多重債務の手引き

金融庁から、今年の8月31日に「多重債務相談者の手引き」という相談対応マニュアルが出されています。
平成20年3月に「多重相談者対応マニュアル」に発行されていたマニュアルの改訂版です。
金融庁のHPにも170ページの全文が掲載されダウンロードすることができますが、センターによっては国から冊子として送付されているところもあると思います。

マニュアルでは
多重債務の相談を受ける心構え、相談対応の流れ、カウンセリング方法
多重債務の背景や貸金行法の解説
債務処理の方法
資金貸付制度、生活保護制度

などが詳しく解説されています。
「この手引きは、相談者の話に耳を傾け、相談者の状況・心理状態を受け止め、適切な解決方法を示していくという観点から作成されています」と書かれています。

金融庁
> 金融庁の政策
http://www.fsa.go.jp/policy/kashikin/index.html
「多重債務者相談マニュアル」を大幅に改訂し公表しました(23年8月31日)
http://www.fsa.go.jp/policy/kashikin/20110831-1.html
「多重債務者相談の手引き」(PDF:3,217K)
http://www.fsa.go.jp/policy/kashikin/20110831-1/01.pdf

多重債務の相談を受ける範囲はセンターによって異なると思いますが、多重債務のことや対応方法について学ぶだけでなく、日常の消費生活相談にも活用できるコミュニケーションスキルがちりばめられていますので、一度は目を通していただけたらと思います。

コミュニケーションに関する部分を一部抜粋します。

10ページ
【心構え:その2】
大切なのは、「今から一緒に解決していきましょう」という姿勢です。
まずは、職員や相談員が「借金問題は必ず解決できる」ことを伝え、相談者を安心させることです。これまで誰にも頼ることができなかった相談者が安心を得ることで、自らの借金問題に向き合うきっかけをつかむことができます。また、相談者が「頼りになる」と感じることで、職員や相談員に心を開くようになります。

11ページ
話を聴く姿勢を相談者に示しましょう。
相談の基本は相談者の声を「聴くこと」です。相談者の置かれている状況が明らかにならなければ、適切なアドバイスもできません。そのため相談者が安心して、心を開いて、自ら抱える借金や家族関係などを説明できる状況を作り出すことが何よりも重要となります。そのためにも「私はあなたの話を聴きます」という姿勢をはっきり示すことが大切です。
また、相談者から聞いた内容は、債務整理や生活再建を進めていく上でとても重要な情報です。相談カードを利用しながら丁寧に話を聞いていき、しっかりと整理しておきましょう。

44ページ
心の問題、心のケアへの対応
適切な相談対応
・穏やかな対応を心がけましょう。
・性急に口を挟まず、まずは相談者の話や言い分をじっくりと聞き、相談者の置かれている状況を把握するようにしましょう。
・安易な励ましや安請け合いは避けましょう。
・相談者が、明らかに不適切なことをしていても、批判せず、「そうせずにはいられなかったのですね」「今は後悔しておられるのでしょうか」と中立的に受け止めましょう。
・相談者が自分に都合の良いように話すこともよくあるので、言うことを鵜呑みにせず、客観的な情報の収集に努めましょう。ただし、信じている態度で接することが必要です。相談者に信じていないと思われた場合、相談対応に支障が生じるおそれがあるためです。
・嘘をついている、思いこみで話していると思われる場合は、「あなたにはそう思えるのですね」「あなたの言うとおりなら、大変ですね」のように受け止めましょう。
・妄想がひどいと思われる場合も、当事者にとっては、体験されている深刻な問題によるものである場合があります。相談者の話を否定してしまうような言動は避けてください。この場合、上記のとおり対応しつつ、早めに専門家につなぐようにしてください。

ネット取引の広告表示のガイドライン(平成23年10月28日公表)

10月28日に消費者庁から、「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」が公表されました。
3ページの概要版と11ページの詳細版の2つが公表されています。
なお、今回のガイドラインは「景品表示法上」に限定されていることに注意してください。

消費者庁HP
表示対策課<その他の景品表示法関連の公表資料>
http://www.caa.go.jp/representation/index.html#m01-5
平成23年10月28日 「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」の公表について[PDF:772KB]
http://www.caa.go.jp/representation/pdf/111028premiums_1.pdf
(今は消費者庁のトップページの新着情報に掲載されていますが、表示対策課のページでは下の方にあります)

