改めて「正義」について考える

アンパンマンの作者である「やなせたかし」さんがなくなられました。
アンパンマンの世界については、『NHK ニッポンの教養 (2011年9月1日)  2011年9月6日(火)』で紹介したことがあります。
アンパンマンの世界は「正義とは何か」をということをテーマにしています。
紹介したNHKの番組でも正義について語られています。

消費者センターも相談員も「正義」のために活動しています。
「正義』にも様々な形があります。
いまいちど、自分自身にとっての「正義」とは何かを考えてみてはどうでしょうか

最後に、やなせさんの別の記事を紹介します。


NEWSポストセブン
http://www.news-postseven.com/archives/20110503_18844.html

やなせたかし氏 日本人の正義とは困った人にパン差し出すこと
2011.05.03 16:00

【アンパンマンとやなせたかし氏】

コラムニストの石原壮一郎氏は、震災直後、事務所で付けっぱなしにしていたラジオから『アンパンマンのマーチ』が流れてきたのを聞き、思わず落涙した。そして自分がレギュラーを務めているラジオ番組の企画で「被災者を元気づける曲」として、この曲を躊躇わずイチ押ししたという。なぜそれほどまでに心を揺さぶられたのか。

「震災で被災地の悲惨な状況を見て心を痛めたり、原発事故で不安を感じたり、モヤモヤとした複雑な感情が入り交じっていたと思うんです。その中でこの歌が、たとえいろいろなことがあっても人は生きて行かなくてはならないんだということを教えてくれました。漠然とした生きる事への不安に対して、それでも生きていけと励ましてくれたのです」

人々を勇気づけるこの歌はどのように誕生したのか、どのような想いが込められているのか。自ら作詞を手がけた「アンパンマン」作者で今年92歳、漫画界の大御所やなせたかし氏に、ノンフィクション・ライターの神田憲行氏が聞いた。

* * *
やなせ:「アンパンマン」を創作する際の僕の強い動機が、「正義とはなにか」ということです。正義とは実は簡単なことなのです。困っている人を助けること。ひもじい思いをしている人に、パンの一切れを差し出す行為を「正義」と呼ぶのです。なにも相手の国にミサイルを撃ち込んだり、国家を転覆させようと大きなことを企てる必要はありません。アメリカにはアメリカの“正義”があり、フセインにはフセインの“正義”がある。アラブにも、イスラエルにもお互いの“正義”がある。つまりこれらの“正義”は立場によって変わる。でも困っている人、飢えている人に食べ物を差し出す行為は、立場が変わっても国が違っても「正しいこと」には変わりません。絶対的な正義なのです。

やなせ氏は第二次世界大戦では砲兵として中国に駐留していた。大東亜共栄圏の美名のもと「正義の闘い」だと信じていたものが、戦後、侵略戦争だと知った。「天皇陛下万歳」と叫んでいた者たちが「民主主義」に走り去っていく姿も見た。全ての正義が相対化されていくなかで、絶対的な正義とは何か考えていって、突き当たったのが飢えに苦しんだ兵隊時代の記憶だった。そこから「自分を食べさせて人を救う」ヒーローが生まれた。

やなせ:うん。だから正義って相手を倒すことじゃないんですよ。アンパンマンもバイキンマンを殺したりしないでしょ。だってバイキンマンにはバイキンマンなりの正義を持っているかも知れないから。それに正義って、普通の人が行うものなんです。政治家みたいな偉い人や強い人だけが行うものではない。普通の人が目の前で溺れる子どもを見て思わず助けるために河に飛び込んでしまうような行為をいうのです。ただし普通の人なので、助けに行って自分が代わりに溺れ死んでしまうかも知れない。それでも助けざるを得ない。

つまり、正義を行う人は自分が傷つくことも覚悟しなくてはいけない。今で喩えると、原発事故に防護服を着て立ち向かっている人々がいます。自分たちが被爆する恐れがあるのに、事故をなんとかしなくてはという想いで放射能が満ちた施設に向かっていく。あれをもって、「正義」というのです。怪獣を倒すスーパーヒーローではなく、怪獣との闘いで壊された街を復元しようと立ちあがる普通の人々がヒーローであり、正義なのです。

――未曾有の国難といわれています。日本は復興できるのでしょうか

やなせ:(笑みを浮かべて)出来るのに決まってるじゃないか!あの戦争だって日本は焼け野原になって、原爆をニ個も落とされて人が何十年も住めないと言われたんだよ。それがあそこまで復興できたんだから。日本人は粘り強く、正しく立派に生きている人たちです。間違いなく復興できますよ!

