消費者情報 2012年4月号 (関西消費者協会)

4月号の特集は「ネットコミュニケーション」です。
この特集はとても勉強になるので、ぜひ読んでください。

特集 ネットコミュニケーション 窶博d組みと危険

①モバイル決済のウラオモテ (株式会社サイバード 高野敦伸)
・パソコンでネット通販を行う場合はクレジットカードの利用が主流
・携帯電話キャリア課金がモバイル決済の主流の手段
・携帯電話の通話料や通信料と一緒に「情報料」として消費者に請求される
・モバイル決済の中でもキャリア課金は、その利用シーンにマッチしたもの
・もう一つ主流となった理由に後払いであること
・本人かどうかという点は、携帯電話は契約当人が使うという暗黙のルールがあり、念のため4桁パスワードで本人確認を行っている
・キャリア課金は、さほど大きくならない利用金額
・クレジットカードは原則的に18歳以上でないと保有できない
・若年層も使える決済手段であるキャリア課金は、特にデジタルコンテンツの課金手段として非常に多く利用されている。
・スマートフォンでは無料のゲーム・アプリが爆発的に普及
・無料では成り立たないので「広告ビジネスモデル」や「ダウンロード課金(有料)」の一方で「アイテム課金」と称されるタイプが隆盛
・小さな携帯の画面の中での武器の購入では気づきようがない。
・子供に携帯を持たせることそのものの是非は議論がなされて久しいが、もはや携帯電話はコミュニケーションの利便性を高め、交流を深め、人格形成期に必要なものであり、緊急時や災害時などは生命を守るための重要なツールだ。いまさら、携帯電話を持たない時代に戻すことは用意ではない。
※モバイル決済の問題点がうまく整理されています。また、最後の「子供の携帯」については時代が変わったのだなあと実感させられます。確かに防犯に使われているし、地震の緊急警報も携帯から発せられます。

②オンラインゲームの仕組み (NHN Japan株式会社 高橋誠)
・旧来の家庭用ゲームとオンラインゲームの大きな違いは、課金モデルとゲームの拡張性という点にある。
・事業者サイドから見たオンラインゲームのトラブルとその対応として6事例を紹介

③オンラインゲームと法規制 (弁護士 吉井和明)
・事業者と利用者とのトラブル
(1)アカウントの停止、削除
→違反の程度と比較し、制裁が厳しすぎるものは、法的に問題となる場合もある
(2)課金サービス
→無料サービスだと宣伝しつつ、課金サービスを利用しなければ一定レベル以上に進むことができないようなサービスの場合、不当表示として問題になる
→アイテム課金で「ガチャ」といわれるサービスは高い射倖性を有する
→賭博に当たらないか、公序良俗に反するか、RMTで換金すれば賭博罪に該当する可能性がある
(3)IDやパスワードの貸与、なりすまし
(4)サービスの終了
・利用者間のトラブル
(1)アイテム詐欺
(2)ネットいじめ、嫌がらせ、誹謗中傷、児童買春など

④オンラインゲームトラブル! その現状と対処法  (国民生活センター 黒川龍)
・問題点と対処法
(1)無料と思って未成年の子どもに利用させたところ、子どもがそうとは知らずに有料のアイテムを購入してしまい、後で高額な請求を受けた
(2)身に覚えのない不正行為を指摘され、サービスの利用を拒否された
などのトラブルが目立つ
・契約の経緯を詳しく聞き取り、未成年者取消し(民法5条)の可否を慎重に見極めることが求められる。

⑤SNSと対人距離 匿名性と距離感 (第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部 宮木由貴子)
・エドワード・ホールは対人距離を大きく4つに分類
・対面のコミュニケーションにおいては、心理的近接性が物理的近接性にリンクしている
・匿名性の高いSNSでは距離感が急速に縮まる
・正の感情も負の感情も増幅
・SNSの非利用者と利用者には、様々な点で意識的なギャップが確認されている。
・「ネットとリアルの差」が消失しつつあると感じる人がいる一方で、SNSを「ネットの世界」のことだと考えている人も少なくない
・それぞれの局面にいる人が、自らのコミュニケーション環境を「常識」ととらえている。

⑥スマホとケータイの特性と注意点を知る (NIT情報技術推進ネットワーク 篠原嘉一)
・今ならスマホに移行しても既存のスマホユーザーに十分追いつける
・自分の利用状況を考え、契約後の費用面も意識しておく必要がある
・Wi-Fi接続でのみ使用するのであれば、パケット代を気にすることもない
・スマホなど携帯電話は全ての機種でGPSの搭載を義務付けられている
・このことを知らずにサイトにつぶやいたり、写真をサイトに載せると位置情報までくっついてアップされる