ネットに関してはさまざまな通知が出ていますが、今までにはない具体的なモデルが例示されているので、なかなか面白く、最新トレンドを踏まえた内容のガイドラインです。
ぜひ、というよりも必ず読んでおいてください。

今回、5つのモデルについて解説されています。
①フリーミアム
②口コミサイト
③フラッシュマーケティング
④アフィリエイトプログラム
⑤ドロップシッピング

さて、このガイドラインを読んだ場合の相談員の感想をレベル分けしてみました

初級レベル・・・知らなかったから勉強になった
知らなかったではダメです。勉強不足です。
どれも現実に相談業務の中で問題になっていますし、相談を受けたこともあるかもしれません。
何よりも、ある程度のアンテナを張っていれば普通に知っていることばかりです。
相談員であれば、知っておくべきモデルです。
これをきっかけに、きちんと理解しておいてください。

中級レベル・・・今までの景品表示法を運用すれば「当たり前」の内容だ
そのとおりです。
詳細版の1ページ目に

なお、今回提示する問題点及び留意事項は、景品表示法のこれまでの運用及び電子商取引ガイドラインの考え方を新たなサービス類型に対して当てはめて記述したものであり、電子商取引ガイドラインの考え方を変更するものではなく、電子商取引ガイドラインは引き続きインターネット消費者取引の基本指針となる。

とあります。
対象が新しいサービスになっただけであり、景品表示法上の解釈は同じです。
応用力は現場でも大切なスキルです。
できれば、これぐらいの感想を持ってほしいのですが、対象が変わっただけでパニックになってしまう相談員もいるかもしれませんね。

上級レベル・・・当たり前の内容だけど、違和感を感じる
具体的なメーカー名や商品名が掲載されていないのは文書の性質上仕方がないことですが、表示の特定の項目(景品表示法上の問題点)だけに注目しているので、総合的な説明がされていません。このガイドラインはあくまでも一部の要素であり、ほかの知識とシンクロさせることが必要になります。たとえば、ドロップシッピングであればビジネスモデルの説明はあるが、商品の表示の問題にだけ言及しており、ドロップシッピング商法の問題点とは切り離されています。当然、それに絞ったガイドラインですので当たり前です。十分な知識のある相談員には「いまいち感」があるかもしれませんね。ここまで感じることができるのなら十分な知識を持っています。自分自身で応用させてください。

今回のガイドラインでは5つのモデルが定義付けられましたので、相談員として「共通認識」を持つには重要なガイドラインです。
自分自身の知識を補完して、さらに深めてください。

今回のガイドラインですが、私はある程度は評価しているものの、①具体的なサービスやメーカー名、商品名が例示されていないこと、②説明が分かりにくいものがあること、③総合的に問題点をまとめたら分かりやすいと思うこと、の3点から、もう少し押しがほしいところです。今回のガイドラインについて、何回かに分けて、もっと具体的に解説し、単なる知識ではなく、生きた使える知識にしていきたいと考えています。

相談員として、これらのビジネスモデルは当然知っているべきことです。知らなかったり、あいまいであったりした場合は、今一度、理解を深めてください。そういう意味で、良い資料だと思います。

最後に補足しておきます。
このガイドラインが出たのは、この5つのモデルに問題があるからということに違いはありませんが、だからといって、これらのモデル自体の存在がすべて悪いと思うことだけはやめてください。一部に問題があるだけであって、ほとんどは、きちんと運営されているからです。最初から「問題モデル」だという思い込み(バイアス)を持たずに、相談内容をしっかり見極めてください。

そのほかの参考資料
消費者庁>消費者政策課>5.検討会・研究会等>インターネット消費者取引研究会
http://www.caa.go.jp/adjustments/index_6.html
「インターネット消費者取引研究会」取りまとめについて(平成23年3月11日)
インターネット取引に係る消費者の安全・安心に向けた取組について[PDF:227KB]
http://www.caa.go.jp/adjustments/pdf/110311adjustments_1.pdf
インターネット取引に係る消費者の安全・安心に向けた取組について(概要)[PDF:913KB]
http://www.caa.go.jp/adjustments/pdf/110311adjustments_2.pdf
(参考)インターネット取引に係る消費者の安全・安心に向け特に重点的に取り組む事項[PDF:157KB]
http://www.caa.go.jp/adjustments/pdf/110311adjustments_3.pdf

