消費者の安全・安心確保のための「地域体制の在り方」に関する意見交換会

最近、意見交換会等の動きが激しくなっています。
消費者庁のあり方などが課題になり、進展が見られないまま時間が経過しまいましたが、いよいよ今年度中に結論を出す動きになってきました。
今回の意見交換会の趣旨を読んでみると、抽象的な表現が多く、いまさらながらのことが列挙されています。
「地域体制の在り方」というテーマになっていますが、棚上げになっていた課題や問題を改めて整理・決定し、必要な法律改正を行い、平成26年4月から新しい体制にすることが目的のようですね。

消費者庁HP
ホーム > 地方協力課 > 消費者の安全・安心確保のための「地域体制の在り方」に関する意見交換会
http://www.caa.go.jp/region/anzen_anshin.html
資料1-1 消費者の安全・安心確保のための「地域体制の在り方」に関する意見交換会の開催について[PDF:197KB]
http://www.caa.go.jp/region/pdf/131022_1_1.pdf

1.趣旨

高齢化、単身世帯化などの消費者をめぐる社会経済状況の変化や悪質商法の手口の巧妙化などを踏まえ、消費者被害に遭いやすい者を把握し、地域のネットワークによる「見守り」「消費者教育」を実施し、消費者被害の早期発見・未然防止につなげていくことが喫緊の課題となっている。
しかし、現状は、消費生活相談体制の整備が進んでいない地域や消費生活相談の質に格差がみられる、消費生活センター等には消費者被害に遭いやすい者等に関する情報があるものの見守る体制がないなど、前述の課題に対応することが困難な状況にある。
このため、消費生活センター等と地域の関係機関等とが消費生活相談等で得られた情報を共有し、消費者安全を確保するための活動に当該情報を利用できるような見守りのネットワークの構築が不可欠である。同時に、情報の利用に当たっては適切な保全策を講じる必要がある。加えて、国、都道府県及び市町村の役割を明確にし、消費生活相談の質を担保する仕組みが必要である。
消費者が安心して安全で豊かな消費生活を営めるよう、消費生活相談等により得られた情報の利用による消費者安全の確保のための「地域体制の在り方」について意見交換を行い、法的な整備を含めた対応策を検討する。

ポイント
・消費者被害の早期発見・未然防止のために、地域のネットワークによる「見守り」「消費者教育」を実施
→地域の見守りの制度を自治体が構築する・・・個人情報の活用(情報の利用に当たっては適切な保全策)
→消費者教育推進法に基づく具体的な行動
⇒2.主な議題の(1)(2)(3)
国、都道府県及び市町村の役割を明確に
⇒2.主な議題の(5)
消費生活相談の質を担保する仕組み
⇒2.主な議題の(4)

2.主な議題

(1)消費生活相談等により得られた情報の集約等及び関係機関等への提供に関する、国及び地方公共団体の役割
(2)消費生活センター等と地域の関係機関等との見守りのネットワークの構築、役割など
(3)消費生活相談等により得られた情報の利用と保全のための制度の在り方
(集約する情報の範囲、提供する情報の範囲、提供対象、提供方法等)
(4)消費生活センターの役割と体制の在り方
ア 消費生活相談員等の役割と任用(消費生活相談員資格制度の在り方等)
イ 消費生活相談等の民間団体等への委託の在り方
(5)消費生活相談等の事務の実施に関する国・都道府県・市町村の役割と責務

3.進め方

平成25年10月以降、3回程度開催し、年内を目途として意見交換の成果を取りまとめる。

年内に3回の開催ですので、10月、11月、12月で結論を出し提言するという形ですね。
この中でも「消費生活相談員等の役割と任用(消費生活相談員資格制度の在り方等)」は注目です。これについては別途記事にします。

