携帯中途解約金訴訟 判決 その2

携帯中途解約金訴訟 判決 その1(https://soudanskill.com/20120409/436.html)で紹介した裁判の判決文を読むと、理論構成がとても勉強になります。
また、携帯電話料金に関することも勉強になりますので、一部を紹介します。
控訴するかどうかは分かりませんので、この内容が判例となるかは何ともいえません。
それと、判決文を読み込んで勉強になるというのは、どちらかというと先日紹介した「学者」寄りの知識勉強になることを付け加えておきます。
読めば読むほど面白く奥深いのは事実です。

争点については、7個あげられています
争点(1)本件解約金条項についての法による規制の可否
争点(2)本件解約金条項の法9条1号妥当性
争点(3)本件更新後解約金条項の法9条1号妥当性
争点(4)法10条前段における「民法 、商法その他の法律の公の秩序に関しない規定」の解釈
争点(5)本件解約金条項の法10条前段該当性
争点(6)本件当初解約金条項の法10条後段該当性
争点(7)本件更新後解約金条項の法10条後段妥当性
※法とは消費者契約法のこと(以下同じ)

争点(1)
本件解約金条項についての法による規制の可否

原告の主張
・解約金に関する条項は法9条1号又は10条に該当して無効である
被告(事業者)の主張
・サービス提供の対価として設定したもので、契約自由の原則による当事者間の合意に基づき自由に決定できるので、法による規制の対象外である
裁判での判断
・法9条1号は「消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定又は違約金を定める条項」を対象としており、契約の目的である物又は対価についての合意を対象としていないことは明らか
・本件解約金条項は、「消費者が契約期間内に解約した場合に一定額を支払う義務を規定したものであるので、契約上の対価についての合意ではない
・したがって、本件解約金条項は、契約期間中の中途解約時の損害賠償の額を予定又は違約金を定める条項であると認められるから、法9条1号又は10条を基準として審査が及ぶというべき
※解約金条項が「法9条1号又は10条の争いに該当するのかどうか」ということに対して「該当する」との判断が出たということですね。まわりくどいですが、こういう部分の議論から始まるのですね。

争点(2)
本件解約金条項の法9条1号妥当性

原告の主張
・解約金9975円は「平均的な損害」の額を超えるものであり無効である
・(ア)料金プランや中途解約の時期が異なる顧客が存在するので、総体的に「平均的な損害」を算出するのではなく契約の類型ごとに算出すべき
・(イ)他の通信事業者と競争になっているので標準基本使用料金は単なる「表示価格」にすぎず、「実質価格」は割り引き後価格である。したがって、標準基本料と割引後基本料との差額は被告の損害と捉えるべきではない
被告の主張
・解約金条項は法9条1号には該当しない
裁判での判断
・(ア)「平均的な損害」の算出にあたっては解除の時期を1日おきに区切るなど事業者が行っていない細分化を行うことは妥当ではないので、解除の時期を問うことなく消費者を総体として捉えることになる。しかし、その場合であっても「平均的な損害」の計算を解除の時期ごとの具体的な解除件数や損害等を踏まえて適切に行い、この額が当該条項の定める金額を下回るのであれば無効と判断すべきことになるから問題は生じない。
・(イ)一定期間にわたって契約関係を継続するという条件を受け入れる顧客に限って割引し、受け入れない顧客に対しては標準基本料を提示している。標準基本料の顧客は何ら特別な負担なく随時に契約を解除できるという有利な条件を享受することができる。大多数が割引後基本料を契約しているという事実があっても、それに左右されることはない。高額な基本料を支払うことを受容し契約することを選択する可能性は十分に存在する。したがって、標準基本料が実質的な対価として機能していないということはできず、標準基本料と割引後基本料との差額を損害と見ることができる。
・中途解約から契約満了までの累積額を損害賠償として請求することは「平均的な損害」の算定の基礎とすることはできない。したがって、割引契約の開始時から中途解約までの累積額についてのみ「平均的な損害」の算定の基礎とすることができるとすべき
・平成21年4月から22年3月までの月ごとの契約者数を単純平均し、割引前後の差額を加重平均すると「2160円」
・平成21年8月1日から22年8月31日までの解約者数の加重平均は「14ヶ月」
・すると中途解約による「平均的な損害」は「2160円×14ヶ月=30240円」となり、解約金の9975円を下回るものであるから、法9条1号に該当するということはできない。
※なかなか説得力のある平均的な損害額の算定ですね。もっとも個人的には2160円というよりも980円としたい気がします。ただ、個人の消費者は2年縛りつきの割引プランを契約するのがほとんどでしょうが法人契約はそうもいかないのでしょうね。

