「羽生3原則」に学ぶ(2012年7月14日 読売新聞より)

読売新聞の特別編集委員の橋本五郎氏の五郎ワールドという連載の記事を紹介します。

将棋の羽生さんの講演会のときに、「天才棋士は何手先まで読むのだろう」という疑問に答える形で棋士がどんな風に考えているのか話された。一番最初に使うのが「直感」である。一つの場面で約80通りの可能性がある。その中から二つか三つを瞬時に選択する。残りの77、78の可能性は、見た瞬間捨てるのである。
「直感」とはカメラで言えばピントを合わせるような作業だ。1秒にも満たないわずかな時間の中で、なぜそれを選ばなかったのか、なぜそれを選んだのかをきちんと論理立てて説明できるのが直感だ。

そのうえで具体的に先を「読む」プロセスに入る。三つの選択肢には三つの選択肢があり、さらに三つ....。そう考えていくと、3の10乗、6万通りにもなってしまう。その一つ一つを確かめることができない。

そこで三番目に必要になるのが「大局観」である。ここは積極的に動いた方が良いと大局観でわかれば、過去も振り返り積極的な選択はどれかということだけに集中して考える。大局観とは状況判断ができる力、本質を見抜く力である。

直感、読み、大局観という羽生さんの「3原則」を聞きながら、棋士の一手一手にはそれまで集積された、あらゆる知恵や経験を動員した「決断」があることを知るのである。

※なお、記事の最後に、この話をもとに政治を論説していますが、その内容については賛否両論あると思いますので特にコメントは控えさせていただきます。

この記事を読みながら、まさしく将棋は相談業務にも通じるものであり、棋士は相談員に置き換わると感じました。

消費者から相談を受けたときに、その対応策には何通りもの方向性があります。すべての事象を一つ一つ紐解いていくには多くの時間と手間が必要です。契約の相談なら法律要件があるので選択肢は限られてきますが、クリーニングや製品事故、品質問題などはとても複雑で個別事情もあり、多くの選択肢がでてきます。
相談員は相談を受けた瞬間に多くの選択肢の中から、直感的に「この相談はこのような展開が想定される」と感じます。これが「羽生3原則の直感」に当たると思います。

そして、想定した展開をその仮説に基づいて実証していく「羽生3原則の読む」プロセスに入ります。実証した結果に対しては、さらにその先があります。

相談の細かい部分にこだわると目的である「あっせん解決」を見失うことにもなりかねません。「あっせん解決」という大きな目標に向かって最適な選択肢を選んでいくというプロセスを進めていきます。それが「羽生3原則の大局観」だと思います。あっせん解決するには、相談内容の本質を見抜いて、どのような選択をすれば上手くいくのか状況判断します。

この3原則はそれまでに集積された、相談事例、法律知識、コミュニケーション力、問題解決能力、ファシリテーション能力など、あらゆる知識・知恵・能力が総動員されて決断していくことになります。

すべての能力が備わってこそ3原則が発揮されるのです。そこが新人相談員と本当のベテラン相談員の差であるし、経験のある相談員でもあっせん能力の高い相談員とそうではない相談員の差なのです。
特に「直感」で相談の先を読み取っていくことができるかどうかは個人の能力差を如実に示すと思います。そして、その直感は「思い込み」ではなく、様々な能力に裏打ちされたものでなくてはならないのです。
この差は見る人が見たら、すぐに分かります。

休日の新聞なんて、ふとすれば見逃してしまいがちですが、たまたま目に留まったこの記事はとても勉強になりました。記事の内容は抜粋したので概要は網羅していますが、記事自体を読みたい場合は図書館でバックナンバーを探してください。
2012年(平成24年)7月14日(土曜日)朝刊 13面解説

この記事にはコメントを記入することができます。コメントを記入するには記事のタイトルをクリックして単独で記事を表示してください。

消費者情報 2012年7月号 (関西消費者協会)

①インタビュー 「相談現場からの発信に期待」
・特商法の適用対象の拡大を
・さらにマンスリークリア 決済代行業者の規制が必要
・法律の適用が難しい案件でも粘り強く交渉してほしい
→特商法、割販法については最もよく使われる法律だが、規制の対象となるかどうかが微妙な事案がある。特商法にしろ、割販法にしろ、ずばり規制が適用されるものは、被害としてはあまり多くない。多数の被害が起きるのは微妙なケースの方が多い。法律がこうだからダメと考えるのではなく、消費者感覚からみておかしいな、これは不当な契約だな、と思った案件については、がんばって業者と話をする。手に負えない案件については早く弁護士に回す。ただし金額的に小さいことが多いので、なるべく消費生活センターで解決するのが理想
※消費者センターでは法律を厳格に適用することも大切ですが、消費者感覚方見ておかしいことは法律の枠を超えて申し出ることが大切だと思います。それができるのが消費者センターだと思っています。法律にとらわれない柔らか頭を持ちたいですね。

②多重債務キャラバントーク ワタシのミカタ
多重債務問題における都心部・地方都市の差異
・地方独特の状況として、「地縁・血縁が強い」「義理堅さ・恥の意識」がある。
・地方都市では、共同体として「人と人のつながり」が強く結びついている。
・そういう地域では簡単に他人の保証任意なってしまう。
・親の借金を子どもが払わなかったら、もうこの地域では生きていけない。
・恥の意識が強く地元の弁護士には相談しずらく、都心部の悪質相談事務所にひっかかってしまう。
・人と人の結びつきが強いのは良いことだが、デメリットもあり、家族1人のために他の家族が犠牲にならないようにすることが大切だが、なかなかスムーズにいかない。