消費者庁>表示対策課>景品表示法トピックス>消費者向け電子商取引表示への取組>法令・ガイドライン等
「消費者向け電子商取引における表示についての景品表示法上の問題点と留意事項(電子商取引ガイドライン)」(公正取引委員会、平成14年6月5日〔一部改訂 平成15年8月29日〕)【PDF:59KB】
http://www.caa.go.jp/representation/pdf/100121premiums_38.pdf

平成24年度 消費者庁の重点施策

現場の最前線で相談業務をしていると、消費者庁の動きについて、通知文が回ってくるなどの機会が少ない場合があります。地方だと文書自体が回覧されることもないかもしれません。
積極的に消費者庁のHPから情報収集していれば知ることができるのですが、そこまで手が回らない、めんどうだ、興味がないというのが現状ではないでしょうか。
消費者庁のHPを頻繁に自発的に見ることがなくても、少なくとも、このブログで情報を知ることになるので、このブログを見ていること自体が1つの積極的な行動になると思います。

消費者庁の施策の動きがとても早くなっています。
相談業務に影響が及ぶものもあったりしますので、公開されている情報は積極的に収集しましょう。

今回は先日公表された「平成24年度の消費者庁の重点施策」の中から、相談員に関係する部分を紹介します。
この文書は全部で7ページです。法体制の整備などの項目もありますので、しっかり内容を確認しておいてください。

消費者庁
予算・決算・税制改正・機構定員
http://www.caa.go.jp/info/yosan/
平成24年度消費者庁の重点施策[PDF:241KB]
http://www.caa.go.jp/info/yosan/pdf/24_zyuten.pdf

平成24年度 消費者庁の重点施策
【 項 目 】
Ⅰ 震災復興及び食の安全・安心確保に向けた取組の強化
Ⅱ 消費者被害の防止・救済のための新たな仕組み
Ⅲ 法執行体制の強化
Ⅳ 地方消費者行政の強化及び消費者団体との連携
Ⅴ 消費者政策の発信力強化及び消費者教育の推進
Ⅵ 国際的な取組の強化

Ⅳ 地方消費者行政の強化及び消費者団体との連携

地域における食の安全・安心に関する取組や多様な主体による消費者問題への取組を支援するため、新たな交付金を創設します。
また、消費生活相談員を法的に位置づけるとともに、全国の消費生活センターを結ぶPIO-NETシステムの刷新を行います。
消費者団体・グループの活動の活性化や連携強化を図るための取組を進めていきます。

(1) 食の安全・安心のための地域消費者活動支援交付金
食の安全・安心の確保に対する消費者の関心が高まっていることを踏まえ、地方自治体に対する新たな交付金を創設し、地域における食の安全・安心に関する取組や、地域の子育て、環境、福祉、産業等に関わる多様な主体による消費者問題への取組を支援していきます。

(2) 地方消費者行政を支える基盤の整備
消費者行政の「現場」を担う消費生活相談員の役割・任務、求められる知識・能力を法令で明確化し、これを担保するための資格を法的に位置づけます。
また、全国の消費生活センターを結ぶPIO-NETシステムの刷新を行うため、必要な検討を進めます。

(3) 地方消費者グループフォーラムの推進
消費者団体をはじめ、地域で活動している福祉、子育て、環境、産業等に関わる多様な主体が連携する場として、地方消費者グループフォーラムを引き続き開催し、消費者問題に取り組む住民の輪を広げていくことができるよう取り
組みます。

【主な概算要求事項】 〔単位:百万円〕
○食の安全・安心のための地域消費者活動支援交付金 705( 0)
○地方消費者グループフォーラムに必要な経費 38( 27)

相談員にとって
消費者行政の「現場」を担う消費生活相談員の役割・任務、求められる知識・能力を法令で明確化し、これを担保するための資格を法的に位置づけます。
の部分は、非常に大きな影響を受けるのではないでしょうか。
相談員に求められる能力が明確にされて、その基準を元に相談員が評価される、とまでは言い過ぎかもしれませんが、資格を法的に位置づけるのなら、ハイレベルな条件を求められるかもしれませんね。
相談員が望んでいるにしろ望んでいないにしろ、消費者庁の動きは早いです。
それぞれの相談員によって、「消費生活相談員」に対する思いや価値観は異なると思います。
現場の声はなかなか届きにくいですが、今回は、必ず現場の相談員の意見を聞く機会があるはずです。
しっかり、議論に参加してほしいと思います。