争点(3)
本件更新後解約金条項の法9条1号妥当性

原告の主張
・契約が更新された後は中途解約時に被告に損害が生じることはない
被告の主張
・「平均的な損害」は更新の前後で全く異ならない
裁判での判断
・契約を更新した後の中途解約時の平均経過月数は明らかではない。
・中途解約についての傾向が更新前後で極端に異なることを認めるに足りる証拠はないから、更新後の解約までの経過月数の平均は14ヶ月とみるのが相当である。
・したがって、更新後の「平均的な損害」も「2160円×14ヶ月=30240円」となり、解約金の9975円を下回るものであるから、法9条1号に該当するということはできない。
※これについては少し疑問があります。更新後も2年間という縛りが妥当なのか疑問が残ります。これについては、後で書きたいと思います。

(続く)

消費者契約法

第二節 消費者契約の条項の無効

(事業者の損害賠償の責任を免除する条項の無効)
第八条  次に掲げる消費者契約の条項は、無効とする。
一  事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する条項
二  事業者の債務不履行(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものに限る。)により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除する条項
三  消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為により消費者に生じた損害を賠償する民法 の規定による責任の全部を免除する条項
四  消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものに限る。)により消費者に生じた損害を賠償する民法 の規定による責任の一部を免除する条項
五  消費者契約が有償契約である場合において、当該消費者契約の目的物に隠れた瑕疵があるとき(当該消費者契約が請負契約である場合には、当該消費者契約の仕事の目的物に瑕疵があるとき。次項において同じ。)に、当該瑕疵により消費者に生じた損害を賠償する事業者の責任の全部を免除する条項
2  前項第五号に掲げる条項については、次に掲げる場合に該当するときは、同項の規定は、適用しない。
一  当該消費者契約において、当該消費者契約の目的物に隠れた瑕疵があるときに、当該事業者が瑕疵のない物をもってこれに代える責任又は当該瑕疵を修補する責任を負うこととされている場合
二  当該消費者と当該事業者の委託を受けた他の事業者との間の契約又は当該事業者と他の事業者との間の当該消費者のためにする契約で、当該消費者契約の締結に先立って又はこれと同時に締結されたものにおいて、当該消費者契約の目的物に隠れた瑕疵があるときに、当該他の事業者が、当該瑕疵により当該消費者に生じた損害を賠償する責任の全部若しくは一部を負い、瑕疵のない物をもってこれに代える責任を負い、又は当該瑕疵を修補する責任を負うこととされている場合

(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効)
第九条  次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。
一  当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの 当該超える部分
二  当該消費者契約に基づき支払うべき金銭の全部又は一部を消費者が支払期日(支払回数が二以上である場合には、それぞれの支払期日。以下この号において同じ。)までに支払わない場合における損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、支払期日の翌日からその支払をする日までの期間について、その日数に応じ、当該支払期日に支払うべき額から当該支払期日に支払うべき額のうち既に支払われた額を控除した額に年十四・六パーセントの割合を乗じて計算した額を超えるもの 当該超える部分

(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)
第十条  民法 、商法 (明治三十二年法律第四十八号)その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項 に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。

携帯中途解約金訴訟 判決 その1

携帯電話の2年縛りの解約金9975円は平均的損害を超える不当条項として差し止め請求した裁判の判決が3月29日にありました。
私も平成22年6月17日に「携帯電話の違約金条項の使用差し止め訴訟」(https://soudanskill.com/20100617/53.html)という記事を書きました。
その当時と今も考えは変わっていませんが、私は2年契約を条件に基本料金が半額になることは消費者にとっても事業者にとってもメリットのあることであり違約金には基本的に問題がない、と考えています。

当時の報道記事です。

携帯解約金は違法、と提訴 消費者団体がドコモauを・・・47ニュースよりhttp://www.47news.jp/CN/201006/CN2010061601000575.html

