消費者情報 2013年3月号 (関西消費者協会)

今月号から気になる記事を紹介します。

①特集「霊感商法」を読む
・「霊感商法」事案の特色と対策
→霊感商法の歴史的経緯と問題点を明らかにし、その法的救済手段について解説する。
・信教の自由と違法性のカラクリ 統一教会による霊感商法
→統一教会によって大金を奪われ人生を破壊された人は数知れない。宗教活動に名を借りて行われてきた「霊感商法」の全体像を探る。
・「霊感・開運商法・占い被害110番」から見た消費者被害の現状と対策
→霊感・開運商法における消費者被害の典型的事案を紹介し、規制状況とその対策について報告する。
・開運商法の事例と対策
→開運ブレスレットの購入をきっかけに次々と開運商品を売りつける手口に注意窶・I
・「占いサイト」と子どもたちの危険な関係(IT情報技術推進ネットワーク代表 篠原嘉一)
→子どもたちの心に忍び寄る「占いサイト」の裏側では、親の知らない怖い世界が展開している。
いともカンタンに個人情報が手に入る、満たされない心と占い、「神待ち」という魔手

・悪徳商法に通底するマインドコントロールの恐ろしさ
・相談スキルアップ窶・I霊感商法トラブルに関する聞き取りとあっせん
※開運グッズが新聞や新聞広告、雑誌にあふれています。「お守り」レベルの考え方だったら許容範囲ですが、今回特集されている次々商法や宗教に身をささげるレベルにまでなると問題です。ネットの普及や手口の巧妙化により、その境界線が判断できないような事例が増えています。

②判例に学ぶ
「動機の錯誤による連帯保証契約の無効を認めた事例」平成24年5月24日東京地裁判決

・兄のビルの融資の連帯保証契約をする際に、ビルの資産価値を過大に説明し、債務が払えなくてもビルを売却すれば連帯保証人に請求は来ないとして銀行と契約をした。兄が履行できなくなったが、ビルの資産価値は当初から低く、連帯保証人に保証債務の履行を迫られた。
→銀行の説明により、保証人になったのは、銀行の説明により請求がこないと考えて契約したので、この契約の動機となった銀行の説明が誤認(不実告知・不利益事実の不告知)に当たるとして、「表示された動機に錯誤があったから要素の錯誤により無効である」と判断した。
※民法の錯誤無効を勉強する場合の「要素の錯誤」と「動機の錯誤」の違いについて勉強になるので、ぜひじっくり読んでみてください。

③現場からの情報 【相談】通販サイトの有料会員窶蘀!?
・通販サイトで書籍を購入した際にクレジットカードの明細に覚えのない会費の請求がされていた。
・確認したところ1回につき500円かかる当日配送サービスが無料で何でも受けることができる会員制度があり、その年会費が3900円だった。
・相談者に確認したところ、購入時に当日無料配送を利用したとのことだったが、有料との表示はなかったとのこと。
・キャンセルをしなければ1ヵ月後には有料会員になるとの説明が申し込み画面とは別のヘルプにあったり分かりにくい表示だった。
・これらを指摘したところ返金された。
※いわゆる最初の1ヶ月が無料になる「お試し会員」のことですね。キャンセルしなければ有料会員に移行してしまうので、レンタルDVDのネット会員サービスでもよくあります。今回のような問題のある業者は別として、ごくごく自然にこのような会員方式が存在しますので、同種の相談があった場合は、どのような制度になっているのか、解約方法などの説明表示は分かりやすいかを確認する必要があります。

④ネット漂流 Vol.9 「『LINE』で荒れる子どもたち」
・最近、「LINE]を起因とするトラブルの相談が学校現場で急増している。
・ラインは何より手軽に利用開始できることで会員を確保している。
・ラインをダウンロードする際に「電話帳のデータを利用する」を承諾すると、登録している電話番号がライン側に送られ、相手がラインを利用した時点で紐づくため、昔付き合っていた元彼まで再びつながりを持ってしまう。おまけにこの繋がりは切れない。
・ラインが起因して校内でのゴタゴタが増えているのはこのためだ。電話帳という限られた範囲の中で繋がり合う為小さな範囲でトラブルがおきているのだ。
※通勤電車で見かける女子学生はみんなラインをやってますね。私はやっていないので分からないことが多いのですが、ネットのサービスは初期設定で個人情報をばらまくような設定になっていることがあるので、設定変更するなど注意が必要です。この初期設定というのはフリーミアムならではの商法ですね。

