消費者情報 2011年6月号 (関西消費者協会)

①特集 東日本大震災と消費者問題
阪神大震災と同様、相談内容は多岐に渡り、現場は大変だと思います。
現時点での、震災関連の消費者問題がまとめられています。

②判例に学ぶ
説明義務違反に基づく損害賠償請求権と消滅時効
信用組合「関西興銀」出資被害最高裁判決
・経営破綻により出資者が出資金の払い戻しを受けれなくなった被害で、実質的に債務超過に陥り経営破たん状態となった後に、その説明を受けずに出資している。
・損害賠償を請求するにあたり、説明義務違反が不法行為であれば消滅時効期間は10年債務不履行であれば3年となっている。
・平成20年判決では、「契約を締結するか否か」に関する説明義務違反は、債務不履行責任ではなく不法行為責任であるとした。
・平成21年判決では、同種の集団訴訟が提起された時点から進行していたとして不法行為に基づく損害賠償請求権は既に時効により消滅しているとした。
・説明義務違反により被害を受けたことに変わりがないのに、法的性質により消滅時効かどうか大きく変わってしまうことは被害者にとっては納得しがたいであろう。学説においても議論のあるところである、と解説されています。

③ADR機関を活用しよう
「保守・点検作業の過失による漏水事故、さて補償はどうなる」
・事業者同士のトラブル事案
・下水道の保守・点検作業中に、過失により漏水を発生させてしまい、1ヶ月間パンの製造小売り業を休業せざるを得なくなり、休業補償と慰謝料として約700万円の支払いを求めて和解あっせんの申し立てをしたもの。
・支払いの内訳が、(1)廃棄した材料代、(2)約1ヶ月の休業補償、(3)休業により離れた客が戻ってくるまでの4ヶ月間の宣伝効果による売上2割増の差額の賠償
・(1)は(2)に含まれる、(3)は推測の域を出ないことから立証困難である、ということで、(2)の200万円を和解案として提示し、双方納得した。
・申立人の心情は分かるものの、実際の損害を算定するとなると、客観的な資料がなく、和解不成立の場合に、訴訟で認められるかという観点で説明し、申立人の納得を得た。
→消費者センターでは、損害に関して、最高でも商品代金や拡大損害実費・治療費実費が原則ですので、慰謝料など、それ以上をのぞむ場合は法律相談などにいってもらうことが多いです。さらに、将来得たはずの利益を請求できるかというと、一般的には難しいと思います。今回の事例が参考になりますね。消費者センターで相談者が、この種の賠償を希望した場合は、気持ちを受け止めてあげて、現実的な考え方を示して、どれを希望するかは相談者に判断してもらうことになるでしょう。

リンクはこちらです
関西消費者協会 http://kanshokyo.jp/hp/
消費者情報 2011年6月号

日本人の気質

今回の大震災の日本人の整然とした被災者の対応について海外から高く評価を受けています。
外国人にはまねできないといわれています。
文化の違いが根底にあるということもいわれています。
そうだからこそ、日本は外国人をなかなか受け入れることができないのかもしれませんね。
その一つのキーワードが「我慢」です。
非常事態にはみんな我慢して協力し合うという精神です。

この「我慢」というキーワードについて、消費者センター的に考えたいと思います。

消費者センターに相談に来た消費者が興奮して大きな声を出し被害を矢継ぎ早に訴えることがあります。
まるで、消費者センターに苦情をいっているようにも感じるときがあります。
また、メーカーへの苦情の申し出も、怒り心頭で電話をかけています。
街中でも、いきなり大声を叫んでいる場面に出くわすこともあります。

これらは、日本人の「我慢強さ」からきているのではないかと思っています。

日本人は何か嫌なことがあっても我慢します。
我慢して我慢して、我慢の限界を超えてしまったら、いきなり怒りの頂点に達します。
しかし、言われた側にとっては、いきなり怒りモードでこられても、何でこんなに起こっているのか、クレーマーだ、と引いてしまいます。

日本人のリスクコミュニケーションと同じですね。
(参考:リスクコミュニケーション https://soudanskill.com/20110405/193.html)

つまり、「怒る」か「怒らない」かの2者択一なんです。
「少しだけ怒る」「ほどほどに怒る」「結構怒る」という中間点がないのです。
「100%怒る」か「0%全く怒らない」かとなり、我慢している間は「0%全く怒らない」にはいってしまうのです。

