日本人の気質

今回の大震災の日本人の整然とした被災者の対応について海外から高く評価を受けています。
外国人にはまねできないといわれています。
文化の違いが根底にあるということもいわれています。
そうだからこそ、日本は外国人をなかなか受け入れることができないのかもしれませんね。
その一つのキーワードが「我慢」です。
非常事態にはみんな我慢して協力し合うという精神です。

この「我慢」というキーワードについて、消費者センター的に考えたいと思います。

消費者センターに相談に来た消費者が興奮して大きな声を出し被害を矢継ぎ早に訴えることがあります。
まるで、消費者センターに苦情をいっているようにも感じるときがあります。
また、メーカーへの苦情の申し出も、怒り心頭で電話をかけています。
街中でも、いきなり大声を叫んでいる場面に出くわすこともあります。

これらは、日本人の「我慢強さ」からきているのではないかと思っています。

日本人は何か嫌なことがあっても我慢します。
我慢して我慢して、我慢の限界を超えてしまったら、いきなり怒りの頂点に達します。
しかし、言われた側にとっては、いきなり怒りモードでこられても、何でこんなに起こっているのか、クレーマーだ、と引いてしまいます。

日本人のリスクコミュニケーションと同じですね。
(参考:リスクコミュニケーション https://soudanskill.com/20110405/193.html)

つまり、「怒る」か「怒らない」かの2者択一なんです。
「少しだけ怒る」「ほどほどに怒る」「結構怒る」という中間点がないのです。
「100%怒る」か「0%全く怒らない」かとなり、我慢している間は「0%全く怒らない」にはいってしまうのです。

電車の中でもよくありますよ。
ヘッドホンから音が漏れているときに、「音が漏れているので、少しボリュームを下げてください」といえば、相手も「すいません」で終わると思うのですが、残念ながら、日本人は注意せずに我慢します。
我慢して、我慢して、我慢の限界を超えてしまって、発する第一声が、「うるさい!迷惑だ!」。
言われたほうも、いきなりで戸惑ったり、逆切れしたり、周りの人も引いてしまったり、というシーンがうまれます。

消費者センターにきた相談者も、我慢に我慢を重ねて、限界を超えて、苦情を申し出ています。
100%の状態で、訴えます。特別なこととして考えるのではなく、普通のことだと考えてください。
相談者の心理状態をよく理解してあげて対応します。
まず、怒りを吐き出させてあげる。そして、その中から、相談者の相談したい内容を理解してあげる。それを受け止めてあげる。
そこからスタートします。
相談内容は、実は、「なんでもないこと」が多かったりします。
お互いが、ほどほどの状態であれば十分トラブルにはならない事例が多いです。
したがって、お互いの感情を相談員がすりあわせれば簡単に解決する場合もあります。
なかには話を聴いてもらったというだけで、気持ちがスッキリして、解決する場合も少なくありません。
バランス理論を思い出してください。

逆に、怒りを吐き出しているときに、それを止めたり、言い返したりすると、相談員への怒りに変わってくることもあります。
気持ちのすれ違いから100%状態になっているだけなんです。
相談員も最初は嫌でしょうが、話を聴いているうちに落ち着いてきます。
日本人のこうした感情を理解しておくことを心がけてください。

(平成23年5月30日 初稿)
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月刊 国民生活 2011年6月号

①特集 成年後見制度の今後
・成年後見制度は単純そうで難しいですね。世の中に十分浸透していないからでしょうか。
・相談現場では成年後見制度の前の段階を扱います。すなわち、判断不十分者に関する消費者トラブルです。特集3ではPIO-NETからの相談受付状況について解説されています。
・介護保険制度の要支援認定、療育手帳の有無、精神疾患、認知症の状況など、契約を取り消すために、材料を探します。
・最近多いのは、知恵遅れ的な若者が、携帯電話の出会い系サイトでだまされたり、少し前にはチャットレディーと映像で会話して費用が発生したりということがありますね。
・いずれにしても、事業者が受け入れるような気持ちがあるのかどうかというところにかかります。

