消えない請求画面 その2

消えない請求画面の歴史とウイルス感染させる手口
「消えない請求画面」は5年ほど前に登場しました。
当時のパターンと今のパターンは大きく違います。
「動画を見たい人はクリック」「サンプルはこちらをクリック」などのうたい文句はあまり変わっていませんが、ウイルス感染させる仕組みは進化しています。
当時は、この現象を「ウイルス感染」と認識する人は多くはありませんでした。今もそうかもしれません。
というのも、フリーソフトをインストールする手順と基本的には同じだったからです。
すなわち、実行ファイル(×××.exe)によりソフトをインストールしたが、そのソフトが「請求画面が消えないソフト(ウイルス)」であったということです。
インストールするのは自分自身ですので、そもそもインストールしなければ感染もしないのです。
そのソフトが動画を見るためのものではなく、「消えない請求画面のソフト」であることを隠してインストールさせようというのが共通の手口です。

フリーソフトのインストール手順にはいくつかあります。
①zipファイル(圧縮ファイル)をパソコンにダウンロードしてから、それを解凍する。
②zipファイル(圧縮ファイル)をパソコンにダウンロードしてから、それを解凍する、解凍した後に、実行(インストール)する。
③exeファイルをパソコンにダウンロードしてから、それを実行(インストール)する。
④exeファイルをパソコンにダウンロードせずに、直接、実行(インストール)する。
だいたいこの4パターンです。
どのパターンもソフトのインストール時には普通に使われる方法です。
「消えない請求画面」のソフトをインストールさせるためには、できるだけ手順が少ない方法を使います。
すなわち、④のパターンです。
ちなみに、画面上では③か④を選択する画面が出ますが、④を選択するように誘導しています(画像を参照)。

また、WindowsXPのバージョンから、セキュリティ強化策として何らかのソフトをインストールするときには、「インストールしても大丈夫ですか?」「発信もとが信頼できない場合はやめてください」というような警告画面が出ます

最終的には消費者自身が、この警告画面を無視して、自ら「消えない請求画面」のソフトとは思わずにインストールしてしまい、パニックになるのです。

以前と違うのは、この実行ボタンをクリックするまでの手順です。
以前は、「動画を見たい場合はクリック→実行ボタンをクリック→ウイルス感染」
今は、「動画を見たい場合はクリック→20歳以上ならクリック→規約を読んだらクリック→最終的に同意したらクリック→ウイルス感染」
となっています。
以前は、2クリックですが、今は4クリックとなっています。
(便宜上ワンクリック詐欺といわれています)

相談員目線でいうと、未成年者契約や錯誤無効、最終確認画面、という対抗策が本当に主張できるのか、厳密に考えると悩んでしまうところですね。
そこが消費者の弱みに付け込もうとする作戦なのです。最終画面のボタンをクリックすると登録になりますが、その最終画面に分かりやすく費用が発生することを表示していないため、この最終画面は無効と考えるのが妥当だと思います。別画面の規約には料金が発生することを表示していますが、あくまでも別画面です。しかし、この最終画面にたどり着くまでに、「20歳以上である」「規約に同意する」という正当な手順を踏んでいるだけに消費者にも後ろめたさは残るのがポイントです。
さらに、動画を再生することに同意しているだけで、「消えない請求画面」が勝手にインストールされることも知らされていませんし、料金を支払えば「消えない請求画面」が消えるかといえば、消えないので、まさしく詐欺ですね。

↓手続の画面です(今のパターンは、ほとんどこれです)↓

最終クリックボタンの「動画再生ボタン」を押すと下の画面になります

↓警告画面の画像です(③と④の選択肢があり④に誘導しています)↓


実行すると、確かに動画は再生されるようになりますが、それと同時に「消えない請求画面」が現れるのです。
次は、「ウイルス感染の仕組み」、次いで「IPAの対策法は疑問」の予定です。

消えない請求画面 その1

「アダルトサイトの無料動画をクリックしたところ、請求画面が表示され、消しても再表示されたり、PCを再起動しても表示される」という相談は、今年に入って非常に増加しています。

