相談員資格の検討会 中間報告 解説 その1

相談員資格の検討会についての記事がだらだらと続いて申し訳ありませんが、相談員にとって重要な報告書ですのでしつこく取り上げています。
あくまでも中間報告の段階ですので、みなさんが意見をたくさん出して実現性のある最終報告書になってほしいと思います。

中間報告のまとめ的な意味を含めて、中間報告の要旨を順番に抜粋していきたいと思います。
それと、そこに至るまでにどんな議論があったのかや私自身の考えをはさんでいきたいと思います。

消費者庁HP

ホーム > 地方協力課 > 消費生活相談員資格の法的位置付けの明確化等に関する検討会
http://www.caa.go.jp/region/index8.html
消費生活相談員資格の法的位置付けの明確化等に関する検討会 中間報告[PDF:643KB](平成24年8月)
http://www.caa.go.jp/region/pdf/120827_houkoku.pdf


「はじめに ~消費生活相談の歴史的沿革~」
冒頭に消費者相談の歴史について書かれています。この部分は消費者相談というのが民間団体から発展を遂げてきたということを示したいというNACSや全相協の主張で最後の方の検討会で追加されました。
読んでいただいたらわかるように、いかに民間団体がかかわってきたかということが散りばめられていると思います。
この冒頭部分でNACSや全相協がどんな考えをしているのかはみなさんで想像されたらいいのかなと思います。


1.消費生活相談における資格の必要性
(1) 消費生活相談及び相談員資格を巡る現状
・ここ数年での相談件数や相談内容の推移を説明しています。
※最近やたらと、「スマートフォンやその関連サービス」についての相談が増えていると強調されています。
スマートフォンの研修も見かけられますが、もう少し現場で直接活用できる内容がほしいところです。
このサイトでもスマートフォンについては順次取り上げていますが、今後はもっと本格的に取り上げようと思っています。
・自治体での相談員の数が示されています。(平成24年4月1日現在)
3355人、資格を1つ以上保有している割合が77.9%の2614人
・3資格の概要と試験内容一覧
・有資格者の地域別割合に偏りが見られることが示されています。
本当は都道府県や市町村単位の割合もあると思いますが公表できないのかもしれませんね(調べたらすぐに分かると思いますが)。
(2)消費生活相談の意義
消費生活相談とは何かということが法律的な根拠を含めて書かれています。
抜粋してコメントしたいと思います。

7ページ

① 消費者からの相談に対し、適切な助言を行うとともに、消費者問題・消費生活についての必要な情報の提供や関係機関の紹介を行い、
② また、商品及び役務に関して事業者と消費者との間に生じた苦情・紛争について、消費者の利益の擁護及び増進の観点から、情報の質・量、交渉力等の格差を勘案して、専門的知見に基づき、あっせんによりその解決を図るとともに、
③ さらに、相談の中で得られた情報を関係行政機関等に対し提供すること等により、消費者被害の未然防止・拡大防止を図る

簡単に言い換えると、「①は助言と情報提供、②は事業者と消費者とのあっせん、③は消費者啓発」であり、基本的なことです。ただし、②は基本的には行政が担う業務であるということがポイントだと思います。もちろん、行政以外の団体やPLセンターなどでも実施していますが、やはり行政が間に入ってあっせんするという意義は大きいと思います。後述しますが、相談員資格を行政の資格ではなく民間を含めた資格にしたいという消費者庁の意向と矛盾するものを感じます。
(3)消費生活相談における資格の必要性
ここの部分が相談員資格の検討が必要であるという主張の要の部分だと思います。
この部分はしっかり熟読してください。以前から書いているとおり私はこの理論構成に無理があると考えています。

9ページ(下線は原文どおり)

消費生活相談員は、消費生活相談において中心的役割を果たすものであり、消費者と事業者の情報力・交渉力等の格差を埋めるという重要な役割を担っている。消費生活相談が消費生活の多様化等に伴い近年ますます広範化・複雑化・高度化している中で、消費生活相談を十分に機能させ、消費者の権利の擁護を図るためには、消費生活相談員について一定の水準を全国的に確保することが不可欠である。そして、消費生活相談員について一定の水準を全国的に確保するためには、消費生活相談員に関する資格制度をより充実したものにすることが必要である。

