集団的消費者被害回復法案

昨年から何度となく関連記事が報道されていますが、先日、読売新聞にも記事が出ていました。

消費者被害を一括救済、訴訟代行の新法制定へ(YOMIURI ONLINE 読売新聞より引用)

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120204-OYT1T00833.htm
被害額が少なかったり、訴訟の負担が重かったりして、泣き寝入りしてしまうことが多い消費者被害を一括して救済するため、消費者庁は、特定適格消費者団体による訴訟代行の手続きに関する新法「集団的消費者被害回復法案」(仮称)を今国会に提出する方針を固めた。
施行は2013年度以降となる見通し。
救済対象は、被害額数万~数百万円のトラブルを抱える消費者。英会話教室やエステで入会手続きをしたものの、途中で解約しても授業料や申込金の大半が返金されなかったり、ネット通販で購入した商品が粗悪品なのに代金返還に応じてもらえなかったり――などのケースが想定される。
まず、新法に基づき、適格消費者団体の中から特定適格消費者団体を認定。これらの団体が消費者の訴えに基づいて業者に損害賠償請求訴訟を起こし、賠償を認めた判決が確定すると、インターネットなどで周知する。これを受け、同じ業者とのトラブルを抱える消費者が同団体に被害を届け出ると、裁判所が個別の審理により返金額を算出し、業者に返金を命じる仕組み。
(2012年2月5日03時06分 読売新聞)

消費者契約法の適格消費者団体による差止請求権に念願の損害賠償請求訴訟権が加わるわけですね。
おそらく法制度化されるでしょうね(消費者契約法の改正ではなく新法の制定?)
歓迎すべき制度ですが、さまざまな問題をはらんでいますので、実効性が保たれるかどうかは適格消費者団体次第というところです。
問題点を挙げてみました
・適格消費者団体の運営がボランティア頼みになってしまっている
・差止請求についても、事前の照会から訴訟まで道のりは長く時間を要す
・扱える件数も限られている
・財政も十分ではない
・専任ではなく兼任である
適格消費者団体による差止請求では多くの成果が上がっています。
しかし、今の状況を考えてみると、実際にこの制度が活用されるのは大変だなあと思います。
ましてや、数少ない適格消費者団体からさらに選抜されるのですから。
もっと、簡単な手続きはないのでしょうか。
当面は適格消費者団体の財政の確保と人的な充実にかかっていると思います。

国センの在り方の見直し(12/27公表)

平成23年12月27日に公表された「消費者担当大臣会見配布資料」が消費者庁のHPに掲載されています。
トップ >地方協力課 > 国民生活センターの在り方の見直しに係るタスクフォース
http://www.caa.go.jp/region/index6.html#m04

国民生活センターの在り方の見直しについて
「国民生活センターの在り方の見直しに関する検証会議」の中間取りまとめを踏まえ、政務三役(大臣・副大臣・政務官)で協議の上、12月27日の消費者担当大臣会見において「国民生活センターの各機能を、国へ移行することが妥当と判断した」旨の発表を行いました
国民生活センターの在り方の見直しについて(消費者担当大臣会見での配布資料)

1ページの短い資料なので、そのまま紹介します。赤字は私が勝手にしています。

国民生活センターの在り方の見直しについて
平成23年12月27日
1.国民生活センターの在り方の見直しについては、第三者からなる「国民生活センターの在り方の見直しに関する検証会議」において、消費者庁との一元化以外の選択肢を含めて議論を進めてきた。また、財産事案の情報分析・提供等に関する消費者庁との一元化の試行の実施状況についても、検証・評価を行ってきた。
2.こうした検証会議の中間取りまとめを受け、政務三役として協議した結果、国民生活センターの各機能について、その全てを維持し、基本的に一体性を確保しつつ、より一層充実させていくこととする。このため、国民生活センターの各機能を、独立行政法人改革による新たな法人制度ではなく、国へ移行することが妥当との判断に至った。
国への移行の具体的な在り方については、中間取りまとめのとおり、別途検討の場を設けて、消費者行政全体の機能強化を図る観点から検討し、来夏までに結論を得る。その上で、平成25年度を目途に国民生活センターの各機能を国へ移行するため、所要の法整備等を行う
3.なお、いわゆる「政府から独立した法人」との考え方については、①深刻な財政状況、②国民生活センターの機能を強化する必要性、③政府全体の独立行政法人改革の動向を踏まえれば、そのまま実現を図ることは難しく、国への移行の中でその趣旨を活かすことが現実的であると判断した。