国民生活センターや各消費生活センターでも頻繁に注意啓発しているところです。

この「消えない請求画面」は今に始まったものではなく5年ぐらい前から始まったものが進化を遂げています。
支払ってしまったという実害の相談よりも、消えないので困っている、どうやったら消すことができるのかという相談の方が圧倒的に多いです。

消費者センターでは「IPAのHPに消し方が説明されていますので参考にしてください」というのが通常の全国共通のアドバイスとなります。そのほかの公的機関でも同様です

私はこの回答はベストの回答ではないと考えていますし、パソコンに詳しければ全くナンセンスな回答であることは常識です。
しかし、一番の正解は、公的機関である消費者センターとしては回答しずらいものなので、次点の回答になってしまうのはやむを得ないことと思います。
正解は正解なのですが、IPAへの誘導に説明不足があれば「請求画面は消えたが、同時に大切なデータが消えてしまった。消費者センターのアドバイスに従ったのにどうしてくれるのか」という苦情にもつながりかねません。

そこで、何回かに分けて、「消えない請求画面」について、相談員として、ぜひ知っておきたいことを説明したいと思います。
これらを理解したうえで、IPAに誘導するときに一言説明を付け加えることができると、一味違った相談員として評価されると思います。

そして、IPAへの誘導は解決方法の一部分です。
どんな研修会でも、それよりも詳しい全体像が詳しく説明されることはないと思います。
これが私の目指している、実践的で現場を重視したスキルアップ講座の特徴です。

・消えない請求画面の歴史と仕組み
・IPAの対処方法は
・ベストな対処方法は
・感染予防法
・検索サイトでの広告の罠
など

※この解説に使う画像は、実際に私のパソコンでウイルス感染させたものを使用します(一部、黒塗りしています)。

携帯電話の料金 その1

消費者センターには携帯電話の料金に関する相談が多く寄せられています。
大きく分けて「料金」に関することと「故障」に関することです。
料金に関しては
・無料のはずが無料になっていない
・パケット料金が高額になっている
・覚えのないサイトの利用料が請求されている
などがあります。
その中でも、機種代金を含む携帯電話の基本料金などの契約プランのトラブルについて、どんな問題があるのか、なぜ問題が起こるのか、どういう対応をすればいいのかについて解説したいと思います。

相談者は「聞いていない」「説明を受けていない」と主張します。
相談員は「それなら説明不足を主張してはどうですか」と助言します。
このような対応について、どう思いますか?

みなさまも携帯電話を購入されたことがあると思います。
そのときに、料金の説明があったと思います。
意外に、しつこいぐらいに説明され、説明を受けた欄にチェックを記入させられます。
不明なことがあれば、質問します。
割引を受けるための有料オプションについても説明され、いついつからは解約してもかまいませんと説明されます。
場合によっては、紙に詳しく書いてくれます。
以上のことは、ほとんどすべての購入者にもれなくされていると思います。
最後に、何か分からないことはありますか?と聞いてくれます。
ということは、きちんと説明しているではないですか。
そのような経験に照らし合わせ、「説明不足を主張してください」という助言が、果たしてベストでしょうか?
「説明した」「説明していない」、「言った」「言わない」の争いになってしまうかもしれません。

こういう争いは携帯電話に限らず消費者トラブルでの定番となっています。
なぜ「説明した」「説明していない」というトラブルになるのでしょうか。
先に述べた実体験では説明を受けているはずなんですが。
まずは、この原因について知っておくことが前提となります。
この原因は「伝えること、伝わること」の記事で解説したとおりのことが起こっていると思われます。