やなせ氏は震災直後に1000万円を寄付し、さらにグッズの売り上げを寄付にする活動を継続中である。

「被災地の子どもたちがアンパンマンが助けに来てくれると思ってるらしいんだ。だからこうして活動していると知ると、喜んでくれるんじゃないかと思うんだ」

取材後、私(神田)が仙台で被災した従兄弟に小さな子どもが2人いることを話の流れで言うと、やなせ氏は目を見開いて「この事務所にあるオモチャどれでもいいから持って行きなさい。送って励ましてあげなさい」と言ってくださった。秘書の方が丁寧に選んで手渡してくれた二つのオモチャを持つだけで、帰り道の私の気持ちは温かくなった。

時間のショートカット

多忙な毎日、1日の時間は限られています。
限られた時間の中で、仕事に家庭にプライベートに使い分けなければなりません。
ましてや、勉強時間はなかなか優先することが後回しにされ、結局、時間がないという結果(言い訳?)に終わってしまいます。
時間を上手に使う方法、それは時間のショートカットです。

典型的な時間のショートカットは「M&A」です。企業を買収していくことで会社が大きくなります。一から開発していたのでは莫大な時間が必要であり、多くの企業で行われています。

身近なところでは、電子辞書です。私は電子辞書のない時代に育ったので、英単語は辞書を引きまくり覚えるものでした。しかし、最近は電子辞書なるものが出現しています。個人的には電子辞書を使うというずぼらなことをせず、辞書を引いて覚えなさい。といいたいところですが、そうでもないようです。最新の電子辞書は音声で発音が出せたり、関連する熟語や使い方が次々と広がりを見せて、勉強が深まっていくようです。このサイトでも紹介した灘高校の「キムタツブログ」でも推奨しています。確かに電子辞書を引くと、短時間で多くの知識を得ることができるので、これも時間のショートカットかなと思ったりします。

消費者相談でも時間のショートカットに関することがあります。それは年齢が高くなるほど、「好ましくないこと」というバイアスがかかってくるものです。
それは、オンラインゲームの有料アイテムです。例えば社会人であれば、ずっとゲームしているわけには行きません。1日の中でプレイできる時間は限られています。しかし、ゲームの多くは時間の経過がスタミナの回復となっており、ピグライフでは、MAX30のスタミナを回復するのに1回復5分でMAX回復2時間30分待たなければなりません。それを補うのに有料のスタミナ回復アイテムがあります。武器系のアイテムでも地道に戦ってゲットするには時間が全く足りません。そこで武器を購入することで時間を節約できるのです。ただし、度が過ぎると月に何十万円という請求が来ます。使う金額をコントロールすることが大切です。そのあたりは、パチンコや競馬などに似ていますね。洋服や食事なども同じかもしれません。それをコントロールできない消費者、特に未成年者が高額請求で相談に来ます。ゲームに限らず、誘惑の多い社会では、「有料課金アイテム=悪」という誤ったバイアスを持つ方が多いですが冷静に考えると分かると何が論点になるかというのは理解できると思います。
このアイテム課金は合法ですが、規約で禁止されている「RMT=リアルマネートレード」も時間のショートカットと捉えることができます。ただし、違法な手段で得たアイテムを組織的に売りさばき大もうけしたり、詐欺にあったりなど、社会的に問題になっています。

また、その手法が正しいかどうかは評価が分かれますが、遺伝子組み換えによる品種改良も時間のショートカットであるということは理解できると思います。

私のサイトも一種の時間のショートカットです。消費者行政の情報があふれており、すべてに目を通して重要なものを取捨選択するには多くの時間が必要です。
スキルアップのためのヒントもサイトを訪問するだけで質の高いものを得ることができます。
また、掲示板等を通じて、欲しい情報や交流ができるなど、通常では得られない利点があります。

結局、これらの時間のショートカットを含めた価値に対して、どれだけの対価を支払うかというのが、今の成熟した社会の消費者の選択だと思います。
景気が悪いといいながらも、価値があるもには行列ができるし、農業もしっかり戦略を立てて経営すると年収1000万を超える収入も得られています。
第6次産業というのがあります。農業などの1次産業から得られた生産物を加工したり、観光農園を経営したり、事業を多角化することで時代にあった企業価値を見いだしています。

昭和の高度成長期やバブルを経験すると、なかなか昔の固定観念から抜け出ることが難しくなってきますが、バブル後の私たちの子どもの世代は確実に新しい時代の価値観を歩む必要があります。現に若者はブランド物やクルマなどの「モノ」にこだわるのではなく、体験する「コト」に価値を見いだしています。
そして、消費者相談もそのような世代からの相談や新しいサービスの相談を受けることになります。できるだけ、急速に進む時代の流れについていかなくては満足度のある相談対応ができない時代になってきます。
日々勉強、日々努力。

