携帯電話の料金 その1

消費者センターには携帯電話の料金に関する相談が多く寄せられています。
大きく分けて「料金」に関することと「故障」に関することです。
料金に関しては
・無料のはずが無料になっていない
・パケット料金が高額になっている
・覚えのないサイトの利用料が請求されている
などがあります。
その中でも、機種代金を含む携帯電話の基本料金などの契約プランのトラブルについて、どんな問題があるのか、なぜ問題が起こるのか、どういう対応をすればいいのかについて解説したいと思います。

相談者は「聞いていない」「説明を受けていない」と主張します。
相談員は「それなら説明不足を主張してはどうですか」と助言します。
このような対応について、どう思いますか?

みなさまも携帯電話を購入されたことがあると思います。
そのときに、料金の説明があったと思います。
意外に、しつこいぐらいに説明され、説明を受けた欄にチェックを記入させられます。
不明なことがあれば、質問します。
割引を受けるための有料オプションについても説明され、いついつからは解約してもかまいませんと説明されます。
場合によっては、紙に詳しく書いてくれます。
以上のことは、ほとんどすべての購入者にもれなくされていると思います。
最後に、何か分からないことはありますか?と聞いてくれます。
ということは、きちんと説明しているではないですか。
そのような経験に照らし合わせ、「説明不足を主張してください」という助言が、果たしてベストでしょうか?
「説明した」「説明していない」、「言った」「言わない」の争いになってしまうかもしれません。

こういう争いは携帯電話に限らず消費者トラブルでの定番となっています。
なぜ「説明した」「説明していない」というトラブルになるのでしょうか。
先に述べた実体験では説明を受けているはずなんですが。
まずは、この原因について知っておくことが前提となります。
この原因は「伝えること、伝わること」の記事で解説したとおりのことが起こっていると思われます。

携帯電話の料金トラブルは、「事業者は説明した」→「消費者は理解したつもりで理解していなかった」「理解できなかったが契約した」「適当に聞いていた」などが根っこにあると思います。
つまり、事業者は「伝える」努力はしているが、十分に「伝わっていなかった」ということです。
これは、どちらに落ち度があるのでしょうか。
事業者は説明する義務・責任があります
消費者は説明を理解する義務・責任があります
事業者は分かりやすい説明を心がけていると思いますが、分かるかわからないかは消費者の理解力にもよります
理解できないときに消費者自身が「分からない」と意思表示しなければ、消費者の「分からない」ことが事業者に伝わりません。
もっとも、その場では「分かった」ように感じている場合も多々あります。

最近の消費者問題の難しいところは、情報が複雑化し、理解が難しくなっているのに、消費者がついていけていない、もしくは、ついていく努力をしていないところではないかと思います。
複雑な料金制度を1度の説明で理解することは難しいかもしれません。
実際に完璧に理解して契約している消費者は少ないかもしれません。

私たちは中立の立場といいながらも、消費者寄りの立場で対応します。
とはいいながらも、消費者に「?」と思うことが増えています。
消費者基本法では(事業者の責務等)第5条~第8条の中で

第五条
二  消費者に対し必要な情報を明確かつ平易に提供すること。
第七条
消費者は、自ら進んで、その消費生活に関して、必要な知識を修得し、及び必要な情報を収集する等自主的かつ合理的に行動するよう努めなければならない。

と定められています。
消費者にもっと努力してほしい。昔から努力が不足してきたからこそ、悪質商法の消費者啓発が十分に機能していないのは、消費者が積極的に理解するという努力をしていないからだと思います。
そして、消費者の理解を支援するために消費者センターが役割を果たすのです。

(啓発活動及び教育の推進)
第十七条  国は、消費者の自立を支援するため、消費生活に関する知識の普及及び情報の提供等消費者に対する啓発活動を推進するとともに、消費者が生涯にわたつて消費生活について学習する機会があまねく求められている状況にかんがみ、学校、地域、家庭、職域その他の様々な場を通じて消費生活に関する教育を充実する等必要な施策を講ずるものとする。
2  地方公共団体は、前項の国の施策に準じて、当該地域の社会的、経済的状況に応じた施策を講ずるよう努めなければならない。