・消費者と事業者の情報力・交渉力等の格差を埋めるという重要な役割
・消費生活相談を十分に機能させ、消費者の権利の擁護を図るためには、消費生活相談員について一定の水準を全国的に確保することが不可欠
→この2つについては異論のないものです
・消費生活相談員について一定の水準を全国的に確保するためには
→これも重要なことであり、こからが一番大事な結論部分です
・消費生活相談員に関する資格制度をより充実したものにすることが必要
ここの部分の解釈がバラバラで論点が明確になっていない原因だと思います。
「資格制度を充実する」ということが何を意味するのか
→国は「法律に位置付けられた新しい資格制度・試験制度を創設する」そして、「その新しい制度の中で相談員に必要な知識や技能を担保する」としています。さらに、「資格制度の中に更新・研修制度をとりいれ継続的な質の維持を図る」としています。この部分については、報告書の中に順番に説明されています。

理論構成としては
資格制度を充実相談員の資質向上
すなわち、「資格制度を充実」させれば「相談員の資質向上」の目的を達することができるという矢印になります。
資格制度の要件を厳しくするなど実現性は別として、目的を達成することはできると思います。
ただし、「新しい資格試験の創設」「現職相談員への資格の取り直しや再試験」「無資格相談員への配慮」「民間資格とのすみわけ」「研修制度・更新制度の内容」など実現性や実効性に疑問のある課題が山積みで、検討会でもまとまっていませんし、まとまるようにも思えません。最後までこれにこだわると結論が出ない、もしくは無茶苦茶な制度になってしまうことにもなりかねません。
資格制度を充実相談員の資質向上
逆の矢印です。「相談員の資質向上」の目的を達成するには「資格制度を充実させる」ことが必要である
反対の矢印になると、「相談員の資質向上」の目的を達成するには「資格制度を充実させる」ことしか道がないという理論にはならないと思います。すると、もっと他に方法があるのではないかと。したがって、無理に今の制度を変えなくても、今の制度の中で方法を探せばいいという考え方もできます。私は、こちらの方が現実的であると思っており、その具体的な方法が「相談員研修」の充実だと考えています。
「仏つくって魂入れず」ではなく、しっかり「魂を入れる」ことこそポイントだと思います。

(つづく)

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相談員資格の検討会 中間報告 公表

第10回の検討会で中間報告(案)の最終検討が行われて、このたび中間報告が公表されました。

消費者庁HP
ホーム > 地方協力課 > 消費生活相談員資格の法的位置付けの明確化等に関する検討会
http://www.caa.go.jp/region/index8.html
消費生活相談員資格の法的位置付けの明確化等に関する検討会 中間報告[PDF:643KB](平成24年8月)
http://www.caa.go.jp/region/pdf/120827_houkoku.pdf

消費者庁や消費者委員会からネットで公表されている資料や報告書等が随時冊子で印刷されて送られていると思いますので、この中間報告の冊子も各地のセンターに送付されていると思います。
これらの冊子はなかなか読む気にならず、現場への影響も余りありませんが、今回の中間報告だけは、相談員全員の将来、しかもかなり近い将来に大きな影響を与えるものです。
なぜなら、全員がもう一度試験を受けなければならなくなる可能性もあるからです。
また、コミュニケーション能力等の技能的なものについても、何らかの査定を受ける可能性もあります。
だからこそ、この中間報告は、しっかり読んでおいてください。

これまでの議論では、国の思い、全相協の思い、NACSの思い、地方の思いが交錯し、ずばりという結論は見つかっておりませんが、とりあえず、中間報告がまとまりましたので、それがベースになっていくのではないかと思います。
その中でも、中心となるのが国の考えだと思います。
国は相談員資格を行政の相談員に限らず民間をも含めた相談員資格にしたいとの考えがあります。
そうすると、相談員資格そのものの意味合いが変わってきます。
行政の相談員とメーカーの客相の相談員は似て非なるものです。
それを同じラインに立たせるとなると無理が生じます。
今まで主張してきたとおり、私は消費生活相談員資格は行政の相談員に限定した資格にすべきだと思います(さらに、現に行政で相談業務に従事している相談員を「消費生活相談員」職として法律で位置付ける)。
一方、コミュニケーション等の技能は実践のなかで学んでいくものであり資格付与の要件にするのは現実的ではありません。
結局は、新たな試験制度を創設せず、現行制度を基本として、コミュニケーション等の技能を向上させるための研修制度を充実することこそが相談員の資質向上の要ではないかと思います。

