【重要】消費者安全法の改正

消費生活相談員の法的位置づけの明確化などを含む消費者安全法の一部改正法が6月6日に成立し6月13日に公布されました。

実は、この改正法の名称が「不当景品類及び不当表示防止法等の一部を改正する等の法律」で、この「等」の中に消費者安全法も含まれています。
消費者庁のHPには新着情報として
6月13日「不当景品類及び不当表示防止法等の一部を改正する等の法律」の公布について
で以下のとおり公開されています。

非常に重要な改正なので、ポイントを紹介し、コメントしたいと思います。

消費者庁HP
ホーム > 地方協力課 > 不当景品類及び不当表示防止法等の一部を改正する等の法律
http://www.caa.go.jp/region/index11.html

不当景品類及び不当表示防止法等の一部を改正する等の法律

1.法律
概要[PDF:783KB] http://www.caa.go.jp/region/pdf/hutou_gaiyou.pdf
要綱[PDF:119KB] http://www.caa.go.jp/region/pdf/hutou_youkou.pdf
法律[PDF:200KB] http://www.caa.go.jp/region/pdf/hutou_houritsu.pdf
新旧対照表[PDF:242KB] http://www.caa.go.jp/region/pdf/hutou_shinkyu.pdf
2.通知等
不当景品類及び不当表示防止法等の一部を改正する等の法律の公布について(通知)[PDF:149KB]
http://www.caa.go.jp/region/pdf/tsuti_140613.pdf

概要に3枚の図表があります。
要綱は改正部分の概要説明です。
法律はこの改正法原文ですがスルーしてもいいと思います。
新旧対照表は上下段で改正部分がわかるようになっており、これが分かりやすいと思います。
通知は、改正案の概略説明4枚です。

景品表示法関係
5 権限の委任等
(1) 消費者庁長官は、緊急かつ重点的に不当な表示等に対処する必要があること等の事情があるため、措置命令等を効果的に行う上で必要があると認めるときは、政令で定めるところにより、報告の徴収等の権限を事業所管大臣等に委任できることとされたこと。
(2) 消費者庁長官に委任された権限に属する事務の一部は、政令で定めるところにより、都道府県知事が行うこととすることができることとされたこと。(第12条関係)
→要は都道府県で景品表示法の措置命令ができるようになったということで、都道府県の業務が増えて頭がいたい話でしょう。

消費者安全法関係
(国及び地方公共団体の責務)
第四条(略)
2 国及び地方公共団体は、消費者安全の確保に関する施策の推進に当たっては、基本理念にのっとり、消費生活について専門的な知識、技術又は経験を有する者の能力を活用するよう努めなければならない
→技術が加わっています。これはコミュニケーション能力等の技能のことを言っているのでしょうね。

都道府県及び市町村による消費生活相談等の事務の実施)
第八条 都道府県は、次に掲げる事務を行うものとする。
一 次項各号に掲げる市町村の事務の実施に関し、市町村相互間の連絡調整及び市町村に対する必要な助言、協力、情報の提供その他の援助を行うこと。
→技術的援助から増えていますが、現実には実施していると思うので明文化したということですね。

(消費生活相談等の事務の委託)
第八条の二
→都道府県や市町村が委託するときに内閣府令で定める基準に適合しなければならないと定められています。この基準によっては委託先の事業者も自治体も混乱することも考えられます。どのような基準になるか注目です。法人格が必要いとなれば大騒ぎになりますね。そこまではしないかな。

(国及び国民生活センターの援助)
第九条 国及び国民生活センターは、都道府県及び市町村に対し、八条第一項各号及び第二項各号に掲げる事務の実施に関し、情報の提供、当該事務に従事する人材に対する研修その他の必要な援助を行うものとする。
→国と国センは自治体に対し、これまでに加えて、従事する人材への研修をしなければならないとしています。

(消費生活センターの設置)
第十条 都道府県は、第八条第一項各号に掲げる事務を行うため、次に掲げる要件に該当する施設又は機関を設置しなければならない。
一 消費生活相談員を第八条第一項第二号イ及びロに掲げる事務に従事させるものであること
→今までは「専門的な知識及び経験を有する者」であったのが「消費生活相談員」と明文化されました。したがって、消費生活センターでは相談業務は消費生活相談員しかできないことになります。
条文の続きですが要綱の中に
消費生活センターにおいては、消費生活相談員を消費生活相談及びあっせんの事務に従事させること。
消費生活センターを設置する市町村以外の市町村は消費生活相談及びあっせんの事務に従事させるため、消費生活相談員を置くように努めなければならないこと。
とありますので、消費生活センターには消費生活相談員のみ、それ以外の相談窓口は消費生活相談以外でもよいということですね。