リンクはこちらです
関西消費者協会 http://kanshokyo.jp/hp/
消費者情報 2012年4月号


相談員は学者ではなく実務者である

大学の教授は論文を書くことが仕事です。論文が書けないと評価してもらえません。
したがって、法律の解釈などにはとても詳しく、そこから法律上の問題点を見出し、自説を唱えることもあります。

相談員研修で大学教授が講師の場合、法律上のポイントや解釈、問題点、提言などがレクチャーされます。
法律解釈の勉強は奥深く、とても面白いです。
また、講師が弁護士であった場合、弁護士は裁判で戦うことが基本になりますので、法律解釈と理論立てはすばらしいものがあります。

また、そのような講師に事例検討会をしてもらった場合の助言に、法律を解釈すればこのようなことが主張できるので、取り消しできます、ということもしばしばです。
確かにそのとおりなんです。

したがって、そのような研修会に参加すればとても面白く、勉強した気になります。
そこに落とし穴があることは私は何度も主張しています。
もちろん、知識としての勉強ができたことは間違いないのですが、相談現場で使えるかどうかです。

橋本大阪市長がテレビの対談でよく言っている言葉に「あなたは学者でしょ。現実が分かっていない」と言います。
まさしく、相談業務も同じと思います。
理想を追いかけるのではなく、今ここにある問題をリアルタイムで解決しなければならない。

法律を守っていない事業者に、これは法律違反だから契約取消になりますと主張して、素直に話が進むほど甘くはありません。法律を盾にとって、うまくあっせんがいくとは限らないことは相談員なら経験済みだと思います。

逆に、法律などのルールとは全く関係なく、話し合いによって、あっせん解決に至る事例が少なくありません。
そもそも、消費者センターの相談が法律解釈にのっとる相談というよりも、人間関係のコミュニケーションのずれから起こったトラブルのほうが多いかもしれません。

そう考えると、今、全国で実施されている研修は、どこまで相談員のスキルアップにつながるのかなあと思ってしまいます。
このような現実を知った上で、自分の知識を深める研修か、現場力を向上させる研修かを分けて考えて参加してほしいと思います。

では、どのような研修がいいのか。
実はいつでも手軽に内部でできる身近な研修材料はたくさんあります。
リアルな相談事例です。
雑誌に掲載されているような鮮やかな報告も実はどろどろしたやりとりが相談者や事業者とあって最終的に解決した背景もあると思います。
そのような事例を一から検証しなおし、意思の疎通を図る上で障害になったものや、説得によって行動変容を起こしたもの、などをケーススタディ的に学ぶことが現場力をつける源になると思います。
本当はこうしたかったが、実際はこうだった。
実際はこうだったが、本当はこうしたほうが良かった。
センターの対応は間違っていた。
次からは、こうしたい。
などの検証はすべての事例に存在します。
1事例を検討するだけで1時間や2時間はあっという間です。
こういう事例研修を活用してほしいと思います。

ただし、一番難しいのは、適正に判断できる人材がいるかどうかということです。
大きなセンターであれば相談員の数も多く、文殊の知恵作戦ができますが、地方のセンターや一人相談員の現場ではなかなか難しいかのしれませんね。

一方、相談員の資質向上における環境面にも格差があるのは現実です。
今後、基金が終了しても研修に参加できるだろうかという不安は多くあると思います。
ただ、基金を使って多くの研修に参加したけれど、実際に現場で使えるスキルを身につけることができているかどうか検証できていますか。
案外、今までと同じかもしれません。そうなれば、基金の有無に関係なく、相談員の資質の向上について根本的な考え方が現実とGAPがあるのかもしれませんね。

このサイトでは現場力をつけるための知識やコミュニケーション力などのスキルを身につけることを目指しています。
WEBでの限界はありますが、私なりに工夫をしていきたいと思っています。

携帯中途解約金訴訟 判決 その1

携帯電話の2年縛りの解約金9975円は平均的損害を超える不当条項として差し止め請求した裁判の判決が3月29日にありました。
私も平成22年6月17日に「携帯電話の違約金条項の使用差し止め訴訟」(https://soudanskill.com/20100617/53.html)という記事を書きました。
その当時と今も考えは変わっていませんが、私は2年契約を条件に基本料金が半額になることは消費者にとっても事業者にとってもメリットのあることであり違約金には基本的に問題がない、と考えています。

当時の報道記事です。

携帯解約金は違法、と提訴 消費者団体がドコモauを・・・47ニュースよりhttp://www.47news.jp/CN/201006/CN2010061601000575.html