この意見交換会の開催について、消費者庁長官の記者会見を紹介します。


消費者庁HP
トップ > 活動について > 大臣等記者会見
http://www.caa.go.jp/action/kaiken/index.html

トップ > 活動について > 大臣等記者会見 > 阿南消費者庁長官記者会見要旨(平成25年10月16日(水))
(平成25年10月16日(水)16:00~16:10 於:消費者庁6階記者会見室)
http://www.caa.go.jp/action/kaiken/c/131016c>_kaiken.html
1.発言要旨
こんにちは。
私からは、消費者の安全・安心確保のための地域体制の在り方に関する意見交換会の開催についてお話しします。
高齢化や単身世帯化などの消費者をめぐる社会経済状況の変化や悪質商法の手口の巧妙化などを踏まえて、消費者庁では、消費者安心戦略の柱の一つとして、地域のネットワークによる消費者被害の防止対策の展開を掲げました。この具体化に向けて、消費者庁において、消費者の安全・安心確保のための地域体制の在り方に関する意見交換会を開催いたします。第1回の会合は10月22日を予定しております。
この意見交換会では、見守りネットワークの構築や消費生活相談の質と量の担保に必要な地域体制の在り方について意見交換を行い、法的な整備も含めた対応策を御検討いただくこととしています。
また構成員ですが、地方公共団体の首長を初め消費者団体、事業者団体、消費生活相談員の資格保有者団体の代表者及び有識者等としております。
以上です。
2.質疑応答(抜粋)

日本消費経済新聞、相川と申します。
相談員資格については、国民生活センターの一元化論が出ているときに、一度中間報告がまとまっていて、新しい資格をつくって法的に位置づけ、なおかつ、民間団体が認定をするというふうな中間法整備が出ています。それとこれの関連はどのように整理をしていかれるのでしょうか。

この意見交換会の中では、ペーパーの2番目の主な議題にありますように、相談員資格についても検討します。(4)のアに、消費生活相談員等の役割と任用、消費生活相談員資格制度の在り方等とあります。また、イにありますように、消費生活相談等の民間団体への委託の在り方も議題になっておりますので、これらは昨年の中間報告に沿った内容で検討していきたいと考えております。

ということは、新しい資格をつくることを考えられるということでしょうか。

そのとおりです。

それから、わずか3回ですが、かなり原案ができているのでしょうか。

議題はこのように設定して、そのための資料等は準備をしておりますが、原案等については意見を聞きながら作成していきたいと考えております。

今のお話の確認ですけれども、3回程度開催して、年内をめどに意見交換の成果を取りまとめるとありますけれども、まとめたものは長官に行くのですか、どういう形でしていくのか、もうちょっと教えてください。

まとめたものは、法的な整備を含めた対応策の検討に活かすということになります。消費生活相談員の資格ですとか相談体制に関わるところは消費者安全法に規定されておりますので、必要となれば消費者安全法を改正するということになります。

安全法の改正を見込んでやると。

そういうことになります。

わかりました。

日本消費者新聞の丸田と申しますが、関連ですが、今のペーパーの中で、趣旨の2行目にあります、「消費者被害に遭いやすい者を把握し」ということが書かれておりますが、これは特商法の執行のときに、以前、把握された方々なのでしょうか。

それも含めてということです。

それも含めてということは、センターで把握されている方々もということですか。

そういうことです。様々な被害情報や、被害に遭いやすい方たちのリストがあります。そういうものを使えるといいますか、そこの地域のネットワークでそうした情報を共有できるような制度をつくりたいと考えています。

そうしますと、真ん中あたりにある「情報の利用に当たっては適切な保全策を講じる」というのは、要するに、プライバシーの問題とかということですか。

そういうことです。

それとあと、先ほどの関連ですが、法的な整備は消費者安全法ということでしたか。

はい。

どんな分野でしょうか。

例えば、今、消費生活相談員の資格について触れているところがありますが、そこをもう少しはっきりした形にすることも考えたいと思っております。

例えば、消費生活相談の一番最後のところ、5番目には、「実施に関する国、都道府県、市町村の役割と責務」と書かれていますけれども、相談の業務といいますか、その位置づけということを法的に何かするということも考えられますか。

御意見を聞きながらまとめていきたいと思います。

今、安全法の資格の規定はなく、基本計画で4月に出すというためにやっているのだと思うのですが、今の回答ではあまりにもわかりにくいのですが。

基本計画では、消費生活相談員の資格の法的位置づけの明確化について検討を行い、全国的に一定の水準を確保し、相談業務の一層の質の向上、体制の整備を図るとされ、実施時期については、平成26年の通常国会を念頭に必要な事項について検討を行うとされています。これを具体化するということになります。

