のうだま やる気の秘密

のうだま―やる気の秘密
上大岡 トメ
2008年12月出版
幻冬舎
1260円
ISBN978-4-344-01595-1

漫画ちっくな本です。読みやすい本です。
なぜ続けられないのかという疑問に最新の脳科学から秘密を解いています。
読んでみると、なるほど、そういう理屈があるのだな、と感心しました。
そして、自分自身がどうやれば続けられるかということのヒントももらうことができました。
より詳しく知りたい方は図書館で借りたり、書店等で購入してください。

内容(「BOOK」データベースより)

三日坊主は当然。続けられないのは、脳があきっぽくできているから。だから「やる気」を引き出すためには、脳をだませばいいのです。では、どうやってだますのか。それには脳の中の淡蒼球を動かさなければなりません。自分の意志では動かせない淡蒼球を起動させるスイッチが4つあります。これらのスイッチを誰でも簡単に気軽に発動させるコツがあります。最新の脳研究を元に、続ける技術とやる気の秘密を解いた本ができました。

人間の脳はあきっぽくできており、続けられないのは当然である。
脳がそうさせているのである。
続けるためにはどうすれば良いのか?
脳をだますのである。
脳はだまされやすく、次第に慣れてしまい習慣となってしまう。

例えば、ハミガキ。あんなじゃまくさい作業を毎日欠かさず続けているのはなぜか?
めんどくさいことがマンネリ化してめんどくさくなくなって、習慣化する。
ハミガキがじゃまくさいと思う感覚もなくなってしまったのである。
脳にそう思わせる。つまり、脳がだまされてしまったのです。

どうすれば脳をだますことができるのか?
これが、この本の肝であり、見習うべきことです。

実は簡単なことです。
みなさんも実践しているはずです。
・目標が達成できれば、洋服を買おう、旅行に行こう
・みんなの前で宣言してしまい、引くに引けなくなった
・倦怠期を迎えたカップルが、シチュエーションを変えたところ燃え上がった
・行きたくないけど行ってみるとやる気が出てきた。
など。
私も、この時間にこれをすると決めて何年も続けて習慣になり、やらないときは違和感を感じ、時間がもったいないと思ってしまうようになりました。
女性の永遠の課題である「ダイエット」もこの本の方法を使えば達成できるかもしれませんね。

この本では、どうしたら脳をだますことができるのかを分かりやすく分類・解説してくれてます。

やる気のもとは脳の「淡蒼球」にある。
自分の意思では動かせない
まわりを巻き込んでだます
「淡蒼球」を動かすための起動スイッチが4つある

Body(体を動かす)

体を動かすことで入るスイッチ
脳の「運動野」にある
やる気がないときこそ出かけてみる
Experience(いつもと違うことをする)
いつもと違うことをすることで入るスイッチ
「海馬」にある
いつもと違う場所に行ったり違うことをすることで入るスイッチ
脳は新しいことでもすぐにマンネリ化させるので、目線を変えてちょっとでも違うことをしてみると効果的。気分転換をしてみる
Reward(ごほうびを与える)

ごほうび(快感)によって入るスイッチ
「テグメンタ」にある
ごほうびを用意することで入るスイッチ
気持ちいいことで刺激される「テグメンタ」は強いパワーを持っていて続けることの原動力となる
Ideomotor(なりきる)

なりきることで入るスイッチ
「前頭葉」にある
なりきることによって入るスイッチ
思い込みが強いほど脳はだまされやすくその気になる

勉強も同じように習慣化させる

脳をだまして「やる気」を出す
「やる気が出たからこぶしをあげた」のではなく
「こぶしをあげたからやる気が出た」
脳ってだまされやすい
脳はだまされて「やる気」になる

勉強や習い事に必ずやって来る「マンネリ期」
そんなときは、しんどくても、めんどくさくても、とにかくその場に体を持っていく
たとえ、ぬけがらでもいいから。
すると脳が「ああ、やるんだ」とだまされて、やる気になる
やる気はいくら待っても出てこない
こちらから迎えに行って、スイッチを入れる

