マンション住人のトラブル その3(回答編)

「マンション住人のトラブル その1」
「マンション住人のトラブル その2(回答編)」の続きです。
必ず前の記事から読み進めてください。


ケーススタディの最初の問題(回答例)
箇条書きした相談内容を「事実(推測を含む)と感情(希望を含む)」に分けてください。
なお、1つの内容の中に複数の要素が含まれていることもありますし、今後、確認していかなければならないこともあります。
【事実】【推測】【感情】【希望】

【事実】知人(相談者)は15戸ほどの分譲マンションに賃貸で入居している
【事実】2年ほど前にマンションの管理会社が変わってから、郵便ポストの中のチラシが勝手に出されて処分されていた
【推測】管理人がきている週3回の日と同じなので、管理人がポストの鍵を勝手に開けてチラシを処分しているようだ
④また、【推測】管理人は関係のない日にもマンションに来てウロウロしているので【感情】気味が悪い
【事実】マンションの理事長に相談して管理会社に苦情を言ってもらったところ、【事実】しばらくは収まったが、最近、また同様の状況が起こっている
⑥そこで、【事実】ポストの鍵を交換して番号を変えた。しかし、【事実】変わらずチラシが処分されていた
【推測】鍵を変えたのに中を開けて勝手にポストの中を見るのは【感情】問題ではないか【希望】何とかやめさせたいが、どうしたらいいのか?


相談内容を事実(推測)と感情(希望)に分類してみます。

①知人(相談者)は15戸ほどの分譲マンションに賃貸で入居している。
【事実】特にこれが事実というのには異論がないと思います。
留意事項→
・通常、分譲住宅であれば所有者が入居しているが、区分所有者からの賃貸という形で入居している。最近はよくみかけるが、一般的ではない。
・15戸という入居者は、ごく小さなマンションであり、コミュニティも小さく(近く・親しく)なる。
これらの、特殊な状況を前提にすると、対応方法も慎重になるひつようがある。

②2年ほど前にマンションの管理会社が変わってから、郵便ポストの中のチラシが勝手に出されて処分されていた。
【事実】短期間ではなく長期にわたっていることから、「郵便ポストの中のチラシが勝手に出されて処分されていた」ことは、ほぼ事実と考えられる。ただし、「2年ほど前にマンションの管理会社が変わってから」というのは、「事実」としてもよいが、2年前以前の過去との比較になり証明しにくいので、強調しすぎないほうがよい。

③管理人がきている週3回の日と同じなので、管理人がポストの鍵を勝手に開けてチラシを処分しているようだ。
【推測】状況証拠に過ぎず、事実確認せず決め付けるのは危険。「管理人がきている週3回の日と同じ」「チラシが処分されている」のは「事実」かもしれないが、「ポストの鍵を開けて」が「推測」であり、「ポストの口から手を入れて」かもしれないし、「ポストに投函するのをやめさせている」かもしれない。「管理人が」も実際に見たわけではなく「推測」にすぎない。
「推測」について事実確認をし、「事実である」か「事実でない」かを判断する。

④また、管理人は関係のない日にもマンションに来てウロウロしているので気味が悪い。
【推測】「管理人は関係のない日にもマンションに来てウロウロしている」は、たまたま来ることがあったのか、シフトが変わったのか、自主的に来ているのか、どのぐらいの頻度なのか、など、常に監視して確認しているわけではないので、契約曜日以外に目撃したことは事実であるかもしれないが、まだ「推測」の域を脱していない。
「推測」について事実確認をし、「事実である」か「事実でない」かを判断する。
【感情】「気味が悪い」
感情を受け止める(共感する)
※思い込みであるかもしれないということも意識しておく

⑤マンションの理事長に相談して管理会社に苦情を言ってもらったところ、しばらくは収まったが、最近、また同様の状況が起こっている。
【事実】「マンションの理事長に相談して管理会社に苦情を言ってもらった」
住人からの苦情を受けて、理事長(管理組合)が、管理会社に申し出たことは事実として間違いない。
ただし、「どのような申し出をして、管理会社が認めたのかどうか、また、どのような対応をすることになったのか」を再確認する
【事実】の具体的内容を再確認したほうがよい
【事実】「しばらくは収まったが、最近、また同様の状況が起こっている」
同じ状況が発生しているのは自己申告ではあるが事実と考えられる。ただし、その内容は③とリンクしており、同じかどうか事実確認が必要。

⑥そこで、ポストの鍵を交換して番号を変えた。しかし、変わらずチラシが処分されていた。
【事実】「ポストの鍵を交換して番号を変えた」
留意事項→集合ポストはマンションの共有財産と思われるので勝手に交換はできない。管理組合に相談すること。
【事実】「変わらずチラシが処分されていた」
自己申告であるが、事実と考えてもよいと思う。

⑦鍵を変えたのに中を開けて勝手にポストの中を見るのは問題ではないか?何とかやめさせたいが、どうしたらいいのか?
【推測】「鍵を変えたのに中を開けて勝手にポストの中を見る」
実際に第3者がチラシを取り出すとして、新しい鍵をあけて取り出すことができるのか、ポストの口から手を入れて出せないのか、また、第3者は本当に管理人なのか、という点を確認する必要があります。
③⑤とリンクしている。
【感情】「問題ではないか」
相談者が最大に主張して、かつ、消費者センターに認めてもらいたいことが、これら一連の管理人の行為が問題であるということである。
残念ながら、推測の部分があるので、即認めることはできず、事実確認してからでないと、申し出内容が明確とならない。
【希望】「何とかやめさせたい」
相談者が消費者センターに相談にきた目的である。消費者センターに何をしてほしいのか?
前段の行為が問題であることを認めてもらい、さらに、それを「やめてほしい」ので、消費者センターに何とかしてほしい、というものです。

文字にすると、細かくくどいですが、相談を聞きながら頭の中でこれらを整理しながら対応することが難しかったり苦手だったりするのであれば、①聞き取りのメモを箇条書きに整理して、②事実と感情に分け、③「推測」について事実確認をし、「事実である」か「事実でない」かを判断して、④次のステップに進み、一つ一つ解決していくというプロセスが一番早く楽です。

今回のような事例は
「思い込み」「勘違い」「行き違い」「連絡不足・説明不足」などが原因と考えられる、実はトラブルになっているがトラブルでないこともありうるのである。相談者の言葉をうのみにするのではなく、きちんと事実確認しましょう。

さて、次のステップとして、「推測」について事実確認をし、「事実である」か「事実でない」かを判断します。そのために、どのように考えたらいいでしょうか。
ケーススタディの次の問題です。
メインとなる「推測」の部分は3箇所でしたね。
(次回へ続く)

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マンション住人のトラブル その3(回答編)” に対して1件のコメントがあります。

  1. ひな より:

    今受けている案件がなかなか前に向いて進まず困っていたところです。今回の記事に書かれているように事実、推測、感情、希望の4つに分類し、私の中で整理をしようと思いました。推測と感情に多く振り分けられそうな案件ではありますが頑張ります。

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