コメント
特に目新しいことはありません。国民生活センターを消費者庁に取り込むこという規定路線が宣言されただけです。
独立行政法人でもNITEのように存在感を示していれば別ですが残念ながら国センにはその力がありませんでした。
大事なのは、今後どのような組織体制にしていくかという核心部分です。これは、なかなか結論が出るものではありません。少なくとも、キャリアの事務屋が幅を利かすような消費者行政になってはいけません。専門職員(プロパーや技術職員)と協働できる消費者庁になってほしいです。
そして、相談員にとっては相談員資格の法制化や身分保障など現実的な課題も多く残されています。
来年度の24年度中に方向性が決まると思いますが、思ったより動きは早いので夏ぐらいまでには何らかの形になるのではないでしょうか。ただ、誰もが納得するものはできないと思います。
それらの過程の中でどれだけ相談員や地方の現場の意見を反映させることができるのか。
国は各地のセンターに実態調査に出向くと思います。ただし、えらい人同士の話になるので現場の本音は伝わらないでしょう。
パブリックコメントの募集もあると思いますので個人で積極的に訴えかけるのもいいかもしれません。

海外ショッピングのトラブル相談窓口の開設

11月1日に消費者庁から
海外ショッピングでのトラブルに関する消費者相談窓口「消費者庁越境消費者センター(CCJ)」の開設について
という報道発表がありましたが、ご存知でしょうか。
http://www.caa.go.jp/adjustments/pdf/111101adjustments_2.pdf

タイトルが
越境取引に関する消費者相談窓口「消費者庁越境消費者センター(CCJ)」を開設します
~海外ショッピングでのトラブルについてご相談を受け付けます~

冒頭の説明が
消費者庁では、平成23年11月1日より、平成23年度消費者庁委託事業「越境取引に関する消費者相談の国際連携の在り方に関する実証調査」の一環として、「消費者庁越境消費者センター(CCJ)」を設け、消費者の皆様が海外ショッピングで遭われたトラブルの相談を受け付けます。

そして事業を受託した「SBIベリトランス株式会社」のプレス資料も添付されており、そのタイトルが
消費者庁委託事業 越境取引における消費者相談窓口
消費者庁越境消費者センター(略称:「CCJ」)に係る事務局運営の開始について

何のことか分かりにくいタイトルや名称、内容説明ですね。
最初は読む気が起こりませんでしたが、じっくり読んで理解しました。

簡単にまとめました

消費者庁が海外のインターネットショッピング利用者の調査をしたところ、2割がトラブルの経験があり、そのうち3割が事業者との連絡が容易でなく、問い合わせをしなかったことが分かった。そこで、消費者庁が海外ショッピングに関する相談を受ける窓口を期間限定で設置すると同時に情報を収集調査するという事業をすることにした。
・アメリカ、カナダ、台湾、シンガポールの4カ国とは現地の消費生活支援機構と協力することになっている。
・4カ国以外の相談についても、できるだけ相談対応には努力する。
・海外ネットショッピングだけでなく、対面取引も含む。
・消費者センターからの相談も受ける。
・消費者庁から事業を受託したのは「SBIベリトランス株式会社」であるが、実際に相談を受けるのは「ECネットワーク」である。
・2011年11月1日から2012年3月28日までの期間限定(反響によっては期間が延長されるかもしれませんね)。

個人的な感想
・「ECネットワーク」が受けるので、かなり信頼できるのではないかと思いますが、どこまで突っ込んだあっせんができるのか未知数で興味があります。4カ国以外の中国などへはどこまで対応できるのか。また、ブランド品の品質問題や個人輸入への対応も気になります。そして、クリーニングトラブルの場合、表示の問題なども現実に多くあります。随時、相談内容が公表されると参考になりますがどうでしょうか。また、そこそこの期間にわたって窓口が開設されるとやめるのも難しくなるかもしれませんね。
・何よりも「消費者庁越境消費者センター」という名称が分かりにくい。せめて、「海外ショッピングトラブル相談センター」にでもしてほしかったですね。

※とにかく、消費者センターにとっては、海外とのトラブルの対応は困難を極める、というより受け付けないことが多いので、紹介先ができることは非常に助かる話です。しっかり、振れるように、資料を読んでおくことをおすすめします。

相談受付アドレスは、こちらです。
http://www.cb-ccj.com/