やってみよう編

01.最初の目標は小さくする・・・まず20回続けよう
02.ハラ8分目でやめる・・・次回が待ち遠しくなる
03.ごほうびを用意する・・・ごほうびをゲットしたときの自分を想像しよう
04.同じ時間にやる・・・体内時計に覚えてもらう
05.カタチから入る・・・なりきったもん勝ち
06.図々しい妄想をする・・・下心だって立派なモチベーション
07.友達を巻き込む・・・ひとりよりふたり
08.ほめてくれる人を用意する・・・認めてくれる人がいるとやる気が出る
09.続かなくて当たり前と思う・・・みんなが当たる壁を乗り越えよう
10.身銭を切る・・・「元を取り返す」もモチベーション
11.今やっている習慣にドッキング・・・「絶対にやること」にくっつければ巻き込める
12.人前でやってみる・・・恥が次の目標を決める
13.気が乗らなくても、とにかくその場に行く・・・雰囲気に飲まれよう
14.移動中にやる・・・持ち歩きセットを作ろう
15.誰かを喜ばすためにやる・・・誰かのためだともう少しがんばれる
16.はじめの気持ちを思い出す・・・はじめの気持ちは後々救急箱になる

相談員としての様々なスキルを向上させるには、コツコツ日々勉強日々努力することが大切です。
そのコツコツをこのサイトで学んでいただけたらと思っています。
新しい記事をまとめて読むのではなく、毎日確認し、新しい記事があれば読む。
一度読んで終わりのものもあれば、何度も読み返したり、資料を調べたりする場合もある。
それをコツコツ続けると知らないうちにスキルアップしていき、毎日少しづつ勉強することが習慣になる。
お金を出してセミナーに行ったり書籍を購入すれば、元を取るためにがんばる。
行政から用意された研修では何となく受講してしまう。だから自腹を切る。
そして、このサイトが将来有料の会員制になれば、お金を払っている分、しっかり勉強しようというモチベーションにつながる。
そんな風に思います。

携帯電話の料金 その1

消費者センターには携帯電話の料金に関する相談が多く寄せられています。
大きく分けて「料金」に関することと「故障」に関することです。
料金に関しては
・無料のはずが無料になっていない
・パケット料金が高額になっている
・覚えのないサイトの利用料が請求されている
などがあります。
その中でも、機種代金を含む携帯電話の基本料金などの契約プランのトラブルについて、どんな問題があるのか、なぜ問題が起こるのか、どういう対応をすればいいのかについて解説したいと思います。

相談者は「聞いていない」「説明を受けていない」と主張します。
相談員は「それなら説明不足を主張してはどうですか」と助言します。
このような対応について、どう思いますか?

みなさまも携帯電話を購入されたことがあると思います。
そのときに、料金の説明があったと思います。
意外に、しつこいぐらいに説明され、説明を受けた欄にチェックを記入させられます。
不明なことがあれば、質問します。
割引を受けるための有料オプションについても説明され、いついつからは解約してもかまいませんと説明されます。
場合によっては、紙に詳しく書いてくれます。
以上のことは、ほとんどすべての購入者にもれなくされていると思います。
最後に、何か分からないことはありますか?と聞いてくれます。
ということは、きちんと説明しているではないですか。
そのような経験に照らし合わせ、「説明不足を主張してください」という助言が、果たしてベストでしょうか?
「説明した」「説明していない」、「言った」「言わない」の争いになってしまうかもしれません。

こういう争いは携帯電話に限らず消費者トラブルでの定番となっています。
なぜ「説明した」「説明していない」というトラブルになるのでしょうか。
先に述べた実体験では説明を受けているはずなんですが。
まずは、この原因について知っておくことが前提となります。
この原因は「伝えること、伝わること」の記事で解説したとおりのことが起こっていると思われます。