携帯電話の家族割引などのサービスが適用された2年間の契約期間中に解約した場合、違約金を支払わなければならないのは違法だとして、京都府の消費者団体が16日、NTTドコモとKDDI(au)の2社に対し、解約金条項の使用差し止めを求める訴訟を京都地裁に起こした。
割引サービスはNTTドコモの「ひとりでも割50」「ファミ割MAX50」やauの「誰でも割」など。2年間の定期契約で、携帯電話の基本使用料は半額になるが、利用者が中途解約した場合、違約金を支払わなければならない。
原告側は訴状などで、こうした仕組みについて「利用者の利益を一方的に損なっており、消費者契約法上も認められない」と主張。契約の自動更新後も、解約する場合には違約金を支払わなければならないのは、不当な拘束だとしている。
さらに同じ番号で携帯電話会社を変更できる「番号ポータビリティー制度」が2006年から始まったにもかかわらず、契約先を選ぶ権利が不当に制限されていると指摘している。
2010/06/16 18:18 【共同通信】

そして、判決の報道記事です。なぜか、今回の判決の記事は他の会社の記事もあわせて削除されていて記事を見つけることができませんでした。

携帯中途解約金訴訟:ドコモ割引契約、解約金は「合法」 原告の請求棄却--京都地裁判決・・・毎日jpより(記事削除のためキャッシュより引用)

携帯電話の割引プラン(2年契約)を中途解約した際、解約金9975円を徴収する契約条項は消費者契約法に反するとして、京都市の適格消費者団体「京都消費者契約ネットワーク」が、NTTドコモに条項の使用差し止めを求めた訴訟の判決が28日、京都地裁であった。吉川慎一裁判長は「金額は合理的」としてネットワーク側の請求を棄却した。同時に、解約金を支払った利用者11人(13回線分)が同社に計約13万円を求めた訴訟も請求を棄却した。ネットワークは控訴する方針。
ネットワークによると、携帯電話の定期契約の解約金条項をめぐる判決は全国初。KDDIとソフトバンクモバイルも同様の条項を設けており、ネットワークが提訴している。
判決によると、ドコモは2年契約の「ひとりでも割50」「ファミ割MAX50」の契約で、基本料金を半額にする代わりに、中途解約すれば9975円を徴収する条項を設けている。
判決は、解約1件当たりのドコモの損害額を、基本料金の平均割引額2160円に中途解約までの平均利用期間14カ月をかけた3万240円と認定。「解約金はこの額を下回り、違法ではない」とした。また、条項をめぐって契約時に消費者との合意が成立しているとしたうえで「解約権は制限されるが、見合った対価を受けている」と結論付けた。【成田有佳、堀智行】
毎日新聞 2012年3月29日 東京朝刊

「解約権は制限されるが、見合った対価を受けている」というのはもっともな見解であり、私の当初の考えと同じです。
あえて、揚げ足を取るとすれば、2年以内の解約は一律9975円にするのではなく、(英会話などの中途解約金と同じように、)契約期間に応じた解約金にするということでしょうか。裁判でも、そのような問題点を指摘しています。
例えば、3ヶ月で解約すれば2年縛りのないプラントの差額980円×3ヶ月=約3000円となり、9975円は高額で不当である、といえば揚げ足取りですね。
しかし、10ヶ月が損益分岐点となり、10ヶ月から2年までに解約すれば差額は9975円より大きくなるので無理やり考えると不当利得になるのかも。
しかも、判決では「14ヶ月が平均利用期間」で割引額は980円ではなく「2160円」として計算しています。
基本料金の平均割引額が2160円というのは、4320円が加重平均基本料としており、半額割引なので2160円で14ヶ月をかけると30240円ということです。この計算は我々の実体験とは異なります。どちらかというと、980円×14ヶ月=13720円だと思いますが、どちらにしろ9975円の違約金の方が下回っています。

なお、判決文は「京都消費者契約ネットワーク」のHPで見ることができます。
読み込むと、とても面白く勉強になりますので、ぜひ読んでみてください。
すごく深いです。

京都消費者契約ネットワーク
http://kccn.jp/
2012年3月28日(水)京都地方裁判所において、2010年6月16日提訴した株式会社NTTドコモに対する携帯電話の解約違約金使用差止請求訴訟の第1審判決が出ました。第一審判決はこちら
http://kccn.jp/tenpupdf/2011/20120328docomohanketu.pdf

私は最初の2年間は妥当だとしても、更新後も2年間になるというのには少し思うところがあります。。
また、このような裁判をしたことの疑問についても思うところを書きたいと思います。
(その2へ続く)

新聞勧誘で特商法違反容疑で逮捕

NHK NEWSWeb
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120220/t10013162101000.html