(消費生活センターの組織及び運営等)
第十条の二 都道府県及び前条第二項の施設又は機関を設置する市町村は、次に掲げる事項について条例で定めるものとする。
→消費生活センター設置条例は多くの自治体で条例化されていると思いますが、条例化されていない自治体や一部修正が必要な自治体は議会の承認が必要なので大変な事務仕事の負担になりますね。

(消費生活相談員の要件等)
第十条の三 消費生活相談員は、内閣総理大臣若しくは内閣総理大臣の登録を受けた法人(以下「登録試験機関」という。)の行う消費生活相談員資格試験に合格した者又はこれと同等以上の専門的な知識及び技術を有すると都道府県知事若しくは市町村長が認める者でなければならない。
2  消費生活相談員は、消費生活を取り巻く環境の変化による業務の内容の変化に適応するため、消費生活相談(第八条第一項第二号イ及びロ又は第二項第一号及び第二号の規定に基づき都道府県又は市町村が実施する事業者に対する消費者からの苦情に係る相談及びあっせんをいう。以下同じ。)に関する知識及び技術の向上に努めなければならない。
3  第一項の消費生活相談員資格試験(以下単に「試験」という。)は、消費生活相談を行うために必要な知識及び技術を有するかどうかを判定することを目的とし、次に掲げる科目について行う。
一 商品等及び役務の特性、使用等の形態その他の商品等及び役務の消費安全性に関する科目
二 消費者行政に関する法令に関する科目
三 消費生活相談の実務に関する科目
四 その他内閣府令で定める科目
→相談員の要件ですが、「新たな試験に合格した者」が該当するのは当然ですが、やはりというか「同等以上の者」と救済案が出ました。同等と認めるのが都道府県知事や市町村ですので、どの程度厳格にするのか、もしくは、その認定事務を消費生活センター長に事務委任して簡単にするのかどうするのでしょうね。
→新たな試験の中身ですが、法律ですのでざっくりした内容になっています。内閣府令では具体的に示されると思います。この中でコミュニケーション能力などの技能(条文では技術と書いてます)の試験をどうするのかが注目です。

指定消費生活相談員
第十条の四 都道府県知事は、市町村による消費生活相談の事務の実施に関し援助を行うため、試験に合格し、かつ、内閣府令で定める消費生活相談員としての実務の経験を有する都道府県の消費生活相談員の中から、市町村が行う第八条第二項第一号及び第二号に掲げる事務の実施に関し、同条第一項第一号に規定する助言、協力、情報の提供その他の援助を行う者を指定消費生活相談員として指定するよう努めなければならない
→指定消費生活相談員です。指定は努力義務になっています。

(消費者安全確保地域協議会)
第十一条の三
→国及び地方公共団体の機関は設置することができるとなっているので設置しなくてもいいわけですが、実質的には設置しなさいということでしょうね。協議会の設置や運営には大変な事務作業が待っています。

第五節登録試験機関
(登録試験機関の登録)
第十一条の九
(登録の要件等)
第十一条の十一
→これを読んでたら、国セン以外に登録するところはないのではないかと思いますね。決して儲かる業務ではないです。ただ、国センって対象になるのでしょうか。登録機関がなければ国が直接実施すると以前はなっていました。どちらにしろ、この資格が当初の目標とは違い企業向けにはならず、実質行政向けで、これまでの消費生活専門相談員認定試験とほとんど変わらないような感じがします。

まとめ
新しい資格制度について
細かい規定が出てきていませんが、現職で資格を持っている場合は、経験年数だけが条件で新しい資格がもらえるような気がします。
現職の無資格相談員も経験年数だけで救済されて資格がもらえるような気がします。
無資格でもいったん資格をもらえれば、試験に対する呪縛から解き放たれるのですが、それでいいのでしょうか。
やっぱり、残り2回?の試験で合格してほしいと思います。
新規の相談員も含めて詳細の公表を待ちたいです。

