相談員は学者ではなく実務者である
大学の教授は論文を書くことが仕事です。論文が書けないと評価してもらえません。
したがって、法律の解釈などにはとても詳しく、そこから法律上の問題点を見出し、自説を唱えることもあります。
相談員研修で大学教授が講師の場合、法律上のポイントや解釈、問題点、提言などがレクチャーされます。
法律解釈の勉強は奥深く、とても面白いです。
また、講師が弁護士であった場合、弁護士は裁判で戦うことが基本になりますので、法律解釈と理論立てはすばらしいものがあります。
また、そのような講師に事例検討会をしてもらった場合の助言に、法律を解釈すればこのようなことが主張できるので、取り消しできます、ということもしばしばです。
確かにそのとおりなんです。
したがって、そのような研修会に参加すればとても面白く、勉強した気になります。
そこに落とし穴があることは私は何度も主張しています。
もちろん、知識としての勉強ができたことは間違いないのですが、相談現場で使えるかどうかです。
橋本大阪市長がテレビの対談でよく言っている言葉に「あなたは学者でしょ。現実が分かっていない」と言います。
まさしく、相談業務も同じと思います。
理想を追いかけるのではなく、今ここにある問題をリアルタイムで解決しなければならない。
法律を守っていない事業者に、これは法律違反だから契約取消になりますと主張して、素直に話が進むほど甘くはありません。法律を盾にとって、うまくあっせんがいくとは限らないことは相談員なら経験済みだと思います。
逆に、法律などのルールとは全く関係なく、話し合いによって、あっせん解決に至る事例が少なくありません。
そもそも、消費者センターの相談が法律解釈にのっとる相談というよりも、人間関係のコミュニケーションのずれから起こったトラブルのほうが多いかもしれません。
そう考えると、今、全国で実施されている研修は、どこまで相談員のスキルアップにつながるのかなあと思ってしまいます。
このような現実を知った上で、自分の知識を深める研修か、現場力を向上させる研修かを分けて考えて参加してほしいと思います。
では、どのような研修がいいのか。
実はいつでも手軽に内部でできる身近な研修材料はたくさんあります。
リアルな相談事例です。
雑誌に掲載されているような鮮やかな報告も実はどろどろしたやりとりが相談者や事業者とあって最終的に解決した背景もあると思います。
そのような事例を一から検証しなおし、意思の疎通を図る上で障害になったものや、説得によって行動変容を起こしたもの、などをケーススタディ的に学ぶことが現場力をつける源になると思います。
本当はこうしたかったが、実際はこうだった。
実際はこうだったが、本当はこうしたほうが良かった。
センターの対応は間違っていた。
次からは、こうしたい。
などの検証はすべての事例に存在します。
1事例を検討するだけで1時間や2時間はあっという間です。
こういう事例研修を活用してほしいと思います。
ただし、一番難しいのは、適正に判断できる人材がいるかどうかということです。
大きなセンターであれば相談員の数も多く、文殊の知恵作戦ができますが、地方のセンターや一人相談員の現場ではなかなか難しいかのしれませんね。
一方、相談員の資質向上における環境面にも格差があるのは現実です。
今後、基金が終了しても研修に参加できるだろうかという不安は多くあると思います。
ただ、基金を使って多くの研修に参加したけれど、実際に現場で使えるスキルを身につけることができているかどうか検証できていますか。
案外、今までと同じかもしれません。そうなれば、基金の有無に関係なく、相談員の資質の向上について根本的な考え方が現実とGAPがあるのかもしれませんね。
このサイトでは現場力をつけるための知識やコミュニケーション力などのスキルを身につけることを目指しています。
WEBでの限界はありますが、私なりに工夫をしていきたいと思っています。