弁護士の見方と相談現場の違い その2

「その1」を読んでいない方は、まず、そちらの記事を先に読んでください。

前回は、回答を先に読まれたくないので具体的な新聞の名前を書いていませんでしたが、読まれた方もいるかもしれませんが、日本経済新聞です。
日経新聞の法律相談のコーナーに、ネットで買った商品に欠陥があった場合の読者からの質問に対する弁護士のアドバイスが掲載されていました。
(引用)日本経済新聞 平成25年4月2日夕刊 法ほーそうですか

今回は、記事の回答を全文引用します。
法律的な解釈が前提になっていますが、現実的に解決に結びつくのか考えてみてください。

Q インターネットのショッピングモールで総合ランキング5位の商品を購入したところ、欠陥があり使えませんでした。売っていた店舗には全く連絡がつきません。モールの運営者に損害賠償を請求できますか。
A
ショッピングモールの運営者は商品の売買契約の当事者ではありません。したがって原則として利用者である相談者とモールに出店している個別の店舗との取引によって生じた損害については売り主としての責任を負いません。
ただ、①店舗による営業をモール運営者自身による営業であると利用者が誤って判断するもやむを得ない外観が存在し(外観の存在)、②その外観が存在することについてモール運営者に責任があり(帰責理由)、利用者が重大な過失がなくその外観を信じて取引した場合(利用者の善意無重過)は、商法14条の類推適用によりモール運営者が責任を負うことがあります。
また、製品による重大な事故が多数発生しているにも関わらず、モールの運営者がそれを知りつつ、放置した場合には、民法709条の不法行為責任やモール利用契約に付随する注意義務違反に基づく責任を負う可能性があります。
モール運営者が特定の品質を保証したような場合も責任を問われることがあります。質問者の事案はランキングを表示したものですが、モールの個々の店舗の売上高を示しているに過ぎませんので商品の品質を保証したとまではいえないでしょう。
モールの外観、モールの運営者の運営形態、モールの運営者の店舗営業への関与の有無、程度、商品の欠陥に対する苦情の有無などを確認し、弁護士などの専門家に相談してみてください。独立行政法人国民生活センターのホットラインに問い合わせてみるのもいいでしょう。

(表)ショッピングモールの運営者責任

責任 売り主としての責任は負わない
責任が生じる条件 1.商法14条が類推適用される場合
2.不法行為責任またはモール利用契約に付随する責任がある場合
3.保証に基づく責任がある場合

この回答に対して感じることがあればコメントしてください。
なお、その3(会員専用)で相談現場を想定した場合の私の考え方について、弁護士の回答と比較しながら書いてみたいと思います。

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弁護士の見方と相談現場の違い その2” に対して2件のコメントがあります。

  1. かんりにん より:

    コメントありがとうございます。
    解説の記事で書くつもりですが、私が今回この記事を取り上げたのは、まさにその部分です。

    この回答は「弁護士的発想」に基づく回答だと思います。
    この回答が間違っているとか批判するつもりはありません。この回答は確かに正解ではありますが、正解ではないともいえます。利害関係者がどの立場にいるのかによって解釈が異なります。
    弁護士の立場であればおそらくこのような回答をするのだろうと思います。

    弁護士とは、紛争に対して、白黒(勝ち負け)を明確にする仕事ですから、勝つための解釈を考えます。
    すると、このような解釈になるは自然でしょう。

    しかし、相談現場は白黒をはっきりつけて一刀両断するというより、お互いの主張や見解の相違を仲立ちして、着地点を探してあげるところであり、法律を明確に適用する事案でない消費者トラブルの場合、着地点が、明確に勝ちとか負けとかになるというところではないことが多いです。それが、「あっせん」だと思います。
    そのような意味で、視点が違うのは当然のことと思います。もちろん、弁護士が相談現場を熟知している場合は別ですが。

    もっと先のことを言えば、消費者センターでも弁護士の助言を受ける制度があるセンターも少なくないと思いますが、現場と乖離した理想的な回答の場合があるかもしれないということを肝に銘じて、あくまでも弁護士の助言はあっせんのための一つの方法としてとらえて、センターとしての回答は相談員がいろんな要素を参考に自分自身で決めるということです。

  2. デビ子 より:

     原則として相談者と出店している個別の店舗との間で解決すべきというのが一般的なのは理解できますが、この事案で『モールの個々の店舗の売上高を示しているに過ぎませんので商品の品質を保証したとまではいえない』から責任を問われないというのは疑問だと思います。
     なぜ、ランキングを表示しているのでしょうか。しなくてもいいわけです。それを表示することによって、利用者の注目を集めることは容易に想像がつきます。注目を集めれば購入者も増えるでしょう。そもそも『ランキング上位』という表示は→よく売れている→人気がある→評判が良い→安心だ→『おすすめ商品!』と感覚的に受け取るのが一般的ではないでしょうか。少なくとも『注意を引く』のは間違いがないので、モールの運営業者は店舗の営業に間接的にに関与しているとは言えないでしょうか。商品の品質を保証したわけではないから責任はないと単純に言い切れない気がします。

     ぱっと見ただけの印象でコメントしました。よく読みなおすと、変わるかもしれませんがもう寝ることにします。4月は職場の異動があって、実際に相談を受ける人数が半減したこともあり、受けた相談件数が倍でとても疲れました。相談を受ける夢も何度も見てしまい、そんな朝はため息をつきながらの出勤でした。おやすみなさい。

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