※最後の「平成26年の通常国会を念頭に必要な事項について検討」ということは、年明けの26年1月から6月の通常国会で消費者安全法の改正案が出されて、おそらく可決し、施行は、早ければ26年4月1日、遅ければ夏以降となるのでしょうね。いきなり1月に改正案が出されるのには、消費生活専門相談員の資格がどうなるのかということと独法改正と国センの問題にも絡むので難しいかもしれません。
すなわち、消費生活相談員の資格制度が大きく変わるということです。これについては別途記事にします。

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事故調公表資料「家庭用ヒートポンプ給湯機」

消費者安全調査委員会、いわゆる事故調については、その業務の本質が見えてこないなど評価が分かれているところです。
私自身も公表されている資料を見てみると、現場とは遠い世界の案件が取り上げられてて、別の世界の存在かないう印象でした。
ところが、今回、注目すべき案件が取り上げられました。

いつもチェックしている消費者庁のトップページの新着情報です
10月18日
事故調「家庭用ヒートポンプ給湯機から生じる運転音・振動等により不眠等の健康上の症状が発生したとされる事案に係る事故等原因調査について」の経過報告を公表しました

消費者庁HP
ホーム > 審議会・懇談会等 > 消費者安全調査委員会 > 報告書・評価書
http://www.caa.go.jp/csic/action/index5.html

件名
家庭用ヒートポンプ給湯機から生じる運転音・振動等により不眠等の健康上の症状が発生したとされる事案に係る事故等原因調査について
経過報告書
平成25年10月18日本文 [PDF:207KB ]
http://www.caa.go.jp/csic/action/pdf/131018_honbun2.pdf

家庭用ヒートポンプ給湯機は、いわゆる「エコキュート」です。
エコキュートの運転音の相談を受けたことがある相談員もいると思います。
結構古くからの事案で、裁判もいくつか起こっています。
ネットを検索すれば多くの事例に遭遇すると思います。

ウィキペディアより

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B5%A6%E6%B9%AF%E5%99%A8
自然冷媒ヒートポンプ給湯器 エコキュート
自然冷媒(CO2)を用いた熱交換式の電気給湯機で「エコキュート」と呼ばれている。「エコキュート」の名称は電力会社・給湯器メーカーが自然冷媒ヒートポンプ給湯器を総称する愛称として使用している(登録商標の権利としては関西電力が保持・管理している)。よって、自然冷媒を用いないHFCヒートポンプ給湯器は「エコキュート」とは呼ばれない。2001年5月にコロナが発売を開始した。構造はエアコンと同じ原理で大気の熱を冷媒に移し、その熱で湯を沸かす。
燃焼式、電気温水器と異なり大気の熱を移動する仕組みのため、投入エネルギーよりも多くの熱エネルギーを利用することができる。

(参考)日本冷媒空調工業会HP
ホーム>関連製品>家庭用ヒートポンプ給湯機
http://www.jraia.or.jp/product/heatpump/index.html

報告書の「3.これまでの調査で把握した主な事実情報」からの抜粋です

調査委員会として、現時点までの調査では、ヒートポンプ給湯機と本件事案や他の申出事案における症状発生との関連性について、いまだ何らかの見解を示すには至っていない。
しかし、これまでの調査において、これらの事案には次のような特性があることが明らかになっている。
(1)申出者等が訴えている症状は日常生活にも著しい影響を及ぼすレベルである
本件申出者及び他の類似事案の申出者等からの口述及び診断書によると、共通する症状は不眠であり、その他にめまいや頭痛、吐き気などを生じることがある。さらに、症状が発生してから現在に至るまで継続している場合があり、訴えている症状は日常生活にも著しい影響を及ぼすレベルである。
(2)同様の環境下においても、症状を訴える者がいる場合といない場合がある。
本件申出者及び他の類似事案の申出者等からの口述聴取において、症状を訴える者は、自宅周辺にヒートポンプ給湯機が設置された、又はヒートポンプ給湯機が設置された場所の周辺に引っ越したことを契機に症状が出現したと述べている。
しかし、症状を訴える者と同居する者がいる場合、必ずしも全ての同居者が症状を訴えているわけではない。
つまり、周辺にヒートポンプ給湯機が設置された自宅に住んでいるという同様の環境下においても、症状を訴える者がいる場合といない場合がある。

