第一印象 ファーストコンタクト その2

前回の続きで、ファーストコンタクトの「受付・あいさつ」を「ノンバーバルコミュニケーション」の観点から書きたいと思います。

「はい、△△消費生活センター相談員の□□です」
受付のあいさつですから、当然ながら、誰が対応しても話す言葉・内容は同じになりますよね。
しかし、相談者にとっては、対応した相談員により受ける印象が全く異なってしまうことがあります。
それが限度を超えた場合は相談員の対応の苦情につながります。
そのためにも、前回書いたように、「マイナス」ポイントをなくすことを心がける必要があります。

みなさんは電話を受けるときに相手の姿を想像したことがありますか。
来所相談の場合は、相手が見えているので、高齢者だったら、ゆっくりはっきり話しますよね。
いきなり、早口で話しませんよね。

電話の相手は、高齢者でしょうか?男性でしょうか?
わかりません。
わからないからこそ、オールマイティに対応できる話し方をする必要があります。
相談者は信用して電話をかけてきます。
信頼にこたえるべき、ファーストコンタクとをとります。

おちついて、ゆっくり、はっきりと、「はい、△△消費生活センター相談員の□□です」と応えればよいのです。
元気に明るく答える必要はありません。
営業電話ではないのですから。
もう一度、繰り返しますが、
「声の質(高低)・速さ・大きさ・テンポなどの聴覚情報」
が相談者の相談員・消費生活センターへの印象を決めます。
最初に「マイナス」にならないように心がけてください。

そんなのは当たり前だし、実践している、といわれる方はOKです。
しかし、ほかの相談員の対応を聞いてみてください。
上手くできているでしょうか。
欠点はお互い指摘しあわないというのが、女性社会の姿です。
「人の振り見て我が振り直せ」「反面教師」ということです。
ただし、できているという相談員でも、「トーン」についてできていないことが多いです。
「トーン」は特に要注意です。
この「トーン」については別の機会に書きたいと思います。

もうひとつ知っておくべきことは、相談者の立場のほうが相談員に比べて圧倒的に弱いということです。
相談者は困って相談を受けて欲しいと願い、相談員は相談を受けるという立場です。
第一印象が悪くても相談をやめることはできないのです。
いやな印象を持っても、電話を切るわけにはいきません。
最近は、「相談員を変わるように」求める相談者もいますね。
そういう社会変化もありますので、しっかり対応しましょう。

さて、コミュニケーションの研修を受講すれば、最初に「あいさつ」があると思います。
大きな口をあけてはっきりと明るく受け答えする。そして、全員で唱和する。
一般的にはこのようなスタイルでしょう。
もちろん、これはこれで正解です。
ただし、相談現場でそのまま使っても良いかといえば、先に述べたように、そうではありません。
深刻な問題で悩んで困っている相談者に対して、いきなり明るい対応をされたら、話す気がなくなるかもしれません。
言葉で書くのは難しいのですが、たとえば、友人からの相談で「実は旦那が浮気をして相手が妊娠したみたい」といわれて、明るい声で復唱したらどうなるでしょうか。
相談現場での話し方のポイントというのをしっかり押さえて下さい。
リアル研修で実践できたら一番いいのですが、それはそのときということにします。
話は戻りますが、だからといって、一般のコミュニケーションの研修を批判することはナンセンスです。
何度もいっているように現場に対応した研修というのは現場を熟知していなければできないからです。
一般の研修でも参考になることはたくさんあります。
それを吸収し、現場に応用していく能力が求められます。

しつこいようですが、信頼されるような口調をぜひ使ってください。
ゆっくり、はっきり、友人からの悩み相談を受けるようなトーンで受け付けてください。
明るすぎても暗すぎてもダメです。
たった、これだけのことです。
そして、そこから、具体的な相談がスタートします。
相手の心を開かせるためのファーストコンタクトです。
あとは、相談をすすめていく中で、相談内容や相談者に合わせた「声の質(高低)・速さ・大きさ・テンポなど」を使っていくことになります。

コミュニケーション手段としての「声の質(高低)・速さ・大きさ・テンポなど」を具体的にどう表現したらよいのか、相談対応の場面場面でどう使い分けたらよいのか、ということは別の機会に書きたいと思います。

次回は、来所相談でのファーストコンタクトについて書きたいと思います。

消費者情報 2011年1月号 (関西消費者協会)