②チェックチェック 苦情相談
「身に覚えのないカードローン」
・カードローンの返済が滞っているという連絡があったことから、勝手に複数の貸し金業者から300万円の借り入れがあることがわかったという事例です。
・調べてみると、自動契約機で免許証の本人確認ののち契約していることがわかった。
・警察が調査して、知人が成りすまして契約していることがわかり、知人が債務を支払うこととなり、本人の事故情報が訂正された。
・実際にこういうことがあると怖いですね。本人確認は何だということです。防犯ビデオの映像も筆跡も異なることがわかり解決したんですが、財布を落とせないですね。また、落としていなくても、知人であれば数時間でも抜き取られて返却されていたらわからないですし、会員証の作成で本人確認として免許証を提示するのも怖くなってしまいます。事実、私の友人も知らないうちに消費者金融のカードを作られて、何年も借り入れ返済が滞りなく行われ気づかなかったということもあったそうです。
・契約していないものは契約していない。必ず証明されますので追認しないようにしましょう。

③暮らしの判例
「原野商法の二次被害と契約の効果」
・原野商法被害者の相続人を狙い、測量契約とを結ばせた事案です。
・測量契約は、特商法の電話勧誘販売に該当し、契約書面に記載の不備があったためクーリングオフを認めた。
・広告掲載契約は、消契法による重要事項の不実告知による取り消しと動機の錯誤により錯誤向こうを認めた。
・支払済み代金の返還を命じた。77万7000円と42万円。
→いつもながら、判例解説の理論構成には勉強させられます
・契約当時は測量契約は指定役務だったが、広告掲載契約は指定役務ではなかったため、特商法の適用外とした。
・契約書のクーリングオフの記載が不足、7ポイントで8ポイントには不足。
・単に売却可能性がなければ多額の支払いをするはずはなく、売却可能性があるという趣旨によりうものがあり、消契法4条の重要事項にあたり、契約取り消しを認めた。
・土地の売却可能性があると告げられたことを信じ動機として測量契約と広告掲載契約をしたので錯誤無効である。

国民生活センター http://www.kokusen.go.jp/ncac_index.html
月間 国民生活

犯人探し

原発関連の事故では、誰が悪いのか、なぜあんな対応をしたのか、など犯人探しのようなことが連日報道されています。
確かに過去の失敗を振り返り、教訓にして今後に生かすことはとても大切だと思います。
しかし、最近は度が過ぎているような気もします。
あのとき、あの状況では、誰もが最善だと考えた対応をとっているはずであり、それがいつも正解とは限らないこともありえます。
当然ながら、様々なレベルでのミスはあったと思います。
擁護するわけではありませんし、被災者にとっては許しがたいことだということも理解しています。

失敗したときに最も優先すべきことは、過去を振り返ることよりも、今の状況をできるだけ早く正常に戻すことです。
関係者には、失敗を責めるよりも、今、そしてこれからの対応に全力で取り組んで欲しいと思います。

このことは、相談現場そのものです。

例えば、詐欺まがいの商法の被害にあった相談者に対して、「誰もが詐欺と分かる話に、なぜのってしまったのか」などと発言してしまうことがあります。
これは、相談者の行動を非難しているわけであり、心理的に大きくマイナス方向に働いてしまい、「被害にあって相談に来たのに、被害にあったことを怒られてしまった」と感じてしまいます。
これでは、相談者ががんばって被害の回復を図ろうとするモチベーションが低下してしまい、今後のあっせんに支障が出ることもあります。
慎重に言葉を選ぶ必要があります。

大切なことは、「済んでしまったことを批判するのではなく、今、困っている状況を全力で助けてあげるために前へ進むこと」です。
すべてが解決したならば、次からは気をつけましょうとなりますし、本人自身も十分学んでいるのではないでしょうか。

この考え方の基本は、「コーチング」にあります。
特に、スポーツの現場で指導者に求められるスキルとして頻繁に紹介されています。
「コーチング」については、別の機会に書きたいと思いますが、キーワードは、「過去は変えられない」ということです。
ぜひ、相談現場で意識してください。

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