今後調査が進められるわけですが、相談現場では、「難対応事例」になると思います。
相談者が難しい消費者という意味ではなく、相談案件が難しいという意味です。

センターがあっせん対応するにあたって、目安にするものが「スタンダード」です。この場合のひとつが、騒音の環境基準にあたると思いますが、それを超過するレベルではないので、それをもって材料にすることは難しいです。
低周波等についても、携帯電話や携帯電話の電波基地と同様に明らかにアウトであるというオーソライズされた(公に認められた)結論も出ていません(研究レベルでは様々な説が出ています)。
報告書にもあるとおり、症状が出ている人は深刻であるが、同居している人が全員発症しているわけではない、ということです。
この部分が一番のポイントで、アレルギーでいえば個人の感作性の問題となります。

一般的に因果関係と問題の有無を判断する考え方として
「①症状が出ている → ②因果関係がある(今回は因果関係の公式な見解は出ていませんが普通に考えてあるといってもいいのではないでしょうか) → ③すべての人に被害が出るというわけではなく個人によって異なる」
この③の部分が問題になります。

たとえば、食中毒にしても同じ汚染されたものを食べても全員に症状が出るわけではありませんが、その食品は食品衛生法違反となり、その食品は問題があると断定されます。また、アレルギー物質が含まれて皮膚炎等の症状が出る人と出ない人があるが、一般的にアレルギーを引き起こす物質が含まれており発症者の数が多いとなれば問題のある製品としてリコールされます。
一方、小麦アレルギーや牛乳アレルギーは、食品自体には問題はなくても、その人の体質でアレルギーを引き起こすとして、個人の防衛という範囲におさまります。
さらに、製品の誤使用についても、多くの人がしてしまう誤使用は欠陥であるといわれていますが、その可能性が認められる度合いが高ければ(NITEではよく「蓋然性があるかどうか」とよくいいます)問題がある製品となります。

つまり、③の部分がどう評価されるかによって、「対象が全員で問題あり」「対象が例外的な人で一般には問題ない」の選択肢になります。
今回のような案件が無視できないほどたくさんあると、対応せざるを得ないと思いますが、今のところ、後者のような感じです。これが前者として認められるかどうかは今後調査が進められると思いますが、いろんな要素を考えると難しいのではないかと思います。

相談対応するにあたって、相談者にとっては確かに例外的な人に該当しているのがわかる場合でも、それをセンターであっせんするのは難しく、結局は、例外案件は個別対応ということで法律相談や医療機関などに相談してもらうという道しか残されなくなるのです。
センターでできることは、身体的被害が出た消費者事故として国などに報告して事例を積み上げるという選択肢になりますが、相談者の気持ちは痛いほどわかるだけに、地団駄を踏みたくなるような、センターでは対応できない「難対応事例」になってしまいます。

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消費者行政の体制整備のための意見交換会 第3回議事録

消費者行政の体制整備のための意見交換会
http://www.anzen.go.jp/seibi/index.html

中間報告後の意見交換会が始まりました。いよいよ国センをどうするのかという最終検討に入っていくと思います。

第5回 消費者行政の体制整備のための意見交換会(平成25年10月21日)
1.日時:平成25年10月21日(月)18:00~18:30
3.内容:①行政改革推進会議・独立行政法人改革等に関する分科会ワーキンググループによる(独)国民生活センターのヒアリングについて
②消費者政策検討会議など連携状況の報告

第4回 消費者行政の体制整備のための意見交換会(平成25年7月23日)(非公開)
議事次第 [PDF:93KB]
⇒非公開でしたので、「消費者行政の体制整備のための意見交換会」中間整理(内閣府特命担当大臣記者会見(平成25年7月26日)での配付資料) [PDF:152KB]
の最終確認をしたのでしょうか?分かりません。

第3回 消費者行政の体制整備のための意見交換会(平成25年6月5日)
議事次第 [PDF:108KB]
【配布資料】
資料1 ヒアリング項目[PDF:126KB]
資料2 有識者提出資料[PDF:463KB]
資料3 政府関係法人に関する網羅的な整理[PDF:369KB]
資料4 国民生活センターによる事業者への要望について[PDF:192KB]
議事録 [PDF:325KB] http://www.anzen.go.jp/seibi/pdf/130605_gijiroku.pdf
⇒この議事録がなかなか出なかったのですが、最近出ました。議事録の公表はお知らせにもないのでこまめに見ておかなければ分かりませんが、中間整理の終わった後なので、ちょっと長すぎじゃないでしょうか。
今回は、この議事録から抜粋して紹介します。
抜粋を羅列しているだけなので、誤解を生じる可能性もあります。議事録を読んでいただき確認してください。特に、この第3回の議事録は確信をつくものもあり重要な議論だったと思います。