リンクはこちらです
関西消費者協会 http://kanshokyo.jp/hp/
消費者情報 2013年3月号
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事例の質問に対する回答(2013/3/7)

質問

 明らかに消費者が業者に不当な返金を求めていた事例で、業者が全額返金をすることになりました。自分の担当ではありませんでしたが、こんな時、「そこまでする必要はありません。モンスター消費者には毅然とした態度で対応して下さい。」という思いがありましたが、相談員としてそのような場面ではどのように対応すべきなのでしょうか。
詳細を書いていませんが、アドバイスをお願いします。

レスで助言しようとしましたが長くなりそうなのでスレッドを立てました。

回答(私の個人的な考え方ですので参考ということでお願いします)

残念ながらお金で解決しようとする事業者は少なくないでしょう。
事業者にとっては、対応する手間ひまコストと賠償金とを比較したら賠償するという判断になることもあります。
例えば、手間ひまかけて20万円のコストをかけるのと、あっさり5万円のコストをかけるのとでは経営コスト的に考えると明白な選択肢です。ただし、常連化や企業イメージに対してリスクがあります。
私はそれはそれで一つの解決方法だと思います。
相談員として不本意な気持ちはあっても、とりあえずは「あっせん解決した」と考えてください。

正論がすべて通るとは限りません。
正論がすべて通るなら相談業務はとても楽になります。
本来の正解が正解にならないのだから相談業務は難しく、面白くもあるのです。
正解ではない正解という例外も存在しうると受け入れることが大切です。
カールロジャースの2:7:1の法則を思い出してください。
「1」にこだわりすぎない柔軟な頭が相談員には必要です。
今回の事例でも正論を持ち出すと、こんがらがってしまい、最終的には相談員が消費者からも事業者からも攻撃されることも考えられます。そして、結局は、全額返金という結果に落ち着きます。
あっせんの目的は、消費者と事業者の合意です。
全額返金も、事業者がいやいやでも最終的に納得して提示し合意したという事実を相談員として受けとめることです。
相談員はあくまでも影の存在で、相談対応のプロセスにおいては「全額返金するのはおかしい」というスタンダードを示してもいいのですが、それにこだわり続けるとゴールにたどりつけません。
後味が悪くても、お互いが合意したなら、「あっせん解決」という成果です。その割りきりが必要です。
事業者には、この案件が教訓となって、消費者対応のリスクをもっと考えるようになるかもしれません。
そう前向きに思うことがスッキリしない気持ちを落ち着けます。
その後に事業者と今回の解決方法について本音の意見交換をするのも一つの前向きな考えだと思います。
そのときに、相談員として「全額返金はおかしい」という考えを示すのもこれからにつながると思います。

しかしながら、このような結論になった問題の本質は別のところにある可能性もあります。
質問者さんの「相談員としてそのような場面ではどのように対応すべきなのでしょうか。」という問いに対して、「全額返金」というゴールの一場面を切り出すのではなく、それまでのプロセスもあわせて考えることが必要です。すなわち、「全額返金」という場面を相談員が自らのあっせんでつくってしまった可能性があるからです。
相談を受けた相談員は最終的に全額返金という選択肢しか残らなかったのでしょうか?聞き取りをしていく段階で、「全額返金」は過剰要求であることを上手く説明しきれたのでしょうか?
相談者の勢いに押されて、伝言役になっただけになってしまわなかったでしょうか?
通常は、センターが間に入っているのだから、事業者が最初から自ら全額返金すると言わない限り、相談員としての考えを消費者とすり合わせて事業者に提示するプロセスがあったのではないでしょうか。
今回の相談者は本当にモンスター消費者なんでしょうか?今回の事案に対しては「全額返金」というのがその消費者の価値観かもしれません。その価値観を見てモンスターと決め付けてはいませんか?
さらに、事業者に「モンスター消費者に対して毅然とした態度を」の前に、相談員が消費者に対して毅然とした対応で全額返金はおかしいと消費者に言えなかったのでしょうか。