携帯電話の料金トラブルは、「事業者は説明した」→「消費者は理解したつもりで理解していなかった」「理解できなかったが契約した」「適当に聞いていた」などが根っこにあると思います。
つまり、事業者は「伝える」努力はしているが、十分に「伝わっていなかった」ということです。
これは、どちらに落ち度があるのでしょうか。
事業者は説明する義務・責任があります
消費者は説明を理解する義務・責任があります
事業者は分かりやすい説明を心がけていると思いますが、分かるかわからないかは消費者の理解力にもよります
理解できないときに消費者自身が「分からない」と意思表示しなければ、消費者の「分からない」ことが事業者に伝わりません。
もっとも、その場では「分かった」ように感じている場合も多々あります。

最近の消費者問題の難しいところは、情報が複雑化し、理解が難しくなっているのに、消費者がついていけていない、もしくは、ついていく努力をしていないところではないかと思います。
複雑な料金制度を1度の説明で理解することは難しいかもしれません。
実際に完璧に理解して契約している消費者は少ないかもしれません。

私たちは中立の立場といいながらも、消費者寄りの立場で対応します。
とはいいながらも、消費者に「?」と思うことが増えています。
消費者基本法では(事業者の責務等)第5条~第8条の中で

第五条
二  消費者に対し必要な情報を明確かつ平易に提供すること。
第七条
消費者は、自ら進んで、その消費生活に関して、必要な知識を修得し、及び必要な情報を収集する等自主的かつ合理的に行動するよう努めなければならない。

と定められています。
消費者にもっと努力してほしい。昔から努力が不足してきたからこそ、悪質商法の消費者啓発が十分に機能していないのは、消費者が積極的に理解するという努力をしていないからだと思います。
そして、消費者の理解を支援するために消費者センターが役割を果たすのです。

(啓発活動及び教育の推進)
第十七条  国は、消費者の自立を支援するため、消費生活に関する知識の普及及び情報の提供等消費者に対する啓発活動を推進するとともに、消費者が生涯にわたつて消費生活について学習する機会があまねく求められている状況にかんがみ、学校、地域、家庭、職域その他の様々な場を通じて消費生活に関する教育を充実する等必要な施策を講ずるものとする。
2  地方公共団体は、前項の国の施策に準じて、当該地域の社会的、経済的状況に応じた施策を講ずるよう努めなければならない。

消費者が理解していなかったら、すべて事業者の説明不足だと決め付けてしまうのは早計だと思います。
なぜなら、事業者が伝えようとしているにもかかわらず、消費者が理解しようとしていない、または理解できないまま契約してしまうことがあるのです。また、契約後にも契約内容について、じっくり見直すこともしていない場合があるのです。
ここに、消費者の主張と一般論とのギャップが生じます。

そういう背景を理解した上で、相談員として、消費者センターとして、どのように対応したらいいのか考えていくべきだと思います。

携帯電話の料金トラブルで前提として理解しておかなければならない重要なこと
①相談員が携帯電話の料金プランなどの基本的なことについて理解していること
②相談者の契約プランをしっかり聞き取り、どんな契約をしているのか理解すること
この2点です
そして
③この料金は契約どおりであるかどうか確認して相談者に説明する(間違っていることはほとんどないと思います)。
④そのうえで、説明不足といえる要素があるのかどうかを判断する。
このような流れになるのではないでしょうか。

もちろん、意図的に形だけ説明して契約させる悪質業者は問題外ですが、携帯電話に関しては常識的に考えて悪意の販売をすることはあまり考えられません。
ただし、勘違いさせるような広告はないわけではありません(景品表示法上の問題)。

以上、料金プランの総論的な解説をしましたが、次回からは各論的なことについて具体的に解説したいと思います。
主なターゲットは、ソフトバンクの料金プランです。
「月々割」「実質無料」など一見複雑そうに見えますが、基本さえ押さえれば難しくありません。
また、他社もソフトバンクの料金制度を真似るようになりました。
そして、今や当たり前になった2年縛りの契約期間の功罪についても書きたいと思います。

