーション

リスクコミュニケーションの考え方は、食品の安全・安心が社会問題となった頃に注目されました。
厚生労働省では、新しい政策をする場合に必ずリスコミ(リスクコミュニケーションのこと)を全国各地で開催するようになり、ホームページでも告知され、一般の消費者も参加できます。今では、農林水産省など他の省庁でも実施されています。
厚生労働省のホームページに詳しく解説されています。

厚生労働省 http://www.mhlw.go.jp/index.html
食品の安全に関するリスクコミュニケーション
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/riskcom/
1 リスクコミュニケーションとは
2 意見交換会
厚生労働省における意見交換会の開催状況
などを参照してください。

簡単にいうと、絶対安全というものは存在しない。必ず危害(リスク)が存在する。そのリスクが、どの程度だったら受け入れることができるのか、ということです。

日本人は、安全か、安全でないか、いわゆる、「0」か「100」かという考え方を根強く持っています。
したがって、農薬が少し基準を上回っただけで生命に危害が及ぶと過剰反応したりします。
科学的にあらわされるのは「安全」であり、「安心」は気持ちの問題です。
「安全」は固定されているのですが、「安心」は人それぞれであるのです。
しかし、「安全」と「安心」を混同してしまっています。
そこで、国や事業者や消費者などの利害関係者が話し合うことによって、「安全」と「安心」をお互いに共有する場をもとうというのが「リスクコミュニケーション」です。
残念ながら、日本では十分に浸透していません。

今、まさに、地震で津波や原発など、日本人にリスクコミュニケーションが試されているのです。
今回の地震の規模と一連の災害を想定すべきものと考えるのか、想定を超えた想定外のこととして考えるのかで大きな違いがあります。
想定すべきものとしたら、それに見合う金銭的・精神的な負担をしてきたのか。
想定外であれば、それを受け止め前向きにがんばる。
批判する根拠(権利)と今までの行動(義務)との整合性があっているにか。
消費者は正しく受け止めることができるでしょうか。

たとえば
①20mを超える津波に耐えうる防波堤をつくることが必要か?
→多額の費用をかけて100年に一度の備えをするのか、大増税になっても国民はその費用を負担する覚悟があるのか
②原発は危険だからやめるべきか?
→そうなれば計画停電が毎日数時間実施されるような電力不足に対して、電気を使わない暮らし、新エネルギーへの転換の費用負担、高額な電気料金が必要な現実をどう受け止めるのか
③低レベルに汚染された水を緊急に海に流すことと、流さずに高レベルの水でもっと汚染され事態が悪化するかもしれないことのどちらを選ぶのか
④汚染地域の食品や水を消費者が避けるのか
⑤ガソリン車の脱却をはかるのか
などなど

これらは、国に強制されるものではなく、国民が選択するものです。
税金を払っているのは国民であり、享受を受けているのも国民です。国は国民で成り立っています。
私たちが選択するのです。権利と義務のようなものです。

今まさに、真剣に、一人一人が今後の日本のことを考えなければなりません。
政治に無関心な国民は、もっともっと政治に関心を持たなければなりません。
日本の国民、消費者の意識が変わることを期待しています。

長々と書きましたが、実は私が言いたいのは、相談現場も、まさしく「リスクコミュニケーション」の世界なのです。
消費者が100%勝つ、事業者が100%勝つ、というのもあるでしょうけど、基本的には、どこかで折り合いをつけなければなりません。その過程が、「あっせん」なのです。
事業者が100%悪いからといって、すべてそのとおり進むとは限らないのです。
相談員として正義を貫き100%を求めるは基本のスタート位置ではありますが、現実にあわせて、折り合いをつけることが重要です。
まさしく、コミュニケーションです。
どのタイミングで。
どの程度の割合で。
一方的なものはコミュニケーションではありません。

日本人はコミュニケーションが苦手です。
しかし、相談員はしっかりコミュニケーションしなければなりません。
相談員に十分なコミュニケーション能力が備わっているのでしょうか。
知識習得にかたよっているスキルアップではなかなか難しいのではないでしょうか。
私は、このコミュニケーションについて、みなさんに考えてもらいたいのです。
今後、コミュニケーション能力を身につけるヒントやポイントをこの講座で示すことができたらと思います。

(平成23年4月5日 初稿)
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