○河野全国消費者団体連絡会事務局長
・それから2つ目として、地方自治体との緊密な協力体制のもとに消費生活センターの強化・充実を前提にした全国的なネットワークをどう構築するのか。
・それから、職員さんをどう養成・確保していくかということですけれども、当初の出向体制というか、当面はそれでいたし方がないと。ただ、消費者が主役となる国民本位の行政の実現が、庁として目指す本当の目標であるということ、その実現のために力を注ぐことが日々の仕事の中で実感できるような環境が整えば、理想論かもしれませんけれども、おのずと職員さんの意欲は高まるのかなというふうに思っております。
・消費者行政というのは常に地域が現場
・地方消費者行政活性化基金というのを起爆剤
・まだ時間、予算、担当セクションの自覚も足りないのではないか
・地方行政側は地域間格差が非常にございます。
・自主財源確保が困難な自治体も多い
・全国の消費者にとって、相談を初めとする身近な情報の出口、入り口機能を有するのが地域の消費生活センターでございますけれども、そこが国民生活センターさんとの風通しのよい太いパイプでつながることで本当に現場の機能充実が期待できるというふうに思っております。
活性化基金によってこの3年間で増員された各地の相談員さんの業務や資質向上にも役立つかなというふうに思っております。
・今のような状況が長く続きますと、国民生活センターさんの職員さん、全国の消費生活センターの相談員さんたちの士気が落ちていくのではないか

○山本東京大学法学部教授
・続きまして、消費者行政を担う職員の問題でございますが、私、先ほど申しましたように、「消費生活相談員資格の法的位置付けの明確化等に関する検討会」に参加をしてございました。消費生活相談員の資格につきましては、現在、法律の中で主体と資格が固有名詞で3つ並んでいると。例えば、独立行政法人国民生活センターが付与する消費生活専門相談員の資格というふうに固有名詞が書いてあるという状態でございます。資格の付与の手続とか実質的な要件というのは何も書いていないということで、これは法令の体裁として異例であるというだけでなく、相談員が専門能力に見合う社会的な理解と評価を得るための障害になっているというふうに思います。
したがいまして、今後、相談員が事業者及び消費者から信頼を得て業務を行う、それから、優秀な人材を相談員にリクルートして消費者行政の需要に応じる、そして、相談員の職責にふさわしい処遇改善を実現するといったために、消費生活相談員資格付与の要件と手続を早急に法制化すべきであるというふうに考えます。

○森大臣
・民主党政権のときには、独立行政法人を中期目標行政法人と行政執行法人の2つに区分するというふうにしておりました。この点についてどうするのか寺田副大臣にお尋ねしたところ、これについては全てゼロベースで見直すということでございました。ですので、この2つの分け方もしないということでございました。民主党政権で行われた独立行政法人改革については、全てゼロベースで見直すと。現在は何をしているかと申しますと、寺田副大臣のもとで独立行政法人全体を通した総論の検討を行っているということです。総論とは、例えば独法の在り方、ガバナンス、持つべき機能などについて検討を行っているということでした。それが終わってから個別の法人について、つまり、例えば国民生活センターについてどうするかというような検討を始める、それを年末に向けて進めていくというスケジュールであるそうです。検討の過程では、どういう形になるかはわかりませんが、国民生活センターを含め個別の法人に関する意見を聞く機会を設けていただくということでした。
民主党政権については独法性悪説と申しますか、独法は全て悪いのだというような考え方に立っておりましたけれども、安倍内閣の検討の方向性としては、独法本来の機能を尊重しようというものであると。あくまで国が企画・立案を行い、試験や研究等は独法が行うという切り分けを行って行政の効率化を図っていくことを目指すということでした。検討においては次の3つの点をメルクマールにする。1つは、民でできるものは民でする。2つ目は、独法本来のよさを伸ばしてむだを省いていく。3番目として、似たような機能を有している独法は統合していくという、この3つの基準を持って、それを基本的な方向性として検討しているということです。また、地方との関係や積立金の問題等もあわせて検討の中に材料として置いていくということでございました。