相談者に的確な助言をするために、また、事業者から「間の抜けた質問をする相談員だ」と思われないために、相談員の理解の参考になればと思います。

※その2 からは、一般人の検索に引っかかりたくないので、パスワード付きにさせていただきます。

伝えること、伝わること

伝える ≠ 伝わる
相手に伝えたことが、すべて相手に伝わるとは限りません。
説明する ≠ 理解する

相手に説明したことが、すべて相手に理解してもらえるとは限りません。

この大原則を理解しておくことが重要です。

そんなことは当たり前だと感じるかもしれませんが、実際には難しいことです。
そして、消費者トラブルの多くは、これらが原因となっているともいえるのです。

相談業務の中で、
相談者は「そんな説明は聞いてない」「聞いていたら契約しなかった」
相談員は「説明不足ということで交渉してはどうですか」「説明不足ということでセンターから申し出てみます」
事業者は「きちんと説明したので問題はない」

この無限ループを経験された相談員も多いのではないでしょうか

事業者が悪意を持って作為的に説明しなかった場合は論外ですが、普通の事業者との契約でもよく起こります。
携帯電話や光回線契約などがその代表であり、高齢者の場合に特に見られます。

事業者の主張も、相談者の主張も、基本的には間違いはないのです。
何が問題になるかというのが、十分にもれなく説明したことが、相手に伝わっていなかったり、理解されていなかったりするということです。
このときに、消費者が、「分からない」といえるのかどうかがポイントになっており、高齢者だと、ほとんどが理解できないので何を聞いたら言いのかわからなくなり、理解しないまま契約してしまうのです。
この、「理解しないまま契約してしまう」のは日本人の国民性かもしれません。

結局は、伝え方、説明の仕方に問題があるのです。
誰に対しても同じ調子で説明をするのではなく、相手に合わせた方法で説明するのです。

先の例で言うと、
相談者は「聞いたけれどよく分からなかった、聞いた気がするけど早口で分からなかった、何となく分かった気になっていた、耳が遠くて聞こえにくかった」
事業者は「きちんと説明し、何か分からないことはありますかと聞いたが、特に聞かれることはなかったので理解していると考えた」
となる場合もあります。
それらを前提とするなら
相談員は「消費者に説明したかもしれませんが、どうも理解できていなかったようです」となります。
それでも契約書に判を押しているのですから、消費者としても、もっと自立してほしいというのは私たちの願いです。
しかし、私たちは相談者のために何とか理由を見つけて助けるように努力します。
なんだかやるせない気持ちになることもあります。

相談員は、相談者の話を鵜呑みにして、強気で事業者に挑むのではなく、いろんな可能性(=消費者側の責任)も考慮したうえで、柔らかい言葉で事業者に問い合わせ、確認し、説明不足・理解不足の交渉をしていくことが、「言った言わない」でもめることの多いこの種の事例には必要ではないかと思います。そうすれば、消費者にも責任があった場合の減額交渉も進めやすいのではないでしょうか。決してけんかを売るのではなく、着地地点を見極めながら交渉することが大切です。

そして、最後に肝に銘じてほしいことが、「事業者の対応=相談員の対応」になる可能性があるということです。
「専門用語を分かりやすく伝える 」(https://soudanskill.com/20100801/73.html
でも説明したとおり、相手の目線に立って、相談者と話をすることです。当たり前のことです。
「専門用語を使う、早口で話す、多くのことを話す、例をたくさんあげる」
これらは、悪質業者の手口です。しかし、一歩間違えれば相談員自身もこのようになってしまう可能性もあります。
そして、「理解しないまま契約してしまう」というのが、相談対応に例えると「相談に対する助言がよくわからないまま、礼を言って帰る」というのに対応します。
すなわち、「事業者⇔相談者」「相談者⇔相談員」「相談員⇔事業者」、この三者の関係で同じことが言えるのです。

分かりやすく説明するには、内容を理解し論理的に簡潔にまとめる能力と、どのような伝え方をすれば相手に伝わるのかというコミュニケーション能力が必要です。
これらの能力のハードルはとても高いです。しっかり意識して、相談現場にのぞみましょう。