電車の中でもよくありますよ。
ヘッドホンから音が漏れているときに、「音が漏れているので、少しボリュームを下げてください」といえば、相手も「すいません」で終わると思うのですが、残念ながら、日本人は注意せずに我慢します。
我慢して、我慢して、我慢の限界を超えてしまって、発する第一声が、「うるさい!迷惑だ!」。
言われたほうも、いきなりで戸惑ったり、逆切れしたり、周りの人も引いてしまったり、というシーンがうまれます。

消費者センターにきた相談者も、我慢に我慢を重ねて、限界を超えて、苦情を申し出ています。
100%の状態で、訴えます。特別なこととして考えるのではなく、普通のことだと考えてください。
相談者の心理状態をよく理解してあげて対応します。
まず、怒りを吐き出させてあげる。そして、その中から、相談者の相談したい内容を理解してあげる。それを受け止めてあげる。
そこからスタートします。
相談内容は、実は、「なんでもないこと」が多かったりします。
お互いが、ほどほどの状態であれば十分トラブルにはならない事例が多いです。
したがって、お互いの感情を相談員がすりあわせれば簡単に解決する場合もあります。
なかには話を聴いてもらったというだけで、気持ちがスッキリして、解決する場合も少なくありません。
バランス理論を思い出してください。

逆に、怒りを吐き出しているときに、それを止めたり、言い返したりすると、相談員への怒りに変わってくることもあります。
気持ちのすれ違いから100%状態になっているだけなんです。
相談員も最初は嫌でしょうが、話を聴いているうちに落ち着いてきます。
日本人のこうした感情を理解しておくことを心がけてください。

(平成23年5月30日 初稿)
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月刊 国民生活 2011年6月号

①特集 成年後見制度の今後
・成年後見制度は単純そうで難しいですね。世の中に十分浸透していないからでしょうか。
・相談現場では成年後見制度の前の段階を扱います。すなわち、判断不十分者に関する消費者トラブルです。特集3ではPIO-NETからの相談受付状況について解説されています。
・介護保険制度の要支援認定、療育手帳の有無、精神疾患、認知症の状況など、契約を取り消すために、材料を探します。
・最近多いのは、知恵遅れ的な若者が、携帯電話の出会い系サイトでだまされたり、少し前にはチャットレディーと映像で会話して費用が発生したりということがありますね。
・いずれにしても、事業者が受け入れるような気持ちがあるのかどうかというところにかかります。

②チェックチェック 苦情相談
「身に覚えのないカードローン」
・カードローンの返済が滞っているという連絡があったことから、勝手に複数の貸し金業者から300万円の借り入れがあることがわかったという事例です。
・調べてみると、自動契約機で免許証の本人確認ののち契約していることがわかった。
・警察が調査して、知人が成りすまして契約していることがわかり、知人が債務を支払うこととなり、本人の事故情報が訂正された。
・実際にこういうことがあると怖いですね。本人確認は何だということです。防犯ビデオの映像も筆跡も異なることがわかり解決したんですが、財布を落とせないですね。また、落としていなくても、知人であれば数時間でも抜き取られて返却されていたらわからないですし、会員証の作成で本人確認として免許証を提示するのも怖くなってしまいます。事実、私の友人も知らないうちに消費者金融のカードを作られて、何年も借り入れ返済が滞りなく行われ気づかなかったということもあったそうです。
・契約していないものは契約していない。必ず証明されますので追認しないようにしましょう。

③暮らしの判例
「原野商法の二次被害と契約の効果」
・原野商法被害者の相続人を狙い、測量契約とを結ばせた事案です。
・測量契約は、特商法の電話勧誘販売に該当し、契約書面に記載の不備があったためクーリングオフを認めた。
・広告掲載契約は、消契法による重要事項の不実告知による取り消しと動機の錯誤により錯誤向こうを認めた。
・支払済み代金の返還を命じた。77万7000円と42万円。
→いつもながら、判例解説の理論構成には勉強させられます
・契約当時は測量契約は指定役務だったが、広告掲載契約は指定役務ではなかったため、特商法の適用外とした。
・契約書のクーリングオフの記載が不足、7ポイントで8ポイントには不足。
・単に売却可能性がなければ多額の支払いをするはずはなく、売却可能性があるという趣旨によりうものがあり、消契法4条の重要事項にあたり、契約取り消しを認めた。
・土地の売却可能性があると告げられたことを信じ動機として測量契約と広告掲載契約をしたので錯誤無効である。

国民生活センター http://www.kokusen.go.jp/ncac_index.html
月間 国民生活