しかし、中間報告では私とは方向性が異なっています。
何が適しているかを決めるのは全国の相談員の意見です。
相談員の意見も検討会で出てきてはいますが、比較的レベルの高い相談員の意見ではないかと思います。
レベルの高い相談員の意見に合わせると、研修の機会の少ない地方で何とかやっている相談員にとっては、厳しい資格制度になるかもしれません。
自分自身の能力がまだまだだと思っている相談員のほうが多いのではないかと思っています。
そういう相談員こそが声を上げなければ、とばっちりをくらいます。
そして、何も意見を出さなければ、中間報告の考えのもとに進むことが考えられます。

今後、現場の相談員の意見を集約する機会があるかもしれませんし、それがなくても全相協やNACSや直接消費者庁などに意見を述べてもかまわないと思います。
今回だけは、傍観者でいるのではなく、積極的に参画しましょう。

中間報告が出たので、しばらくは動きがないと思います。
おそらく、中間報告に対する意見を出す機会があると思いますので、私ももう一度、最終的な中間報告を見直して考えをまとめたいと思います。
また、中間報告の中で相談員が必要とする能力についてもまとめられているので、それらの能力を紹介していきたいと思います。

消費者情報 2012年9月号 (関西消費者協会)

今月号から気になる記事を紹介します。

①特集「住宅をめぐるチェックポイント」
・マイホーム選びと購入時のチェックポイント窶・I
→中古住宅の「瑕疵担保責任」は、売主が個人の場合は全部免責特約をつけることも可能だが、部位を限定して3ヶ月間だけ責任を負う特約をつけることが多い。売主が宅建業者(不動産業者)の場合は部位を限定したり、責任期間を2年未満とする特約をつけることはできない。2年としているのが通常。
※細かく見ると知らないことばかりでしたので勉強になりました。自分の家を売ったときに不動産業者にいわれて3ヶ月の部位の特約をつけ、3ヶ月経過するまでどきどきしていましたし、家族が家を売ったときに浴室の配管を特約で直すことになってしまったり、実際に経験していました。
・賃貸住宅の契約から退去時までのチェックポイント!
→契約時、入居時、退去時のチェックポイントが、まさに相談事例で出てきそうなことに関して法律やガイドラインで詳しく解説されています。これは手元においておくと相談業務の役に立ちそうです。
・知っておきたい住宅の関連法規
※住宅の関連法規がまとめられているので、いざというとき、どんな法律を参考にすればいいのかが分かりやすいです。
・相談スキルアップ窶・I住宅関連トラブルに関する聞き取りとあっせん
※住宅に関する相談対応の概略がまとめられていますが、ボリュームが少なく消化不良です。

②判例に学ぶ
「震度5」は地震免責条項における「地震」か?
・東日本大震災で東京のマンション6階の電気温水器から配水管に亀裂が生じ5階に水漏れした。
・損害保険で保険金を請求したが、「地震免責条項」があり、保険会社はその適用があるとして支払を拒否した。
・原審では、比較的耐久性の高いマンションあんおで震度5では配水管の亀裂は生じないはずなのに、通常有すべき耐久性を有していなかったので地震によるものではないとした。
・高裁では地震と漏水事故とは相当因果関係があるので地震免責条項は適用され保険金の支払義務は負わない。
→地震免責条項の地震が具体的にどれぐらいの規模なのか不明確である。今回の考え方は結構面白い考え方だと感じました。詳しくは本誌を読んでください。

③多重債務キャラバントーク ワタシのミカタ
熊本県阿蘇地域の消費生活センターでは、多重債務問題の取り組みとして行政間の連携がうまくいっている現状について詳しく書かれています。消費生活センターによっては多重債務への取り組みの範囲がさまざまですが、一つの参考になります。

④ネット漂流 Vol.4 「コンプガチャ規制の波紋」
・ソーシャルゲームは、はまってしまうと抜けられない。
・無料ゲームサイトでどのようにすれば無料で遊び続けられるかというと、お金を払ってくれるリーダーのもとで遊べばいい。
・おだてられたリーダーは、長時間利用し短期間に課金してしまう。
・未成年者がリーダーになってしまうこともある。
・コンプガチャ規制によりビジネスモデルの変化がおき始めている。
※ソーシャルゲームを知るにはソーシャルゲームをやってみることです。研修でゲームの仕組みの話を聞いていてもリアルな場では理解できないし、相談者の気持ちに寄り添うこともできないと思います。

リンクはこちらです
関西消費者協会 http://kanshokyo.jp/hp/
消費者情報 2012年9月号