カール・ロジャースの2:7:1の法則

比率にまつわる法則はいくつか知られていますが、それぞれにさまざまな解釈で説明されています。

もっともポピュラーなものは、「パレートの法則」でしょう。
統計の話でも「パレート図」がよく出てきますし、「TES」のテキストにもあり、試験に必須の統計知識です。

「パレートの法則」はイタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートが発見した法則です。
全体の数値の大部分は、全体を構成するうちの一部の要素が生み出しているという説で、「2:8の法則」や「ばらつきの法則」などと呼ばれることもあります。
経済以外にも自然現象や社会現象などの事例に使われています。
考え方としては、上位の2割が全体の8割を占めるという法則で、たとえば、「世界の富の8割は2割の人が占めている」、「売上の8割は、全従業員のうちの2割で生み出している」などです。

少し応用したものに、「働きアリ(ハチ)の法則」があります。
「2割の働きアリだけがせっせと働き、残りの8割の働きアリは働かない」というのもので、発展して、8割の働かないアリだけを集めてコロニーを作ると、その中で2割のアリが働くようになり、結局、常に2:8の割合になるというものです。
この、「働きアリの法則」では、「2:6:2の法則」という考え方もあります。コロニーには2割の働きアリと6割の平凡なアリと2割の怠け者のアリがいて、2割の怠け者のアリを排除しても、結局残りの中から2割の怠け者のアリがでてきて、この割合は常に変わらない、というものです。
これは会社の組織の構成と同じといわれています。

さて、私が最も興味を持っている法則がタイトルにもある「カール・ロジャースの2:7:1の法則」です。
「カール・ロジャースの2:7:1の法則」は人間関係の法則といわれています。
その考え方は、「10人いれば、2人は気の合う人、7人はどちらでもない人、1人は気が合わない人」というものです。
別の言い方をすると、「自分の考え方や行動について、2人は無条件で賛成してくれる肯定的な人、7人はその時その時で変わるどちらでもない人、そして最後の1人は何をしてもどんなことをしても自分の事を嫌ったり気が合わない人」となります。

この「カール・ロジャースの2:7:1の法則」はまさに相談現場で応用できるものといえると思います。
すなわち、相談者に説明したり説得したり助言したりする場合に、10人のうち2人は無条件に相談員の考えを受け入れてくれる相談者で、7人は相談員の説明によって受け入れてくれたり受け入れてくれなかったりする相談者で、残りの1人はどんなに説明しても賛同しない相談者です。

相談員としては7人の相談者に賛同してもらうために努力することが重要です。

しかし、決して賛同しない1人に関しては、どんなに努力しても賛同を得ることができません。
そこで、このような相談者に対しては、「どんなに説明しても受け入れられない人だ」と考えて、ほどほどの対応にしておくべきだと思います。これは、いい加減に扱うとか、手抜きをするとかではなく、すでにある程度努力はしているのだから、打ち切ると考えたほうがいいと思います。だらだらと引きずっても得られるものは何もありません。それどころか、精神的にマイナスの影響を受けてしまいます。
たった1人のために多くのエネルギーを注ぎ込むことは損失であり、そんなエネルギーがあるのなら別の相談者への対応にエネルギーを注ぐべきです。

しかし、現実には最後までがんばる相談員が少なくありません。
なぜなら、「正義感」や「プライド」が高い相談員は、この1人になんとしても納得してもらうと無意識に意地になっているのです。納得してもらえなければ、相談員として失格のレッテルを貼られてしまうと思ってしまうのです。
おそらくみなさんも何度か同じような経験はあると思います。そして、がんばったこともあると思います。しかし、結果はどうだったでしょうか?結局、相談者の態度は変わらないことがほとんどですよね。気持ちが滅入っただけだと思います。
このような相談は「斡旋不調」となりますが、それはそれでいいのです。
そう割り切れば、斡旋できなくても、気持ちは楽になると思います。

がんばる相談員は、いつのまにか、相談者を納得させることが目的ではなく、相談員のプライドにかけて、あらゆる知識を持ち出し、気が済むまで対応し、勝利することが目的になってしまっています。
このような場合は、コミュニケーションにならず一方的な演説になってしまいます。相手があって、会話のキャッチボールがあって、コミュニケーションは成立します。相手と同じように、一方的に説明するだけでは、もはや相談者と同じレベルになってしまいます。
このたった1人にとらわれすぎると、本来の相談対応の姿を見失ってしまいます。

斡旋不調になることは恥ずかしいことではないのです。逆に、反論されて言い合いになったり、業務に支障をきたしたり、所長を出せ上司を出せとなるほうが、よっぽど恥じるべき対応です。
この空気をすばやく判断し、気持ちをさっと切り替えることができる相談員は、スマートな相談員といえるのではないでしょうか。

私がこのような状況になった場合は、余計なことを言わず、黙って反応せず、サンドバック状態になり、捨て台詞をはいて帰ってくれればOKというように気持ちを切り替えて対応しています。また、変に宿題をもらうと終わりがなくなるので、明らかにおかしくても反論はしません。台風よ、早く去ってくれ、の気持ちです。

この法則を元にすると、私自身やこのサイト、記事について、2割の人は無条件に賛同してくれています。7割の人は中間的な立場の考えですので、好意的に受け取ってもらえるように私自身が努力していくことが必要です。しかし、残りの1割の人はどうやっても好意的には思っておらず反感を持っているといえます。私の存在自体が嫌悪感でいっぱいです。もしこの1割の人が私に反論してきたとしても、私はこの1割の人は必ず存在するとして気にせず、残りの9割の人に支持していただけるようにがんばろうと思っています。支持率100%というのは困難なものと考えます。

最後にもう一度繰り返しますが、1割の困難な相手のために多くのエネルギーを注ぎ込むことは、相談員自身にとっても、組織にとっても、損失になることを覚えておいてください。