新聞勧誘巡り販売店の4人逮捕
2月20日 22時28分
無償で途中解約ができるクーリングオフの書面を出さずに大学生に新聞を購読する契約を結ばせたり、無理に契約を迫ったりしたなどとして、京都市の読売新聞の販売店の男ら4人が特定商取引法違反の疑いで逮捕されました。逮捕されたのは京都市北区にある読売新聞販売店を経営する高橋早人容疑者(52)と販売員の男ら合わせて4人です。
警察によりますと、高橋容疑者らは、去年4月から12月にかけて京都市内の大学生5人の家を訪れ、クーリングオフの書面を出さずに新聞を購読する契約を結ばせたり、無理に契約を迫ったりしたなどとして、特定商取引法違反の疑いが持たれています。
警察によりますと、4人は、クーリングオフに関する説明を省いた学生向けの文書を用意し、「名前を書くだけでいい。すぐ済むだろう」などと強い口調で迫ったり、扉を強くたたいて面会を要求したりしていたということです。
調べに対してたか橋容疑者ら3人は大筋で容疑を認めていますが、39歳の元販売員の男1人は「覚えていない」と供述し、容疑を否認しているということです。
同じ時期に京都市消費生活総合センターに読売新聞の勧誘に関する相談が57件寄せられていたということで、警察が関連を調べています。
販売店の経営者らが逮捕されたことについて、読売新聞大阪本社・広報宣伝部は「当社と取引関係にある販売店の代表や従業員らが逮捕されたことを重く受け止めます。販売店に対しては、より一層の法令順守と従業員教育の徹底を求めていきます」というコメントを出しました。

新聞勧誘のトラブルは相変わらず相談件数が多いですね。
パターンとしてはどこのセンターでも同じでしょう
ただし、新聞販売競争の少ない地方や習慣的に昔ながらの町では長期契約ではなく、景品のない月極め契約が主体となると思います。
・景品をつけて2年程度の長期契約
・すでに契約がある場合は、その契約が終わる数年先からの2年契約を現時点で勧誘
・ひどければ5年や10年の長期契約も
・複数紙の契約を結ばせる
・勝手に契約書を書く
・契約書を渡さない
・高齢者にありえない長期契約を結ばせる
・規約を超える景品の提供
・他の訪問を語っての勧誘
・強引な手口
などなど

基本的には景品をもらっているので、景品を返還して合意解約になるという斡旋になりますが、過去の話となると覚えていなかったり、書類が残っていなかったり、返還を拒否したり、といろいろありますね。

逮捕されたのは読売新聞ですね。
とだけ書いておきます。

対象者が高齢者ではなく大学生というのが気にかかります。
最近の若者はNHKと同じように納得していなくても根負けして契約してしまうのでしょうか。

京都府警は特商法違反に対して積極的に動いており全国でも有数でしょう。
特商法違反容疑で逮捕という記事がでれば、京都府警であることが多いですね。
先日の「4クリック詐欺」サイト運営者5人逮捕、も京都府警でした。
地元の消費者センターにとっては頼もしい存在ですね。
京都市のセンターでの苦情相談の状況を調べていることから、もっと広がるかもしれません。

ただし、根本的な解決にはならないような気がします。
強引な手口とはいえ、どんな実損害が出ているのかなと感じます。
書面を渡して景品をもらってという認識があった上で、支払えなくなったというパターンもあるからです。
まあ、勧誘手口に関しては、みなさまもご承知だと思います。
ケーブルテレビもよくにたものですね。
具体的な事例や手口については国民生活センターでの公表記事や各地のセンターでの公表記事に山ほどありますので参考にしてください。

さてさて、私が実家暮らしのときは長期契約で景品がもらえることさえ知りませんでした。せいぜい、招待チケットをもらったぐらいです。今住んでいるところは激しい競争があります。新聞社によって違いますが、私は一番激しく勧誘するところと2年契約しています。1年経過したら次の2年の勧誘をしてきます。本当は地元紙が読みたいのですが、ここが景品の条件が一番いいので、立場上よろしくはないと思いつつ自分のこととなると契約してしまいます。賢い消費者というのでしょうか微妙なところです。2年ごとの契約というのは今の携帯電話とほとんど同じようなものですね。
ちなみにこっそり書くと、2年契約で「商品券2万円、洗剤1年分、5000円相当のカタログ商品」が景品です。
友人の地区の「半年無料の半年契約」というのが個人的にはベストだと思います。
新聞って意外に高いですよね。これだけ高ければ若者の新聞離れも仕方がないような気がします。
そして、今やネットでニュースがリアルの見れますし、スマートフォンでは産経新聞が丸ごと無料で読めるアプリもあります。