相談員の資質の向上
「消費生活相談員は、消費生活を取り巻く環境の変化による業務の内容の変化に適応するため、消費生活相談に関する知識及び技術の向上に努めなければならない」と明文化されています。自治体が研修をするのはもちろんですが、主語が相談員となっています。自発的なスキルアップが求められています。
このスキルアップ講座が何らかの形で公認されることを目標としています。

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難苦情対応事例 後半(季刊ダイレクトセリング125号)

事例
「15年前の契約に不満を持ち、示談後も繰返し行政機関等へ苦情をいう消費者。どのように対応すべきか」
の解説の続きです。
前回は事例に書いている対応方法について、感情の面で対応をしなければ、消費者の主張に沿う何らかの対応をしたとしても、同じことが繰り返されますと説明しました。
今回は、具体的に5つあげた感情について分析し、法的手段以外の対応方法について考えたいと思います。
といっても、法的手段を実行となると、なかなか現実的ではないですし、今回の事例に対してのベストチョイスではない気がします。

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難苦情対応事例 前半(季刊ダイレクトセリング125号)

季刊ダイレクトセリング
http://www.jdsa.or.jp/www/jigyo/shuppan-02/mokuji-10.html
季刊ダイレクトセリング 125号(2014年1月発行) ※次号が発行されるまでの公開ですので今のうちに(たまたま前号が残ったままです)
http://www.jdsa.or.jp/www/jigyo/shuppan-02/ds/ds125.pdf

前回の続きです。

事例
「15年前の契約に不満を持ち、示談後も繰返し行政機関等へ苦情をいう消費者。どのように対応すべきか」
内容
男性の相談者からの申出は、15年くらい前から、1〜3年の間隔をあけて続いている。毎回、必ず、初めに自分の電話番号を言い、一方的に折返しの電話を求める。折返しの電話をしないと催促の電話が度々かかってきた。一度、相談者から電話があると、伝えるべき結果は同じであっても、とりあえずは応対せざるを得ない状況にある。申出の金額は、その都度違うが、内容はほぼ同じであった。1997年の父親の複数のリフォーム契約に関するもので、雨漏り対策として窓の木枠をアルミ製に交換した120万円の契約についての話が中心である。その契約から約8年後の2005年に、相談者から「8年前、父が夜12時ごろまで居座られ、120万円のリフォーム契約をした。工事が杜撰である。訪販協に何度も相談したが、その後の対応がない。経産省にも相談したが同じ。警視庁に申し出たら『悪質商法。被害届が出れば、捜査する』と言われた。このままであれば、警視庁に被害届を出さなければならない」という電話があった。それ以降も、2010年、2011年、2012年に、同じようなクレームの電話がかかってきた。
当社は、2005年頃から何度も相談社宅に行き、2007年には示談書を交わして30万円程を返金したが、その後、相談者は「示談書のサインは自分ではない」などと言い出した。そこで、当社としては、「警察でも、裁判でも受けてたつので、行ってください」と伝えているが、相談者は、思い出したように、訪販協や各関係省庁に苦情を申出ている。相談者は、例えば、「国交省の弁護士が契約は無効だと言った」などと話していたので、国交省の窓口に確認したこところ、「相談者が言うような回答はしていない。こちらに電話をされても困る。やめてほしいと相談者に伝えてほしい」と言われた。また、以前には、当社の代表電話に電話をかけてきて、「社長を出せ!」と大声を出したりした。当社としても、これ以上は放置できないので、相談者に、「当社の顧問弁護士から回答書を送るようにする」と話したところ、相談者は「弁護士から文書が送られるのは迷惑だ」と言っていた。

この事例は、そのまま行政にもあてはまりますし、センターに関係の深い家電メーカーなどの事業者にも当てはまります。
いわゆる、「お客さん」です。
今回の事例は事業者としての対応ですが、行政としての対応は、かなり異なる場合がありますね。
常連になってほしくないですが、そうはいかないのがこの世界です。
今回は、事例にある解説に、行政(=消費者センター)だったらどうなるのかということを考えたいと思います。
さらに、今回の相談者が何を目的としているのかという本質的なことについても考えたいと思います。

ちなみに、今回の事例はクレーム対応のケーススタディに使いたい事例ですので、個人的に保存版にして、パワーポイントでケーススタディの研修資料にしておこうと思っています。
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