PL訴訟 その1

3月にビアンキ社製のクロスバイク(自転車)を走行中に転倒した事故についての判決があり、新聞各社でも報道されていました。
また、「ニッポン消費者新聞(平成25年4月1日号)」(http://www.jc-press.com/news/201303/032702.htm)にも、このPL訴訟についての解説記事が掲載されていました。
今後、消費者関連の雑誌等でも解説されるかもしれません。
改めて読んでみると、この判決の中には消費者センターに相談がある製品事故のあっせんに必要なエッセンスがたくさん盛り込まれています。
とても勉強になりますので、現場でどのように応用できるかということを簡単に紹介したいと思います。
なお、当該訴訟についての解説や判決文は、各自で読んでおいてください。
特に、担当弁護士のサイトで詳しく解説されています。

毎日jp(http://mainichi.jp/)より

損賠訴訟:転倒し後遺症「自転車の欠陥」 輸入元に1.8億円賠償命令竏停・東京地裁
毎日新聞 2013年03月26日 東京朝刊
http://mainichi.jp/select/news/20130326ddm012040195000c.html

イタリアの自転車メーカー「ビアンキ」ブランドの自転車の前輪が外れて転倒し、後遺障害が残ったとして、茨城県つくば市の中島寛さん(63)と保険会社などが製造物責任法(PL法)に基づき、輸入元でビアンキの親会社の日本法人「サイクルヨーロッパジャパン」(東京都千代田区)に総額約2億4000万円の賠償を求めた訴訟の判決が25日、東京地裁であった。白井(しらい)幸夫裁判長は製品の欠陥を認め、サ社側に約1億8900万円(うち保険会社に約3800万円)の支払いを命じた。

判決によると、中島さんは08年8月、出勤中に自転車の前輪がサスペンション部分から外れ、前のめりに転倒。頸椎(けいつい)を損傷して、首から下がまひした。この自転車の前輪とハンドルがサスペンション内のバネだけで連結されていた。

判決は、目撃情報や自転車の損傷状況から、走行中に前輪が外れたと判断。「保管やメンテナンスの状況を考慮しても、通常有すべき安全性を欠いていた」と指摘し、PL法上の欠陥を認めた。一方で、中島さんが購入から事故までの約6年4カ月、点検やメンテナンスを受けていなかったことから、損害額の1割を減額した。

サ社は「主張が認められず、誠に残念です」とコメントした。
◇原告「涙が出た」

車いすの中島さんは東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見し、「涙が出た」と喜んだ。事故前はソフトウエア会社の経営者だったが、事故後はリハビリ生活を送る日々だ。

問題のサスペンションについて、サ社側は「日本国内の自転車約10万台に使われている」などと「ユーザーの過失」を主張したが、判決は一蹴した。中島さんの弁護士によると、同種の事故は国内外で他に6件起きているという。

中島さんは「今も自転車は好きで、もし体が戻ったらまた乗りたい。だが、自転車業界は速やかに(安全性の問題の)情報がユーザーに届くように考えてほしい」と訴えた。【鈴木一生】

みどり共同法律事務所(http://www.midori-lo.com/index.html)

ビアンキ自転車事故訴訟判決概要(2013.3.28  弁護士 鈴木 周)
http://www.midori-lo.com/2013_03_28.html
ビアンキ自転車転倒事故 判決言い渡し日のお知らせ( 2013.1.31  弁護士 鈴木 周)
http://www.midori-lo.com/2013_01_31.html

判決文
http://www.midori-lo.com/images/column_lawyer/2013_03_28/hanketsu.pdf

【ポイント1】
まず、今回の事件では利害関係者がたくさん出てきて、責任の所在が不明確です。ネットの掲示板等でも議論されていたようですが、製造物責任法を見れば、第一の責任は輸入事業者にあるということは分かると思いますし、この訴訟も輸入事業者を相手に裁判を起こしています。
輸入品に関してのPLについてはジェトロのサイトで詳しく解説されています。
この解説も非常に勉強になります。
JETRO日本貿易振興機構(ジェトロ)
http://www.jetro.go.jp/indexj.html
HOME>海外ビジネス情報>国・地域別情報>貿易・投資相談Q&A>基本的な貿易制度に関するQ&A>輸入品の品質欠陥に起因する人的・財的損害が発生した際の製造物責任者
http://www.jetro.go.jp/world/qa/t_basic/04A-000917
まず、ここでしっかり学んでほしいことは、責任の所在がまずどこにあるのか?事故の苦情を申し入れるところはどこか?ということです。
入口を間違えてしまうと、消費者センターが攻撃されかねません。