①特集いま知っておきたい食情報
・偽装表示、期限表示の見直し、消費者庁の創設など食品を取り巻く環境は大きく変化しようとしています。その最新の動きについて各方面から寄稿されています。
②2010年消費者関連出来事
・この1年間の出来事が時系列で月ごとに130件あまりが箇条書きでまとめられています。
③2010年消費者関連法律
・10個の関連法律があげられていますが、直接関係するのは、「消費生活用製品安全法施行例の一部を改正する政令」で、「使い捨てライターに関する」取扱が変更になっています。
④ADR機関を活用しよう
不動産の相隣紛争に関する解決事例
・「借地上建物の買い取り事案」と「越境建物の問題の事案」の2つの事案について、正式に裁判すると手間やお金がかかったり、法律で判断するには難しかったりする事案をADRによる話し合いで専門家による妥当な提案をおこない、合意に至ったケースを紹介しています。
・この考えは、まさしく消費者センターにも合致する考えですね。
⑤判例に学ぶ
高木証券による住居用不動産投資ファンド被害について損害賠償責任を認めた判決
・タイトルそのままのないようです
・リスクを説明していなかったり不適当な勧誘行為により誤解を与えた
・金融商品販売法5条等に基づき損害賠償責任を認めた(過失相殺3割)

リンクはこちらです
関西消費者協会 http://kanshokyo.jp/hp/
消費者情報 2011年1月号

第一印象 ファーストコンタクト その1

相談者と相談員のファーストコンタクト(最初の接触)は何でしょうか?
簡単ですよね。
電話です。
来所相談の場合は受付ですね。

人と人とのコミュニケーションでは第一印象が大事だといわれます。
消費者センターにとっても第一印象はとても重要です。

相談者は消費者センターに何を期待しているでしょうか。
・消費者トラブルに巻き込まれ、わらをもすがる思いで消費者センターに電話してきた。
・普段、あまり電話したことのない高齢者が電話してきた。
・携帯トラブルで勇気を振り絞って高校生が電話してきた。
・出会い系サイトでだまされた既婚者が配偶者に黙って電話してきた。
・メーカーからひどい対応を受けて電話してきた
などなど、消費者センターに電話してくる相談者は当然ながら「わけあり」ですよね。

行政の消費者の味方である消費者センターなら絶対に解決して助けてくれるはず。
頼りになる相談員がきちんと対応してくれるはず。

電話に出る前から、消費者センターおよび相談員に対する信用レベルは、かなり高いところにあるともいえます。
したがって、そのような期待感に応えなければなりません

それでは、どのように応えたらいいのかというと、私は「マイナスにならないように」応えれば良いと考えます。
「信頼を得るには長い時間が必要だが、信用をなくすのは簡単である」、といわれます。
そういう意味では、話をする前に、すでに信頼を得ているという、コミュニケーションには非常によい状態になっているのです。
したがって、その信用をなくさないように、すなわち「マイナスにならないように」対応することが重要です。
逆に、信頼が高い状態だけに、ひとたび「マイナス」の要素を出してしまえば、再び信頼を得てプラスに持っていくのは非常に苦労することになります。

それではまず「電話」での相談の場合について考えていきたいと思います。

電話が鳴ると、相談員が受話器を取り、「はい、△△消費生活センター相談員の□□です」と会話を始めるでしょう。
誰もが「無意識的」に話していますが、この最初の「受付・あいさつ」にあたる部分について、「意識」したことがあるでしょうか。
実は、深く考えてみると、結構奥深いものがあると思います。
それは、『最初の言葉で相談者に「第一印象」を与える』、ということです。
当然、第一印象がいいに決まっていると思います。

具体的には、電話に出たときの最初の会話である
①消費者センターであること
②相談員であること
③名前を告げること

この3つは最初のコンタクトに必要な言葉・情報です。
これらは、「バーバルコミュニケーション」、すなわち、話す言葉の内容などの言語情報に該当します。

消費者センターによっては、最初にこの3つの要素ではなく「消費者センター」だけ、「消費者センターと名前」だけ、という場合もあるでしょう。

この3つは、それぞれ
①消費者センターにつながってよかった。
②直接、相談員が電話に出てくれてよかった。
③名前を名乗ってくれたことで、距離が近づき安心する
という印象を相談者に与えて、非常に良好な関係で相談をスタートさせることができます。
たったこれだけで、相談がスムーズに進むのであれば簡単ですよね。
ぜひ、この3点セットをお使いください。

一方、先日書きました「ノンバーバルコミュニケーション」の記事で、コミュニケーションにおいては、「バーバルコミュニケーション」ではなく「ノンバーバルコミュニケーション」が重要となると書いたところです。
すなわち、「バーバルコミュニケーション」である「話す言葉の内容などの言語情報」に、「ノンバーバルコミュニケーション」であるの「声の質(高低)・速さ・大きさ・テンポなどの聴覚情報」や「顔の表情・見た目・しぐさ・視線などの視覚情報」の要素を上手く加えることで、コミュニケーションをより良好に保つことができるのです。

次回は、このファーストコンタクトの「受付・あいさつ」を「ノンバーバルコミュニケーション」の観点から書きたいと思います。

(平成23年1月11日 初稿)
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