犯人探し

原発関連の事故では、誰が悪いのか、なぜあんな対応をしたのか、など犯人探しのようなことが連日報道されています。
確かに過去の失敗を振り返り、教訓にして今後に生かすことはとても大切だと思います。
しかし、最近は度が過ぎているような気もします。
あのとき、あの状況では、誰もが最善だと考えた対応をとっているはずであり、それがいつも正解とは限らないこともありえます。
当然ながら、様々なレベルでのミスはあったと思います。
擁護するわけではありませんし、被災者にとっては許しがたいことだということも理解しています。

失敗したときに最も優先すべきことは、過去を振り返ることよりも、今の状況をできるだけ早く正常に戻すことです。
関係者には、失敗を責めるよりも、今、そしてこれからの対応に全力で取り組んで欲しいと思います。

このことは、相談現場そのものです。

例えば、詐欺まがいの商法の被害にあった相談者に対して、「誰もが詐欺と分かる話に、なぜのってしまったのか」などと発言してしまうことがあります。
これは、相談者の行動を非難しているわけであり、心理的に大きくマイナス方向に働いてしまい、「被害にあって相談に来たのに、被害にあったことを怒られてしまった」と感じてしまいます。
これでは、相談者ががんばって被害の回復を図ろうとするモチベーションが低下してしまい、今後のあっせんに支障が出ることもあります。
慎重に言葉を選ぶ必要があります。

大切なことは、「済んでしまったことを批判するのではなく、今、困っている状況を全力で助けてあげるために前へ進むこと」です。
すべてが解決したならば、次からは気をつけましょうとなりますし、本人自身も十分学んでいるのではないでしょうか。

この考え方の基本は、「コーチング」にあります。
特に、スポーツの現場で指導者に求められるスキルとして頻繁に紹介されています。
「コーチング」については、別の機会に書きたいと思いますが、キーワードは、「過去は変えられない」ということです。
ぜひ、相談現場で意識してください。

食中毒

生食用でないユッケを原因とした腸管出血性大腸菌食中毒で死者がでるという悲しい事件がありました。
この問題はいまさらな問題です。
学校給食を原因とした大規模なO-157食中毒事件は記憶にあると思います(原因は肉ではなくカイワレとされていましたが)。
腸管出血性大腸菌は基本的には牛肉の生食を原因とします。
すなわち牛肉の「生レバー」「ユッケ」などの生食です
食感がやわらかいので食べやすく、保護者が乳幼児に食べさせて、小さな子どもが感染してしまい、保育所や幼稚園で2次感染して集団発生となる事件が続発していました。
ちょうどそのころ、伝染病予防法が100年ぶりに改正され、感染症の法律ができたころで、腸管出血性大腸菌は3類感染症として特別に指定されました。
腸管出血性大腸菌はO-157が代表的ですが、今回の事件のようにO-111などが原因となることもあります。

予防法は簡単で当時からいわれていましたが、肉の生食をしないこと、生肉の取り箸は専用にすることなどです。
消費者啓発もかなり実施されていましたが、そんなのお構いなしに消費者は生肉を求め、飲食店は生肉を提供するのです。
そして、生食用食肉の衛生基準が平成10年に定められたのですが、今現在でも牛肉の生食が可能な食肉を提供できると畜場は21年度実績で1施設のみです(他の施設はすべて馬肉用)。したがって、生食可能な食肉はほとんど出回っていません。それでも皆さんも飲食店のメニューをみたら、「牛生レバー」や「牛のユッケ」が堂々とメニューに掲載されているのに気づくと思います。もしかすると、これを読んでいる相談員も食べてるかもしれませんね。
ちなみに生肉にO-157が付着していたとしても、加熱すれば死滅するので、販売提供があっても基本的には問題はありません。

このような問題は、大きなきっかけでもない限り、なくなることはないと思います。
(原子力などの電力問題が今回の大震災で考えるきっかけになったように)

そして、この件に関しては、今が「大きなきっかけ」ではないかと思っています。
なぜなら、この事件は消費者安全法に基づく重大事故に該当するからです。
しかも、1件だけではない可能性も高くなっています。
そうなると、国レベルでも単なる食中毒の死亡事件とした処理ではなく、原因の徹底的な追究と再発防止に消費者庁をあげて対応する可能性があるからです。
今後の動きに注目したいです。

生食用食肉に関するHPを探したのですが、島根県のHPが21年度実績も掲載されていて分かりやすいです。
島根県の食品衛生>生食用食肉の衛生基準
http://www.pref.shimane.lg.jp/life/syoku/anzen/eisei/kisotisiki/seishoku_niku.html

ドロップシッピングのサービス提供会社に対する行政処分

最近、いわゆるドロップシッピングのサービス提供会社に対する行政処分が立て続けに公表されました。
詳細は消費者庁のHP(http://www.caa.go.jp/index.html)の報道発表資料に掲載されています。
株式会社IB 平成22年7月9日付 http://www.caa.go.jp/trade/pdf/100709kouhyou.pdf
株式会社ウインド 平成22年4月9日付 http://www.caa.go.jp/trade/pdf/100409kouhyou.pdf
公表資料を一部抜粋します
「いわゆるドロップシッピングのサービスを提供する契約の締結について、相手方に受注メールの確認と入金の確認等簡単な仕事をするだけで確実に高収入が得られるかのように勧誘していました。
認定した違反行為は、不実告知、誇大広告、広告における表示義務違反及び交付書
面の不備記載です。」

昨年来、ドロップシッピングに関する苦情相談が消費者センターで急増しています。
私は、「アフィリエイト」という言葉はある程度認知されると思っていましたが、「ドロップシッピング」がこういう形で世間の目に出てくるとは思いませんでした。
しかしながら、このような被害が出てくるのは十分想定されるもので、定番の悪質商法モデルともいえます。

原点となっているのは10年ほど前でしょうか、
小さな商店などに「ムページを作ってお店を宣伝しませんか?」
という勧誘で、HP制作費・管理費・サーバー管理費用などを高額請求されるもので、初期費用のほかに毎月定額的な費用が発生する、
という商法です。

相談員として知っておくべきことは
①ドロップシッピングとは何か(アフィリエイトとの違い)
②ドロップシッピング自体は全然問題のないビジネスモデルである
③ドロップシッピングの業務提供誘引販売とは何か
④昔からの悪質商法モデルと同じである(商材がドロップシッピングになっただけ)

これらの①~④の知識が相互に理解できれば、相談対応のポイントはシンプルになります。

今後、ドロップシッピングについては、スキルアップ講座で詳しく解説したいと思います。

(平成22年7月16日 初稿)