分かりやすい例を出すと
NTTドコモが発売したシャープ製の携帯電話の苦情の申し入れ先は、シャープではなくてNTTドコモです。
様々な部品メーカーの部品で組み立てられているトヨタの自動車の申し入れ先は、部品メーカーではなくトヨタです。
OEMメーカーに依頼して製造したセブンプレミアム商品の申し入れ先はOEMメーカではありません。
少し応用すると、クリーニング事故が発生した場合はクリーニング賠償基準によると、まず、クリーニング店が対応することになっています。

この入口部分が消費者の主張とは異なることが多いので相談員として注意が必要です。
特に携帯電話は相談者が製造メーカーが悪いと主張することが多く、ネットの書き込みでも製造メーカーが悪いと書かれていることが多いです。
それを真に受けて、製造メーカーに直接電話してはいけません。必ず発売元の携帯電話会社に申し出てください。
このことは必ずしも消費者の常識ではありませんが、私たちの世界の常識です。

まず、判決の内容とは別の前提条件のポイントの確認です。
(続く)

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消費者情報 2013年4月号 (関西消費者協会)

今月号から気になる記事を紹介します。

①特集 こんなときどうする窶・I若者の「消費者とらぶるQ&A」
・巻頭インタビュー 消費者トラブルと知っておきたい法知識
・やさしく読み解く「契約」のはなし  弁護士 上田孝治
→契約の解消・・・契約の無効、契約の取消し、契約の解除(約定解除・法定解除・合意解除)
※契約について分かりやすく説明されています。その中でも、今一度契約の解消について復習してみましょう。
・こんなときどうする窶・I若者の「消費者とらぶる」Q&A  編集部
→ワンクリック請求(アダルト情報サイト)、無料商法(出会い系サイト)、サクラサイト商法(出会い系サイト)、売買契約(スマートフォン・機種変更)、デート商法(アクセサリー)、マルチ商法(商品一般)、キャッチセールス(モデルスカウト商法)、キャッチセールス(美容エステ)、美容医療サービス(二重まぶたの手術)、美容医療サービス(包茎手術)
※若者をターゲットにしたおなじみの消費者やトラブルです
・若者世代の契約トラブル 縲恪ナ近の傾向と対策縲怐@ 国民生活センター

②ネット漂流 Vol.10 「アプリは情報を囲い込む」
・スマートフォンでアプリを提供すると”データが囲い込める”のがメリット。
・ユーザーのスマートフォンの中にあるアプリの種類を知れば「趣味趣向」がわかる。
・アプリで集めた情報を紐づけると詳細な個人情報が出来上がる。
・位置情報が付いたままの写真であれば、居場所が特定できてしまう。
※インターネットの普及で個人情報の紐付けが簡単にできるようになりました。特に実名SNSであれば詳細に個人の趣味・趣向・行動・経歴を特定することができてしまうという現実です。その現実からのがれることはできないと思うので、それを前提にネット利用をしています。ただし、記事にもあるように何も知らない子どもたちは個人情報を撒き散らしているといっても過言ではありませんね。大人になって大失敗するより、今のうちに小さい失敗を経験しておくのも一つの方法かもしれません。実際に、携帯電話のメルアド変更の通知をCCで送ってしまう子どもは少なくありませんね。

③判例に学ぶ
「日本放送協会(NHK)の受信料について5年の短期時効が認められた事例 平成24年2月29日
東京高裁判決
・放送法64条1項「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない」
・NHKの受信料債権について、民法169条により5年の短期消滅時効を認めた
・民法173条の短期消滅時効(2年)の主張は採用しない
※NHKの受信料トラブルは消費者センターでも相談は多く、基本は放送法に則っています。しかし、最近はNHKが契約に当たって脅迫的な言動を起こしていることがトラブルになっています。5年の短期事項が認められたものの、もっと根本的な改革が必要だと思います。
個人的には、実質的には広く国民から徴収することになるので、全額税金でまかなって徴収事務の経費を節減するほうが効率的でトラブルも避けれると思います。

次号予告として『地方消費者行政活性化基金の効果と評価(仮))』です。これは注目ですね。でも、建前論で終わりそうな気がします。

あとがき
関西消費者協会は4月1日から公益財団法人に移行しました。
『消費者情報』は、さらに内容の充実を図ってまいります。
今後とも、読者のみなさまのご理解とご支援をどうぞよろしくお願い申しあげます。

 

リンクはこちらです
関西消費者協会 http://kanshokyo.jp/hp/
消費者情報 2013年4月号
kansho201304

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ジャドマニューズ 2013年3月号

「ジャドマニューズ」の最新号・バックナンバーは、HPで閲覧できます。
2013年3月号
http://www.jadma.org/pdf/news/2012_03.pdf
ジャドマニューズ
http://www.jadma.org/jadma_news/index.html