携帯電話の家族割引などのサービスが適用された2年間の契約期間中に解約した場合、違約金を支払わなければならないのは違法だとして、京都府の消費者団体が16日、NTTドコモとKDDI(au)の2社に対し、解約金条項の使用差し止めを求める訴訟を京都地裁に起こした。
割引サービスはNTTドコモの「ひとりでも割50」「ファミ割MAX50」やauの「誰でも割」など。2年間の定期契約で、携帯電話の基本使用料は半額になるが、利用者が中途解約した場合、違約金を支払わなければならない。
原告側は訴状などで、こうした仕組みについて「利用者の利益を一方的に損なっており、消費者契約法上も認められない」と主張。契約の自動更新後も、解約する場合には違約金を支払わなければならないのは、不当な拘束だとしている。
さらに同じ番号で携帯電話会社を変更できる「番号ポータビリティー制度」が2006年から始まったにもかかわらず、契約先を選ぶ権利が不当に制限されていると指摘している。
2010/06/16 18:18 【共同通信】

そして、判決の報道記事です。なぜか、今回の判決の記事は他の会社の記事もあわせて削除されていて記事を見つけることができませんでした。

携帯中途解約金訴訟:ドコモ割引契約、解約金は「合法」 原告の請求棄却--京都地裁判決・・・毎日jpより(記事削除のためキャッシュより引用)

携帯電話の割引プラン(2年契約)を中途解約した際、解約金9975円を徴収する契約条項は消費者契約法に反するとして、京都市の適格消費者団体「京都消費者契約ネットワーク」が、NTTドコモに条項の使用差し止めを求めた訴訟の判決が28日、京都地裁であった。吉川慎一裁判長は「金額は合理的」としてネットワーク側の請求を棄却した。同時に、解約金を支払った利用者11人(13回線分)が同社に計約13万円を求めた訴訟も請求を棄却した。ネットワークは控訴する方針。
ネットワークによると、携帯電話の定期契約の解約金条項をめぐる判決は全国初。KDDIとソフトバンクモバイルも同様の条項を設けており、ネットワークが提訴している。
判決によると、ドコモは2年契約の「ひとりでも割50」「ファミ割MAX50」の契約で、基本料金を半額にする代わりに、中途解約すれば9975円を徴収する条項を設けている。
判決は、解約1件当たりのドコモの損害額を、基本料金の平均割引額2160円に中途解約までの平均利用期間14カ月をかけた3万240円と認定。「解約金はこの額を下回り、違法ではない」とした。また、条項をめぐって契約時に消費者との合意が成立しているとしたうえで「解約権は制限されるが、見合った対価を受けている」と結論付けた。【成田有佳、堀智行】
毎日新聞 2012年3月29日 東京朝刊

「解約権は制限されるが、見合った対価を受けている」というのはもっともな見解であり、私の当初の考えと同じです。
あえて、揚げ足を取るとすれば、2年以内の解約は一律9975円にするのではなく、(英会話などの中途解約金と同じように、)契約期間に応じた解約金にするということでしょうか。裁判でも、そのような問題点を指摘しています。
例えば、3ヶ月で解約すれば2年縛りのないプラントの差額980円×3ヶ月=約3000円となり、9975円は高額で不当である、といえば揚げ足取りですね。
しかし、10ヶ月が損益分岐点となり、10ヶ月から2年までに解約すれば差額は9975円より大きくなるので無理やり考えると不当利得になるのかも。
しかも、判決では「14ヶ月が平均利用期間」で割引額は980円ではなく「2160円」として計算しています。
基本料金の平均割引額が2160円というのは、4320円が加重平均基本料としており、半額割引なので2160円で14ヶ月をかけると30240円ということです。この計算は我々の実体験とは異なります。どちらかというと、980円×14ヶ月=13720円だと思いますが、どちらにしろ9975円の違約金の方が下回っています。

なお、判決文は「京都消費者契約ネットワーク」のHPで見ることができます。
読み込むと、とても面白く勉強になりますので、ぜひ読んでみてください。
すごく深いです。

京都消費者契約ネットワーク
http://kccn.jp/
2012年3月28日(水)京都地方裁判所において、2010年6月16日提訴した株式会社NTTドコモに対する携帯電話の解約違約金使用差止請求訴訟の第1審判決が出ました。第一審判決はこちら
http://kccn.jp/tenpupdf/2011/20120328docomohanketu.pdf

私は最初の2年間は妥当だとしても、更新後も2年間になるというのには少し思うところがあります。。
また、このような裁判をしたことの疑問についても思うところを書きたいと思います。
(その2へ続く)