携帯電話の料金トラブルは、「事業者は説明した」→「消費者は理解したつもりで理解していなかった」「理解できなかったが契約した」「適当に聞いていた」などが根っこにあると思います。
つまり、事業者は「伝える」努力はしているが、十分に「伝わっていなかった」ということです。
これは、どちらに落ち度があるのでしょうか。
事業者は説明する義務・責任があります
消費者は説明を理解する義務・責任があります
事業者は分かりやすい説明を心がけていると思いますが、分かるかわからないかは消費者の理解力にもよります
理解できないときに消費者自身が「分からない」と意思表示しなければ、消費者の「分からない」ことが事業者に伝わりません。
もっとも、その場では「分かった」ように感じている場合も多々あります。

最近の消費者問題の難しいところは、情報が複雑化し、理解が難しくなっているのに、消費者がついていけていない、もしくは、ついていく努力をしていないところではないかと思います。
複雑な料金制度を1度の説明で理解することは難しいかもしれません。
実際に完璧に理解して契約している消費者は少ないかもしれません。

私たちは中立の立場といいながらも、消費者寄りの立場で対応します。
とはいいながらも、消費者に「?」と思うことが増えています。
消費者基本法では(事業者の責務等)第5条~第8条の中で

第五条
二  消費者に対し必要な情報を明確かつ平易に提供すること。
第七条
消費者は、自ら進んで、その消費生活に関して、必要な知識を修得し、及び必要な情報を収集する等自主的かつ合理的に行動するよう努めなければならない。

と定められています。
消費者にもっと努力してほしい。昔から努力が不足してきたからこそ、悪質商法の消費者啓発が十分に機能していないのは、消費者が積極的に理解するという努力をしていないからだと思います。
そして、消費者の理解を支援するために消費者センターが役割を果たすのです。

(啓発活動及び教育の推進)
第十七条  国は、消費者の自立を支援するため、消費生活に関する知識の普及及び情報の提供等消費者に対する啓発活動を推進するとともに、消費者が生涯にわたつて消費生活について学習する機会があまねく求められている状況にかんがみ、学校、地域、家庭、職域その他の様々な場を通じて消費生活に関する教育を充実する等必要な施策を講ずるものとする。
2  地方公共団体は、前項の国の施策に準じて、当該地域の社会的、経済的状況に応じた施策を講ずるよう努めなければならない。

消費者が理解していなかったら、すべて事業者の説明不足だと決め付けてしまうのは早計だと思います。
なぜなら、事業者が伝えようとしているにもかかわらず、消費者が理解しようとしていない、または理解できないまま契約してしまうことがあるのです。また、契約後にも契約内容について、じっくり見直すこともしていない場合があるのです。
ここに、消費者の主張と一般論とのギャップが生じます。

そういう背景を理解した上で、相談員として、消費者センターとして、どのように対応したらいいのか考えていくべきだと思います。

携帯電話の料金トラブルで前提として理解しておかなければならない重要なこと
①相談員が携帯電話の料金プランなどの基本的なことについて理解していること
②相談者の契約プランをしっかり聞き取り、どんな契約をしているのか理解すること
この2点です
そして
③この料金は契約どおりであるかどうか確認して相談者に説明する(間違っていることはほとんどないと思います)。
④そのうえで、説明不足といえる要素があるのかどうかを判断する。
このような流れになるのではないでしょうか。

もちろん、意図的に形だけ説明して契約させる悪質業者は問題外ですが、携帯電話に関しては常識的に考えて悪意の販売をすることはあまり考えられません。
ただし、勘違いさせるような広告はないわけではありません(景品表示法上の問題)。

以上、料金プランの総論的な解説をしましたが、次回からは各論的なことについて具体的に解説したいと思います。
主なターゲットは、ソフトバンクの料金プランです。
「月々割」「実質無料」など一見複雑そうに見えますが、基本さえ押さえれば難しくありません。
また、他社もソフトバンクの料金制度を真似るようになりました。
そして、今や当たり前になった2年縛りの契約期間の功罪についても書きたいと思います。

相談者に的確な助言をするために、また、事業者から「間の抜けた質問をする相談員だ」と思われないために、相談員の理解の参考になればと思います。

※その2 からは、一般人の検索に引っかかりたくないので、パスワード付きにさせていただきます。