①どうする?通販業界の人材育成
通販は特殊なビジネスモデルだといわれる。ゆえに人材育成がなかなか難しい。これはJADMAにも多く寄せられる会員共通の悩みのようだ。そこで今回は、同じ通販でも媒体や業態が大きく異なる会員企業に集まっていただき、人材育成や研修について語り合っていただいた。すべての企業に共通する普遍的な問題から、それぞれの組織がゆえに通用する独自のメソッドまで。人材育成のプロたちが明かす「通販業界を支える人材をつくる方法」に耳を傾けてみたい。

・新しい人材を入れることによって「教える環境」を物理的に作る
→今回うちは初めて新卒を採用しますが、その理由のひとつは、やはり「教える環境」を整備することです。
→人に教えることで、教えている人も問題を理解し成長できますからね。
→ただ難しいのは、そこにフィットする人材がどれだけいるのかということ。
・「昼休みの1時間でバーベキュー」で社内調整と〝段取り縲桙ノ磨きがかかる?
・コールセンターの電話に出ることが商品知識を覚える一番の近道
・人事が言うよりも説得力がある?「外部講師」の活用はどこまで有効か
・全員が顧客対応して仕事の流れを把握指名がモチベーションアップにも繋がる
→ここ10年間ぐらいの新卒学生の気質として、いわゆるゼネラリストとして出世して管理職になりたいと思っている人は半分以下で、多くの新人が自分の専門を突き詰めていきたいというのです。つまり出世よりも、〝専門的なスキル縲桙gに付けたいと思っているのです。
・ネット通販の比率が高まる中紙のカタログの経験だけでは通用しない
・業界が共通で身に付けるべき「通販の常識」の研修をして欲しい
・他社のクレーム対応を見るだけでも何かしらの〝気づき縲桙ェある
※人材育成の問題は消費者行政でも同様です。ただ、掛け声と現実の行動に乖離があるのが課題だと思います。

②通販110番
消費者相談編
価格の安さに惹かれて購入したら・・・

ネット通販では多種多様な商品を購入することができます。また、価格比較サイトやモールを利用して、安く販売している会社を見つけることも容易です。消費者にとって便利な反面、低価格に惹かれて購入し、トラブルになるケースも見受けられます。今回はそのような事例を紹介します。事例1 不良品の交換なのに、会社の対応が不十分!
・ネット通販で子供用のロフトベッドを購入
・組み立てに半日もかかり、組み立て中に傷や木材のささくれ等が気になった。
・組み立て後、改めて確認すると不具合が8箇所あった。
・交換することになったが分解して玄関まで運んでほしいという。会社に分解を求めたがサイトにも記載していると断られた。
→サイトには「交換にかかるお手間や労力はお客様にご負担いただくことになります」との記載と、更に「不良品の場合の搬入・搬出・設置・組立作業等は一切お受けいたしません。十分ご理解いただきご検討をお願いします」との注意書きがあった。相談者には前記内容を説明し、ここまで記載している会社に分解等の対応を求めるのは難しいだろうと回答。
通販110番より
消費者は価格のみならず販売条件や商品内容等の吟味が必要事業者は消費者に対し、できる限りわかりやすい情報提供を。

※消費者の気持ちは十分理解できますが、ネット通販のメリットとデメリットの代表例だと思います。返品を受け付けないというのならセンターにも入る余地はありますが、今回は難しいと思います。後は個別交渉ですが、それも難しいのではないかと思います。

③連載 メディアワクオン 情報リテラシーの備え

第14回最終回 中立公平唯我独尊

メディアがどのようなことを考え、どのように報じているのかという現実を知っていただくことで、メディアへの「抗体」をつけていただこうという本連載も今号で最終回となる。最後のテーマは、「中立公平」。
報道機関というものはすべて「中立公平」に決まっている、というのが一般人の認識だが、筆者は「そうありたいと努めているが、現実はどうしても偏る」と言う。いったいどういうことなのか?
・「原発事故で我が子に鼻血が…」主婦の苦悩に迫る〝客観報道縲杤r
・記事ではふれなかった「東京の主婦」の正体
・〝受け入れ難い現実縲桙`える「ワクチン」として

※報道は中立でなければならないという考えはもっともですが、消費者問題でも分かるように、現実にはかたよって報道されて、報道を信じやすい日本人は、真に受けてしまう。テレビでダイエット効果のある食品が紹介されたら売り切れるというのを思い出しますね。

社団法人 日本通信販売協会 HP http://www.jadma.org/
会報誌(JADMA NEWS) http://www.jadma.org/jadma_news/index.html

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