そんなことをいろいろ考えてしまいます。
私は助言を求められたら、あらゆる可能性を考えて最適な選択肢を見つけていく作業をします。
これらのダメ出し?は終わった相談に対しての批判ととらえてはいけません。
本当は、こういう事案について相談員全員で振り返って、もっと違う対応にはならなかったのかと検証することが大切です。
検証することで、次に同じような相談があった場合には違った対応ができるのです。
そうすると、コミュニケーション能力と論理的思考力という現場力が向上します。
ただ、こういう検証をやっているセンターはほとんどないでしょうね。
1時間から2時間の議論をする時間が必要ですので現場では時間がありません。
しかし、これこそが本物のケーススタディです。内部研修で題材にしたらいいと思います。
外部研修で受けたいところですが、このようなケーススタディをコーディネートできる機関や人材が少ないのが現状でしょうね。
ちなみに私はこのようなケーススタディをするのがとても好きで、得意分野です。
今回の質問をアレンジして、この1つの事例で2時間のケーススタディの研修をつくりあげることができます。

質問者さんも、この事例を当事者に詳しく聞くか、相談データを読み返すかして、私だったら、この場面でこういう発言をして、事業者とこういうやり取りをして、最終的に、こういうあっせんあんを提示したと思う。
というシミュレーションをしてください。答えはいくつもあります。
試行錯誤することで実践力や現場力が身につきます。

センターのあっせんで「消費者の要望を事業者に伝える」という過程があります。
その過程において、消費者の要望が妥当であるかを事業者の見解も考慮に入れて相談員が判断し、すりあわせて、消費者に納得してもらいます。
これは私が「相談対応の流れ」で説明した「スタンダードの提示・現実的な提案・妥協案」という部分です。
それぞれの利害関係者(消費者・事業者・相談員)の立ち位置をしっかり認識しておくということです。
立ち位置が違えば対応も変わってきます。相談員がどの位置にいるべきかを考えながら対応していくことが大切です。

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消費者庁長官の記者会見(2月27日分)

重要度:高
※行政資料の重要度を個人的に分類

消費者庁のHPに、週に1回、消費者庁長官の記者会見の要旨が公表されています。
先日紹介した「基金等の活用期間に関する一般準則」の制定についての記者会見の記録です

消費者庁HP
http://www.caa.go.jp/
トップページの新着情報からでもリンクしています。
トップ > 活動について > 大臣等記者会見
http://www.caa.go.jp/action/kaiken/index.html

トップ > 活動について > 大臣等記者会見 > 阿南消費者庁長官記者会見要旨(平成25年2月27日(水))
阿南消費者庁長官記者会見要旨
(平成25年2月27日(水)14:00~14:24 於)消費者庁6階記者会見室)
http://www.caa.go.jp/action/kaiken/c/130227c_kaiken.html
1.発言要旨

昨日、26日ですが、平成24年度の補正予算が成立いたしました。補正予算には、地方消費者行政活性化基金の60.2億円の上積みが措置されております。全国の自治体に対して、速やかに交付手続に入りたいと考えております。
しかしながら、この60.2億円は補正予算でありまして、消費生活相談員の雇用など安定的な地方消費者行政の下支えに不安を感じる声があることも承知しております。
そこで、各自治体で長期的視点に立った体制整備を進めることができるように、「地方消費者行政に対する国の財政措置の活用期間に関する一般準則」を、消費者庁長官通知として制定することといたしました。
この準則は、平成26年度以降についても視野に入れて、基金等の個別事業ごとの活用期間に関するルールを定めるものでございます。
この一般準則は、各自治体の消費者行政体制が定着するまでには継続的な支援が必要であるという消費者庁の認識を明らかにするものでございます。また、消費者庁として、各自治体においては、この一般準則に示された期間を踏まえながら、円滑かつ計画的に自主財源に移行する道筋をつけていただきたいと考えております。
また、財政支援の活用期間は、事業開始から数えて7年(小規模な市町村は9年)、センターの立ち上げについてのみ3年(小規模な市町村は5年)までを原則としておりますが、国の財政措置の活用期間後も、自主財源で体制の維持、強化に取り組むと首長が意思表明する自治体には、2年延長の特例を設けます。逆に、相談員の雇止めをする自治体に対しては、2年短縮の措置をとりたいと思っております。相談員の雇止めは非常に大きな問題でございまして、この措置も契機となって全国的に見直しが進むことを期待しております。
なお、この準則の存在によって、26年度以降の具体的な予算措置が決められるものではなく、具体的な措置の在り方については、今後時間をかけてしっかりと検討してまいりたいと思っております。
今回の一般準則は、自治体に対して長期的な体制整備のロードマップを示すものでもあります。地方の皆様におかれましては、自主財源化に向けて計画的に取り組んでいただく上で、消費者庁が各自治体の消費者行政体制が定着するまでには、継続的な支援が必要であるとの認識を持っていることを安心材料としていただきたいと思います。
消費者庁としては、今後とも地方消費者行政を下支えとするための支援について、財政措置を含め全力を挙げて取り組んでまいりたいと思っております。
以上でございます。