消費者が理解していなかったら、すべて事業者の説明不足だと決め付けてしまうのは早計だと思います。
なぜなら、事業者が伝えようとしているにもかかわらず、消費者が理解しようとしていない、または理解できないまま契約してしまうことがあるのです。また、契約後にも契約内容について、じっくり見直すこともしていない場合があるのです。
ここに、消費者の主張と一般論とのギャップが生じます。

そういう背景を理解した上で、相談員として、消費者センターとして、どのように対応したらいいのか考えていくべきだと思います。

携帯電話の料金トラブルで前提として理解しておかなければならない重要なこと
①相談員が携帯電話の料金プランなどの基本的なことについて理解していること
②相談者の契約プランをしっかり聞き取り、どんな契約をしているのか理解すること
この2点です
そして
③この料金は契約どおりであるかどうか確認して相談者に説明する(間違っていることはほとんどないと思います)。
④そのうえで、説明不足といえる要素があるのかどうかを判断する。
このような流れになるのではないでしょうか。

もちろん、意図的に形だけ説明して契約させる悪質業者は問題外ですが、携帯電話に関しては常識的に考えて悪意の販売をすることはあまり考えられません。
ただし、勘違いさせるような広告はないわけではありません(景品表示法上の問題)。

以上、料金プランの総論的な解説をしましたが、次回からは各論的なことについて具体的に解説したいと思います。
主なターゲットは、ソフトバンクの料金プランです。
「月々割」「実質無料」など一見複雑そうに見えますが、基本さえ押さえれば難しくありません。
また、他社もソフトバンクの料金制度を真似るようになりました。
そして、今や当たり前になった2年縛りの契約期間の功罪についても書きたいと思います。

相談者に的確な助言をするために、また、事業者から「間の抜けた質問をする相談員だ」と思われないために、相談員の理解の参考になればと思います。

※その2 からは、一般人の検索に引っかかりたくないので、パスワード付きにさせていただきます。

海外ショッピングのトラブル相談窓口の開設

11月1日に消費者庁から
海外ショッピングでのトラブルに関する消費者相談窓口「消費者庁越境消費者センター(CCJ)」の開設について
という報道発表がありましたが、ご存知でしょうか。
http://www.caa.go.jp/adjustments/pdf/111101adjustments_2.pdf

タイトルが
越境取引に関する消費者相談窓口「消費者庁越境消費者センター(CCJ)」を開設します
~海外ショッピングでのトラブルについてご相談を受け付けます~

冒頭の説明が
消費者庁では、平成23年11月1日より、平成23年度消費者庁委託事業「越境取引に関する消費者相談の国際連携の在り方に関する実証調査」の一環として、「消費者庁越境消費者センター(CCJ)」を設け、消費者の皆様が海外ショッピングで遭われたトラブルの相談を受け付けます。

そして事業を受託した「SBIベリトランス株式会社」のプレス資料も添付されており、そのタイトルが
消費者庁委託事業 越境取引における消費者相談窓口
消費者庁越境消費者センター(略称:「CCJ」)に係る事務局運営の開始について

何のことか分かりにくいタイトルや名称、内容説明ですね。
最初は読む気が起こりませんでしたが、じっくり読んで理解しました。

簡単にまとめました

消費者庁が海外のインターネットショッピング利用者の調査をしたところ、2割がトラブルの経験があり、そのうち3割が事業者との連絡が容易でなく、問い合わせをしなかったことが分かった。そこで、消費者庁が海外ショッピングに関する相談を受ける窓口を期間限定で設置すると同時に情報を収集調査するという事業をすることにした。
・アメリカ、カナダ、台湾、シンガポールの4カ国とは現地の消費生活支援機構と協力することになっている。
・4カ国以外の相談についても、できるだけ相談対応には努力する。
・海外ネットショッピングだけでなく、対面取引も含む。
・消費者センターからの相談も受ける。
・消費者庁から事業を受託したのは「SBIベリトランス株式会社」であるが、実際に相談を受けるのは「ECネットワーク」である。
・2011年11月1日から2012年3月28日までの期間限定(反響によっては期間が延長されるかもしれませんね)。

個人的な感想
・「ECネットワーク」が受けるので、かなり信頼できるのではないかと思いますが、どこまで突っ込んだあっせんができるのか未知数で興味があります。4カ国以外の中国などへはどこまで対応できるのか。また、ブランド品の品質問題や個人輸入への対応も気になります。そして、クリーニングトラブルの場合、表示の問題なども現実に多くあります。随時、相談内容が公表されると参考になりますがどうでしょうか。また、そこそこの期間にわたって窓口が開設されるとやめるのも難しくなるかもしれませんね。
・何よりも「消費者庁越境消費者センター」という名称が分かりにくい。せめて、「海外ショッピングトラブル相談センター」にでもしてほしかったですね。

