事故調公表資料「家庭用ヒートポンプ給湯機」

消費者安全調査委員会、いわゆる事故調については、その業務の本質が見えてこないなど評価が分かれているところです。
私自身も公表されている資料を見てみると、現場とは遠い世界の案件が取り上げられてて、別の世界の存在かないう印象でした。
ところが、今回、注目すべき案件が取り上げられました。

いつもチェックしている消費者庁のトップページの新着情報です
10月18日
事故調「家庭用ヒートポンプ給湯機から生じる運転音・振動等により不眠等の健康上の症状が発生したとされる事案に係る事故等原因調査について」の経過報告を公表しました

消費者庁HP
ホーム > 審議会・懇談会等 > 消費者安全調査委員会 > 報告書・評価書
http://www.caa.go.jp/csic/action/index5.html

件名
家庭用ヒートポンプ給湯機から生じる運転音・振動等により不眠等の健康上の症状が発生したとされる事案に係る事故等原因調査について
経過報告書
平成25年10月18日本文 [PDF:207KB ]
http://www.caa.go.jp/csic/action/pdf/131018_honbun2.pdf

家庭用ヒートポンプ給湯機は、いわゆる「エコキュート」です。
エコキュートの運転音の相談を受けたことがある相談員もいると思います。
結構古くからの事案で、裁判もいくつか起こっています。
ネットを検索すれば多くの事例に遭遇すると思います。

ウィキペディアより

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B5%A6%E6%B9%AF%E5%99%A8
自然冷媒ヒートポンプ給湯器 エコキュート
自然冷媒(CO2)を用いた熱交換式の電気給湯機で「エコキュート」と呼ばれている。「エコキュート」の名称は電力会社・給湯器メーカーが自然冷媒ヒートポンプ給湯器を総称する愛称として使用している(登録商標の権利としては関西電力が保持・管理している)。よって、自然冷媒を用いないHFCヒートポンプ給湯器は「エコキュート」とは呼ばれない。2001年5月にコロナが発売を開始した。構造はエアコンと同じ原理で大気の熱を冷媒に移し、その熱で湯を沸かす。
燃焼式、電気温水器と異なり大気の熱を移動する仕組みのため、投入エネルギーよりも多くの熱エネルギーを利用することができる。

(参考)日本冷媒空調工業会HP
ホーム>関連製品>家庭用ヒートポンプ給湯機
http://www.jraia.or.jp/product/heatpump/index.html

報告書の「3.これまでの調査で把握した主な事実情報」からの抜粋です

調査委員会として、現時点までの調査では、ヒートポンプ給湯機と本件事案や他の申出事案における症状発生との関連性について、いまだ何らかの見解を示すには至っていない。
しかし、これまでの調査において、これらの事案には次のような特性があることが明らかになっている。
(1)申出者等が訴えている症状は日常生活にも著しい影響を及ぼすレベルである
本件申出者及び他の類似事案の申出者等からの口述及び診断書によると、共通する症状は不眠であり、その他にめまいや頭痛、吐き気などを生じることがある。さらに、症状が発生してから現在に至るまで継続している場合があり、訴えている症状は日常生活にも著しい影響を及ぼすレベルである。
(2)同様の環境下においても、症状を訴える者がいる場合といない場合がある。
本件申出者及び他の類似事案の申出者等からの口述聴取において、症状を訴える者は、自宅周辺にヒートポンプ給湯機が設置された、又はヒートポンプ給湯機が設置された場所の周辺に引っ越したことを契機に症状が出現したと述べている。
しかし、症状を訴える者と同居する者がいる場合、必ずしも全ての同居者が症状を訴えているわけではない。
つまり、周辺にヒートポンプ給湯機が設置された自宅に住んでいるという同様の環境下においても、症状を訴える者がいる場合といない場合がある。

今後調査が進められるわけですが、相談現場では、「難対応事例」になると思います。
相談者が難しい消費者という意味ではなく、相談案件が難しいという意味です。

センターがあっせん対応するにあたって、目安にするものが「スタンダード」です。この場合のひとつが、騒音の環境基準にあたると思いますが、それを超過するレベルではないので、それをもって材料にすることは難しいです。
低周波等についても、携帯電話や携帯電話の電波基地と同様に明らかにアウトであるというオーソライズされた(公に認められた)結論も出ていません(研究レベルでは様々な説が出ています)。
報告書にもあるとおり、症状が出ている人は深刻であるが、同居している人が全員発症しているわけではない、ということです。
この部分が一番のポイントで、アレルギーでいえば個人の感作性の問題となります。

一般的に因果関係と問題の有無を判断する考え方として
「①症状が出ている → ②因果関係がある(今回は因果関係の公式な見解は出ていませんが普通に考えてあるといってもいいのではないでしょうか) → ③すべての人に被害が出るというわけではなく個人によって異なる」
この③の部分が問題になります。

たとえば、食中毒にしても同じ汚染されたものを食べても全員に症状が出るわけではありませんが、その食品は食品衛生法違反となり、その食品は問題があると断定されます。また、アレルギー物質が含まれて皮膚炎等の症状が出る人と出ない人があるが、一般的にアレルギーを引き起こす物質が含まれており発症者の数が多いとなれば問題のある製品としてリコールされます。
一方、小麦アレルギーや牛乳アレルギーは、食品自体には問題はなくても、その人の体質でアレルギーを引き起こすとして、個人の防衛という範囲におさまります。
さらに、製品の誤使用についても、多くの人がしてしまう誤使用は欠陥であるといわれていますが、その可能性が認められる度合いが高ければ(NITEではよく「蓋然性があるかどうか」とよくいいます)問題がある製品となります。

つまり、③の部分がどう評価されるかによって、「対象が全員で問題あり」「対象が例外的な人で一般には問題ない」の選択肢になります。
今回のような案件が無視できないほどたくさんあると、対応せざるを得ないと思いますが、今のところ、後者のような感じです。これが前者として認められるかどうかは今後調査が進められると思いますが、いろんな要素を考えると難しいのではないかと思います。

相談対応するにあたって、相談者にとっては確かに例外的な人に該当しているのがわかる場合でも、それをセンターであっせんするのは難しく、結局は、例外案件は個別対応ということで法律相談や医療機関などに相談してもらうという道しか残されなくなるのです。
センターでできることは、身体的被害が出た消費者事故として国などに報告して事例を積み上げるという選択肢になりますが、相談者の気持ちは痛いほどわかるだけに、地団駄を踏みたくなるような、センターでは対応できない「難対応事例」になってしまいます。

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