消費者情報 2010年10月号 (関西消費者協会)

今月号で取り上げるのは1つだけですが、法律の勉強をしましょう。

判例に学ぶ
耐震偽装マンションの購入について「錯誤無効」を認めた札幌地裁判決

・耐震偽装マンションの購入者らが売主に対して新規分譲契約の無効・取り消しを求めた事案。
・買主→法定の耐震強度を満たしていないのに満たしているとの前提で購入した意思表示には、民法95条の「要素の錯誤」があるとして、契約の錯誤無効等を主張。
・売主→耐震基準を満たすよう補修する瑕疵担保責任を負うだけである。
・判決→耐震性能等の基本的性能が具備された建物であることが当然の大前提で、耐震偽装の建物の引渡しは、その誤解に基づき売買を合意したことになり、売買目的物の性状に関する錯誤(いわゆる動機の錯)があるとした。阪神大震災を例に、耐震強度に関する錯誤が重大なものと認め、法95条の錯誤無効を肯定し、売買代金の返還を認めた
動機の表示がないという売主の主張に対して、耐震偽装の具備は予想外の錯誤の主張によって売主が困惑するという事態は発生しないもので、「当該性状があるから買い受けるという動機が表示されたがその性状がなかった場合と同一視すべきだ。
・まとめ→民法の錯誤無効となったが、これは実務上容易ではない。事業者の不実告知・不告知・情報提供義務違反により動機の錯誤が起これば取り消しできるように民法の錯誤の要件を緩和し、消費者契約法での取消権が拡充される必要がある。

法律用語がたくさん出てきて読み解くのには集中力が必要ですが、詳しくは本文をじっくり読んで、民法の解説もじっくり読みながら勉強してみてはどうでしょうか。
最高裁HP(http://www.courts.go.jp/)に判例掲載されています
平成18(ワ)2803 損害賠償請求事件 平成22年04月22日 札幌地方裁判所
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=80557&hanreiKbn=03

教科書どおりでは、建築物に瑕疵があった場合は建て替え等を要求するのではなく修理で対応するということが書かれてあったように思います。また、「要素の錯誤」は取り消しできるけど「動機の錯誤は」取り消しできない、という解釈もあります。
耐震偽装となると、契約取り消し無効まで判断することができるんですね。
ハードルは高いですが、対象によってはいろんな解釈ができるということですね。

リンクはこちらです
関西消費者協会 http://kanshokyo.jp/hp/
消費者情報 2010年10月号

月刊 消費者 (2010年10月号)

月刊消費者という雑誌は、一般消費者向けで、相談員向けにはやさしすぎますね。
相談員として学ぶものは少ないと思います。
また、一般向けにしてもボリューム的にも内容的にも、もう少し工夫が必要だと思います。

今月取り上げる記事は特にありませんが1つだけ思うことを書きます。

農林水産省 げんき列伝
こだわりレタスをスーパーに直販
・八ヶ岳高原でこだわりの高品質レタスをつくって、首都圏と直接取引き営業し、売り上げを伸ばしている。
・今の社会は、価格重視か品質重視か分かれると思います。品質よりも価格重視にすることは簡単でしょうが、品質重視にするのが難しいですね。品質がよければ必然的に価格は高くなり、消費者に受け入れられなくなってしまうジレンマ。
・しかし、売り方しだいでは立派に業として成り立つ時代になってきています。ネット社会の今は口コミなど手法は豊富であり、それを使いこなさなければならないです。時代に合わせた方法をとることが必要です。農業や漁業も収入的にも職業として魅力のあるものを作り出していく必要があると思います。
・そのような実践例は、ネット上やテレビ番組「ガイアの夜明け」など直接見て知る機会が多くなっています。
・選択するのは消費者です。将来を見据えた正しい選択をしてほしいです。

日本消費者協会 http://www.jca-web.org/
月刊 消費者

月刊 国民生活 2010年10月号

①チェックチェック!苦情相談
詐欺的出会い系サイトの高額ポイント料金支払いで多重債務に
・無料の占いサイトを利用したら、同時に出会い系サイトにに登録されたというよくあるパターン。
・多くのメールが来るようになり、最初は普通の会話を続けながら9ヶ月間400万のポイントを利用した。
・典型的なパターンです。なぜ、長期間気付かずに続けたのかと思うかもしれませんが人間心理の世界です。この心理を理解してこそ、レベルの高い相談対応ができます。当然ながら、過去を責めてはいけないのはお分かりでしょう。
・私にも送られてくるメールの実物を公開していますので参考にしてください。
【別館】ネット関連情報

②暮らし注意報
映像配信サービスのトラブル急増
映像配信サービスは、映画やテレビ番組を見たいときに格安でいつでもみれるというもので、主に光回線を持っているケーブルテレビやプロバイダーなどで提供されています。
レンタルビデオにいかなくても見れるという大きな特徴で便利なサービスです。
しかし、こんな素敵なサービスでも勧誘方法に問題があることが多いので残念です。
本当に必要な人はあまりいないと思いますが、最初の1ヶ月は無料です、などの勧誘で解約トラブルが多いのです。
ビデオオンデマンド(映像配信サービス)について、しっかり知っておいてください。
機会があれば解説します。

③暮らしの判例
保険の乗り換えと説明義務違反
・高齢者が保険代理店担当者の勧誘により簡易保険を解約して終身保険等に転換されたことについての判決です。
・保険勧誘の違法性・・・適合性原則違反、説明義務違反、特別利益の提供等の禁止違反
・無効取り消し事の有無・・・公序良俗違反、錯誤、消費者契約法違反(重要事項の不実告知、不利益事実の不告知)
・どんな法のどこに違反するかなどを論理的に説明しているので勉強になります。

④消費者訴訟を学ぼう 消費者訴訟の現場から
欠陥住宅に住むことは利益?
・欠陥住宅の建替えにあたり、今まで住んでいたことに対する利益を損益相殺できないという最高裁判決です。
・関西消費者協会の消費者情報9月号にも同様の記事が掲載されていました。
・重要な判決なのでしっかりチェックしておいてください。

⑤法令から読む食品表示のウラオモテ
変わる食品行政
14回のシリーズの最終回ですが、消費者庁について書かれている部分を一部紹介します。
・消費者庁には、農林水産省や厚生労働省のようの「業界」を気にする必要がないのですから、純粋に消費者目線からの企画が期待できます。
・消費者庁は・・・・ほかの大臣に「口出し」もできるようになりました。
・悲しいかな世の中は不況の真っ只中・・・・新たに公務員を増やすわけにもいかず、ほかの省庁からの定員を振り分けてもらい・わずか200名余りの小さな所帯で発足することになりました。
(コメント)縦割り行政を打破できる仕組みはすばらしいですが、マンパワーの不足など、まだまだですが、今後期待したいです。

⑥相談員のひとりごと 相談に学びながら
聴くことのことを重ねて
・重要なフレーズがあります。
抜粋
『普段は早口なのに相談対応になると「ゆっくり話すのですね」と相談員仲間に言われ、初めて気が付いた。』
・話し方は重要です。このように、臨機応変に切り替えることができる能力を身につけてください。
・普段早口で、相談も「早口」かつ「専門用語を使う」かつ「相手の話を聴かず話し続ける」という最悪の話し方にならないように肝に銘じてください。しかし、このような状態に陥っても自覚症状がありません。周りもあまり指摘しません。赤信号に気が付いてください。
・話し方のスキルについても別途解説したいと思います。

国民生活センター http://www.kokusen.go.jp/ncac_index.html
月間 国民生活