※とにかく、消費者センターにとっては、海外とのトラブルの対応は困難を極める、というより受け付けないことが多いので、紹介先ができることは非常に助かる話です。しっかり、振れるように、資料を読んでおくことをおすすめします。

相談受付アドレスは、こちらです。
http://www.cb-ccj.com/

多重債務の手引き

金融庁から、今年の8月31日に「多重債務相談者の手引き」という相談対応マニュアルが出されています。
平成20年3月に「多重相談者対応マニュアル」に発行されていたマニュアルの改訂版です。
金融庁のHPにも170ページの全文が掲載されダウンロードすることができますが、センターによっては国から冊子として送付されているところもあると思います。

マニュアルでは
多重債務の相談を受ける心構え、相談対応の流れ、カウンセリング方法
多重債務の背景や貸金行法の解説
債務処理の方法
資金貸付制度、生活保護制度

などが詳しく解説されています。
「この手引きは、相談者の話に耳を傾け、相談者の状況・心理状態を受け止め、適切な解決方法を示していくという観点から作成されています」と書かれています。

金融庁
> 金融庁の政策
http://www.fsa.go.jp/policy/kashikin/index.html
「多重債務者相談マニュアル」を大幅に改訂し公表しました(23年8月31日)
http://www.fsa.go.jp/policy/kashikin/20110831-1.html
「多重債務者相談の手引き」(PDF:3,217K)
http://www.fsa.go.jp/policy/kashikin/20110831-1/01.pdf

多重債務の相談を受ける範囲はセンターによって異なると思いますが、多重債務のことや対応方法について学ぶだけでなく、日常の消費生活相談にも活用できるコミュニケーションスキルがちりばめられていますので、一度は目を通していただけたらと思います。

コミュニケーションに関する部分を一部抜粋します。

10ページ
【心構え:その2】
大切なのは、「今から一緒に解決していきましょう」という姿勢です。
まずは、職員や相談員が「借金問題は必ず解決できる」ことを伝え、相談者を安心させることです。これまで誰にも頼ることができなかった相談者が安心を得ることで、自らの借金問題に向き合うきっかけをつかむことができます。また、相談者が「頼りになる」と感じることで、職員や相談員に心を開くようになります。

11ページ
話を聴く姿勢を相談者に示しましょう。
相談の基本は相談者の声を「聴くこと」です。相談者の置かれている状況が明らかにならなければ、適切なアドバイスもできません。そのため相談者が安心して、心を開いて、自ら抱える借金や家族関係などを説明できる状況を作り出すことが何よりも重要となります。そのためにも「私はあなたの話を聴きます」という姿勢をはっきり示すことが大切です。
また、相談者から聞いた内容は、債務整理や生活再建を進めていく上でとても重要な情報です。相談カードを利用しながら丁寧に話を聞いていき、しっかりと整理しておきましょう。

44ページ
心の問題、心のケアへの対応
適切な相談対応
・穏やかな対応を心がけましょう。
・性急に口を挟まず、まずは相談者の話や言い分をじっくりと聞き、相談者の置かれている状況を把握するようにしましょう。
・安易な励ましや安請け合いは避けましょう。
・相談者が、明らかに不適切なことをしていても、批判せず、「そうせずにはいられなかったのですね」「今は後悔しておられるのでしょうか」と中立的に受け止めましょう。
・相談者が自分に都合の良いように話すこともよくあるので、言うことを鵜呑みにせず、客観的な情報の収集に努めましょう。ただし、信じている態度で接することが必要です。相談者に信じていないと思われた場合、相談対応に支障が生じるおそれがあるためです。
・嘘をついている、思いこみで話していると思われる場合は、「あなたにはそう思えるのですね」「あなたの言うとおりなら、大変ですね」のように受け止めましょう。
・妄想がひどいと思われる場合も、当事者にとっては、体験されている深刻な問題によるものである場合があります。相談者の話を否定してしまうような言動は避けてください。この場合、上記のとおり対応しつつ、早めに専門家につなぐようにしてください。