難苦情対応事例 後半(季刊ダイレクトセリング125号)

事例
「15年前の契約に不満を持ち、示談後も繰返し行政機関等へ苦情をいう消費者。どのように対応すべきか」
の解説の続きです。
前回は事例に書いている対応方法について、感情の面で対応をしなければ、消費者の主張に沿う何らかの対応をしたとしても、同じことが繰り返されますと説明しました。
今回は、具体的に5つあげた感情について分析し、法的手段以外の対応方法について考えたいと思います。
といっても、法的手段を実行となると、なかなか現実的ではないですし、今回の事例に対してのベストチョイスではない気がします。


①示談した内容に不満である
→示談の上乗せや修正が本当に必要なのでしょうか?実は先に書いたようにクレームを言うためのネタであって、内容はどうでもいいのではないかと思います。確かに、全面解約とならなかったことが不満かもしれないが、いまさらの話というのは本人もわかっている。たとえば、示談金の上乗せかというと、一時的にはどれですむかもしれないが、また同じことを言ってくる可能性は高い。

②クレームが趣味
→可能性はあります。とにかく、金品を得ることが目的ではなく、クレームという行為自体が目的なのです。金品が目的だとすると、短期間に繰り返しますので、金品の要求があったとしても、あくまでもクレームのための理由付けの「ネタ」に過ぎないと思います。もしかしたら、1-3年おきというのは、いくつかクレーム案件を抱えていて、常にどこかにクレームを言い続けていて、順番がきただけで、相談者にとっては、体感上、1-3年ではなく、もっと短いスパンである可能性もあります。相手の譲歩を引き出すことが喜びであり、勝利であり、目的である。ただし、このリフォーム案件1つだけであり、日常的にもクレーマーではないのだったら③が考えられる。
③思い出したら腹が立つので言ってやる
→とにかく自分の父親が次々リフォームの悪質商法にあい、思い出すだけで腹が立って仕方がない。その矛先は販売事業者だけでなく、行政を含めたあらゆる関係機関である。悪質商法が減らないのも、国のせいだと思うと被害者として説教したくて仕方がない。正義の味方でもある。それを認めてほしい。

④人格に問題あり
→性格的なものである。攻撃的な正確で、家族や近隣などのまわりからも嫌われている可能性がある。父親はリフォームのことは終わったことだからいいと思っていても、息子がこうなっては手をつけることができない。一度、父親と話をしてみるというのも本質を見極めるうえでポイントかもしれない。⑤とも共通である。

⑤病気
→人の言うことは何も聞けないという人格的な障害を持っていて自覚症状がない。パラノイア症候群だったり、人格障害(パーソナリティ障害)だったりする。とにかく、事実であろうがなかろうが、自分の考えに反するものは受け入れない。実は、「お客様」に多い感情形態です。この場合は、病人だという慈悲の気持ちで対応するとストレスが軽減されます。まともに対応すると受け手は心の病になりかねません。

①~⑤の説明で、具体的な対応方法についても軽く触れましたが、本当のクレーマーでないなら、相手の主張しようとしている目的は更なる被害の回復ではなく、自分たちが被害者であり、悪質な事業者をこらしめたいと思っており、行政にも分かってほしいと思っているのではないかと考えてください。すなわち、相談者の気持ちに共感してあげることです。否定すれば、また自分の主張を繰り返しますし、バランス理論で言うところの、事実関係では結果は出ているので仕方がないが、感情の面で受け入れてあげる、ということです。受け入れてくれなければ、いろんなところに順番に同じクレームを言います。さらに、どこに何を言ったかも分からなくなってきますし、今回の事例でも国交省じゃないところがそういった可能性もあります。当然警察は被害届を出せば受けるでしょうが、相談者はそんなことは望んでいないでしょう。自分を認めてほしいのです。

性格に問題があったり、精神的な病気の可能性がある場合の対応は大きく2つに分かれます。「さっさと切る方法」と「粘り強く最後まで話しを聞いてあげる方法」です。
私は個人的には、「あほ、ぼけ」と何を言われようとも、終わった話として、「さっさと切る」派なのですが、行政の世界は実は後者の「粘り強く最後まで話しを聞いてあげる」方法が主流です。
行政は市民にとって最後のセーフティネットです。むげに扱わず、対応してあげる、ということです。
私のところでも、不当行為に対する条例が数年前に制定されましたが、市民に対して排除するという直接的な行動に出たことはないように思います。
消費生活相談の枠を超えるところかもしれません。このような相談者に対しては行政職員が対応することが暗黙のルールになっていると思います。

最後に、本当にクレーマーだった場合は淡々と法的対応をとったらいいと思います。事業者だと「業務妨害」の線も入れて実際にやるかもしれませんが、頻度が頻繁ではなく1-3年おきだったら、そこまでいかにかもしれませんね。
もし、法的対応をとるという方針を決めたなら、それ以外のことはしないと決めておく必要があります。ただし、別のことでクレームをいってくることもあるので終わらないという意味はここにもあります。話し方が気に入らない、応対が悪いなど。結局終わらないのです。ちなみに行政でも本当のクレーマーだとしても、法的措置まではしないと思います。とにかく嵐が去るまでいわれっぱなしの対応になることもあります。

また、発想を変えて、相談者の話を積極的に聞いてあげることで、逆に味方に変わってくるということもあります。つまり、「クレーム対応をきっかけにファンになってくれる」ということも考えられます。

今回の事例には答えはありません。ケースごとに相談者が何を考えているのかを推察しながら対応していくという高度なスキルが求められます。
難苦情事例に当たった場合は、かなりのストレスになります。そこを克服していかなければならないのが相談員という仕事です。
この部分については別の機会にしますが、いやだなあと思う気持ちが、応対に出てくると相談者に感づかれてしまいます。

難苦情事例の表面的な事実関係ばかりにとらわれるのではなく、その裏に隠れている感情的な思いをいかに理解して対応するのかというのがポイントになります。

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