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ニュースの方程式

「環境技術」という専門誌の論文を紹介します。
環境技術学会
http://www.jriet.net/

「環境技術」2013年9月号

[特集記事] 間違った情報にどう対処すべきか―「メディアのメディア」をつくろう―
‥‥毎日新聞社 小島正美
http://www.jriet.net/paper/2013/0913/534.htm
要旨
放射線のリスクだけでなく,遺伝子組み換え作物,食品添加物,医薬品,農薬などの分野でおかしなメディア情報が飛び交っている.放射線量が年間1ミリシーベルトを超えると健康被害が生じるかのような情報もそのひとつだ.こういう根拠のない情報を打ち消すための「カウンター情報」が必要だ.なぜ,ニュースがゆがみ,なぜ,専門家が嘆くような状況になるかを考えながら,おかしな情報をチェックする「メディアのメディア」の創設が必要だと提案したい.
キーワード:副作用,ニュースの特異性,客観報道,カウンター情報,メディアのメディア

記者が送るニュースは「政治性」を帯びている。ニュースの素材選びから、見出しをつけて報じるまで、すべて記者の主観的な産物である。つまり、客観報道は存在しない。

【抜粋】2.客観報道は存在しない

ある出来事が起きたとき、それをニュースにするかどうかは記者が判断する。
つまり、ニュースは最初から最後まで主観的なものである。
記者の価値観がいろいろであれば、そのニュースは記者の価値観を反映した政治的なものになるのも当然である。
その主観的な内容のニュースが、科学的に見ておかしいかどうかは、見る人によっても異なるだけにやっかいだ。
だから、まずニュースを見たら、多数の科学者がどう見ているかを知ることが重要になる。つまり、ニュースの中身は多数の科学者が同意するような内容かどうかをみなに知らせることが重要だ。

4.ニュースの方程式

ニュースのインパクト=特異的なこと(珍しいこと・初めて・少数派・おもしろいこと)×物語(共感を得る生涯・利他的行動)×アクション(緊急会見・抗議行動・デモ)

どんなニュースが届くか

・科学的な話よりもおもしろい話
・安全な話よりも怖い話
・統計的な全体像よりも、例外的な話
・多数の安心よりも少数の不安
・多数派の科学者よりも少数派の異端
・冷静な政治家よりもパフォーマンス型政治家

ポイントを抜粋しましたが、だいたいわかってもらえると思います。
消費者センターの現場にいれば、食品の安全や安心、放射能問題、健康食品、機能水など、相談事例にもあるとおり、人々はメディアに動かされます。そして、思い込みが始まります。
「思い込み=バイアス」は以前にも記事にしたことがあります(バイアスを持たないようにする 2010年4月8日(木))。
消費者センターは、消費者に「スタンダード」を示すことが重要です。したがって、相談員はスタンダードを理解するために客観的な事実を知らなければなりません。自分自身で調べていかなければならない場合と、国などがあらかじめ調べて公表している場合とがあります。しかし、国のQ&Aは消費者に理解されにくいという現実もあります。国は信用できない。都合よく解釈している。何か隠している。など、マイナスのバイアスがかかっていることがあります。
今の世の中は、正しい事実よりも、大多数の意見のほうが真実になってしまうというのが怖いですね。いわゆる、世論です。
今回の論文の中で、「子宮頸がんワクチン」と「風疹予防ワクチン」の問題が対比されています。ワクチンの有効性という客観的事実が議論されることなく、ニュースの方程式にのっとり、片や「いいもの」に片や「悪者」に仕立て上げられました。
何が明暗を分けたのかというと、ニュースの方程式にのっとった情報を客観的に評価できているかどうかということです。
筆者は「メディア」の「メディア」が必要だと主張しています。つまり、最初にメディアの出た情報を専門家がそれぞれの見方を投稿する「メディア」があれば、普通の人ではわからないことでも、読み手にとっても記者にとっても、情報を読み解く力は格段にアップすると呼びかけています。

消費者センターの現場で日々、情報を読み解く力が試されている相談員にとって、この論文をどう解釈するかは、各自にお任せしますが、ネットの掲示板やツイッターでは、明らかに偏った発言と見られるものがあります。そして、それに噛み付いている人も。
そのやり取りは冷静になって客観的にみれば本質が見えてきます。決して、迷わないようにしてください。
興味がある人はなかなか手に入らないと思いますが読んでみてください。
まさしく、「情報リテラシー」=「情報を読み解く力」ですね。

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