○山本東京大学法学部教授
その点は私も承知しておりますので、またいろいろ河上先生から御苦労の経験等を十分お伺いしたいと思っております。
むしろ先ほどの独立行政法人のほうの話になってしまうのですが、独立行政法人改革に関して1つ言われたのは、今まで独立行政法人は一くくりにしてきたわけですけれども、これにはいろいろな業務がある。業務ごとに少しガバナンスのあり方を変えて考えるべきなのではないか。具体的には、例えば研究開発型とか文化振興型とか金融業務型というふうに業務を幾つか類型化して、それごとにふさわしいガバナンスのあり方を考えてみましょうということが言われておりました。
こういう路線がこれから基本的に承継されるのかどうかというのが一つのポイントだと思いますし、仮に承継された場合に、それでは国民生活センターをそこに当てはめるというときにうまく当てはめられるような箱ができるのかということがもう一つのポイントなのではないかと思います。

○松本教授
今の山本先生の意見に賛成です。今までの議論の最大の問題は、まずそこにあるわけで、そのもともとの原因はどこにあるかというと、タスクフォースの議論の出発点にあるわけです。すなわち、消費者庁と国民生活センターは大部分の業務が重複している、むだである、だから1つにするという議論を始めて、結論もまさにそこに終わっているわけです。本当にそうなのかということで検証会議がつくられたわけですが、検証会議は、重複のところは一切手をつけないで、一体化するのが現実的であるという結論なのです。現実的ということの意味は、まさに独立行政法人のタイプとして、国民生活センターのような機能を果たしていた組織が入る余地はもうなくなった、だから、国に統合されるほうが現実的だという結論なのですが、それは、いわばタスクフォースが独立行政法人にはしないという結論を出してしまったから、受け皿としても不要なのだということでこういう整理がされたのではないかと思うわけです。すなわち、重複の議論が外枠の受け皿の議論に反映してしまっているというところに根本的な問題があるわけで、重複かどうかというところの議論からやり直して重複していないのだ、したがって、しかるべき受け皿が必要なのだという議論をきちんとしていけば、独立行政法人の議論が変わってくる可能性があるのではないかと思います。

○池本弁護士
・それから、(2)の消費者行政を担う職員の養成・確保ということについては、3ページ目のウのところをごらんいただきたいと思います。
今、消費者委員会の消費者行政専門調査会の議論の中でも、私はこの点を一番重点を置いて議論していただきたいということを述べ、調査会の中でもそこが焦点になっているのですが、地方で言えば、相談窓口はできたけれども、あるいは相談員は養成されているけれども、職員の資質向上ということが図られていない。また、同じことは、国の消費者行政の担当職員、消費者庁などの職員も他省庁から入ってきて、また帰ってというところで、プロパー職員というのが十分育成されていないのではないかということが言われています。
その対処方法として3通りあると思うのですが、1つは、国民生活センターとの人事交流、もう一つは、地方自治体との人事交流、これはまさに相談などの現場を国の職員が見るという意味と自治体のレベルを上げるという両方の面があります。
それから、国も地方もそうですが、きちんとした職員研修の体制をつくるべきだ、実はこの点が全く手つかずで、国民生活センターの消費者行政職員研修は、10年前と現在でほとんどコマ数も変わっていない。そもそもカリキュラムとしてどういうものをやるべきかということも十分議論が尽くされていないのではないかということが言われています。
・実は、私の最終結論は、現時点でも独立行政法人の中で、あるいは独立行政法人という名前ではなくても、法人格を持つけれども、安定性・独立性が確保できる組織形態が実現できるのであればそういう形でやっていくことが望ましい。ただ、それが見通せない、非常に不安定な将来的に削減、削減という従来の独立行政法人のような形になるのであれば、それよりは特別の機関のほうがましなのかもしれない。ただ、そちらが見通せないからましなところでもう決めてしまえというのは、やはり対応としては不適切で、やはり本来の国センの在り方をきちんと見据えた上で、それに最も似つかわしいものを最後まで目指していただくということが望ましいのではないかと考えます。