2.質疑応答(抜粋)


日本消費経済新聞の相川と申します。
この地方の国の財政措置の活用期間に関する一般準則なのですが、これは60.2億の後、基金とか交付金で、この後ずっと措置していくという意思を示すということですか。

そうです。

では、次に上積みが来ると思っていていいということですね。

そのように、消費者庁は取り組みたいと思っているところです。

それから、財政力指数0.4未満と人口5万人未満で、どのぐらいの割合を占めるのでしょうか。
地方協力課長
大体4割の自治体が該当します。市町村の4割が該当します。

これは、表題が「基金」になっていないのですが、国の財政支援ということになっているのです。ここで雇止めがあるということは、2年短縮ということは、これで5年目、今年ですよね。今年というか、来年度が5年目になってしまいます。そうすると、全ての事業が使えなくなる。
これは逆に、ちょっとやる気を……、この雇止めのところなのですけれども、これが一体何を考えているのか。国が養成した相談員に対して言っているのか、全般的に雇止めをやめろと言っているのか。この雇止めをやめろということが、自治体でこれがどのぐらい通用するのか。この辺で現実的に、もしかしたら逆にやる気を削いでしまうのではないかという心配する声がなくはない。この辺はどのようにお考えでしょうか。

そこは、実際に発します準則の本文の中には、雇止めとは何かということについても定義を書いておりまして、それをきちんと自治体に説明し、そして納得いただいて、雇止めをなくしていただくようにお願いしたいと思っています。

でも本当に……、本当に、でもなくせないところは、来年までしか使えないということですか。7年間だけれども、雇止めのところは2年だということは、来年度までしか使えないのですよね。21年度からですよね。
地方協力課長
個々の事業ごとですので、例えば21年度に新たに採用しました相談員さんについては、21、22、23、24、25までではありますけれども、それはその維持拡充という個々の事業ごとに対応しますので、全ての事業について、5年間ということで使えなくなってしまうというわけではございません。

ただ、大体が21年度から養成事業とか相談員のレベルアップ事業とか、体制整備事業はほとんど盛り込んでいますよね、やっているところは。
総務課
補足しますが、例えば相談員の人件費や養成事業についても、それぞれ全体を一つのまとめたパッケージにしているわけではなくて、21年度に増員した人については、その原則は27年度までだし、短縮措置では25年度ですね。22年度から増員したポストに関しては、原則28年度までになっておりまして、個々の事業はそういう単位で見ていくので、自治体として一律に、例えばあと1年間で事業全体がばさっと切られる、ということはないわけです。

この記者会見の内容で注目したいところは2つあります。

1つは、質問にもありました、「雇い止めをやめろということがどこまで通用するか、逆にやる気をそいでしまうのでは」というところですね。
雇い止めの問題は消費者行政部門の問題というよりも、その自治体の雇用制度のあり方の問題であると思います。したがって、消費者行政部門の一存で決められないことを2年間のペナルティという形にするのは消費者行政を後退させるおそれがあると思います。つまり、消費者行政部門が積極的に事業をやりたくても、自分たちで変えることのできないもっと上の自治体としての雇用の仕組みがじゃまをして予算を削られてしまう。その結果、意欲があっても事業ができなくなる。という図式でしょうね。雇い止めをなくすには自治体に判断を委ねるのではなく、もっと大きな仕組みが必要だと私は思います。

もう1つは、7年間(もしくは5年間)というくくりが、基金の始まった21年度から数えるのではなくて、それぞれの自治体がその事業を始めた年度から数えるということです。いまいち理解ができませんが、例えば、基金で増員したのなら、増員した相談員は増員した年度から数えて7年間財政措置がとられるということでしょうか。ということは、今からでも基金で増員すれば7年間雇えるということにつながるのかな?

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