③判例に学ぶ
最高裁平成23年7月15日以後に更新料の一部無効を認めた判決
京都地裁平成24年2月29日判決
・最高裁平成23年7月15日以後、下級審では更新料の有効を認めるものが続いている。
・更新料の額が高額に過ぎる場合は特段の事情として無効になりうるとしたが、今回の判決では、更新料の額が好学であると結論付けられている
・賃貸により控訴がなされている

勝手に保証人にされていても書面で印鑑等の要件が合致されれば保証人とされる。このような保証人被害が問題。
・平成16年の民法改正により書面要件が規定され、保証契約の認定には慎重な姿勢が求められた。
・判決では単なる書面要件を満たしているだけでなく、保証人が本人であったということが明確であることが必要とされるとした。
※概略をまとめるのが難しかったので、判決文を参照してください。ちなみに判決は1月19日です。

(参考)最高裁平成23年7月15日判決

http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=81506&hanreiKbn=02

事件番号:平成22(オ)863
事件名:更新料返還等請求本訴,更新料請求反訴,保証債務履行請求事件
判示事項
1 消費者契約法10条と憲法29条1項
2 賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載された更新料の支払を約する条項の消費者契約法10条にいう「民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」該当性

裁判要旨
1 消費者契約法10条は,憲法29条1項に違反しない。
2 賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載された更新料の支払を約する条項は,更新料の額が賃料の額,賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り,消費者契約法10条にいう「民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」には当たらない。

④ネット漂流 Vol.3 「出会い系ってしちゃいけないの?」
・出会い系とは知らずに登録した生徒もいれば、承知の上で援助交際が目的で登録したという生徒もいる。
・この娘たちは、誰からも危険性を教えられたことがないのだ。
・このような生徒に共通するのは幼い頃の家庭環境だ。愛情を感じたことがない。愛されたことがないのだ。
※出会いは今も昔も最初は他人から、ということになります。そこからお互いを知っていくプロセスをとります。
ネットでの出会いも、従来からの出会いも、基本的には同じだと思いますが、大きく違うのは、ネットでの出会いは、「なりすませる」ことにあると思います。
それが未成年者に付け入る隙を与えてしまう。この部分での判断が適切にできるのなら、私はネットでの出会いは否定しません。

リンクはこちらです
関西消費者協会 http://kanshokyo.jp/hp/
消費者情報 2012年7月号

気をつけたいこと (おすすめブログより)

「草野健次ブログ」より引用しました。
http://kenjikun.exblog.jp/

前回は2011年6月25日に紹介しました。
http://kenjikun.exblog.jp/16515064/
第1667話・・・最初はわからなかったがあ~、そういう意味だったのか・・・

今回は
第1863話・・・気をつけたいこと
2012年 07月 03日
http://kenjikun.exblog.jp/18179329/

第1863話・・・気をつけたいこと

空気を読めない人は嫌だな
露骨に自分を守る人も嫌だな

こちらは何も聞いていないのに、会った瞬間に
自分のことをバアーっと、一気に喋る人と時々遭遇します。
これは痴呆症に要注意と言われています。
すでに周囲のこと、相手のことなどお構いなしですからね・・・・。

子ども相手であろうが、大人相手であろうが
あるいは自分よりはるかに知識や経験、実績もある人に対しても
バーッと自論?を展開する人。
これもよくありませんね。
聞いてもないのに
聞きたくもないのに
自分のことばかり喋るのは
やっぱりおかしいよね。
気をつけましよう。

そもそも、人が人の輪の中に入っていくとき
気やすく話せる相手を探しているのがそもそも悲しいものです。
自分を自分で守るという行為。
これはいかん!
心がせまい。
器が小さすぎる。

滋賀県でのこと。
中学3年生の質問力がぐーんとレベルアップしていました。
「ブロード攻撃の時の、空中での脱力の方法がわからないんですが」
と聞いてくる姿に、「こいつら成長したな」とニヤリしたものです。
「今までバナナレシーブのやり方を誤解していました。
腰から動くことだけが頭にあって、結局、腰を回すような動きになっていたんですね」
質問する表情がいい。
充実感いっぱい。前を向いている顏。素直な心。

抑えられた指導を受けた子供や過保護の中で育った子供には
ではとうてい見れない姿が目の前でみることのできる幸せ感。

すべては指導者の影響力ではないでしょうか。
指導者はけして子供のせいにしてはならぬ!
これも気をつけたいものです。

「周囲のこと、相手のことをお構いなしに喋る人」を、相談対応にたとえると、「相談者の話を十分にきかず、相談員自身の考えや理論を一方的に話す」というところでしょうか。
私が何度も言っていることですが、残念ながら、そういう人は自覚症状がありません。
周りから見ると明らかなんですけどね。
相談員として「傾聴」、「コミュニケーション」をしっかり再認識しましょう。

この記事にはコメントを記入することができます。コメントを記入するには記事のタイトルをクリックして単独で記事を表示してください。