○野々山国民生活センター理事長
池本先生の「消費者行政を担う職員の養成・確保について」は、そのとおりだと思っておりますけれども、ウの③のところについては、若干私どもと事実認識が違いますので、その点だけ申し上げておきます。
国や地方消費者行政における消費者行政担当職員の研修というのは、これまで不十分だったということはそのとおりだと思いますけれども、地方消費者行政につきましては、今やっている相談員さんが受講している研修については全て開放しています。そこにもかなり多くの地方消費者行政の職員方が来ておりまして、そこで参加してやっています。おっしゃっているのが、いわゆる消費者行政職員だけのものだということであればそれほど多くありませんが、今はそういうふうに開放しているということです。ただ、これで十分かといったらそうではないと思っております。消費者行政職員向けのテキストであったり、独自のそういうものをつくっていくということも必要と思います。事実認識としては、全くコマ数がふえていなくて何も変わっていないわけではなく、職員向けにも開放しているというところを指摘したいと思っております。

○森大臣
・池本先生が来られる前に、私、若干出席していまして、それから中抜けをしていたのですが、最初に出席したときに発言したことを池本先生にお伝えしておきますが、1つは、前回のこの会の宿題を踏まえて、独法の改革というものが安倍政権ではどのように進んでいるかということなのですけれども、稲田大臣のもとで進んでおりまして、担当が寺田副大臣なのですけれども、私が5月8日に面会をいたしまして確認したところ、民主党政権で行われた独法改革については全てゼロベースということで、2つに分けてどうするとかいうようなことも全てなしにしてゼロベースで見直しておりまして、現在は総論をやっていて、今後、後半で各論をやっていって、年末に向けて進めていく。総論では何をやっているかというと独法の在り方、ガバナンス、持つべき機能等について検討を行っています。そして、後半、個別の法人について検討していくのですが、その後半の検討では国民生活センターを含め個別の法人に意見も聞いていきますということでした。そして、民主党は独法性悪説というようなものに立っておりましたけれども、我々は独法本来の機能を尊重しようというもので、あくまで国のほうで企画・立案を行いますけれども、試験や研究等は独法が行うという切り分けを行い、行政の効率化を図っていくということです。そして、3つの基準で進めていきます。1つは、民でできるものは民でやる。2つ目は、独法本来のよさを伸ばして、むだを省く。そして、3番目は、似たような機能を有している独法は統合するという基本的な方向性を持っています。また、地方との関係や積立金の問題等も考えていくということでございました。個別に国民生活センターについての言及はございませんでした。
・それから、国民生活センターというものから離れまして消費者行政の全体の体制を見たときに、さまざま御指摘をいただきまして、まず1つは、消費者庁の職員の質と量の問題でございますけれども、質のほうは、そのような御指摘を踏まえて、このたび私のほうで消費生活相談員の資格を消費者庁の職員が取るという制度を導入いたしました。これは、希望者に講義を受講する機会を与えまして、最後に受験も、相談員資格のテストも受けに行くことができるということにいたしまして、講座料のうち半額は消費者庁で持ちましょうと、もう半額は職員が個人で負担して、希望しますかと言ったら多数の希望がありまして、頼もしいと思っているところでございます。これで消費生活相談員の資格を職員が持つことによって、相談員さんと同じ目線で企画・立案等の仕事ができていくということと、消費者法全般についての知識も深めて、消費者庁職員の質が向上していくというふうに思っております。


以上の議論の中で私なりのポイントを考えてみました。
①国民生活センターは、民主党時代の独法改革をゼロベースにして、見直し、必要なものは残す。その見直しが終われば個別の独法、すなわち国民生活センターについて検討する。議論の中でもあったが、新しく見直された独法にうまく国民生活センターをあてはめる。という流れになるのかなと思います。つまり、最終的には、消費者庁に組み入れられるのではなく、新しい制度の独立行政法人に落ち着くのではないかと思います。いいかえれば、今と同じ、現状維持。ため息ですね。
②「消費生活相談員資格の法的位置付けの明確化等に関する検討会」は全く進んでいないということです。
③相談員の資質の向上のための研修だけでなく、行政職員の研修にも力を入れようとしているが、公務員の中でやっても人事異動があるので現実は難しいと思います。行政職員でも完全に消費者庁にのみ席を置くプロパー職員であれば可能ですし、消費者行政の専門職種を作れば可能かもしれません。そして、消費者庁職員が相談員資格をとる制度ですが、どれぐらい合格者が出るのか楽しみです。合格者が少なければ試験制度の見直しにも影響するかもしれませんね。

最後に、検討会委員の松本教授が国民生活センターの理事長になりました。この交代劇は何を意味するのでしょうか

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