消費者情報 2011年7月号 (関西消費者協会)

①特集 消費者法ファイル2011 インターネット 危うい世界
・今回の特集は非常に勉強になりますので必読です
「最近のインターネットをめぐる事情と課題」
・3つの問題について解説しています。
・ドロップシッピングの具体的な事例ですが、業務提供誘引販売になるかどうか、すなわち事業者に該当するかどうかですが、ネットショップの運営主体がショップオーナーとしての主体性がほとんどないことから、要件を満たすということです。
※逆に考えると、自分で売る商品を選定したり価格を決定したりというオーナーとしての管理があれば要件を満たさなくなるということですね。つまり、名目上のオーナーで実質の作業はすべて業者がしている場合は、オーナーが事業者に当たらないという妥当な解釈といえますね。
・そのほかに、「ペニーオークション」と「グーグルストリートビュー」について書かれています。
「進化する?出会い系サイト」
・最新の出会い系サイトについて、手口・決済・電子マネーの仕組みなども合わせて、わかりやすく解説されています。
「これだけは知っておきたい!電子商取引の知識」
・ネット通販と返品、ペニーオークション、共同購入クーポン型サイト、情報商材、オンラインゲーム・デジタルコンテンツについて、最新の事情も交えて具体的に解説されています。

②判例に学ぶ
震災により賃借建物が滅失した場合と敷引特約について
最高裁平成10年9月3日判決
・阪神大震災のときに、震災で賃借建物が滅失した場合に敷引が許されるのか
・災害により貸借家屋が滅失し、賃貸借契約が終了したときは、特段の事情がない限り、敷引特約を適用することはできないと判断した。

③小論文に強くなろう!
・前回一般から募集した「私が考える消費者被害の未然防止とは」について、応募のあった1題に修正を入れて解説が掲載されています。
・きれいな文章に訂正されています。
・根本的に問題のない文章なので、次回は、もっと論理思考にせまる論文を取り上げてばっさり添削してほしいと思います。

④ひょうご消費者ネット 団体訴権への展開
電気料金の支払いを遅延した場合の加算金条項の是正を申入れ
・電力会社が早収料金・遅収料金制度を設けている。
・支払いを遅延した場合は、一律に300円の遅収加算額が加えられるが、1日遅れて払った場合でも300円必要で、消費者契約法9条の上限14.6%を超えてしまう、というものです。
・料金徴収制度が途中で変わったので生じた問題ですね。ほかの電力会社は是正しているので、当然、是正すべきだと思います。というよりも、この問題は知りませんでした。
身近な消費者契約法9条の事例で勉強になりました。

リンクはこちらです
関西消費者協会 http://kanshokyo.jp/hp/
消費者情報 2011年7月号

月刊 国民生活 2011年7月号

①チェックチェック 苦情相談
「職場に頻繁に電話をかけ強引に契約を結ばせる不動産業者」
・タイトルだけで中身がわかりますね。今回は契約にいたってますが、契約には至らない強引な、かつ、しつこい勧誘は社会問題化して、新たな規制を設ける話まで発展したのは記憶に新しいですね。

②チェックチェック 暮らし注意報
「賃貸住宅の退去時に伴う原状回復に関するトラブル」
・すっかりメジャーになった考え方です。わかりやすくまとめられています。

③暮らしの判例
「欠陥住宅に対する損害賠償請求と居住したことの損益相殺」
・「消費者情報 2010年9月号 (関西消費者協会)」にも解説されています。
・新築建物を購入した消費者が、建て替えを必要とする重大な瑕疵があると主張して、業者らに損害賠償を求めた事案。
・業者は、建て替えまでの間、本件建物に居住していたことが利益にあたるとして、建て替え費用からの控除を主張した。
・裁判所は、新築建物に重大な瑕疵があり、建て替えざるを得ない場合など、社会通念上、建物自体が社会経済的な価値を有しないと評価すべきときには、居住していたという利益について、損害額から控除することはできないとした。
・最高裁判所 平成22年6月17日判決、裁判所HP参照
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=80312&hanreiKbn=02

国民生活センター http://www.kokusen.go.jp/ncac_index.html
月間 国民生活

消費者情報 2011年6月号 (関西消費者協会)

①特集 東日本大震災と消費者問題
阪神大震災と同様、相談内容は多岐に渡り、現場は大変だと思います。
現時点での、震災関連の消費者問題がまとめられています。

②判例に学ぶ
説明義務違反に基づく損害賠償請求権と消滅時効
信用組合「関西興銀」出資被害最高裁判決
・経営破綻により出資者が出資金の払い戻しを受けれなくなった被害で、実質的に債務超過に陥り経営破たん状態となった後に、その説明を受けずに出資している。
・損害賠償を請求するにあたり、説明義務違反が不法行為であれば消滅時効期間は10年債務不履行であれば3年となっている。
・平成20年判決では、「契約を締結するか否か」に関する説明義務違反は、債務不履行責任ではなく不法行為責任であるとした。
・平成21年判決では、同種の集団訴訟が提起された時点から進行していたとして不法行為に基づく損害賠償請求権は既に時効により消滅しているとした。
・説明義務違反により被害を受けたことに変わりがないのに、法的性質により消滅時効かどうか大きく変わってしまうことは被害者にとっては納得しがたいであろう。学説においても議論のあるところである、と解説されています。

③ADR機関を活用しよう
「保守・点検作業の過失による漏水事故、さて補償はどうなる」
・事業者同士のトラブル事案
・下水道の保守・点検作業中に、過失により漏水を発生させてしまい、1ヶ月間パンの製造小売り業を休業せざるを得なくなり、休業補償と慰謝料として約700万円の支払いを求めて和解あっせんの申し立てをしたもの。
・支払いの内訳が、(1)廃棄した材料代、(2)約1ヶ月の休業補償、(3)休業により離れた客が戻ってくるまでの4ヶ月間の宣伝効果による売上2割増の差額の賠償
・(1)は(2)に含まれる、(3)は推測の域を出ないことから立証困難である、ということで、(2)の200万円を和解案として提示し、双方納得した。
・申立人の心情は分かるものの、実際の損害を算定するとなると、客観的な資料がなく、和解不成立の場合に、訴訟で認められるかという観点で説明し、申立人の納得を得た。
→消費者センターでは、損害に関して、最高でも商品代金や拡大損害実費・治療費実費が原則ですので、慰謝料など、それ以上をのぞむ場合は法律相談などにいってもらうことが多いです。さらに、将来得たはずの利益を請求できるかというと、一般的には難しいと思います。今回の事例が参考になりますね。消費者センターで相談者が、この種の賠償を希望した場合は、気持ちを受け止めてあげて、現実的な考え方を示して、どれを希望するかは相談者に判断してもらうことになるでしょう。

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消費者情報 2011年6月号